ハドソン川の奇跡 (Sully)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 2009年1月15日、極寒のニューヨーク。マンハッタン上空850メートルで、突如全エンジンが完全停止し、制御不能となった旅客機が高速で墜落を始めた。Sullenberger機長(Tom Hanks)の必至の操縦により、70トンの機体は目の前を流れるハドソン川に着水。乗客乗員155名全員無事という奇跡の生還を果たした。着水後も、浸水する機内から乗客の避難を指揮した機長は、国民的英雄として称賛を浴びる。だがその裏で、彼の判断を巡って、国家運輸安全委員会の厳しい追及が行われていた。(作品の詳細はこちら


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知らなかった、あの事故のあと、こんなことがあったなんて。あの悲劇を最小限に食い止めることが出来たのは、勇気ある機長の迅速な判断や責任感のお陰ではなかったのか。安全委員会にしてみれば、機長は自分勝手なことをした、組織を乱す迷惑な人。管制塔の指示を無視し、勝手に航路を変えた。マンハッタンのビルの谷間を飛ぶとは、テロ機と間違われるような行為、ましてやハドソン川に不時着させるなんて、無謀で言語道断。釈明の余地なし、という訳だ。

再現された当時の状況をみると、事故機はさまざまな偶然や幸運に恵まれていたのも確かだ。機長の英断、熟練した機長の操縦技術そして着水成功、民間船による素早い救出、乗客乗員の一致団結など、1つでも欠けていたら、状況がさらに悪化していたであろうことは、容易に想像できる。安全委員会が主張した「引き返す」という選択は、あり得なかった。

その安全委員会は、「どうしてマニュアル通りにやらなかったのだ?」「なぜ管制塔の指示に従わなかったのだ?」と感情的になる。また作品を観ている私たちは、機長の口から出てくる35秒の猶予とか、208秒の持ち時間というのが、一体どんな意味を持つ数字なのか、具体的によく分からない。しかしその後、畳み掛けるように迫る幾つものシミュレーションによって、あの非常事態の中で機長が何を成し遂げたのか、安全委員会や私たちは知ることになるのだ。いやはや、あの緊迫感といったらなかった。


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Sullenberger機長(↑本人)は、危機的な状況下においても公聴会の席でも、努めて平常心で、なすべきことを淡々とやっていく。国民から英雄扱いされても、当たり前のことをしたまでと言う、それどころか家族や同僚や乗客への配慮を忘れない。パイロットという仕事に誇りを持つ姿は、清々しく高潔だった。

こういった役どころをTom Hanksにやらせると、実に上手い。説得力がある。軽いコメディ映画にも出て欲しいが、ダヴィンチシリーズの安っぽい学者などではなく、こういった社会派ドラマでビシッと決めて欲しい。演出も演技も過不足なし、その上これだけ濃い内容をビシッと90分におさめたClint Eastwood監督の、卓越した手腕にも唸る。そうは言っても、1年に1度は飛行機に乗る身にとって、この手の作品はちょっとねェ。フライト前に観ちゃいけません。


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by amore_spacey | 2016-12-25 03:12 | - Other film | Comments(2)
Commented by petapeta_adeliae at 2016-12-26 12:44
結果オーライかと思っていたら安全委員会に諮られていたんですね。
管制塔の指示を守って死亡者を出すのどちらが良いのか?
ひょっとして形だけだったりして!?
Commented by amore_spacey at 2017-01-02 03:34
☆ ソーニャさんへ。
明けましておめでとうございます。コメント返しが遅くなってゴメンなさい。このニュースはイタリアでも「ヒーロー機長」として大きく取り上げられたので、よく覚えているのですが、安全委員会が絡んだ話は全く知りませんでした。マニュアルを尊重しつつ、状況に応じた判断を下すってのは、言うのは簡単、実行するのは神業に近いと思います。
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