ゆれる

私のお気に入り度 ★★★★☆(95点)

ネタばれあり。


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ある出来事をきっかけに対照的な兄(香川照之)と弟(オダギリジョー)の間に起こる心理的葛藤が巧みな構成で描かれている。観始めて5分が経過、「なぁんだ、東京で活躍する若手写真家の、ちょっとお洒落で口当たりの良い恋愛物語かぁ」 見るのをやめようかと思っていたら、あれよあれよと言う間に本題に突入。ポテトチップスをつまみながら見ていた私は、姿勢を正して作品に向かいました。

兄弟はガソリンスタンドで働く幼なじみの智恵子と3人で近くの渓谷に足をのばす。ところが、川に架かる細い吊り橋で、智恵子が眼下の渓流へと落下してしまう。そして、橋の上には呆然とする稔の姿が。橋の下にいた猛は惨事に気づき、動揺する稔のもとに駆け寄り落ち着かせる。兄弟の証言から、最初は不幸な転落事故と思われたが、数日後、稔が突然“自分が突き落とした”と自供したことから、事件の真相を巡って裁判へともつれ込む。猛は弁護士である伯父を立て、稔の無実を晴らそうと努めるが…。


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母の葬式にも顔を出さなかった弟の猛が、その一周忌に久々に帰郷し、そこで父と共にガソリンスタンドを経営する兄の稔と再会する。仏壇の前で説教をするお坊様、真摯に耳を傾ける一族、広い座敷、障子から射す光、儀式が終わった後、座敷に一族が集まってお膳を前に座る、家族は酌をしながら親戚に挨拶…という一周忌のシーンは、子どもの頃わがやでも日常的に繰り広げられていた、懐かしい場面の数々だった。「ああ、お経がもっと短かったらいいのに。」 長時間の正座で感覚がなくなった足先をむずむず動かしながら思ったものでした。


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香川照之はうまい。文句なくうまい!TVドラマで犯罪者を演じていた彼を見た時、その刻々と微妙に変化する表情や口調に圧倒された。大声で彼(兄)を呼びとめる弟に気づいたバス停の彼が、固く張り付いたような表情からふわっと力が抜けて、一瞬笑いかける、あのラストシーンの表情を見ていたら、『L.A.コンフィデンシャル』で唐突に銃で撃たれて死ぬケヴィンの生から死への移り変わりが、現実よりリアルだったあの表情を思い出しました。また裁判所での彼(兄)にも、ケヴィンにかぶるものが多々ありドッキリ★ オダジョーを観るための作品だったのだけれど、香川照之の不思議な魅力にぐっと惹かれました~♪^^


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オダジョーも大健闘だったでしょう。『有頂天ホテル』での彼は、かなり神経質で摩訶不思議な仕事人間でありながら、感情の起伏が見られず、オダジョーの素顔がよく分からなかったのですが、この作品ではやり切れなさや哀しみや切ない気持ちを色んな表情で伝えてくれた。

同じ女性を好きになったことで、その女性が事故なのか他殺なのか?不明瞭な状況で死んだことによって、兄弟の本音が一気に吐露される。同じ環境のもとに育ち、本質的な部分では似通っているように(分かり合えるように)見えるが、外には表れない兄弟の確執や、譲りがたく許しがたい本音の部分が、年月を重ねるごとに根強く残り、それが何かの拍子で着火すると決定的な破局を迎えることもありえるのだ。ラストシーンの兄の微笑みは、事件の無実を信じることによって弟がありのままの自分を受け容れてくれたのであろうという、安堵の気持ちの表れであったと思いたい。あれは決して薄笑いなどではないのだと。

製作国:Japan
製作年:2006年
監督:西川美和
キャスト:オダギリジョー, 香川照之, 伊武雅刀, 真木よう子, 蟹江敬三, 新井浩文 ...
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by amore_spacey | 2007-05-24 04:54 | - Japanese film | Comments(10)
Commented by 小夏 at 2007-05-24 22:46 x
ケヴィ!そっかー!そうかもしれん。確かに、ふとした時の表情とか似てるかも!
うーーむ、これは盲点だったなあ。実は、オダジョーオダジョー連呼している私ですが、香川クンってちょっと(いや、本当はかなり)好きなのですよ。彼はどんな役にでも化けますからねぇ。若い頃より、最近の彼の方が魅力的だと思います。

