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綱渡り→幸せのバランス (Gli equilibristi)

私のお気に入り度 ★★★★☆(85点)

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【あらすじ】 一つの過ちをきっかけに、順調な人生があっという間に崩壊していく一人の男とその家族を通して、現代社会に生きる人々の不安定さが鮮明に浮かび上がるドラマ。40歳のGiulio(Valerio Mastandrea)は、妻Elena(Barbora Bobulova)と二人の子どもCamiilla(Rosabell Laurenti Sellers)・Luca(Lupo De Matteo)と幸せな家庭を築いているかのように見えた。だが職場の同僚と不倫をし、それが妻にばれてしまう。Giulioは家を出るが、仮住まい先はなかなか見つからず、状況は深刻になっていく。(作品の詳細はこちら


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昔からイタリアの経済は、「倒れそうで倒れないピサの斜塔」に例えられることが多い。ユーロに切り替わった2002年以降、公的債務・税金・物価・光熱費などは増加の一途をたどるのに、収入は頭打ち。その結果、中小企業の倒産や失業者や若者の就職難民が増える一方である。比較的景気が良かった頃に、水面下で増殖していた大穴を、今になって国民が背負う破目になったのだ。

食費・光熱費・教育費・ローン・雑費を順に払っていくと、月末前に赤字になる家庭がある。2~3ヶ月もヴァカンスに出かけていた時代は、はるか昔のことで、この不況下、1ヶ月出かけられる人はラッキーなのだ。こんな社会状況にあるので、「離婚は金持ちだけができること」と言われるようになってきた。離婚=2つの家庭(自分と元伴侶の生活)を維持することを意味するから。家庭内別居や離婚をしている仮面夫婦が、私のまわりにいる。これなら少なくとも、住居費と光熱費は節約できる。しかし冷え切った男女が一つ屋根の下に暮らすというのは、どんなものなんだろう?そこに子どもたちがいたら?彼らへの影響は、計り知れないに違いない。


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イタリア国内に、Giulioのような男がたくさんいるはずだ。離婚後も元妻は、以前の生活レベルを下げたくない。だから弁護士を通して、双方で決めた生活費や養育費を文書に残し、元夫の生活状況がどうであろうと、規定額を請求し続ける。Giulioの悲劇は、元家族とはいえ、彼らに救いの合図を出すことができず、何とかやりくりして支払おうとして、限界をこえてしまったところにある。鉛のように重くのしかかってくる現実や元家族。まさに命がけで綱渡りのような生活をしながら、元家族に生活費や養育費を払い続ける。そこまで男のメンツに拘るのか?自分の命が危機にさらされたこの期に及んで、メンツも何もないだろうに。Giulioが不倫さえしなければ、家族4人でささやかながらも安定した暮らしができたのに。と言うのは簡単か。彼がどんどん痩せ細り、精神的に崩壊していく過程は、背筋が凍りつくように怖かった。本当の恐怖は、Giulioの成れの果てが、明日の私やあなたかもしれない、という現実でしょう。

パパのことを気にかけ心配する娘や息子たちが、不憫でならない。早く彼らの声がGiulioに届きますように、と願わずにはいられなかった。因みにGiulioの息子Lucaを演じたのは、監督の実の息子なんですね。

製作国:Italy
初公開年:2012年
監督:Ivano De Matteo
キャスト:Valerio Mastandrea, Barbora Bobulova, Rosabell Laurenti Sellers, Antonella Attili, Damir Todorovic, Lupo De Matteo ...


by amore_spacey | 2013-05-31 00:14 | - Italian film | Comments(0)
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