ハンバーガー帝国のヒミツ (The Founder) 

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (74点)

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【あらすじ】 1954年、シェイクミキサーのセールスマン、Ray Kroc(Michael Keaton)に8台もの注文が飛び込む。注文先はMac(John Carroll Lynch)とDick(Nick Offerman)のMacDonald兄弟が経営する、カリフォルニア州南部にあるバーガーショップ「マクドナルド」だった。合理的なサービス・コスト削減・高品質という、店のコンセプトに勝機を見出したKrocは兄弟を説得し、「マクドナルド」のフランチャイズ化を展開する。しかし、利益を追求するKrocと兄弟の関係は次第に悪化し、彼らは全面対決へと発展した。実話をもとにしたドラマを映画化。(作品の詳細はこちら


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今でこそマックのハンバーガーは誰もが知るありふれたファーストフードで、あまりにも当たり前すぎてそのルーツを考えたことすらなかったから、その意味ではとても興味深い作品だった。もともとはバーベキュー屋だったのが、注文を受けてからわずか30秒でハンバーガーを出すショップに生まれ変わるなんて、世の中がひっくり返るような出来事だったに違いない。

当時のドライブインのシステムも、なかなか興味深かった。車に乗ったまま注文したメニューを、ウェイトレスがトレイにのせて車ごとにサービスしてくれる。食べ終わったあとも、ウェイトレスが回収に来てくれたのかしら?車から一歩も下りなくても、車内で食事ができる。このアイデアだって、十分に画期的だ。


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MacDonald兄弟のハンバーガーショップで、Krocが初めてハンバーガーを注文して食べるシーンは、黒船が来航した江戸市民の脳内を見ているようで、なかなか愉快だった。ハンバーガーの入った紙袋を前に、Krocはあっけにとられる。トレイもなければ、フォークやナイフもないからだ。自己啓発書の元祖的な『積極的思考の力』というレコードを聞き、ビジネスの世界では成功した者だけが勝ち組!というモットーを叩き込んだ彼が、ハンバーガーごときに振り回され、脳みそを絞って真剣に考えるなんて、滑稽すぎるでしょ。


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このシーンを見て思い出したのは、1971年9月18日に初めて発売されたカップヌードル。カップに熱湯を注いで3分で食べられる。鍋も丼もいらない。販売当初は透明のプラスチックのフォークも付いていたから、箸も不要。お湯を沸かして注げば出来上がり!なんて、魔法のラーメンだった。上にのったフリーズドライの肉・エビ・卵・ネギは、あの頃からミニチュア・フェチだった私のハートを鷲づかみ。友人宅に遊びにいくと、おやつとして出してもらった。


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# by amore_spacey | 2017-05-24 04:07 | - Other film | Comments(0)

永い言い訳

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (76点)

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【あらすじ】 人気小説家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)の妻で美容院を経営している夏子(深津絵里)は、バスの事故によりこの世を去ってしまう。しかし夫婦には愛情はなく、幸夫は悲しむことができない。そんなある日、幸夫は夏子の親友で、旅行中の事故で共に命を落としたゆき(堀内敬子)の夫・大宮陽一(竹原ピストル)に会う。その後幸夫は、大宮の家に通い、幼い子供たちの面倒を見ることになる。(作品の詳細はこちら


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本木雅弘や竹原ピストルをはじめ、子役の子どもたちの演技は素晴らしく、映像も音楽も綺麗で美しかった。が、子どもたちの中にダメな大人を連れてきて社会更生させる、この手の作品は正直なところ、食傷気味です。ストーリーや描き方に工夫があれば、好印象を持ったかもしれないのに、浮気中に妻が事故で死ぬという冒頭の設定からして、あまりにも現実味が薄く、「これ、ハズレかも?」と思った時点で、この作品にのめり込めなくなった。

程よい口当たりのよさときれいごとで、無難にまとめてしまっている。「人生は他者だ」って?言葉の響きや字面だけに酔う、その白々しさに不快感も増す。結末に至っては、予定調和的なハッピーエンドで、こりゃもう、イージーかつ強引すぎて、絶句しました。内容とタイトルも結びつかず、最初から最後まで、全く感情移入が出来なかった。


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巷では、天才役者と言われる池松壮亮くん。強烈な印象を残した『MOZU』を観て、こりゃ凄い若者がいるなと思った。でもこの作品といい『海よりもまだ深く』といい、全く毒気がなく普通すぎる彼に、面食らってしまいました。ずっと気になっている、あの独特の声。抑揚がないと言うのか、覇気がなく、だるそうで…。ちゃんとご飯、食べてる?


