カテゴリ:Theatre( 38 )

CATS

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先月ボローニャの劇場で行われた、ミュージカルCATSを観にいった。遥か昔のこと、新宿のテントで上演された劇団四季のCatsを観て、ものすごく感動した思い出がある。ダンサーたちの力強い歌声やしなやかな動き、そしてそれらを引き立てる演出に目が奪われたものだった。


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今回も猫たちが客席から舞台にあがったり、客席に下りてきたりして、舞台と客席の境界線を感じさせない演出だった。


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CATSは猫たちの一夜のドラマ。都会のごみ捨て場を舞台に、個性的な猫たちが集まって、特別な舞踏会を開くのだ。たった一晩の出来事だけど、色んな猫が来て色んなことが起きる。今回はイタリア人ダンサーGreg Castiglioni が参加していたので、♪ メモリー ♪をイタリア語で歌ってくれた。

劇場:Unipol Arena (Bologna)
上演日:2016年3月17~20日
監督:Andrew Lloyd Webber


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by amore_spacey | 2016-04-11 04:21 | Theatre | Comments(0)

Istruzioni per non morire in pace

私のお気に入り度 ★★★★☆ (86点)

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【あらすじ】 第一次世界大戦前から終了における、イタリアのGottardi工業会社一族(父親と子どもたちの関係)およびヨーロッパ各国の変貌を描く。


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この舞台は三部作になっており、第一部開始が午後3時、第二部が午後6時、第三部が午後9時。終わったのが深夜過ぎ。9人の役者たちも疲労困憊だったが、観客の私たちも相当なエネルギーを費やした。9人の役者のパワーや迫力、そして緊張感の持続、演出も素晴らしかった。


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この上演の1週間前に、劇場での練習風景を見学できる機会に恵まれた。どの役者も普段着でメイクなし、台本こそ手に持っていないが、台詞がところどころ抜け落ちたり、まだ覚え切れていなくてアシスタントにたずねたり。客席に座った脚本家や演出家からは、5分ごとに細かいチェックが入る。演技不足を指摘されて、あからさまに不快を示す役者がいたり、演出家と意見の対立があったり、普段お目にかかることのない舞台裏を見ることができた。

劇場:Teatro Storchi (Modena)
上演日:2016年1月17日
監督:Claudio Longhi
キャスト:Donatella Allegro, Nicola Bortolotti, Michele Dell'Utri, Simone Francia, Olimpia Greco (fisarmonica e pianoforte), Lino Guanciale, Diana Manea, Eugenio Papalia, Simone Tangolo


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by amore_spacey | 2016-02-11 02:27 | Theatre | Comments(0)

Falstaff

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (68点)

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【あらすじ】 時は14世紀初頭の英国国王Henry IVの統治下、舞台は中部イングランドのウィンザー。Henry IVを悩ませていたのが、皇太子のHarry王子(後のHenry V)だった。跡継ぎにもかかわらず王子は政治に一切関知せず、放蕩仲間たちと居酒屋などで遊び回っている。彼の一番の親友がSir John Falstaffだった。Falstaffは大兵肥満の老騎士。臆病者で戦場のビリっかす、大酒飲みで強欲、狡猾で好色。だが限りないウィットに恵まれ、時として深遠な警句を吐く憎めない人物なのだ。もう若くはないが、そのふてぶてしい生き様が、格式ばった王宮で育った王子には、とても魅力的な存在だった。しかし父Henry IVが病気で倒れたのを機に、Harry王子は心を入れ替え、身辺整理をして、父と和解する。こうして生まれ変わったHenry Vは、友人だったFalstaffを拒絶する。


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うーむ、疲れた。前半9人の登場人物が、これでもか!とばかりに大声で喋り倒す。その声が途中から徐々に遠のいて、気がついた時には、うつらうつら(=_=)ZZzzz... 不覚にも劇場で初めて寝てしまいました。

