特別な一日 (Una giornata particolare)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (90点)

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【あらすじ】 1938年5月のローマ、第2次世界大戦前夜、Mussolini政権下のローマをHitlerが正式訪問する、イタリアにとって歴史的な記念式典の日。6人の子育てに追われるMussolini信奉の主婦Antonietta(Sophia Loren)は、これまた盲目的にMussoliniに傾倒する夫や子どもたちを式典に送り出した。山ほどある家事を片付けるのに忙しいというのに、飼っていた九官烏が逃げ出してしまう。これがきっかけで、同じ高層アパートの向かいの建物に暮らすGabriele(Marcello Mastroianni)という男と出会った。そして2人は特別な関係を持つのだが…。(作品の詳細はこちら


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Marcello Mastroianni1人祭り。ローマを訪問したHitlerと、彼を熱狂的に迎えるBenito Mussoliniやイタリア国民のニュース映像が、オープニングでかなりの時間を割いて流れる。ハーケンクロイツの旗とイタリア国旗が翻る祝福ムードのこの日は、イタリア人にとって特別な1日だったが、Antoniettaにはいつもと同じ1日になりそうだ。世間から取り残され、満たされない孤独な日々を送る平凡な主婦に、一体何があるというのだ?

同性愛者のGabrieleは、「夫・父・兵士でない男は、男ではない」と唱えるMussoliniのファスシト政権下で、アナウンサーの仕事を追われ、世間から蔑(さげす)まれ、虐(しいた)げられてきた。いつサルデーニャに送られるのか?不安と孤独の中で、官憲から逃れるようにひっそり暮らしている。


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この2人は結局結ばれるのだが、燃えるような愛ではなく、互いを労わり傷を舐めあうような、憐憫に近い哀しい愛だった。Gabrieleが『三銃士』の本を持って訪ねて来たときから、Antoniettaは何かを期待していた。けれども屋上の洗濯干し場で彼と話しているうちに、今朝自分の心をよぎった愚かな考えを恥じ、「やっぱり男はみんな、オオカミなのよ!」と吐き捨てる。

同性愛者として負い目のあるGabrieleの胸に、その言葉は刃のように突き刺さった。異性と恋愛し結婚し子どもをもうけて家族を作ることが、真っ当な人生とみなされる時代の中で、存在価値のない自分に絶望している。彼自身がそうした自分を嫌悪し、受け入れられなかった。でも明日サルデーニャに連行される前に、せめて世間一般の男が経験するように、女と結ばれてみたい…という儚い願望があったに違いない。


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束の間の情事のあと、Gabrieleの背後から、「また来週会える?」と、淡い期待を抱きながら、何気なく聞くAntonietta、それに答えられず硬直した顔の彼。残酷なシーンだ。屋上の洗濯物干し場から関係を持つに至るまでの、彼らの感情の起伏や気持ちの変化が、痛いほど伝わってくる。ただ同性愛者のMarcelloという設定が…ね。演技だけでなく、身につける物などディテールに拘り、精一杯それらしく見せてはいるが、ゴメン!ピンと来なかった。そこだけ微妙で残念だった。


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ラストシーン。夕食後の片づけをすませ、静まり返った台所の窓際でGabrieleが持ってきた本を読むAntonietta。ふっと窓越しに目をやると、Gabrieleが2人の男に連れられて出て行く。彼が2度とここに戻って来ないことを、彼女はたぶん知らない。本を置いた彼女は、家の灯りを1つ1つ消しながら、夫が眠る寝室に向かい、ベッドにそっと滑り込んで部屋の灯りを消す。誰にとっても特別な1日が、静かに終わろうとしている。そしてうんざりするような明日が、またやってくる。

