カテゴリ:- Italian film( 247 )

Fortunata

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (76点)

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【あらすじ】 Fortunata(Jasmine Trinca)は、結婚に失敗したが、元夫Franco(Edoardo Pesce)と娘の養育権を巡って争いながら、8歳の娘Barbara(Nicole Centanni)を1人で育てている。そんな彼女には、経済的な独立と自分の幸せのために、自分のヘア・サロンを開く夢があった。その資金調達のため、今は美容道具を持って戸別訪問している。しかしBarbaraの小児心理学医Patrizio(Stefano Accorsi)と、長年の男友だちChicano(Alessandro Borghi)の間で、Fortunataは揺れるのだった。(作品の詳細はこちら


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何となくAlessandro Borghiの1人祭り。インタビューなどに答えるときの彼は、笑顔が爽やかな今風の若者で、誰ともそつなく付き合える。きっと撮影現場でも、下品にならないシモネタをバンバン言いながら、スタッフの和ませてくれる存在に違いない。が、一旦役に入ると、別人だ。良い意味で、白黒はっきりしたスイッチが入る。

今回の役はアルツハイマーになった母の面倒を見る息子だが、真っ当な人生を歩んで来ていないのは一目瞭然。世の中の底辺でやっと生きている、ゴミのような存在に近いかもしれない。こんなダメ男だけど、彼の心根の良さはFortunataが一番良く知っていた。立派な肩書きや定職や金はなく、とても不器用な生き方しかできないが、人を思いやる心は、登場人物の中では抜きん出ている。それにしても爽やかなAlessandroが、メイクとヅラでこれだけネガティブな人間に変身するなんて…。たかがメイク、されどメイクです。


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小児心理学医Patrizioは、社会的には安心できる存在だが、深く付き合ってみると、人間性が破綻している哀れな男だ。Fortunataにはそれがはっきり分かった。この手の男と一緒になるより、1人で生きていったほうが良いと。ところで脚本に書かれていたのか?監督の指示か?Stefanoがそう演じたかったのか?分からないが、後半に入るとかなりオーバーアクションが続き、Stefanoの茶番劇っぷりが空回りして、非常に残念でした。


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娘のBarbaraを演じたNicoleちゃんが、とっても可愛いかった。最近の子役は国籍を問わず、表情といい演技力といい、大人顔負けで驚きです。8歳のBarbaraはマンマの気を引きたくて、素直に言うことを聞かない。あどけない顔をしながら、しれっと小さな反抗を繰り返す。ひねくれたくなる気持ちが、良く分かる。音楽の選択もナイス。各シーンを引き立てて良かった。


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by amore_spacey | 2017-12-05 00:33 | - Italian film | Comments(0)

夜 (La notte)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (72点)

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【あらすじ】 1960年代のミラノ。ある日の午後、売れっ子作家Giovanni(Marcello Mastroianni)と妻Lidia(Jeanne Moreau)は、回復する見込みのない病を患う友人のTommaso(Bernhard Wicki )を見舞う。TommasoはLidiaのことを愛していたが、彼女はすでにGiovanniと結婚していた。彼女は作家夫人として何不自由のない毎日を送っているが、その生活に得体の知れぬ不安を抱いている。1961年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。(作品の詳細はこちら


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不毛の愛や虚無感と言ったら、Michelangelo Antonioni監督。全てが虚しくておぼつかない、そして救いのない孤独感。監督の手にかかると、この感覚に先の見えない不安が加わり、残酷で絶望の淵に立たされたような気持ちになる。Marcelloのコメディシリアスの演じ分けが素晴らしい。

この映画を思春期に観たら、もっと評価は高かっただろうし、少なくとも途中でうたた寝なんぞしなかった。愛の不条理・倦怠・退廃・堕落・形而上美…、あの頃は少し背伸びしてそういうものに憧れる時期だから。不毛の愛についてグチグチ捏ね繰りまわすフランス映画のような本作品は、繊細な心を持った青年期に観るには、ちょうどいいかもしれない。そういうことを考えてる自分ってステキ、みたいな。「人生の意味って何?」「永遠の愛?」「幸せって何だっけ?」なんて突き詰めて考えている時は、ちょっと不健康で、あまりよろしくない状況にあることが多いのではないかしらーん?


