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コズモナウタ - 宇宙飛行士 (CosmonautA)

私のお気に入り度 ★★★★☆(80点)

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【あらすじ】  1957~63年のローマ。風変わりでてんかんの持病のあるArturo(Pietro Del Giudice)と意思表示がはっきりして活発なLuciana(Marianna Raschillà)は共産主義を信奉し、コズモナウタ(ソ連の宇宙飛行士)に憧れる仲の良い兄妹だった。だが思春期真っ只中で異性の目が気になるLucianaは、Arturoから少しずつ遠ざかっていく。2009年ヴェネチア国際映画祭のControcampo Italiano部門に出品。



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この作品の背景となっている1950年代後半~60年代前半は、宇宙開発の分野でソビエト連邦がアメリカを押さえて優位に立った時期と重なり、その影響を受けて?政治経済でも共産主義に傾倒するのがイケてる時代であったらしい。世界初の有人宇宙飛行に成功し「地球は青かった」という名言を残したGagarinや、世界初の女性宇宙飛行士Tereshkovaを生み出したのはソビエト連邦であった。冷戦中ソ連が一歩抜きん出るという稀有な時代だったからこそ、たった9歳の少女Lucianaがコムニオーネの当日セレモニーの途中で教会を飛び出し、「私は共産主義者なんだから!」と宣言するシーンにも説得力がある。そのシーンにぷぷっと笑ったけれど、大人になっても政治経済に疎くて無関心な自分はどうなのよ?と自問。



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母と再婚した継父(Sergio Rubini)とはことごとくすれ違い、何につけても鬱陶しい存在で(娘の彼氏をつかまえて、あのデブが?って呼ぶのには参ったな^^;)父親として受け入れられない。太っちょの兄貴はやることなすことダサくて、一緒にいると恥ずかしい。だからLucianaは家庭や学校よりも、共産党支部の事務所での活動に心の拠り所を求めた。そこで生まれて初めての恋が芽生え、またそこで裏切りと失恋に深く傷ついた。自分の心に誠実すぎるがゆえに彼女は苦しむ。家族にも友だちにも初恋の青年にも暴言を吐いて、ほどほどの均衡を保っていた関係(家族)やせっかく築いた繋がり(恋)をぶち壊しにしてしまう。自分の気持ちが暴走して止められないのだ。思春期は純粋だけど、それだけに残酷でもあるね。そんな彼女の心の揺れ動きと、当時の貴重な映像やBGMの'Cuore matto'が、絶妙にシンクロしていて素晴らしい。思春期の嵐を一つ潜り抜けた時、Lucianaは人としてほんの少し成長し、心の平和に一歩近づけた。青春時代はとうの昔に過ぎてしまったけれど、只今思秋期にさしかかりわけもなく気持ちがざわめく私にとって、この作品は一服の清涼剤となりました。

製作国:Italy
初公開年:2009年
監督:Susanna Nicchiarelli
キャスト:Sergio Rubini, Claudia Pandolfi, Marianna Raschillà, Angelo Orlando, Susanna Nicchiarelli, Pietro Del Giudice ...


by amore_spacey | 2010-05-03 01:27 | - Italian film | Comments(2)
Commented by kaioko at 2010-05-08 21:51
今年のイタリア映画祭で公開されて観ることができました。こういう作品が字幕つきで日本で公開されるなんて嬉しい限りです。
本当に一服の清涼剤というのにふさわしい作品でした。
共産主義だから聖体拝領を拒否するという冒頭の場面に私はピンとこれなかったんですけど、あんな小さい子がなにかイデオロギーを持っているというところが面白かったです。
“共産主義”=イケてるだったらしい、と聞いて納得です。
強がりなルチャーナがお母さんに泣きつく場面、それを優しく受け止める母の演技にもほろり。音楽も良かったです。
Commented by amore_spacey at 2010-05-10 03:21
☆ Kaiokoさんへ。
イタリア映画祭の公開作品リストをみました。喜怒哀楽とりまぜたよい作品がチョイスされていたように思いますョ。って全部観てないんだけど。イデオロギーにもファッションなどの流行のように周期があって、夫が中学~高校生の頃この作品の時代のように共産主義がイケてたらしく、彼も集会にいったりビラ配りしたりして「楽しんだ」そうです。みんなでわいわいやるのがいいのかなー?そうそう、あのLucianaとマンマのシーンも心に残りましたね。作品にほっと救われます。
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