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# by amore_spacey | 2017-05-18 01:54 | - Japanese film | Comments(0)

愛のために戦地へ (In guerra per amore) 

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (74点)

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【あらすじ】 戦時中の1943年。ニューヨークのレストランで働くパレルモ出身のArturo(Pif)は、店のオーナーの姪Flora(Miriam Leone)と愛し合っている。だがFloraは在米マフィアの大物の一味の若い男と結婚を強いられている。愛し合う2人の結婚を可能にするのは、彼女の父親だけ。そこでArturoは、シチリアに住むFloraの父から、結婚の許可を得るため、シチリアに上陸しようと画策する米軍に入隊し、シチリアに赴任する。ところが米軍はシチリア占領をスムーズに進めるため、地元のマフィアと密約を結んでいたのだった。(作品の詳細はこちら


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ArturoとFloraのラブストーリーに、マフィアをめぐる激動のイタリア近現代史を絡め、アメリカ軍のシチリア上陸がもたらした影響にも触れている。

とても真面目で誠実なんだけど、どこか抜けていて今一つ頼りなさそうなArturoを見ていると、まどろっこしくやきもきして、「大丈夫か?」「頑張れよ!」と、つい応援したくなる。コメディ路線を貫きながらも、彼を取り巻くコミカルな空気の端々から、当時の不安定な国情(イタリアは、色んな意味でいつも不安定ですが)やシチリアの暮らしやマフィア・米軍・市民の関係が垣間見えてくる。


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マフィアの存在は、あくまでも脇役に過ぎない。アイロニーを込めた目線で捉え、マフィアの滑稽な道化師っぷりは、乾いた笑いを誘う。が、この道化師たちは、うまく立ち回って政治家と癒着し、じわじわとシチリアに根を張っていくのだ。そういった土壌にストーリーが展開していくので、口当たりの良いラブコメとは若干異なっている。ただマフィアの暗部に深く切り込んだ訳ではないので、ぽーんと問題提起はされたものの、「で?」と、もやもやが残るのは否めない。ま、娯楽作品としてなら重すぎず、これくらいがちょうどいいのだろう。


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史実とフィクションの絡ませ方がうまく、また視聴者を笑いに誘いながら、シチリアのマフィア問題にさりげなく触れる手法は、コメディ出身のPif監督らしい。目の見えない男と足の悪い男のコソ泥コンビや、空襲警報のたびにマリア像やムッソリーニ像を抱えて逃げる人々など、脇役たちが個性的で愉快だ。Philip中尉(Andrea Di Stefano)がまるでArturoの兄貴のような2人の関係が微笑ましく、彼らの友情は心温まるものだった。  


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# by amore_spacey | 2017-05-12 01:14 | - Italian film | Comments(0)

ラッキー・ブレイク (Lucky Break)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 いつも失敗ばかりの冴えない泥棒Jimmy(James Nesbitt)は、今度もドジを踏んで刑務所行きとなった。そこで再会したかつての相棒Rud(Lennie James)と2人で、脱獄を目論む。
 そんなある日、無類のミュージカル好きのMortimer所長(Christopher Plummer)が、自作のミュージカル公演を催すことを発表した。公演のどさくさに紛れて脱走を企てるJimmyは、千載一遇のチャンスとばかりに出演を承諾し、仲間集めに奔走する。主役に抜擢されたJimmyの相手役が美人カウンセラーのAnnabel(Olivia Williams)ときて、すっかり気をよくした彼は、さっそく舞台の準備と同時に脱獄の計画を練り始めるのだった。(作品の詳細はこちら


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ずいぶん突飛な話で突っ込み所満載だけれど、コメディタッチで最後まで楽しめる。ゆるくて小さな笑いがふんだんに用意されているお陰で、ちょっぴりシリアスなシーンも登場するが、深刻になり過ぎないのも、さらっと観るにはちょうどいい。

まず冒頭で銀行強盗に失敗するJimmyとRudのお粗末な2人、こんなコンビで果たして脱獄計画が成功するのか?この時点で既に視聴者はかなり心配になり、行方が気になってくる。彼らに続いて登場する人々が、これまた個性的で、ミュージカルに紛れた脱獄計画に向かって一致団結し、悲喜こもごものドラマを見せてくれるのだ。


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この作品を観たかったのは、『手紙は憶えている』同様、Christopher Plummerがピアノを弾いているから。そのシーンも堪能したけれど(短すぎる!もっと観たかった&聴きたかった)、端正な容貌に似合わないお茶目な所作に萌えました(*^^*) 彼の自作ミュージカルが、『ネルソン提督』って…(爆) しかも囚人たちの演技が小学生レベルなのに、公演終了後、所長ったら感極まって涙を流してるし、ププッ。Christopherのやり過ぎない2枚目半が、チャーミングで素敵だ。


