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ただ、ひとりの父親 (Solo un padre)

私のお気に入り度 ★★★★☆(82点)

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【あらすじ】 30歳になるCarlo(Luca Argentero)は、生後10ヶ月の娘Sofiaを両親にみてもらいながら、若くて眉目秀麗で優秀な皮膚科医として仕事も家庭も、何もかもうまくいっているようにみえた。しかし彼の脳裏には過去の辛い思い出が刻み込まれ、そのフラッシュバックに苦しんでいた。
 あるとき両親がヴァカンスに出かけたため、Carloは娘の世話をすることになるが、なかなか思うようにいかず戸惑うばかり。そんなある日ジョギングの途中で、トリノの大学に研究のためやって来たフランス人Camilleと出会う。何度か言葉を交わすうちに彼女に惹かれ、Camilleと娘の3人で過ごす中、Carloは失われた感情を徐々に取り戻していくのだった。


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イタリア映画を観ていると、舞台になった街の持つ土地柄や雰囲気が作品に及ぼす影響というのは、本当に大きいなと思う。統一国家とはいえ、イタリアは地方自治の寄り合い所帯なので、街ごとに条例や衣食住の文化が異なる。従って人々の価値観や人生観もいろいろ。またイタリア人は十把一絡げにイタリア人と呼ばれるのを嫌う。「僕はトリノ人」「私はミラノ人」「あの人はシチリア人」…と、出身地を明確にする。悲しいまでの郷土愛なのだ。

この作品の舞台になったトリノは、北イタリアにあるピエモンテ州の州都。私が暮らすエミリア・ロマーニャ州の人々は、トリノ人のことを「頑固でそっけなく、何を考えているのかよく分からない」という。自分たちのことは、「田舎っぺだけど働き者で人が良い」あっけらかんと笑う。トリノの閉鎖的な土地柄や体質が、この作品に少なからず影響を与えているのは言うまでもない。因みにCarloを演じたLuca Argenteroもトリノ出身。

Lucaは、Maxのカレンダー(ナイスバディでセクシーな男優がセレクトされる)に掲載されるだけの、軽い人かと思っていたら、細やかな感情の濃淡を表出できる、とても頼もしい若手役者だ。しわくちゃになった笑顔が、堺雅人くんにそっくり。


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Carloを取り囲む世界は、妻がいないことを除けば、ほとんど完璧といってよいのに、曰くありげな翳が始終つきまとっている。軽いジョークで同僚や友人たちを笑わせたり、同僚の紹介で知り合った女性宅で、彼女が溺愛するネコとコントのような展開があっても、彼は心の片隅で1人苦しんでいる。誰にも打ち明けられない、助けを求められない。優柔不断で、メニューを決めるのにも時間がかかる。そんな頼りない一面を持つCarloに寄り添ってくれるのは、両親や職場の同僚や友人たち。そして苦学生なのに天真爛漫で無邪気な笑顔が素敵なCamilleや生後10ヶ月になる娘Sofiaのお陰で、彼は初めて人生と向き合う覚悟を決めるのだ。どんなに暗くて長い冬のあとにも、春は必ず来るのさ。

Giorgio(Fabio Troiano)のように、お調子者に徹してその場を盛り上げてくれるんだけど、実はとても繊細な心の持ち主の人って、実社会にもいるいる。
 
製作国:Italy
初公開年:2008年
監督:Luca Lucini
原作:Nick Earls "Perfect skin"
キャスト:Luca Argentero, Diane Fleri, Fabio Troiano, Anna Foglietta, Sara D'Amario, Claudia Pandolfi ...


by amore_spacey | 2013-05-30 00:05 | - Italian film | Comments(2)
Commented by turezure-italia at 2013-05-30 02:35
トリノ人ってほとんど接したことがないので、どういう人たちか実はよく知らないです。

やっぱりガサツなローマ人とは違うんですね。私なんか今日ロマーナの婆さんに地下鉄に乗るとき背中どつかれましたよ。人からあんなふうにどつかれたの初めて。何て礼儀知らずな!

エミリア・ロマーニャの人たちのおおらかなところ、いいですね!

こう考えると、イタリア人と一口に言っても色々違いますね。複雑な国だ…
Commented by amore_spacey at 2013-05-31 00:39
☆ 徒然さんへ。
トリノ及びもっとフランス国境付近にいる友人たちを見ていると、確かに閉鎖的で頑固かな?と思ったりします。話し方もそっけないし。あれはトリノ方言のアクセントのせいでもあるのかな?Romanoは気さくで陽気で楽しそうなイメージがあります。ど突かれるのは嫌ですね。エミリア人は本当に田舎っぺなんです。うちの夫のような、ずんぐりむっくりの体型が多いし^^
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