舞台装置や衣装が現代風にアレンジされて画期的だった。が、中世の英国といえば、TVドラマ『テューダー朝』のセットが頭に焼きついている。それと比較するのは意味がないとはいえ、ソファが散らばっただけの居酒屋風景や、亀の甲のような半球状のものを腹に乗っけて、Falstaffや仲間たちの太鼓腹に見せかけた小道具や、色仕掛けでFalstaffに迫る2人の娼婦がオールヌード(靴と下着のパンツは着用)という設定は、奇をてらい過ぎてそこだけ強調され、全体のバランスが良くなかった。ロンドンのOld Vic劇場で観た『RICHARD II』の舞台装置も、21世紀に置き換えられていた。が、それほど違和感がなかったのは、私がケヴィ様ファンだから、どうしたって好意的な見方になるから・・・なのかも。


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奇をてらうと言えば、ラストシーンに登場したFalstaffの巨大な顔(↑)には、場内ビックリ。舞台に敷かれた白いビニールが、空気が送られることによって、積乱雲のようにモリモリそびえあがっていく様子は、異様で不気味なのね。悪い夢を見そう(汗) FalstaffとHenry IVの1人2役を、Giuseppe Battistonがよく頑張っていた。因みに同名タイトルのGiuseppe Verdiのオペラは、Shakespeareの喜劇『ウィ ンザーの陽気な女房たち』をもとに作られた。

劇場:Teatro Storchi (Modena)
上演日:2014年11月30日


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by amore_spacey | 2014-12-16 05:00 | Theatre | Comments(2)

Clarence Darrow (クラレンス・ダロウ)

私のお気に入り度 ★★★★★(100点)

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【あらすじ】 Clarence Darrow(1857年~1938年)はアメリカの弁護士で、労働事件や社会問題に関わり、レオポルドとローブ裁判や、学校教育で進化論を取り扱ってはいけないという反進化論法撤廃を目的としたスコープス裁判(通称:モンキー裁判)など、全米で注目された事件を取り扱った。死刑廃止論者としても有名である。彼は自分が関わった裁判を通して、若者や女性や高齢者、黒人や下層階級労働者など、世の中の弱者やマイノリティーを擁護し彼らの権利を守ろうと奔走した。


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6年ぶりにOld Vic劇場に来てみると、客席がステージを360度取り囲んだ円形劇場に組み直されていた。開演のベルのあと照明が落とされ、場内真っ暗闇。その中で、「コン、コン、コン」と、何かを修理する音が聞こえてくる。そして椅子の座席部分に突き出た靴とそれに続く2本の足が、スポットライトに浮かび上がった。ステージに設定された法律事務所の机の下にもぐりこんで、引き出しを修理するClarence Darrowの足だった。それから5分近く台詞がないまま、彼は山積みになった段ボールの整理を黙々と続ける。静まり返った中、唐突にKevinのマシンガン・トークが始まるのだ。


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今回のズラはあんまり似合ってないなぁ、なんてことを思いながら、早口で膨大な台詞を聞き漏らさないように、全神経を耳に集中させた。今まで観たKevinの舞台は聞き取りやすい英英語、しかも彼のヴェルヴェット・ヴォイスそのままだったから、内容がよく分かった。が、今回は米英語に加え、Clarence Darrowの年齢を出すためか?しゃがれ声のマシンガン・トークで、理解度は5割に激減、トホホッ。場内が笑いの渦の中、私一人ポツンと置きざり。あれっ?隣に座る娘も笑ってるけど、ホントに分かってるの?ねぇ、何がおかしいのぉ???教えてよぅ、エーン。


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そんな私にお構いなく、舞台は進行していった。ステージの周囲や客席の間のスロープを歩き回りつつ、Clarence Darrowは身振り手振りとともに自分の関わった裁判の思い出話をする。客席にひょいと座って観客と冗談を交わしたり、最前列の観客たちと握手をするシーンもあった。いいなぁ、ラッキーだな。モノローグではあるが、観客を巻き込む参加型で、とても楽しい。2~3日前、上演中に観客の携帯が鳴りっぱなしというハプニングがあった。それを聞いたKevinは、「お前が出ないんなら、俺が出てやろうか?」と機転のきいたアドリブを放ち、場内は拍手喝采だったらしい。(詳細はこちら

