Centochiodi (百本の釘)

ネタばれあり。

私のお気に入り度 ★★★★☆(90点)

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Ermanno監督の作品はこれが初めてである。神の言葉が綴られた書物。何百冊という分厚い古書には、太い楔が深く打ち込まれている。ショッキングで背徳的な冒頭のシーンが『ダヴィンチ・コード』を彷彿させ、「これは謎解きサスペンスなのか?」思わず身構えたのだが、話は意外な展開をみせた。台詞が少ない。殆どの登場人物に名前がないのも一風変わっている。観終わったあと、キツネにつままれたようなほんのわずかな戸惑いと、心の奥底がほのかに丸く温まるような余韻が残り、いつかまた川のほとりに座ってポー川の悠々たる流れを終日眺めていたいと思うのだ。



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人肌の温もりを感じさせるシーンがあり、ポー川の流れと同じように、そのほとりで日々の生活が淡々と営まれている。その情景は静かで底力があり、ポー川の懐に抱かれて暮す村人は、全てを放り出してこの村に辿り着いた1人の男を「キリスト」の愛称で呼び、何も言わず何も聞かずそっと受け入れるのである。かつてはボローニャ大学哲学科のエリート教授であった。日常から隔絶された机上で、形而上の本質や真理を追究する限界と虚しさゆえに、全てを放り出したはずであったが、迎え入れられたこの村での自分といったらどうだ?それこそ神のような扱いではないか。自分の中に相反するものを見い出し戸惑う。違う、自分が求めているのはこれではないはずだ。では一体何なのか?監督はこの問いをわれわれにも投げかける。



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へっぽこ役者だと思っていたRaz Deganを久々に見ましたが、なかなかよいわぁ。って最近こればっか(苦笑) あの風貌がこの作品にハマっているのは間違いないのですが、彼の魅力を最大限に引き出した監督によるところが大きいのは当然でしょう。台詞が少なかったお陰で、Razのボロが出なかっただけなのかも、という見方は意地悪すぎますか?ポー川のほとりに暮す村人たちの表情がこれまたいいんですョ。私も早く歳を重ねて、あのような生活がしたい。作品に流れていたアコーデオンの曲が弾けたら、もっと楽しくなりそうだなぁ。

ロケ地となったSan Benedetto PoやBagnolo S.Vitoには、花粉が飛び交う5月に行ったため、花粉症の私は景色を楽しむどころではなく、残念ながらこれといった印象を得ないまま帰宅した。次回は季節を変えて訪ねてみよう。

製作国:Italy
初公開年:2007年
監督:Ermanno Olmi
キャスト:Raz Degan, Luna Bendandi, Andrea Lanfredi, Yuri Dini ...
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by amore_spacey | 2008-12-03 02:58 | - Italian film | Comments(4)
Commented by そばころ at 2008-12-04 23:34 x
2枚目のショットとてもいいですね。
   
アモーレさんの紹介する、イタリア映画、見たいなあと思っても
日本では、まだまだ未公開というのがちょっと残念です。
 
  
ハリウッドだけが映画じゃないのに
Commented by amore_spacey at 2008-12-13 01:00
☆ そばころさまへ。
お返事が遅くなってしまってゴメンなさい!
普段のポー川は水位が低く川幅もぐーんと狭くなって小川のような状態
なのですが、豪雨のあとには写真のように水量も増して、悠々たる流れに
なりますね。

毎年春に開催される朝日新聞主催のイタリア映画祭で上映される
イタリア映画は吟味されたものばかりで内容が濃いようですね。
ゲストとのトークも楽しいそうですよ。
Commented by マダムS at 2008-12-19 23:53 x
ご覧になりましたか^^ 
映画祭で鑑賞した時は この話がきっと聖書の中のエピソードの一つなのか?と思いまして、私は「理解出来ん」などと軽く片付けてしまってますが、日頃の不信心のせいというだけでなく、気持ちがオープンな時に鑑賞すればまた違った感想になったかもと思います。 現実的に観ちゃいけませんよね・・(^^;)
2枚目の写真はアモーレさんがお撮りになったポー川ですか?
美しいですね^^ 私もあのような何にも縛られない生活ってちょっと憧れます~ 年取ったらご近所さんと仲良く暮らしたいものです。。
Commented by amore_spacey at 2008-12-22 01:08
☆ マダムSさまへ。
こういった作品は、観る側の精神状態や疲労具合によって
とても印象に残ったり、何だかなぁ?で終わったりすることがありますよね。
聖書との関連は全く考えず、作品のごとく私も淡々と観ていました。
こんなに美しいポー川は稀なんです。といってもこの時も川面は
濁流で茶褐色だったのですが、夕陽がうまく色を隠してくれました(^^)
普段は河岸が見えて、中央に小川のような水がちょろちょろと流れてる
だけの川なんですョ。
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