でもAntoniettaは、それを乗り越えることができる。九官鳥や砂のオモリのついた台所の灯りやボタンで描いたMussoliniの絵を見るたびに、コーヒーミルや『三銃士』の本を手にとるたびに、屋上の洗濯物干し場に行くたびに、Gabrieleのことを、あの特別な1日のことを思い出し、束の間の幸せをかみしめる。他人にはどうでもよい出来事が、Antoniettaをずっと支えてくれるだろう。ファシズムの嵐が吹荒れる中、いくつも生まれては消えていった、市井の人々の小さなドラマ。観れば観るほど、味わい深い。


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この映画でSophiaの6人の子どもの中の娘Maria Luisaを演じているのは、Sophia Lorenの妹とBenito Mussoliniの息子の間に出来た娘Alessandra Mussolini。SophiaとAlessandraは、伯母・姪っ子の関係にある。因みに、私の姑の叔父は反ファシストの罪でサルデーニャに送り込まれたが、何年かして戻ってきた。しかも婚約者(市長の娘)を連れて。瑣末なことだけど、Marcelloはここでも『ひまわり』の時のように、慣れた手つきで卵焼きを作っている。卵が好き?私みたい(笑) マンション管理人のオババは、小柄なのに物凄い存在感がありました。


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# by amore_spacey | 2017-07-30 00:42 | - Italian film | Comments(2)

マカロニ (Maccheroni)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (73点)

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【あらすじ】 アメリカ軍の将校としてイタリアに駐在していたRobert(Jack Lemmon)は、晩年になって商用でナポリに来た。彼はかつて愛し合ったMaria(Giovanna Sanfilippo)のもとを訪れ、村人たちから大歓迎された。そしてRobertを待ち続ける妹のために、兄Antonio(Marcello Mastroianni)がRobertになって、手紙を書いていたことを知る。(作品の詳細はこちら


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Marcello Mastroianni1人祭り、進行中。面倒なこともあるが、友情っていいもんだ、歳を取ることも悪くない、幾つになっても人間は変わることができる。この作品を観てしみじみ思う。心が疲れていたり、トゲトゲしくなった時、やさしい嘘や無償の愛や、人を信頼する気持ちに触れると、いつも以上にその有り難味が身に沁みるものだ。

お人好しで茶目っ気たっぷりのAntonioと、仕事一筋で生きてきたRobert。冒頭のシーンから、歯車が噛み合わない対照的なこの2人が、可笑しくて仕方がない。Robertにしてみれば、商用でナポリに来ただけだから、過密スケジュールをやっつけて、さっさとアメリカに戻りたい。ところが思いがけない再会によって、遥か彼方にある記憶が蘇り、彼の乾いた心は少しずつ潤いを取り戻していく。よくある話だが、人の心模様を幾重もの繊細な層で表現できるのは、主役の2人や監督の手腕だけではなく、味のある脇役、そして舞台となったナポリの風景、それらが一体となって見事にとけあった賜物である。


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微妙に噛み合わないAntonioの高齢のマンマとの会話も、何となく分かったふりをしたり、都合のいいように解釈する。マンマへの愛情だ。彼女が乗った車椅子が、これまた素晴らしい。手前には作業台が設(しつら)えられ、背中側にはジュウシマツやカナリアなどの小鳥たちが入ったカゴがいくつもぶら下がり、たとえマンマが1人で居ても退屈しない特別仕様だ。公私混同しないRobertのイタリア側の辣腕秘書が、たった1度だけ酔っ払ってRobertに絡むシーンや、Jack Lemmonのピアノ演奏は、秀逸!

全員が揃ったラストの食事は、『無邪気な妖精たち』を思い出す。トマトソースをたっぷり絡めたパスタが、余りにも美味しそうだったので、その日の夕食はトマトスパゲッティだった。あの紐の先を辿っていくと、Antonioの手に繋がっている。このシーンでは、誰もが奇跡を願うでしょう。ナポリに行ったら、生クリームがのった特大サイズのババを、ぜひとも食べてみたい。


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# by amore_spacey | 2017-07-29 00:03 | - Italian film | Comments(0)

あゝ結婚 (Matrimonio all’italiana) 