裁判の内容や世論に対して厳しい批判をしながらも、クスッと笑えるジョークを織り交ぜ、緊張と緩和のバランスが絶妙で飽きさせない。しかし佳境に入ると、手加減なし。プラカードを掲げ、声高にスローガンをアピールする。コブシを震わせながら、真正面からいどんでくる。Kevinには、人の心を揺り動かす恐るべきパワーがあるのだ。

前半45分、途中20分の休憩、そして後半45分。あっという間だった。どうしてもモノローグをやりたかったというKevinが、やっとこの劇で念願を果たした。私たちはスタンディング・オベーションで、感動をありがとう!という感謝の気持ちを、真心を込めて送った。本当に素晴らしかった。カーテンコールはあっさり2回で終了したが、今でもあの余韻に酔いしれている。ところでOld Vicの芸術監督の任期が終わったら、Kevinはロンドンを引き払ってどこかに行っちゃうのかしら?


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一方、イタリアのモノローグは、どうしてあんなにナルシスティックで自意識過剰でつまらないんだろう?「俺って、こんなに演技がうまいんだぜェ」「ボクは、その辺のジャリタレなんかとは違うんだ。」的なオーラが出まくり、それが鼻につく。そんな役者に限って、MichelangeloやCaravaggioのような、抽象的で独りよがりな芸術家をやりたがるから、始末に終えない。舞台は民衆の娯楽なんだから、観客が楽しめるような内容を盛り込んで欲しい。と思っているのに、「げーじゅつは、俺様だけが分かればいいんだ」「お前たちに何が分かる?」と上から目線。役者のエゴや歪んだ自信にまみれて、ちっとも面白くない。心に響いてこない。眠い。嗚呼、ロンドンやニューヨークに引っ越して、劇場三昧の日々を過ごせたらいいなぁ。

劇場:The Old Vic (London)
上演日:2014年6月11日
監督:Thea Sharrock
キャスト:Kevin Spacey


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by amore_spacey | 2014-06-17 00:11 | Theatre | Comments(2)

Open day

私のお気に入り度 ★★★☆☆(78点)

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【あらすじ】  14歳になる一人娘の高校進学のため、別居中の夫婦(Angela Finocchiaro & Bruno Stori)が、オープンデーに志望校を見学をする。そこで入学願書を書くことになるが、記入項目の1つ1つにそれぞれ意見が食い違い、やがて夫婦喧嘩が勃発。こんな有様で、ちゃんと願書を提出することができるのか?


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1月に観た『2人の主人を一度に持つと』で、一生分笑い尽くしちゃったのかなぁ?Open dayもそこそこ面白かったけれど、「ま、こんなもんか」な感じだった。TVドラマや映画のAngela Finocchiaroは、もう少し強烈なコメディ・キャラクターだった気がするんだけどな。これも拍子抜けの原因。


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別居中の夫婦が久しぶりに顔をあわせる、しかも一人娘の大事な進路決定となると、傷口に塩を塗るような泥試合になるのは目に見えている。そこを面白可笑しく仕立てたのが、この舞台だった。2人だけで途中休憩もなく1時間以上舞台を続けるというのは、大変なことだと思う。大勢で演じるのと違って、1人当たりの台詞の量が格段に増えるし、消耗するエネルギーも半端ない。そのあたりを考慮に入れても、当たり障りのない舞台だったかな。期待していただけに(もっと笑わせて欲しかった)残念。

劇場:Teatro Storchi (Modena)
上演日:2014年4月4日
監督:Ruggero Cara
キャスト:Angela Finocchiaro, Bruno Stori


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by amore_spacey | 2014-04-17 02:07 | Theatre | Comments(0)

La metamorfosi (変身)

私のお気に入り度 ★★★☆☆(70点)

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【あらすじ】 父(Dario Cantarelli)の借金の返済と妹Grete(Claudia Scaravonati)が音楽院に通う学費を稼ぐため、Gregor (Luca Micheletti)は布地の販売員として懸命に働いていた。しかしある朝目覚めると、彼は巨大なムカデのような虫になっていた。両親は気味の悪い姿になった息子を、部屋に閉じ込めて鍵をかけるが、妹だけは彼の存在を許容していた。収入源を失った一家は両親と妹が働き始め、また家計の足しにするため3人の紳士たちを下宿させた。そんなある日、妹が弾くピアノの音色を聞いて、懐かしさのあまり虫になった兄が部屋から出る。父は彼の姿を見るや否や、激怒して暴力を振るった。驚いたGregorは這いながら自分の部屋に戻り、家族のことを思いながら死んでいく。