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愛って育んでいくもので、頭の中で考えたり、あーだこーだ議論を戦わせるものではないと思うんだけど、この作品の登場人物たちは知的レベルが高すぎるせいか、ついつい哲学的&観念的に追求したくなってしまうのね。そんなに難しく考えないで、例えばレジのおばさんが間違っておつりを多目にくれてラッキー!だったり、お年玉つき年賀はがきの3等賞くらいに当たったり、好きな人が手料理をおいしそうに食べてくれたり、ソファーでうたた寝している私に、彼がそっと毛布をかけてくれたりしたとき、嬉しくなっちゃう。そんなありきたりの些細なことがけっこう幸せで、じわっとぬくもりに満たされるものなんだけど。それだけじゃダメなのね、特にLidiaは。


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夫婦関係が崩壊し終焉を感じながら、それでも何とか夫の愛を取り戻そうとする。彼女は夫に組み伏されながら、「もうダメなの!あなたとは別れることに決めたの!すべてはもう手遅れなの」と、ラストシーンで叫ぶ。なのに不思議なことに、Lidiaの表情は生き生きと輝いているのだ。個々の気持ちや夫婦の関係なんてものは、他人からみたら謎だらけなもんです。


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by amore_spacey | 2017-11-19 20:55 | - Italian film | Comments(2)

暗黒街 シーズン1 全10話 (Suburra stagione 1 episode1-10)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (88点)

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【あらすじ】 マフィア・バチカン・政治家・地域の犯罪組織・ジプシーの犯罪グループが蠢(うごめ)くローマ。この街で、金や権力に飢えたAureliano(Alessandro Borghi)・Spadino(Giacomo Ferrara)・Gabriele(Eduardo Valdarnini)の三人の男たちが、ローマ再開発法案の利権にありつき、それぞれの縄張りを拡大すべく戦う。Netflixで配信された初めてのイタリアTVドラマ。(作品の詳細はこちら


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映画『暗黒街』をTVドラマ化、しかも映画版のキャストが何人か続投と聞けば、面白くない訳がない。最初の1~2分でその日のエピソードの終わりを見せ、一呼吸おいてエピソードを遡っていく構成なので、「どうしたんだ?何があった?」と、のめる込むように全話を観た。Michele Placido監督の作戦に、まんまと嵌められたのです。


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きっかけは、ほんの些細なこと(いや、大部分の人にとっては大事件なんだけど)。ジプシーの縄張りで、誤って麻薬の密売をしてしまった。この落とし前をつけてくれようじゃないか。速攻で大金を支払わねばならないが、大学生のGabrieleにそんな大金はない。どう調達する?ここから話が始まり、ドミノ倒しのように地元の犯罪組織やジプシーや政財界やヴァチカンを巻き込みながら、負の連鎖がどこまでも続いていく。この世界に1歩足を踏み入れたら、二度と抜け出せない。終わりがないのだ。

昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵。戦況は刻々と変わり、誰と誰が裏側で繋がっているのか分からない。使う人間と使われる人間の立場も、うかうかしていると簡単に入れ替わってしまう。自分の身がやばくなったら、容赦なく裏切る。仕掛けられた罠をうまくよけつつ、金や権力を手に入れ、縄張を広げていく。それらに否応なく巻き込まれる人々の人間模様が、危うくて虚しく、儚くて哀しい。


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映画版のAlessandro Borghiは、容貌もさることながら、言動がキレッキレで尖り過ぎていて、ちょっと触っただけで血が滲みそうだった。が、ドラマ版では人間味のあるAurelianoを演じている。可愛いSpadinoとの絡みが、とても微笑ましい。今回Samurai役のFrancesco Acquaroliが、腹立たしいくらい上手い。こういった輩が、暗黒街を牛耳っているのか。あんな終わり方なんだもん、続きが気になって仕方がない。一日も早くシーズン2を配信して下さい。


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by amore_spacey | 2017-10-19 01:27 | - Italian film | Comments(2)

甘い生活 (La dolce vita)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (73点)

