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私は彼女をよく知っていた (Io la conoscevo bene)

ネタバレあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (75点)

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【あらすじ】 女優になることを夢見て、トスカーナの農家からローマに出てきたAdriana(Stefania Sandrelli)は、美容サロンのマニキュア師や映画館内の案内嬢や安っぽいファッションショーのモデルなどを経て、やっとエキストラの役を手にした。花形役者の受賞パーティーに出席した彼女は、大物役者らと顔見知りになり、そこでCM撮影まですることになる。しかし加工されて流されたCMは、Adrianaにとって屈辱的なものだった。(作品の詳細はこちら


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Adrianaはトスカーナの農家で育った、どこにでもいるような素朴な女の子で、負傷したボクサーや自動車修理工との淡く優しい関係を見ていると、打算のない純粋な心をもっている。彼らのような人々に囲まれていたなら、穏やかな日々を送ることもできたはず。しかし彼女はそこからするりと抜け、成り行きにまかせて、華やかなものや楽しいものについて行った。「楽しく過ごせるなら、それでいいの。」 女優志願なのに、そのための努力というものは全くしない。

若者の間で「しらけ」という言葉が、日本でも流行していた。しらけ世代(1950年~1960年代前半生まれの世代)や、「無気力・無関心・無責任」という三無主義の風潮もあった。世界的な現象だったのかもね。その一方で、権力や富を手にするためなら、どんなに汚いこともやる集団がいる。政財界や芸能界はその最たるもので、虚栄と空虚の巣窟だ。胡散臭く、醜悪で物悲しい。


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この作品は、何の説明も脈絡もないまま、淡々と新しいエピソードに移っていく。さっきまでビーチに寝そべっていたAdrianaが、美容院に駆け込んでマダムの爪を磨いている。しかし次の瞬間には映画館の案内嬢をやり、画面が変わったお次は、チャラ男(Jean-Claude Brialy)と遊びまくっている。かと思えば、ボクシングの合間のファッションショーでモデルをつとめたり、年上の作家(Joachim Fuchsberger)と仲良くなったり、警察(Turi Ferro)で事情聴取されたり…。こうして成り行き任せに、ふわふわと流されていくAdrianaだったが…


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ショッキングなラストシーンに、凍り付いた。Adrianaはちょっと散歩にでも行くようなかんじで、高いマンションの窓からふわっと身を投げる。しかし次の瞬間には、冒頭にも使われた楽しいテーマ曲が流れ、「ちょっと待ってよ。たった今、大変なことが起きたのよ!」という観客の気持ちに、少しも寄り添ってはくれない。この突き放した無関心が、人の心をじわじわと蝕んでいくのだ。

自動車修理工を演じたFranco Neroが、めちゃくちゃ若くてイケメン。少年の面影すら残っていて、可愛い。Nino Manfredi、Enrico Maria Salerno、Ugo Tognazzi(タップダンスは見ごたえあり)、Franco Fabriziなど、脇を固める名優も、超豪華な顔ぶれだ。


by amore_spacey | 2017-07-22 00:44 | - Italian film | Comments(0)
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