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原作(1912年)には不気味さや堂々巡りする粘着性の苦悩や家族の凋落といった雰囲気が、そこら中に溢れていたはずなんだけど、舞台には艶かしさが始終漂い、これってソフトポルノ?(◎∇◎)


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絡みつくような娘のエロティックな動き、父娘や兄妹の隠微な関係、妹が片方の乳房を出して兄に飲ませる、父親がすっぽんぽんになる、兄妹が一緒にピアノを弾くときの危うい空気、全裸になった妹のシャワー&両親の交接・・・(● _ ●;) 客席の9割がティーンエージャーだったから、ざわめきも半端なかった。アタシ?ガンミしてました(⌒▽⌒)アハハ! そうそう、小劇場なのに音響効果がうるさくて、みんな耳をふさいでいました。


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高校生の頃、初めてこの作品を読んだときには、若者が何の理由もなく不気味な虫に変身してしまう、この冒頭があまりにも衝撃的で、Kafka=虫とインプット。未熟だったね、私。『縮みゆく人間』のScottも、外見がどんどん変わっていくという点が、似ているかも。


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もう一度ざっと読み直して舞台を観ると、Kafkaは虫のような状態になった人間の心理を描きたかったのかなと思う。変身が引き金となってヒッキーになるGregor。外見は不気味な虫だけど、頭は人間の機能を果たしている。なのに言葉を話せないから、家族と意思の疎通ができず、出口の見えない苦悩が生じる。

またKafkaは無力や怠惰を人間の本質と捉えつつ、それを頭ごなしに否定しない。もっとしっかりせんかい!と叱咤激励することもない。時代背景や切り口は違うものの、荀子の『性悪説』(紀元前3世紀ごろ)や坂口安吾の『堕落論』(1946年)に通じるものがある。人間は弱い存在なんだから、仕方がないよな。それにしても今回の舞台は思いがけずポルノチックで、刺激的だった。すっぽんぽんになった父親役が、Luca ArgenteroやGiorgio PasottiやElio Germanoやビョン吉だったら、申し分ありませんでした(*^^*)

劇場:Teatro delle Passioni (Modena)
上演日:2014年3月21日
監督:Luca Micheletti
原作:Franz Kafka
キャスト:Dario Cantarelli, Laura Curino, Luca Micheletti, Claudia Scaravonati


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by amore_spacey | 2014-03-25 02:24 | Theatre | Comments(0)

La Carne del Marmo - Un oratorio per Michelangelo - 

私のお気に入り度 ★★★☆☆(65点)
私のAlessioお気に入り度 ★★★★☆(90点)

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【あらすじ】 ルネサンス期の彫刻家・画家・建築家・詩人である天才芸術家Michelangelo Buonarroti(Alessio Boni)と素晴らしい作品を生み出す大理石が織り成す関係を、ソネット(定型詩)や音楽や映像やバレエやナレーションによって、多面的に描き出す。


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だめだー、この手のコラボ。何がダメって、神経を逆撫でするような音楽に、若い2人のダンサーの前衛的な踊り(とても上手いんです、でも…)。そして抽象的&形而上的すぎる映像( ̄∇ ̄;) Alessioのナレーションだけで十分だったのに。場内に着席して舞台を見た瞬間、嫌ァな予感がしたのね。舞台装置がなぁんにもないの。数ヶ所にタイルの破片の山と、手動のスポットライトが1台あるだけ。ガラーンとした舞台に、「あ、今日はハズレかも?」 悪い予感が当たっちゃった。

