Giorni e nuvole (日々と雲行き)

私のお気に入り度 ★★★★☆(85点)

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娘が自立しこれから夫婦水入らずでゆったり優雅に暮すことができるはずだったのに、事態は一転!奈落の底へ叩きつけられる。そこで問われる夫婦の絆や真価。いや、そんな悠長なことを言っていられるような状況ではない。どうする?人生にこれが正解!という選択はない。自分が信じるものにすがりながら先に進むしかないのだ。とにかく初めの一歩を踏み出そう。Pane e tulipaniのSoldini監督が、港街ジェノヴァを舞台にある1組の夫婦の生き様を描く。



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大学で遺跡修復のコースを終え、長年の夢だった美術史の学位を手にして喜びの絶頂にいる妻Elsaと、その祝賀パーティーの中で暗い影を落とす夫のMichele。彼は共同経営していた会社から2ヶ月前に追い出されて失業、この素晴らしい自宅やヨットも手放さねばならない。現実は厳しく、あれよあれよという間に暮らし向きが激変する。お洒落なマンションから、友人たちの手を借りて修理して、やっと住めるようにしたアパートへドタバタ引越し。その片付けもそこそこに、とりあえず暮していくためElsaはすぐに求職活動に出て2つの仕事を掛け持ちするのに、ボロ雑巾のようになって夜遅く帰宅する彼女の前には、歯切れの悪いMicheleがソファーでゴロゴロしている。過去の功績や見栄や妙なプライドが邪魔して、なかなか仕事が見つからないのだ。疲労と焦りと情けなさとやるせなさで2人は常にイライラ、一食触発の状態にあった。

初めの一歩が踏み出せないでいたMicheleは、成り行きで転がり込んだ娘Aliceのアパートに来て、初めて意固地な自分に気づく。気に食わないヤツだ!娘にはもっときちんとした男が相応しい、と今まで思っていた娘の彼氏の、他人の領域に土足で踏み込んで来ない気配りや、Aliceへの優しい心遣いに、今まで得たことのない安らぎを感じたのだ。頑ななMicheleの内側をそっと揺り動かしたのは、娘とその彼氏だったのかもしれない。



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かけ持ちの仕事の合間をぬって関わってきたフレスコ画の修復が終わり、天井壁に全貌が現れる。床に寝転んでぼんやりと見つめていたElsaの胸のうちには、様々な思いが去来する。2人の人間が一緒に暮していく中には、晴れの日もあれば曇りや豪雨や雪の日もあり、笑ったり泣いたり言い争ったり、浮いたり沈んだり…、そんなことは当たり前なのだ。誰にもあるのだ。美しいフレスコ画を見ているうちに、Elsaの気持ちが徐々に落ち着いていく。彼女の後をつけて修復現場に来たMicheleも、床に寝転ぶElsaとフレスコ画を見ながら、また自分の中に暖かいものが流れるのを感じる。静かだが1つの確信を伝えるようなラストだった。こんな夫婦もいれば、金の切れ目が縁の切れ目、とばかりに離婚する夫婦や、ののしり合いながらも一緒にいる夫婦もいる。

ある家族に何か不幸な事件が起きると、私の知るイタリア人たちの場合は、まず身近な人に心の内をぶちまける。自分ひとりでは抱えきれない鉛を、ひとまず他人にあずけるのだ。気持ちを空っぽにして、ようやく冷静に現実を見つめる余裕が生まれる。激しく落ち込み不平不満を口にしながら、立ち直る力を蓄え、少しずつ前向きになって行くのだ。その期間の長短は人それぞれだが、概ねさらっとしているような気がする。「ああ、あれね。もう起きちゃったんだからしょうがないわ。何とかなるから大丈夫よ。」 そう、「ま、何とかなるから…」という言葉を何度聞いたことだろう。姑が伴侶を亡くした時にも、友人が会社から突然解雇された時にも、友人の最愛の子供が不治の遺伝子病に罹っていると分かった時にも、みんな「何とかなるから。何とかしなくちゃ。」を口にした。私はこの言葉が好きだ。絶望の淵にいながら、少しでも前向きになろう!傍にいてくれる人に余計な心配をかけないようにしよう、というような配慮を感じるから。

製作国:Italy
初公開年:2007年
監督:Silvio Soldini
キャスト:Margherita Buy, Antonio Albanese, Giuseppe Battiston, Alba Rohrwacher, Fabio Troiano ...
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by amore_spacey | 2008-06-05 00:03 | - Italian film | Comments(2)
Commented by atsuko at 2008-06-05 12:49 x
またまたお邪魔します(^^;
この映画、今年のイタリア映画祭で見ました。
ちなみに今年見たのは「カラヴァッジョ」とこの映画2本だけです。
夫婦のやりとりがリアルなのと、俳優たちの達者な演技でじ~っと見入ってしまいました。
amoreさんのレビュー素晴らしいですね!
ラストの天井のフレスコ画をふたりで眺めるところ、よかったですね~~~。

映画が大好きで、イタリアに興味があり、イタリア映画もいろいろ探して見てます。
(でもR・ベニーニは苦手…><)

とっても素敵なブログに出会いました♪
ときどきお邪魔させていただきますね。
ちなみにケヴィン・スペイシーさんも好きな俳優さんです。
演技がうまくて、味があってちょっとセクシーな俳優が好きです☆^^☆
Commented by amore_spacey at 2008-06-10 01:49
♡ atsukoさんへ。
私もイタリア映画関係のブログで、レビューを幾つか拝見しました。
この夫婦の会話といい流れる雰囲気と言い、本当の夫婦のような
自然さがありましたね。演技に脂ののった2人だったので安心して
観る事ができました。綺麗に歳を重ねているMargherita Buy、素敵な
女優さんですね。妙に気取ったところのないのがいいなぁ。

うわ~~~、実は私もロベルトは苦手なんですよぉ。
手ではらってもはらっても顔にまとわりつくハエのような鬱陶しさが
ありますねぇ。

ケヴィさま、お好きですね。今日本では『ラスベガスをブッつぶせ』 が
ロードショーになっているはずなので、その中のケヴィ様をぜひぜひ
ご堪能下さいませ~♪
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