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硫黄島からの手紙 (Letteres from Iwo Jima)

私のお気に入り度 ★★★★☆(80点)

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硫黄島での戦いを日米双方の視点から描く2部作の「父親たちの星条旗」に続く第2弾。今回は吹き替えなしの伊語字幕。お涙頂戴の演歌調ではなく、おおむね淡々と描かれているのが、かえって心を揺さぶる…そんな作品でした。



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前線での上官・下官の思惑や策略の違いは、どの時代にもあったことだろう。今読んでいる遠藤周作の『反逆』も、天下を取ろうとする信長に、寄らば大樹のごとくの大名たちの胸にうごめく思惑や罠が幾つもあった。

「上官絶対」「天皇陛下万歳」の精神論が当時の日本に浸透していたかといえば、軍国主義や精神論に染まらず、ひたすら「ああ死にたくねえな」「何が何でも生き抜きたい」と考える西郷のような若者は当時もいたんだろう。いや多かったのではないか?と同時にそんな自分自身に恥や嫌悪感を抱いていたことも確かであろう。

さらに捕虜米兵の手紙から、米兵たちも自分たちと同じように、戦争なんか早く終わって故郷に帰りたいと思っていることを、彼らの母親たちも息子たちの無事の帰還を願っていることを知る。敵味方どちらも同じ気持ちなのだ。戦争などしたくない。何のために今自分たちは戦っているのだろう?戦争の無意味さや戦争という行為の不毛さを浮き上がらせている。



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やたら戦闘シーンだけの戦争映画と違って、この作品には様々な立場の人間の心理や感情を映し出しているなと感じた。

祖父が出兵したサイパン島も激戦だった。
日本に一時帰国したある時、彼が愛用していた机の引き出しをあけると、縁が茶色に変色した葉書の束が出てきた。どれもサイパン島から家族に出した手紙だった。長男(=私の父)宛に
「弟たちの面倒を見てやって下さい。お母さんの言うことをちゃんと聞いて、よく勉強して立派な日本人になって下さい。」 このような文でいつも締めくくられていた。

激戦のあったあのサイパン島から、祖父はどうやって帰還したのだろう。米軍の捕虜になったりしたことはなかったのか?「早くこんな戦争など終わればいい」と思った1人ではないか?敗戦をどこでどのように知ったのだろう?そんな話を祖父から聞くことができないのはとても残念だ。


製作国:USA
製作年:2006年
監督:Clint Eastwood
キャスト:渡辺謙, 二宮和也, 伊原剛志, 加瀬亮, 中村獅童, 裕木奈江 ...
by amore_spacey | 2007-03-01 22:42 | - Other film | Comments(7)
Commented by melocoton1 at 2007-03-01 23:11
私も最近観ました。 TBさせてね~♪

やっぱりあの『手紙』のシーンが印象に残りますよね。
Commented by satoko_us at 2007-03-03 21:57
戦争物の映画って苦手なんですけれど、これはちょっと見てみようかなぁと思いました。
でも今見たいのは↓の映画。80年代の音楽って私も主人も思いっきり楽しんだ年代なのでその雰囲気を味わうためだけにも見たいです~!
Commented by amore_spacey at 2007-03-06 02:27
♡ melocoton1さんへ。
二宮くんの演技には未熟さが残るものの、当時の若者の心に迫ろうとする懸命な姿がなかなかよいなぁと思いました。あら、こんなところに裕木奈江ちゃんが?と。伊原剛志も好きだったりします(^^)
Commented by amore_spacey at 2007-03-06 02:29
♡ satoko_usさんへ。
クリント監督の前作もこれも、淡々と戦争というものを描いています。
争いのシーンだけではなく、当時を生き抜いた人々の心の動きをも
描き出したところがよかったです。よかったらご覧下さいね。
↓の作品、ヒュー様にぴったりでした~♪
Commented by 通りすがりのぷぅ at 2007-03-06 12:04 x
きちんと訓練を積んだ兵隊さんは戦争の初期段階で、ほとんど死んでしまって、硫黄島にいたのは、ほとんど普通の人たちだったと聞いたとき、ショックを受けました。
圧倒的な力の差は兵器だけじゃなかった…。
それでも、アメリカに日本人以上の損害を与えたと聞いて本当に驚きました。
どんな気持ちで戦ったんだろう。
昭和天皇は戦争の原因について『遠くは人種差別、直接は石油を止められたこと』と仰ったことがあるそうです。
今、日本では中国や韓国・北朝鮮の反日姿勢に腹を立ててる人も多いけど、当時の日本人の人種差別への怒りはそんなものではなかったようです。
Commented by 通りすがりのぷぅ (つづき) at 2007-03-06 12:06 x
ヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡:日本』という本を読んでみてください。
彼女はGHQの一員として日本に滞在した人です。戦争の発端についても書かれています。
いくらアメリカ人でも、当時の女性としてここまで客観的に考えることが出来るのはすごいなーと思いました。
最近、特攻隊員の遺書などいろんな本になっていますが、残虐な日本兵というイメージからは程遠く、実物を見るとその達筆さにも驚きますが、知性と教養、愛情に胸を打たれます。
イギリスの偉い人が『アメリカのやった占領政策は今後100年は影響を残すだろう』と言ったそうです。今までの『ウヨク?』と疑われる社会はそういうことだったんでしょうか。最近は『サヨク?』と疑われる社会に変わりつつあるように感じます。それがイイか悪いかは別にして、やっぱり本当のコトが知りたい今日この頃。あと40年経ったときに本当に本来の日本に戻れてるでしょうか。
Commented by amore_spacey at 2007-03-17 04:50
♡ 通りすがりのぷぅさん、いらっしゃいませ~♪
当時の記録によると、米軍は硫黄島がすぐに陥落すると
楽観視していたようですね。結果から言えば米軍に占領されて
しまいますが、日本軍の粘りは予想以上のもので
米軍は苦戦を強いられたようです。
ヘレン・ミアーズの著書、機会があったら読んでみますね。
紹介ありがとうございます。
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