『ダヴィデ像』の原材料となる大理石の原石に命の宿りを感じ、その原石を若い男の肉体としてとらえ、そんな彼の若さや美しさやたくましさを、狂おしいまでに慈しみ愛でる。それなのに自分と来たら老醜をさらし、死を待つだけの枯れた人生。オレは終わってる。およそ美や永遠からは程遠い自分をのろい、嫉妬にのたうちまわるMichelangelo。たぐいまれな才能に恵まれた芸術家の心の奥底に秘められた、脈打つ生々しい魂を表現する手段として、今回のような試みもありだと思う。私の趣向に合わなかっただけ。


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年老いた芸術家という役柄上、Alessioが登場したときは、「えっ?」 一瞬だれなのか分からなかった。けれどモノローグが始まり手足や身体が動き始めると、そこに横たわっていたのは紛れもなくAlessioだった(*^^*) 彼の声は聞き取りやすく、とても心地よい。それは彼のインタビュー(音が出ます!)からも分かる。隣に座ってずっと彼の声を聞いていたい。Colin Firthのように、何をやってもどんなに崩しても品がある。正統派・品行方正な役者でありながら、取り澄ましたり大上段に構えたりしない。気さくで安心できる人だ。『輝ける青春』から11年。デビュー当時のカッコイイだけの青年から、深みのある素晴らしいベテラン役者になった。もう彼から一時も目が離せない!053.gif

劇場:Teatro Duse (Bologna)
上演日:2014年2月13日
監督:Alessio Pizzech
映像:Giacomo Verde
音楽:Dario Aricidiacono
キャスト:Alessio Boni, Compagnia Imperfect Dancers


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by amore_spacey | 2014-02-19 05:43 | Theatre | Comments(0)

Servo per due (2人の主人を一度に持つと)

私の抱腹絶倒度 ★★★★☆(96点)

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【あらすじ】 1930年代のリミニ。現代版Arlecchino(道化師)のPippo(Pierfrancesco Favino)は、たった今失業したところ。お金もなく食べる物もないので、ひどく落ち込んでいた。食べることだけが生き甲斐の彼は、あちこし職探しに回った末、同時に2つの職を見つけた。それは、Rocco(Fabrizia Sacchi)とLodovico(Pietro Ragusa)という2人の主(あるじ)に仕える仕事だった。かけ持ちすれば給料が2倍になるとPippoはほくそえんだが・・・。18世紀イタリアを代表するヴェネチアの喜劇作家Carlo Goldoniの作品Il servitore di due padroniの舞台を20世紀のリミニに移し、現代風にアレンジした喜劇。


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あ~、笑った、笑った。大笑いした。笑いすぎて涙は出るし、お腹が痛い。目尻にくっきりシワができちゃった。舞台と客席が一体になって同じ空気を共有する、これがものすごく居心地よく、とても楽しかった。主役の道化師Pippoを演じたPierfrancesco Favinoが、予想を遥かにこえて素晴らしかったのだ。舞台に登場したその瞬間、場内の空気がピーンと引き締まった。前から3列目の席で、彼が手の届くところにいる(*^^*) 声がいい。歌もうまい。動きが軽やかでしなやか。おバカ丸出しなのに下品にならない。のびのびとパワフルに、この喜劇を引っ張っていってくれた。休憩を入れて3時間近い舞台で、最後まで観客の心をつかんで離さない。あっぱれ!見事な芸当だ。


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さらに彼は、『Happy Family』の作家Ezioのように、自由自在に劇から出たり入ったりできる。役柄からもすっと出たり入ったりできちゃう。ついさっきまで道化師を演じていたのに、気がつくと彼はPierfrancescoとして観客に話しかけ、観客は一個人としてのPierfrancescoに答えているのだ。双方のノリがこれまた良く、その場は更に盛り上がる。このやりとりから、笑えるネタを瞬時に拾い出して、アドリブ芝居を続ける。この芝居が秀逸なのだ。ごくありふれた台詞で、場内のテンションをどんどん上げていく。こうして舞台と観客の間にあった見えない境界線を、彼はいとも簡単に取り払ってしまった。それだけでなく客席に下りてきて、ランダムに選んだ客(これは最後にオチがあるんだけど…)と世間話を始め、その客を舞台に上げて劇に参加させる。観客を笑わせた彼自身も笑いをこらえきれず、舞台には戻ったものの、笑いが止まらず、いったん台詞を中断。そんな姿に観客はまた笑う。