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【あらすじ】 作家志望の夢破れて、今はしがないゴシップ記者のMarcello(Marcello Mastroianni)は、豪華なナイトクラブで富豪の娘Maddalena(Anouk Aimée)と出会い、安ホテルで一夜を明かす。ハリウッドのグラマー女優Sylvia(Anita Ekberg)を取材すれば、野外で狂騒し、トレビの泉で戯れる。乱痴気と頽廃に支配された街ローマ。口うるさく鬱陶しい腐れ縁の恋人Emma(Yvonne Furneaux)は、彼の言動を嘆く。二人で訪れた友人Steiner(Alain Cuny)一家の、知的で落ち着いた暮らしぶりをMarcelloは羨むが、彼らも子連れの無理心中で突如死んでしまい、絶望感のみが残った。1962年Academy賞で衣装部門を、カンヌ映画祭でグランプリを受賞。(作品の詳細はこちら


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無理矢理あらすじを書いたが、Fellini監督の作品には一環したストーリーがない。人の意識の流れに任せて、あっちへ飛んだりこっちへ戻ってきたり、全く脈絡のないシーンが突然割り込んできたりする。どっちに向かっているのか分からず、様々なエピソードが、ひたすらダラダラ続く。グラマラスな女性たち・喧騒・祭り・乱痴気騒ぎ・享楽・冷めた視線・ある種の無関心や虚無感…。Fellini監督の独壇場だが、この手の作品は苦手でダメだ。観終わったあと、強烈な何かが残るのは確かだが、掴みどころがないのです。


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宙吊りになったキリスト像がヘリコプターで運ばれる冒頭のシーンは、『グッバイ、レーニン!』のレーニン像を彷彿させたり、浜辺に打ち上げられた巨大なエイの顔が、『太陽がいっぱい』でAlain Delonが歩く海辺のメルカートの魚売り場にも登場するように、様々なシーンが後世の作品のヒントになっているではないか?


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De Sica監督の作品のMarcelloは、のびのびと自然体で楽しんでいるが、Fellini監督の時には、ちょっぴりかしこまっているようにみえる。これは私の勝手な推測に過ぎない。どちらにしても、ダメ男を演じている確率はとても高い。ダンディな外見なのに、付き合ってみるとほーんとにダメなんだから、この人って。でも放っておけないのよ。母性愛をくすぐる、そんなタイプの男性をMarcelloが演じると、最高だ。


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by amore_spacey | 2017-10-13 00:12 | - Italian film | Comments(0)

鞄を持った女 (La ragazza con la valigia)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

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【あらすじ】 リミニのキャバレーで歌手として働く未亡人Aida(Claudia Cardinale)は、そこで知り合ったMarcello(Corrado Pani)を好きになるが、Marcelloは単なる遊びだった。彼の跡を追ったAidaは、パルマにある宮殿のような大邸宅にたどり着く。居留守を使ったMarcelloの代わりに、Aidaを出迎えた16歳の弟Lorenzo(Jacques Perrin)は、話をするうちに彼女の魅力に引き込まれ、愛するようになる。Lorenzoの気持ちを知ったAidaは、彼の将来のために身を引くことを決意するが…。(作品の詳細はこちら


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キャバレーの歌手と、資産家の生まれの青年。キャバレーの歌手は未亡人で、青年は16歳。普通に暮らしていたら、たぶん出会わなかった2人。LorenzoがAidaに抱いたのは、母親を慕うような気持ちで、決して大人の愛ではなかったと思う。兄に遊ばれて可哀相な人。Aidaと一緒に過ごすにつれ、情が移って思慕に変わり、「ボクが守ってやらなくちゃ」と背伸びを始める。誠実で真っ直ぐな愛情を注ぎ、何とかAidaを助けたいと思う。そこが可愛いというか、幼いというか、16歳の青年は、直情的で短絡的だ。だけど彼女のために良かれと思って、彼が最後にやったこと、あれはないわぁ。あんなことされちゃ、百年の恋もさめちゃう。Aidaを思う余りのこととは言え、結局やることは他の男達と変わらないじゃないか。でもこの苦い経験が、Lorenzoを成長させてくれるといいな。