あ、それで「ゆれる」ですが、ラストシーンは私も同じような解釈です。私自身、あのシーンで救われたので、多分そういう意味なのだろうと。
けど、もう一度確認したいシーンがたくさんあるので、WOWOWで放送したら絶対録画してもう一度見るつもりです。好みの男二人が主演ですから、これはキッチリ永久保存版にしないと。(笑)
Commented by kakko at 2007-05-24 23:13 x
香川でしょ、ケヴィにかぶるって思ってたのよね、実は私も。
言っていること、わかっちゃったりします。
ケヴィの方が断然上とはいえ。
「ゆれる」は観てないんだけれど。
演技力って、やっぱりわかるわよね。
Commented by 睡蓮 at 2007-05-24 23:41 x
おおっ早いですね(イタリアにいるのに)。
私これかなり好きな作品です。
香川さんサイコー!!
すっかりファンです。
表情だけで全てを語りますよね~。
このオダジョー、かなり評価が高いようですね。
私の周りでもオダジョー好きじゃない人に好評です。
でも今オダジョー人気が熱すぎますよ!
すきなシーンがたくさんあります。
でもこれ撮ったの当時32歳ぐらいのカワイイ女性なんですよね。
オダジョーも認める才能です。
また観たい!
Commented by kaioko at 2007-05-26 00:53
あー、この作品の香川照之、やばいです。
私も最初はオダジョーの恋愛モノ?、ゆれる恋心的な?と思いました。
でも最初の伊武父が激高してとっくりを倒し、香川兄がその場をなだめながら畳の酒を拭く場面。
お酒が兄の喪服の足を濡らしているのが意味深で、ムムムと思いました。
伏線がとても丁寧で繊細に描かれている映画で、最後まで緊張の糸が切れませんでした。
でもコレを女性が撮ったなんて・・・。
最後の場面は、私はあっさりバスに乗っちゃったんじゃないかと・・・(笑)
最後まで鑑賞者の気持ちまで揺れさせる、すごい映画・・・。
Commented by amore_spacey at 2007-05-31 03:40
♡ 小夏さんへ。
そうなんですよぉ、オダジョーを観るつもりでこの作品を選んだのですが
香川照之氏の魅力に引き込まれてしまいました。
いえ、オダジョーもよかったと思うのですが、演技の幅といい厚味といい
香川氏に断然軍配があがりますねー。脇を固めるベテラン役者も
よかったですよね!
これから香川氏のことを、日本のケヴィと呼ばせて頂こうかと(^^)
Commented by amore_spacey at 2007-05-31 03:41
♡ kakkoさんへ。
かぶる、かぶる、ケヴィにかぶりまくり。
ひょっとしたら乗り移ってるのかも?と思ったくらい似ていました。
うまいですね、香川氏。善も悪も演じ分けることができる
凄い人。生まれや経歴をみて2度ビックリ!
『ゆれる』、是非是非ご覧下さいね~♪
Commented by amore_spacey at 2007-05-31 03:45
♡ 睡蓮さんへ。
エヘヘッ、某所でDLしたので早いんです(^^)
そうそう、香川氏の演技力(そこに居るだけでオーラが…)といい
撮影法といい、ベテラン脇役陣といい、唸りました。
今香川氏が出ている作品を片っ端からDLすべく
タイトルをピックアップしてます(^^)
Commented by amore_spacey at 2007-05-31 03:52
♡ kaiokoさんへ。
> あー、この作品の香川照之、やばいです。

む?やばいって
よい意味で?悪い意味で?ハマったんですよね~?!
兄が弟に向かって椅子を投げたり
唾を吐きかけて出て行く、兄弟の面会シーンは衝撃でした。
とっくりからお酒がぽとんぽとんと落ちるシーンや
川の流れやつり橋のびみょうな揺れ具合… 大きな動きがないのに
最後の最後まで息詰まる展開でしたね。
私も兄はバスに乗って去っていったのではと思っています。
弟が自分を受け容れてくれた事実を自分の目で確認できた
それだけで、新生活をスタートさせようとしている兄には
充分すぎることだったと思うのです。
Commented by kaioko at 2007-06-01 23:24
↑あ、もちろん、いい意味でですヨ。
あの丁寧にアイロンがけしながら会話している場面とか、もうドキドキです。
フェロモンムンムンのオダギリジョーをくって、余りありましたね。
って、オダジョーの「時効警察」見ながら思ったりしてます^^;
Commented by amore_spacey at 2007-06-03 02:48
♡ kaiokoさんへ。
ああ、やっぱりそうですよね~。
実は男性がアイロンする姿にじーん♡とする私。
『ペイ・フォワード』のケヴィン様や『Anche libero va' bene』の
キム様のアイロンがけシーンが脳裏に焼きついています。
でも香川氏のアイロンがけは、さらに男の色気と哀愁が漂っていて
切ない男の美学がありました。きっちり正座してましたよね。
正座姿が決まるのは、やはり歌舞伎役者の息子だから?

『帰ってきた時効警察』、最終回までDVDに焼いてもらって
友だちが送ってくれるのを楽しみにしているんです♪
オダジョーーーーーー!と叫んでみる。
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