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言う間でもないが、芸達者な脇役や幕間に登場したバンド(カルテット)がいたから、うまくいったのだと思う。役者1人1人がそれぞれの持ち味を、与えられた役柄で遺憾なく発揮していた。この揺るぎない土台のおかげで、Pierfrancescoは水を得た魚のように、自由にのびのびと演じることができたのだ。


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この作品の笑いも、『ミランダ』と同じく、バカバカしさのオンパレードである。主役がおバカで冴えない人間だったり、みんなが派手に転んだりつまづいたり物をひっくり返したり、ちょっぴりお下品なことを言ったりやったり。人の無様な姿は、まったく滑稽でおかしい。よくできたコメディドラマや舞台は、そうと分かっていても、そのシーンで笑ってしまう。笑いのツボのようなものが、隠されているんでしょうかねェ。



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純粋なおかしさに加えてこの劇では、リミニ人やナポリ人やカラブリア人の人柄をネタにしたり、『炎のランナー』の有名なシーンをパクったり、時代背景に合わせてファシズム時代に流行った歌をカルテットに歌わせたり。舞台の上で消火器を噴射させるという、意表を突いたシーンもある。一見ワザもひねりもない喜劇だけれど、あれは隅々まで計算された演出&演技だったに違いない。それを感じさせない自然な笑い。あれほど私たちを笑わせてくれたスタッフの力量には、ただただ驚くばかりだ。

劇場:Teatro Duse (Bologna)
上演日:2014年1月19日
監督:Pierfrancesco Favino, Paolo Sassanelli
原作:"Il servitore di due padroni" di Carlo Goldoni
脚本:Pierfrancesco Favino, Paolo Sassanelli, Marit Nissen, Simonetta Solder
キャスト:Pierfrancesco Favino, Bruno Armando, Gianluca Bazzoli, Haydée Borelli, Claudio Castrogiovanni, Pierluigi Cicchetti, Ugo Dighero, Stefano Pesce, Pietro Ragusa, Marina Remi, Diego Ribon, Chiara Tomarelli, Valentina Valsania


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by amore_spacey | 2014-01-31 01:08 | Theatre | Comments(0)

Il Ratto d'Europa (ヨーロッパのラット)

私のお気に入り度 ★★★★☆(88点)

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【あらすじ】 第1幕 道、第2幕 旅、第3幕 言語、第4幕 国境、第5幕 戦争、第6幕 EUバンド、第7幕 EUの偉人、第8幕 EUの台所、第9幕 スポーツの計9幕からなる。EUの歴史を振り返りつつ、先行き不透明なEUの現状を政治的経済的な視点から考察検証し、今後の活路を開いていこうと試みる。このプロジェクトはClaudio Longhiを中心に、RomaとModenaの2都市で企画された。


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9人の役者+(合唱団、室内合奏団、モデナ・ラグビー・チーム、その他モデナ県内外の有識者)による、休憩なしの3時間40分強の舞台。役者たちも観る側も、体力と集中力が要る。4時間弱の舞台と聞いて、「絶対に途中で寝るよな」「あそこの劇場の椅子って、すわり心地が悪いから、退屈だったら途中で退席だな」ネガティブなことばかり思っていた。と・こ・ろ・が…


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4時間弱はとても愉快で楽しくて、あっと間に過ぎ去った。役者たちは舞台から客席の隅々まで走り回り、肩で息をしながら台詞を言う場面が多々あり。額や首筋を伝う汗が見える。客席の私たちが舞台に上がる場面や、ラグビー選手が客席の両端を走りながら、ラグビーボールをパス(観客の頭上をボールが通過)する場面もあり。また役者たちが客席に下りてきて、お菓子をふるまう場面もあり。

演出も面白い。舞台だけでなく、観客の頭上にはテニスやバレーボールのネットや太い紐が、横断幕のように横たわる。また役者や観客が自由に行き来できるように、舞台と観客席の間に長い板が何枚もたてかけられる。舞台の天井に届かんばかりの大カートが何台も舞台に登場、カートには古新聞がぎっしり詰め込まれている。


