L'innocente (イノセント)

私のお気に入り度 ★★★★☆(80点)

ネタばれあり。

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自らは浮気三昧でありながらTullio Hermil伯爵(Giancarlo Giannini)は、妻のGiuliana(Laura Antonelli)には不変の貞淑と情愛を期待する身勝手な男。そんな彼は眩惑的な未亡人の公爵夫人Teresa Raffo(Jennifer O'Neill)に夢中だった。互いの愛は冷めかけていたが、新婚時代の思い出の詰まった別邸を2人で訪れたことで、夫婦の愛を取り戻したかにみえた。

ほどなくしてGiulianaが子どもを宿す。しかし身に覚えのないTullioは、妻と新進作家Filippo d'Arborio(Marc Porel)の密通を確信する。相続人ができたと嬉ぶ母(Rina Morelli)や弟Federico(Didier Haudepin)を傍らに、憎悪&憤りと苦悩を深めるTullioは、生まれてきた不義の子を寒いテラスに置き去りにして死なせてしまう。絶望したGiulianaは全てを捨てて僧院に入り、愛人であったTeresaからは彼への愛は冷めたと告げられる。思いがけない展開にTullioは、自分が全てに敗れたことを悟り、拳銃の引き金を引くのだった。Gabriele D'Annunzioの『罪なき者』を映画化したVisconti監督の遺作。



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20世紀初頭のイタリア貴族社会とは、こういうものだったのか。豪華絢爛で華麗な世界の裏に、虚飾・衰退・頽廃、放蕩・情欲・裏切りが蠢く。その中で神をも恐れず放蕩と情欲の限りを尽くすTullioが犯した「赤子殺し」は、神から授かった命を殺める=神への冒涜であり、その代償に自らの命を断つという処罰が下されるのだ。人間の良識を信じた監督らしい幕切れを用意したものである。貴族社会の内情を掘り下げて描くということは、監督の身を削るということに等しい。様々な作品の中で貴族社会を描き続けた監督の胸の内には、近い将来衰退し廃れて行くであろうこの世界への哀愁と愛おしさが去来していたのではないか。

原作ではTullioの独白形式で物語が進むため、妻Giulianaの夫への感情や愛人Teresaの存在などは、Tullioの目を通した範囲に留めら輪郭がぼんやりしている。作家Filippoや弟Federicoや母などの脇役にも、殆ど言及していない。しかし映画ではそれぞれの人物描写や心理描写が掘り下げられ、生き生きとして奥行きのあるドラマを創りあげることに成功している。



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Giancarlo Gianniniが若いっ!30代半ばと言ったところでしょうか?顔が頭が身体のラインがシャープ過ぎなのだわぁ。『007 カジノ・ロワイヤル』『007 慰めの報酬』を見ると、どこのオッサン?アナタ善人なの?悪人なの?というくらい全体に崩れた印象があるのだけれど、歳を重ねたGiancarloっていいわぁ。爬虫類のような鷹のような哀愁を帯びた瞳は健在で嬉しい。何よりも艶のある声がいい。あの声で囁かれたら、あは~~ん♪ でもあんな身勝手な男はご免なのだ。Laura Antonelliもこの時30代半ば、女盛りの官能的な美しさに、同性の私もクラクラしました。愚直なまでに従順な女をうまく演じてました。彼女は様々な作品でヴィーナスのような美しい肢体を惜しげもなく見せてくれましたが、1992年の『Malizia 2000』を最後に映画界から引退。その後は麻薬絡みの事件で、変わり果てた彼女の写真が雑誌に載りました。一世を風靡した女優の栄光と衰退は、ファンにとって寂しく残念なことでしょう。

いや、しかし、あの飾りたてた屋敷には参りました。天井からぶら下がるシャンデリア・壁・大きな扉・食器棚・額縁・暖炉・テーブルランプ・ソファー・クッション…に施されたバロック調というのか、ゴテゴテ&キンキラキンの装飾は、ったく悪趣味ですねー。花瓶に生けた花なんか、クリスマスツリーのように背が高いし、女衆の被り物ときたら飾り立てたクジャクのようではありませんか。博物館として訪れるには目の保養になり、半日貴婦人体験は女心をくすぐって楽しいが、毎日暮すには窒息しそうで息苦しく落ち着かない。掃除も大変だー!というのは、庶民のひがみデス。



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三島由紀夫が生田長江訳の『死の勝利』を下敷きに『岬にての物語』(1946年)を書いたことはよく知られている。三島は池田弘太郎と共訳で『聖セバスチァンの殉教』を美術出版社で出した。これら作品上の関係のみでなく、楯の会の制服や行動にダンヌンツィオの影響を見る者は数多い。特に、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地のバルコニーから三島がおこなったアジ演説は、フィウーメ占拠時のダンヌンツィオが取った行動の拙劣な模倣であるとたびたび指摘されている。1989年に筒井康隆が書いた『ダンヌンツィオに夢中』(中公文庫で再刊)は、これらの指摘に基づいている。(Wikipediaより引用)

製作国:Italy, France
初公開年:1976年
監督:Luchino Visconti
原作:Gabriele D'Annunzio
キャスト:Giancarlo Giannini, Laura Antonelli, Jennifer O'Neill, Rina Morelli, Massimo Girotti, Didier Haudepin, Philippe Hersent ...


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by amore_spacey | 2009-09-04 21:09 | - Italian film | Comments(2)
Commented by マダムS at 2009-09-07 21:27 x
おおっ!精力的に記事アップされてますねー!
しかも、どれも内容の濃いボリュームある記事でいらっしゃる!!素晴らしいです!!

ヴィスコンティの描く世界は 私のような超のつくド庶民にはあまーりにも別世界過ぎて(涙)、どの登場人物にも共感出来ないんですが(爆)、この作品もその典型でした。 でも、あもーれさんがおっしゃるように、こうして本物の貴族である監督が映像にしっかりと残してくれた”遺産”と思えば良いのだと思えてきました。うーむ、深いですよね~。

Giancarlo Gianniniは 私は「ハンニバル」の刑事がお初で、お世辞にも素敵とは言い難かったので(殴)、まさか若い時はこんな伊達男とは!びっくりしたんですぅ~ 
やっぱりその時代で一番の絶世の美男を使っているんですね~ ふむ。
これからも あもーれさんのクラシック作品解説を楽しみにしておりまーす♪
Commented by amore_spacey at 2009-09-09 03:18
☆ マダムSさんへ。
ちょっと力を入れて書いてるもので、何だかどれも長いですね。滝汗

日本では、ほら、ヴィスコンティ監督の作品やらオペラを観るのが
ステータスというのかインテリ階級のようにみなされるところがあります
よね。何ででしょう?私もマダムSさんと同じ!貴族社会を描いた彼の作品には
感情移入ができないんです。逆に庶民の生活や下町の暮らしを生き生き描いた
『若者のすべて』や『ベリッシマ』は、素朴で分かりやすくて好きなんです。

『ハンニバル』は怖くて観てないのですが、話によるとGiancarloは悲惨な
最期を遂げるんだそうですね、ヒーッ☆ 『007 慰めの報酬』では、街角の
ゴミ箱に投げ捨てられちゃうし。若い頃もそれなりに好きですが、40~50代の
男盛りの頃が最高にいいですね。
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