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当時23歳のClaudia Cardinaleが、健康的な美しさに満ち溢れて、とてもまばゆい。無邪気で無防備で、野生的な美しさに溢れているさまは、まるで野原に咲いた大輪のひまわりのよう。困惑したときの幾分媚びたような目の動きなどは、当時の若者たちを悩殺したことでしょう。


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by amore_spacey | 2017-10-01 00:26 | - Italian film | Comments(2)

無防備都市 (Roma città aperta)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (81点)

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【あらすじ】 第二次大戦末期のローマ。レジスタンスの指導者Giorgio Manfredi(Marcello Pagliero)はドイツ・ゲシュタポの追跡を逃れ、同志Francesco(Francesco Grandjacquet)の家に逃げこんだ。彼は資金調達のためローマに来たが、警戒が厳しいため、Pietro神父(Aldo Fabrizi)に連絡を頼む。
 FrancescoとPina(Anna Magnani)の結婚式の日、レジスタンスの同志たちはナチに襲われた。Giorgioは何とか逃げのびたが、Francescoらは捕えられ、彼を乗せたトラックを追ったPinaは、路上で巡視兵に射殺される。捕えられた同志たちは途中で仲間たちに救出され、GorgioとFrancescoはGiorgioの恋人Marina(Maria Michi)のアパートに逃げこんだが…。(作品の詳細はこちら )


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無条件降伏したにもかかわらず、ローマはナチスドイツに乗っ取られた状況が続いた。そのローマを取り返すため、多くのパルチザンたちは奮闘するが、金と欲望に目がくらんだ同胞の女に密告され捕まり、凄惨な拷問を受け処刑される者も出てくる。処刑命令を下すのは、ゲシュタポの隊長Bergmann少佐(Harry Feist)。彼とIngrid(Giovanna Galletti)は、悪魔のようなカップルだ。しかもIngridは麻薬を餌に、Giorgioの恋人Marinaに近づいて、彼女に密告させる卑劣な人間である。

しかしこうした地獄の使者から、どれほど惨い拷問を受けようが、Giorgioは一言も口を割らないまま死んでいき、神父は祈りを捧げながら銃殺された。救いのない絶望的な展開だが、命を懸けて正義や信念を貫く人間を目の当たりにした時、究極の状況に置かれた時の、人としてのあり方を深く考えさせられる。軟弱な私は、簡単に口を割って寝返ったに違いない。


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ドイツ軍のトラックで連行されて行く夫を追うAnna Magnaniが、後ろからドイツ兵に撃たれ、もんどり打って倒れるシーンは、ポスターにも使われ、戦争の勝者と敗者の姿を強烈に印象づけている。ナチの目が光るローマでは、常に死と隣り合わせの生活があり、人々は不安や緊張の中で生きているのだ。やるせないシーンが続く中、神父が2つの像の向きを変えるお茶目なシーンに、ふっと頬が緩んだ。神父の銃殺刑を見ていた少年たちは、一体どんな気持ちで刑場から立ち去って行ったのだろう。


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by amore_spacey | 2017-09-25 01:24 | - Italian film | Comments(0)

テラス (La terrazza)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (75点)

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【あらすじ】 ローマの広いテラスを舞台に、5人のストーリーが展開する。第1話はスランプに陥った映画の脚本家Enrico(Jean-Louis Trintignant)、第2話は妻の心を取り戻したい流行遅れのファッション・ジャーナリストLuigi(Marcello Mastroianni)、第3話は拒食症で鬱のRAI(国営放送)職員Sergio(Serge Reggiani)、第4話は妻に振り回される映画プロデューサーAmedeo(Ugo Tognazzi)、第5話は人妻(Stefania Sandrelli)と浮気をする共産党の議員Mario(Vittorio Gassman)。広いテラスのある家で顔を合わせた5人は、楽しく喋ったり、時には議論を戦わせたり、興奮のあまり喧嘩に発展したり。そして1年後、同じ場所で再会した彼らは…。1980年第33回カンヌ国際映画祭で、脚本賞を受賞。(作品の詳細はこちら )


