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ヴェニスで恋して (Pane e tulipani) 

私のお気に入り度 ★★★★☆(85点)

ネタばれあり。

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家族旅行の帰り道、サービスエリアで長距離バスに置いてきぼりを食った主婦Rosalba(Licia Maglietta)は、ヒッチハイクをしながら南イタリアの自宅に帰ろうと試みるが、ふっと気持ちが変わり、昔から憧れていたヴェネチアに立ち寄ってみることにする。平凡な主婦が旅行者としてではなく、ヴェネチアに暮らす一員となり、この街の様々な人や事件を通して自分を見つめ直していく。


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この作品にはリアルト橋もカーニヴァルもサンマルコ広場もフェニーチェ劇場も出てこない。ヴェネチアの名もない路地裏が舞台となっている。こんなにほのぼのとした気持ちになり最後まで楽しめたのは、他でもないRosalbaの笑顔と根っからの楽観主義と人懐こさと眠っていた好奇心、そして彼女が持つ温かい人柄によるものが大きい。彼女を取り巻く一癖も二癖もある人々が、これまた作品の魅力を倍増させているのだ。


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たまたま夕食をとったレストランのウェイターFernando(Bruno Ganz)に頼み込んで、彼のアパートに泊めてもらう。2人はあくまでも1つ屋根の隣人関係であるかのように淡々と描かれているが、Fernandoの優しさや人恋しさがRosalbaへの愛情に変わりつつある様子を見ていると、私たちの心の奥底に眠っている優しい気持ちがそっと起こされていくようで心地良い。

ふたりを結ぶ「パンと花と置手紙」は、どんな美しい景色にも優る素敵なシチュエーションである。最後に彼女がテーブルの上に残していったチューリップ。Rosalbaが去ってしまい落ち込むFernandoは、すっかり枯れ果て落ちたチューリップの花びらをガラスの皿に集めて頬杖をついている。最後の1枚が散りゆくのを見届けると、迷いがふっきれ新しい世界へ踏み出す。


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日常を離れて美味しいものを食べ知らない街を歩き綺麗な景色や絵を見ることで、自分を取り戻すことの出来る人もいれば、人との関わり合いの中で、自分の中に眠っていたものだけでなく、他の人々の中に埋もれていた純粋なものをも呼び覚ます、そんな人もいる。Rosalbaは後者だろう。

その彼女もまた夫と2人の息子の待ついつもの日常に戻っていくのだけれど、ヴェネチアで得た心の財産を糧に、新しい一歩を踏み出していく。『ペイ・フォワード』に出てきた幸福の鼠算とはやや違うけれど、Rosalbaは知らないうちに関わった人に幸せを分け与えている。幸せのオーラをそこはかとなく漂わせているような女性って素敵ですね。

製作国:Italy
製作年:2000年
監督:Silvio Soldini
撮影:Luca Bigazzi
キャスト:Licia Maglietta, Bruno Ganz, Giuseppe Battiston, Antonio Catania, Marina Massironi, Felice Andreasi ...
by amore_spacey | 2007-02-22 23:58 | - Italian film | Comments(2)
Commented by マダムS at 2007-02-26 20:12 x
いや~これ大好きな映画なんですぅ~~~♪
ヒロインの女優さんのなんとも言えないあったかさ。普通の主婦なんだけどアコーディオンを弾くときの情熱。 所謂観光地のランドマークは散歩の途中でショーウインドウに映るサンマルコ大聖堂だけ!という憎い演出。 最後に子供だけはちゃんと連れてるのも好感度大で、もう何もかも素敵な映画でした~~
「ペンとチューリップ」って原題の方が素敵ですよねぇ!でも「ベニスに恋して」の方が、レンタル屋さんで手にとる確率は高いような気はします(笑)
Commented by amore_spacey at 2007-02-27 22:16
♡ マダムSさんへ。
でしょ、でしょ、でしょ~~~!!!
Licia Magliettaの包み込むような柔らかい笑顔が
なんとも言えずよいですよね。本物の主婦以上に主婦らしい
って何言ってんだ、あたしは…(-.-)
個人的には彼女の夫が送り込んだ探偵さんが、すごく好き。
胡散臭くてどこか抜けててダサいんだけど、いい人だから
うまくスパイができない(笑) 結局彼もヴェネチアに住み着いて
しまうんですよね~♪^^
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