Morte a Venezia (ヴェニスに死す)

私のMahlerお気に入り度 ★★★★☆(90点)

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1911年のヴェニスのリド島。生暖かいシロッコ(季節風)が吹き、ねっとりと蒸し暑い夏。静養のため一人この島を訪れたドイツ有数の作曲家・指揮者Gustav von Aschenbach(Dirk Bogarde)は、同じホテルに宿泊するポーランド人一家の美しい少年Tadzio(Björn Andresen)を一目見るなり心を奪われた。純粋な美の具現と思えるような美少年。一方ヴェネチアはコレラが蔓延する退廃的で薄汚れた街になろうとしていた。美しい水の街、老いた孤独な音楽家、汚れのない美少年、優雅な貴婦人たち、古き良き時代のサロン…。GustavとTadzioは?



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この作品を初めて観たのはいつだっただろう?Tadzio少年を演じたBjörn Andresenの評判が高く、当時の美少年雑誌には必ず彼がベスト3に入っていた。美青年Alain Delonに夢中だった私も、Björnの陶磁器のような華奢な美しさに目がくらくらしたものだった。今改めて作品を観直すと、Björnの寂しげな美しさに、母性本能をちょっぴり刺激されるくらいのものだけれど、Gustavおぢさまの魂が完全にTadzioの虜になってしまったのが分かる。原作者Thomas Mannが男色家だったことから、この作品も同性愛ものとして捉えられることが多いけれど、わたし的には美しいものへの憧れは、同性にも異性にも生じる全くノーマルな感情だと思う。許容範囲とか限度というものはあるけれど。

私が子どもの頃は今ほど世界各地の情報が簡単に入手できなかったから、映像から伝わる水に囲まれたヴェネチアやリド島の異国情緒豊かな街並みに心底感動した。よくよく見ればコレラが蔓延してかび臭く薄汚い路地裏なのに、それさえも私の心を捉えたのだ。白い消毒液をバケツでまくシーンに至っては、「あらまぁ、イタリアって国は牛乳が余ると、街に捨てるのねぇ」なんてお気楽なことを思っていた(>_<;) アホッ★



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官能的なMahlerのメロディーで始まるオープニングにて、私の心はVisconti監督の美の罠(魔力)にかかり金縛りにあう。何よりも心打たれたのは、高雅で少々物悲しくノスタルジックなMahlerの交響曲5番第4楽章Adagiettoをバックに描かれた、優雅で偽善的な20世紀初頭の社交界(それは慇懃無礼なホテルの総支配人に集約される)や、その階級に属する家族の姿であった。ゆったりとした雅やかな物腰。レディーファースト。手入れの行き届いた調度品。古き良き時代というのは、あの頃のことを指すのだろう。長いドレスをまとい大きな帽子を被っても、汗ひとつ流さず(実際には流れているのだろうけれど、そんな気配すら見せない)、涼しげな顔でビーチのデッキに腰掛ける。なのに私ときたら、蒸し暑い日には首にタオルを巻き、Tシャツと短パン姿で団扇を仰いでいる(滝汗) 一家の教育係が絶えず気を配り、きちんと躾がなされた子どもたちは、礼儀正しく言いつけを忠実に守る。まるで絵に描いたような、神に望まれたような一家ではありませんか?(写真はSilvana Manganoに演技指導中の監督)



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Tadzio少年を中心とした完璧なまでの美を前にして、美少年に魂を奪われた恍惚と苦悩、そして次第に老いの孤独や不吉な死の予感に追い詰められてゆくGustavを、Dirk Bogardeは見事に演じた。神経質で几帳面で癇癪もちな彼はいつも、そわそわ、きょろきょろ、うわの空。心ここにあらず。少年への気持ちに気付いていながら、それを自分の中でうまく消化できない。しかし美とは何であるかを常に意識せざるをえなかった芸術家としての性癖が、この街を静かに葬り去ろうとするコレラ(それは美の対極にあるもの)の出現によって、少しずつ歪み狂い始めるのである。美少年の後ろ姿を眺めつつ、奇妙な若返りの化粧を施したままコレラに罹って死んでいくGustavを、醜悪で哀れと思うか?幸せな最期と思うか?それは観る人次第。



Björn Andresenは1971年の8月9日から9日間、映画と念願だったレコードのキャンペーンで日本に来日してるんですね~。しかも明治チョコレートのCMにも出演したんですってね、きゃーきゃー。美少年だった彼はいったいどんな大人になったのでしょう?現在の彼を見たい?見たいでしょ?
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あ、これがが現在のボクです。。。
1954年生まれだから今年55歳。

製作国:Italy
初公開年:1971年
監督:Luchino Visconti
原作:Thomas Mann
キャスト:Dirk Bogarde, Romolo Valli, Mark Burns, Nora Ricci, Marisa Berenson, Carole André, Björn Andrésen, Silvana Mangano ...


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by amore_spacey | 2009-08-29 17:16 | - Italian film | Comments(2)
Commented by ymomen at 2009-09-02 04:49
おひさしぶりです

この映画、少女のころに観ました
美しかったタッジオ少年がどうおとなになったか、とーっても興味がありました
ほーっ・・・・・
Commented by amore_spacey at 2009-09-03 22:52
☆ もめんさんへ。
こちらこそご無沙汰しております(*^^*)
彼はもともと組んでいたバンド活動をやりたかったらしく、役者の道は
選ばなかったのですが、家庭を持ったあとも不幸があったりして…
そんな人生の影がTadzio少年の中にも見えるような、と今だから言える
台詞ですね~ 汗
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