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広いテラスにご馳走が用意されたブッフェスタイルの夕食に、大勢の人々が招待されて集まった。5つのエピソードに登場する5人は、旧知の仲なのか、ここで初めて顔を合わせたのか、説明がない。が、そんなことはあまり意味がない。イタリア人は初対面でも、すぐに仲良くなる天才だから。5人のエピソードがどれもこれも冴えず、まさしく中年のオヤジにありがちなことばかり。中でもスランプに陥った映画の脚本家Enricoや拒食症で鬱のSergioは、病的ですらあり、他人事だから笑えるものの、これが家族だったら頭を抱え込んでしまう事態だ。


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ローマに住む中産階級の人々の堅実な暮らしぶりは、贅沢さえ言わなければそこそこ幸せなはずなのに、誰も彼もが何か割り切れない思いを抱えている。自分の人生は、こんなはずではなかった。もっと上を目指すことだってできた。ああ、若いあの頃はよかった。そんなノスタルジーに満ちた中にも、ほんの少し気持ちを切り替えれば、またいいことがあるさ。というような、現状を受け入れて行こうとする姿勢が垣間見えてくる。にわか雨が降ってきて、人々がテラスから部屋に駆け込むラストシーン。白いグランドピアノを囲んで、皆が歌う。こんな暮らしだって、悪くないじゃないか、と言わんばかりに。因みにこの作品でJean-Louis Trintignantは、娘と共演している。


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by amore_spacey | 2017-09-03 00:10 | - Italian film | Comments(0)

特別な一日 (Una giornata particolare)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (90点)

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【あらすじ】 1938年5月のローマ、第2次世界大戦前夜、Mussolini政権下のローマをHitlerが正式訪問する、イタリアにとって歴史的な記念式典の日。6人の子育てに追われるMussolini信奉の主婦Antonietta(Sophia Loren)は、これまた盲目的にMussoliniに傾倒する夫や子どもたちを式典に送り出した。山ほどある家事を片付けるのに忙しいというのに、飼っていた九官烏が逃げ出してしまう。これがきっかけで、同じ高層アパートの向かいの建物に暮らすGabriele(Marcello Mastroianni)という男と出会った。そして2人は特別な関係を持つのだが…。(作品の詳細はこちら


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Marcello Mastroianni1人祭り。ローマを訪問したHitlerと、彼を熱狂的に迎えるBenito Mussoliniやイタリア国民のニュース映像が、オープニングでかなりの時間を割いて流れる。ハーケンクロイツの旗とイタリア国旗が翻る祝福ムードのこの日は、イタリア人にとって特別な1日だったが、Antoniettaにはいつもと同じ1日になりそうだ。世間から取り残され、満たされない孤独な日々を送る平凡な主婦に、一体何があるというのだ?

同性愛者のGabrieleは、「夫・父・兵士でない男は、男ではない」と唱えるMussoliniのファスシト政権下で、アナウンサーの仕事を追われ、世間から蔑(さげす)まれ、虐(しいた)げられてきた。いつサルデーニャに送られるのか?不安と孤独の中で、官憲から逃れるようにひっそり暮らしている。


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この2人は結局結ばれるのだが、燃えるような愛ではなく、互いを労わり傷を舐めあうような、憐憫に近い哀しい愛だった。Gabrieleが『三銃士』の本を持って訪ねて来たときから、Antoniettaは何かを期待していた。けれども屋上の洗濯干し場で彼と話しているうちに、今朝自分の心をよぎった愚かな考えを恥じ、「やっぱり男はみんな、オオカミなのよ!」と吐き捨てる。

同性愛者として負い目のあるGabrieleの胸に、その言葉は刃のように突き刺さった。異性と恋愛し結婚し子どもをもうけて家族を作ることが、真っ当な人生とみなされる時代の中で、存在価値のない自分に絶望している。彼自身がそうした自分を嫌悪し、受け入れられなかった。でも明日サルデーニャに連行される前に、せめて世間一般の男が経験するように、女と結ばれてみたい…という儚い願望があったに違いない。


