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アメリカン・ビューティー ② (American Beauty)

私のお気に入り度 ★★★★★(92点)

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アメリカのどこにでもある中産階級の一家族を通して、この国が直面している社会問題を描き出していると言われるこの作品。社会問題とは、主婦や女性の地位向上による家庭内や社内の異変・思春期の子どもたちと親との関係・ドラッグ・同性愛・家庭内での父親の居場所・浮気や不倫…。これは今や世界が抱える共通の問題ではないか?さらにイタリアでは、高年齢者増加・出生率低下・出産の低年齢化・シングルマザー増加・移民問題・南北経済較差・アルコール依存症・心の病気…、問題を挙げればきりがありません。


アメリカン・ビューティー ② (American Beauty)_e0059574_22374496.jpgレスターの妻キャロリン。
不動産ブローカーとして精力的に仕事をこなす、と書けばバリバリのキャリアウーマンを想像する(確かにそんな一面もある)が、心のゆとりや柔らかな雰囲気に欠ける女性です。朝から晩までキリキリ舞い。そんな彼女が女神のような表情になるのは、庭のガーデニング。丹精込めて育てたバラを見つめる時のあの恍惚なる表情は、レスターとの会話では絶対におめにかかれない。少々ヒステリックな彼女が、ラストシーンでクローゼットの服を抱きしめながら崩れ落ちていくシーンは、さすがに悲壮感が漂っていたけれど、彼女は一体何を悲しんだのでしょう?自分の夢が叶えられなかった絶望感?! アネット・ベニング、素晴らしい演技でした。


アメリカン・ビューティー ② (American Beauty)_e0059574_22382083.jpgキャロリンの愛人ケーン。
不動産王として君臨する彼から出る台詞って、巷でよく聞きませんかぁ?「妻とはダメになった」「離婚訴訟に入っている」云々…。こういう自分じゃちょっとイイ男と思っている、ゴリラ顔でゲジゲジ眉男のたわごとなんて信じちゃいけません。


アメリカン・ビューティー ② (American Beauty)_e0059574_22384868.jpgバーナム一家の隣に引っ越してきた一家の主フランク大佐。
まさしく軍隊一家で、厳しく息苦しい。自分自身は同性愛者だなんて気づいていなかったのが悲劇の元凶です。色々な状況の中で、とうとうカミングアウトしていく。雨の中、レスターがトレーニングするガレージの前に佇む大佐の、あの心細さといったら。クリス・クーパー殿、あなたも摩訶不思議な役者さんです。うまいっ!


アメリカン・ビューティー ② (American Beauty)_e0059574_22402752.jpgフランク大佐の妻バーバラ。
あの夫にしてこの妻あり。長らく心の病気を患い、夫や息子の一挙一動におののきながら暮らしている、生命線の細い女性。自分の世界を守ることで精一杯なのですね。もしかすると自分の世界はもう崩れてしまって、守るべきものがない。行き場を失った子どものような心境で生きている女性なのかもしれません。


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左から順に①フランク大佐の一人息子リッキー ②バーナム家の一人娘ジェーン ③ジェーンの女ともだちアンジェラ。

①軍隊生活のような暮らしの中で、表向きは優等生のリッキー、しかし陰でドラッグを自分でやり、またそれを売っている。死んだ鳩や風に舞う白いプラスチックの買い物袋をビデオにおさめる彼の意図するところは、普通の視点では見えないものが見えてくるということなのか?

②ごく普通のどこにでもいるティーンエイジャーのジェーン。思春期の女の子どうし(ジェーンとアンジェラ)の関係から、思春期の男の子と女の子(リッキーとジェーン)の関係に移行する微妙な心の変化を、ジェーンがとてもうまく演じてくれた。彼女の巨乳には私も目が点に・・・(羨)

③レスターのプラトニックラブの対象になったアンジェラ。名前の通りウブなティーンエイジャーだったのです。レスターの目には彼女がどう映ったのか?この誤解がよくも悪くもこの作品の後半部分を盛り立ててくれることになるのですが。アンジェラの目には大人と子どもが共存した、とても妖艶な光がありました。

トーマス・ニューマンの不協和音ジャズメロディーが、時には切なく哀しく内省させ、時には嘲笑を誘うリズムとなって、この作品に花を添えていました。ケヴィ主演「ペイフォワード」でも彼が音楽担当でした♪

【関連記事】アメリカン・ビューティー ①
by amore_spacey | 2005-12-18 23:16 | ┗ Kevin Spacey | Comments(4)
Commented by がるにーろ at 2005-12-20 00:43 x
この作品の登場人物は、
本当に風変わりな人が多いですよね。
とくに、3人のティーンエイジャーの演技はすばらしかったです。

リッキー君、サイコなイメージが強かったですが、案外ハンサムなんですよね。
ジェーンのヌードは、私も手術必要ないやん!って思いました。
アンジェラも、背伸びした女の子を上手に演じてました。

リッキーパパのクリス・クーパー、私はこの作品ではじめて出会った役者さんでしたが、超個性派ですね。
車庫でのレスターとのやりとりは大爆笑でした。

ケーンさんは、眉毛がすごすぎる。それだけです。
Commented by amore_spacey at 2005-12-20 01:41
■がるにーろさんへ。
えっと?ジェーンのヌードの手術って???(● _ ●)?
リッキーくんはあちこちで見かけますが、薄幸な人生の人物を演じていることが多いですね。そそ、よ~く見るとイケメンっぽい(^^)
アンジェラも初めのほうと終わりで随分表情に違いがありましたよね。
この若い3人組、すごいぞー!!

タイトルを忘れてしまったのですが、コメディに出演のクリス・クーパー(ちょっととぼけた警官役)も、すごくよかった。真面目になればなるほど可笑しい人です(爆)
ケーンさんは、「オレンジ・カウンティ」という米TV連ドラで、Dr.の役柄で出ています。ここでも「俺はカッチョいいんだ~」って雰囲気がむんむん漂ってますねぇ、ぷぷっ。

Commented by Poughkeepsie at 2009-12-10 22:10 x
はじめまして、「ぽきぷし」といいます。
仰るとおり、C・クーパーや三人のティーンエージャーは、この映画のキャスティングの非凡さを表していると思います。

いまでも同じような光景を目にしてふとこの映画を思いだすのが、印象的なBGMにのって、空き地でプラスティックバッグがつむじ風に舞うところ。

ハリウッド商業的に派手な状況設定ですが、その実妙に心に引っかかる映画です。
Commented by amore_spacey at 2009-12-11 00:49
☆ ぽきぷしさんへ。
いらっしゃいませ~♪&コメントをありがとうございます。
私も白い袋が音もなく風に舞うあのシーンを覚えていますョ。オスカーを意識した作品とは思えなかったのですが、当時のアメリカ社会の縮図のようなものが、この作品の中にあったのが、人々の心に触れたのでしょうか?
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