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 第二次大戦中のナポリ。娼婦Filumena(Sophia Loren)とパスティッチェリア(菓子屋)の後継ぎDomenico(Marcello Mastroianni)は、空襲の日に娼館で出逢った。終戦後2人は再会し、恋仲となって別宅も持った。Filumenaは身請けしてもらい幸福の絶頂…と思いきや、Domenicoは浮気の虫が止まず、彼女に仕事を任せてほったらかし。Filumenaは一計を案じ、危篤状態を装って無理矢理Domenicoに結婚を迫った。(作品の詳細はこちら


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Marcello Mastroianni1人祭り、進行中。『イタリア式離婚狂想曲』に負けず劣らず、Marcelloのクズっぷりが炸裂するコメディだ。のらりくらり言い逃れながら、いつまでもFilumenaを日陰の女にしておき、それをいいことに、高齢の母の介護をさせたり、メイドの部屋で寝かせたり、店の仕事をやらせたりして、自分はパスティッチェリアのレジ係の若い女とよろしくやるって、とんでもないヤツだ。何とかして報復してやりたくなります。


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大輪のひまわりが咲いたようなSophiaの満面の笑顔や、健康的&魅力的なダイナマイト級のナイスバディは、見るものを元気にしてくれる。天真爛漫で、惚れっぽい性質(たち)。読み書きができなくて、自分の名前を署名するのにも、時間がかかってしまう。が、勝気で威勢がよく、理不尽な目に遭えば、徹底的に闘う。口喧嘩だって絶対に負けやしない。そんな彼女も3人の子どもたちの前では、母性愛に満ちた母の顔に戻る。子どもの病気にアタフタしたり、幸せに涙ぐんだりする情の深さ。どの仕草もどの表情も可憐で繊細で、女心が随所ににじみ出て、ほろりとさせられた。彼女がすけすけのエロティックな衣装を着ても、嫌らしさがない。彼女の存在が眩しいほどゴージャスだから。

彼女とMarcelloとDe Sica監督、この3人がいるロケ現場は、きっといい雰囲気だっただろうなぁ。それぞれの持ち味が最大限に引き出される、最強のトリオだ。MarcelloとSophiaのカップルは、イタリア映画の黄金時代を築き、その中を華麗に走り抜けていった。2人は様々な作品で悲喜劇を演じてきたが、その時々で感情の匙加減が絶妙な具合に加減され、微妙な色合いの違いを楽しませてくれる。この作品はSophiaの手のひらで転がされているように見えるMarcelloだが、そんな彼にぞっこんだったのは、実は負けん気の強いSophiaだったかもしれない。彼のことが好きで好きでたまらなかったのに、自分からは言えなかった。だから、ラストシーンにほっとした。「ああ、本当によかった」


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こてこてのナポリ方言(サレルノ方言?)も、この作品をより人間味溢れるものにしている。パスティッチェリアのお菓子の山や、子どもたちが口のまわりや鼻の頭や服を粉砂糖だらけにして、お菓子を食べるシーン。メイドのおばちゃんやAlfredoなど、庶民的な雰囲気満載の脇役たちも、映画を引き立ててくれた。身振り手振りが大袈裟な、人情味に溢れたお節介おばちゃん、いますものね。


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# by amore_spacey | 2017-07-28 01:18 | - Italian film | Comments(0)

8 1/2

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

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【あらすじ】 著名な映画監督Guido(Marcello Mastroianni)は医者に勧められ、また騒がしい現実から逃れるため、湯治場にやって来た。新作の撮影準備を進めてから5か月が過ぎたにもかかわらず、クランクインが遅れている。愛人Carla(Sandra Miloや妻Luisa(Anouk Aimée)や若手女優Claudia(Claudia Cardinale)や知人たちの幻影に悩まされ、映画の構想が全くまとまらないのだ。療養中も亡き両親の姿や少年時代の思い出がよみがえり、これが現実なのか虚構の世界なのか、次第に曖昧になり、Guidoは混乱していく。1964年第36回アカデミー賞で、衣裳デザイン賞と外国語映画賞を受賞。(作品の詳細はこちら