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ミュージカルに出演する囚人たちも、個性の強い人たちばかり。火遊び大好きな青年、出所したら家族3人で幸せな家庭を夢見るCliff(Timothy Spall)、自分が育てるトマトに異常な愛を示す男、荒々しく乱暴な大男、計画を横取りしようとする奴。

それからそこにいるだけでおかしいRog(Bill Nighy:物腰が柔らかく上品で頭は切れるが、腕力ゼロな役柄がピッタリ。圧倒的な存在感があるわけではないのに、何となく印象に残る)、演技指導する?気弱なメガネ男(Julian Barratt:オタク系イケメン?気になる)、囚人たちに目を光らせ彼らの行く手を阻む看守(Ron Cook)、そして美しいカウンセラーAnnabel。それぞれの役割や立ち位置がはっきりしているので、とても分かりやすく、私向きの作品だった。ところでPeter Cattaneo監督は、英国TVドラマ『REV』の監督だったんですね。


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# by amore_spacey | 2017-05-05 00:11 | - Other film | Comments(2)

海よりもまだ深く

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 15年前に1度だけ文学賞を受賞したことのある良多(阿部寛)は、「小説のための取材」と理由を付けて、町田(池松壮亮)とコンビを組んで探偵事務所で働いている。良多は離婚した元妻の響子(真木よう子)への思いを捨てきれず、響子に新しく恋人(小澤征悦)ができたことにぼうぜんとしていた。良多・響子・息子の真悟(吉澤太陽)は、良多の母・淑子(樹木希林)の家に偶然集まったある日、台風の一夜を4人で過ごすことになる。(作品の詳細はこちら


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是枝監督の作品を観ていると、忘れていた懐かしい気持ちに包まれ、胸が苦しくなる。作中の人々も視聴者も、それぞれ抱えている問題や生き方・育った環境は異なるのに、あるシーンに出てくるアイテムや何気ない会話によって、思い出の扉がパタンと開き、日常生活に紛れ忘れていた過去が、芋づる式に次々と蘇ってくる。
 
台風の夜3人が集まった公園の滑り台のシーンに、小学校の放課後、堤防に行って、自分たちの背より高い葦で秘密基地を作ったことを思い出した。台風で停電した夜、外は大荒れの中、部屋にろうそくを灯し、突然ふって湧いた非日常にわくわくしたものだった。カルピスは、子どもの頃の夏の味だな。こうした強烈な思い出だけでなく、同じようなことの繰り返しで、記憶にも残らないような平凡な日々が、是枝監督やベテラン役者たちの手にかかると、深みや広がりや大切さが増して、かけがえのないものに思えてくる。


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阿部ちゃん演じる良多は、ろくでなしのダメ男っぷりが半端なく、あれじゃ、離婚されても仕方がない。図体がデカくて団地サイズに納まり切らず、その姿が息苦しくも滑稽で笑える。そんな息子に突っ込みを入れつつ、煩いことを言わずそっと見守る母。どんなにダメな子でも、母親にとっては可愛い子なのだ。

阿部ちゃんと樹木希林との掛け合いは、素晴らしかった。『歩いても歩いても』に続く母子役というのもあるが、2人の息がぴったり合い、本当の親子以上に自然で馴染んでいた。こんなダメな父を持った息子はとんだ災難だけど、グレたり捻くれたりせず、それどころか父親より精神的にずっと大人で(そうならざるを得なかったんだけどね)、この年にしてすでに悟りの境地に達している。子どもは大人をよく見てるね。


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頑張っていい息子をやろう、いい父親ぶりをみせようとする良多に、元妻や姉(小林聡美)は手厳しい。そりゃそうです、世の中そんなに甘くないし、舐めてもらっちゃ困る。真っ当な生き方をする彼女たちの前では、デカい図体の良多も返す言葉がなく、縮こまってしまう。しかしダメ男で孤立無援かと思えば、探偵事務所に拾ってもらい、後輩の町田が仕事の域をこえて、手助けしてくれる。阿部ちゃんにくっついている池松が、まるで子犬みたい。助けてくれる人がいるというのは、心強いことだ。何はともあれ、現実をちゃんと見つめて、生きて欲しい。


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「幸せっていうのはね、何かを諦めないと手にできないもんなのよ」と良多の母は言うが、そうかな?幸せは手にするものではなく、ある瞬間にふっと感じるものだと思う。何かを諦めなくても、その人のアンテナさえさびついていなければ、じわっと噛み締めることが出来るはず。ところで冒頭に登場する煮物がとてもおいしそうだった。子どもの頃は、茶色の煮物が大嫌いだったのにね。


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# by amore_spacey | 2017-05-01 04:02 | - Japanese film | Comments(0)