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ドタバタ劇のようで、実はとても奥が深い。EUに加盟し統一貨幣ユーロに参加したあたりから、以前にも増してイタリア国内には不穏な空気が流れるようになった。それはEUのせいか?ユーロのせいなのか?イタリアという国自体に問題があるのか?いや、そもそもヨーロッパのアイデンティティって何なんだ?私たちに幾つもの問題提起をしている。


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タイトルのIl Ratto d'Europaは、フェニキア国に暮らす若くて美しい娘エウロペに一目ぼれした天空神ゼウスが、白い牡牛の姿になって彼女を誘惑し連れ去ったという、ギリシャ神話のRatto d'Europaに由来している。

劇場:Teatro Storchi (Modena)
上演日:2013年5月14日
脚本&監督:Claudio Longhi
原作:Alberto Savinio 'Sorte dell’Europa'
キャスト:Donatella Allegro, Nicola Bortolotti, Michele Dell’Utri, Simone Francia, Olimpia Greco, Lino Guanciale, Diana Manea, Simone Tangolo, Antonio Tintis


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by amore_spacey | 2013-05-27 01:39 | Theatre | Comments(0)

La torre d'avorio

私のお気に入り度 ★★★★☆(80点)

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【あらすじ】 第二次世界大戦後、アメリカ占領下のベルリン。ナチ協力を疑われている大音楽家Wilhelm Furtwangler(Massimo De Francovich)が、予備尋問に呼ばれた。政治には疎く、頑迷に芸術を信奉するベルリン・フィルの指揮者である。彼を尋問するのはアメリカ人少佐Arnold(Luca Zingaretti)。クラシック音楽にはまったく無知・無関心な元保険調査員で、Furtwanglerの「ナチ」たることを何としても証明しようと躍起になっている。対照的な2人の白熱したやりとりは、芸術と政治を軸にシリアスな話が展開される。


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この劇はFurtwanglerが法廷での尋問に先立つ予備審査に焦点を当てている。休憩を挟んで、前半はArnold少佐がいかにクラシック音楽に無知で、どれほどFurtwanglerのことを憎んでいるか、後半はそんな少佐と大指揮者の問答を中心に話が進んでいく。当然ながら彼はFurtwanglerを神様のように崇める部下たちとも対立するが、随所に演劇的な笑いが織り込まれて、ここは穏便に展開する。


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この尋問の決定的な欠陥は、Furtwanglerの弁明がすべて自己弁護になっていること。尋問する少佐だけでなく場内の観客も、実際に音楽家の身に何が起こったのか?Adolf Hitlerやナチ党との関係が分からないからだ。枝葉的なことを取り上げて、少佐は何としてでも彼を有罪にしようと躍起になるが、証拠不十分で遺憾ともし難い。結局この尋問は、芸術と政治の関係にまで及ぶが、両者は平行線のまま。独裁政権の下で音楽活動を続けたFurtwanglerの真意は1つ。音楽を愛していた。


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ぴっかぴかに光ったやかん頭のLuca Zingarettiが舞台に登場した瞬間、「おぉぉ、Montalbanoが目の前にいるぞぉ!」 警部や少佐のような役がぴったり。今回は偏りのあるかなり俗っぽい人間を演じたが、Montalbanoの印象があまりにも強すぎて、なかなか米軍少佐に見えてこない。予備尋問とは言え、両者の間には心理的な駆け引きがあるので、立て板に水のような会話はほとんど登場しない。Furtwanglerも過去のことを思い出しながら、自分の不利になるようなことには触れないよう、訥々と語る。政治 vs 芸術という形をとりながら、正義はどこまで一個人の犠牲を要求できるのか?がテーマになっていたように思う。

劇場:Teatro Storchi (Modena)
上演日:2013年5月2日
原作:Ronald Harwood "Taking Sides"
翻訳:Masolino D'Amico
監督:Giampiero Solari
キャスト:Luca Zingaretti, Massimo De Francovich, Beppino Mazzotta, Gianluigi Fogacci, Elena Arvigo, Caterina Gramaglia


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by amore_spacey | 2013-05-10 00:16 | Theatre | Comments(4)