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Marcello Mastroianni1人祭り。Fellini監督は作品の中に、自分自身のこと、自分が育ったRiminiや熟年期の拠点となったRomaを積極的に取り入れる。今回は映画制作にからんだ自身の苦悩を、そのまま映画にしてさらけ出している。これを映像にするのはなかなか難しいと思うが、監督らしい撮影と演出で、見事に実現した。女優たちの衣装も、ゴージャスだったりキュートだったりで、目の保養になった。でもこの手の作品が、実は苦手だったりします。


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妄想の中で起きるハーレムのどんちゃん騒ぎが、とてもシュールで面白かった。撮影中も楽しかったでしょう。清楚で可憐なClaudia Cardinaleは、まるで野に咲くマーガレットやすずらんのようで、綺麗だったんだなぁ。ところで黒縁メガネのMarcelloが、『シングルマン』『キングズマン ザ・シークレット・サービス』のColin Firthを彷彿させたが、たぶんColinが意識して真似たに違いない。音楽担当は、お馴染みのNino Rota。


 
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# by amore_spacey | 2017-07-27 00:27 | - Italian film | Comments(0)

あんなに愛しあったのに (C’eravamo tanto amati)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (81点)

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【あらすじ】 第二次大戦中のレジスタンス仲間Antonio(Nino Manfredi)・Gianni(Vittorio Gassman)・Nicola(Stefano Satta Flores)は、戦後、病院の救急班・弁護士助手・教師としてそれぞれの道を歩みながらも、変わらぬ固い友情で結ばれていた。そんな彼らの前に、Luciana(Stefania Sandrelli)という天使のごとき女が現れ、皆、彼女の虜になってしまう。以来30年の歳月を、時代の変遷と過ぎゆく青春への哀惜を重ねながら叙述する。(作品の詳細はこちら


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この3人の男たちは、まるで夫の友人関係を見ているようだ。殴り合いの喧嘩こそしないが、絶縁に近い状態になりながらも、「ったく、しょうがない奴だなぁ。」と、窮地に追い込まれた友に助けの手を伸べたり、ふらっと家に立ち寄って喋っていったり、どうでもいい話に盛り上がり、笑って、食べて、飲んで、喋り倒す。アイツは○○だからと文句を言いつつ、誘い合って出かけたり…。

Scola監督はそういった市井の人々を、彼らの内面を、実によく観察している。この作品は、イタリア人の日常生活を何の加工もせず、そのまま切り取ったビデオのようである。が、ただのビデオではない。Scola監督を通した映像は、私たちが心の奥底で固く蓋をしているところを、いとも簡単に開けてしまう、静かで力強い感情に溢れている。コミカルなのに、どこか物悲しい。


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そんな3人の前に女性が登場すると、大概は仲間割れして自然消滅することが多いのに、彼らの友情は育まれ続けていく。Gianni(Vittorio Gassman)を訪ねて行った3人が、豪邸のプールに佇む彼を垣根越しに見つける。その瞬間、彼らの心をさっと横切った気持ち。声をかけないまま3人が引き返すシーンに、はっと胸をつかれた。


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巨匠や名優らを作品の中にさりげなく登場させるのも、Scola監督が映画をこよなく愛しているからだ。Vittorio De Sicaを敬愛するあまり、クイズ番組でヒートアップし、監督への思いを熱く語るシーンは、秀逸だ。あそこでNicola(Stefano Satta Flores)の存在が、いきなり浮上した。3人の中で一番風采が上がらず、地味な存在だっただけに、あれは拍手喝采モノで、映画の好きな私は、一気に彼のファンになってしまった。あのNicolaは、Scola監督に違いない。Mike Bongiornoが若い。Gianniの舅を演じたAldo Fabriziが、化け物のようですな(滝汗)


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# by amore_spacey | 2017-07-26 00:31 | - Italian film | Comments(0)