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束の間の情事のあと、Gabrieleの背後から、「また来週会える?」と、淡い期待を抱きながら、何気なく聞くAntonietta、それに答えられず硬直した顔の彼。残酷なシーンだ。屋上の洗濯物干し場から関係を持つに至るまでの、彼らの感情の起伏や気持ちの変化が、痛いほど伝わってくる。ただ同性愛者のMarcelloという設定が…ね。演技だけでなく、身につける物などディテールに拘り、精一杯それらしく見せてはいるが、ゴメン!ピンと来なかった。そこだけ微妙で残念だった。


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ラストシーン。夕食後の片づけをすませ、静まり返った台所の窓際でGabrieleが持ってきた本を読むAntonietta。ふっと窓越しに目をやると、Gabrieleが2人の男に連れられて出て行く。彼が2度とここに戻って来ないことを、彼女はたぶん知らない。本を置いた彼女は、家の灯りを1つ1つ消しながら、夫が眠る寝室に向かい、ベッドにそっと滑り込んで部屋の灯りを消す。誰にとっても特別な1日が、静かに終わろうとしている。そしてうんざりするような明日が、またやってくる。

でもAntoniettaは、それを乗り越えることができる。九官鳥や砂のオモリのついた台所の灯りやボタンで描いたMussoliniの絵を見るたびに、コーヒーミルや『三銃士』の本を手にとるたびに、屋上の洗濯物干し場に行くたびに、Gabrieleのことを、あの特別な1日のことを思い出し、束の間の幸せをかみしめる。他人にはどうでもよい出来事が、Antoniettaをずっと支えてくれるだろう。ファシズムの嵐が吹荒れる中、いくつも生まれては消えていった、市井の人々の小さなドラマ。観れば観るほど、味わい深い。


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この映画に登場するSophiaの6人の子どものうち、娘Maria Luisaを演じているのは、Sophia Lorenの妹とBenito Mussoliniの息子の間に出来た娘Alessandra Mussolini。だからSophiaとAlessandraは、伯母・姪っ子の関係になる。因みに私の姑の叔父は、反ファシストの罪でサルデーニャに送り込まれたが、何年かして戻ってきた。しかも婚約者(市長の娘)を連れて。瑣末なことだけど、Marcelloはここでも『ひまわり』の時のように、慣れた手つきで卵焼きを作っている。そんなに卵が好き?私みたい(笑) マンション管理人のオババは、小柄なのに物凄い存在感がありました。


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by amore_spacey | 2017-07-30 00:42 | - Italian film | Comments(2)

マカロニ (Maccheroni)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (73点)

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【あらすじ】 アメリカ軍の将校としてイタリアに駐在していたRobert(Jack Lemmon)は、晩年になって商用でナポリに来た。彼はかつて愛し合ったMaria(Giovanna Sanfilippo)のもとを訪れ、村人たちから大歓迎された。そしてRobertを待ち続ける妹のために、兄Antonio(Marcello Mastroianni)がRobertになって、手紙を書いていたことを知る。(作品の詳細はこちら


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Marcello Mastroianni1人祭り、進行中。面倒なこともあるが、友情っていいもんだ、歳を取ることも悪くない、幾つになっても人間は変わることができる。この作品を観てしみじみ思う。心が疲れていたり、トゲトゲしくなった時、やさしい嘘や無償の愛や、人を信頼する気持ちに触れると、いつも以上にその有り難味が身に沁みるものだ。

お人好しで茶目っ気たっぷりのAntonioと、仕事一筋で生きてきたRobert。冒頭のシーンから、歯車が噛み合わない対照的なこの2人が、可笑しくて仕方がない。Robertにしてみれば、商用でナポリに来ただけだから、過密スケジュールをやっつけて、さっさとアメリカに戻りたい。ところが思いがけない再会によって、遥か彼方にある記憶が蘇り、彼の乾いた心は少しずつ潤いを取り戻していく。よくある話だが、人の心模様を幾重もの繊細な層で表現できるのは、主役の2人や監督の手腕だけではなく、味のある脇役、そして舞台となったナポリの風景、それらが一体となって見事にとけあった賜物である。


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微妙に噛み合わないAntonioの高齢のマンマとの会話も、何となく分かったふりをしたり、都合のいいように解釈する。マンマへの愛情だ。彼女が乗った車椅子が、これまた素晴らしい。手前には作業台が設(しつら)えられ、背中側にはジュウシマツやカナリアなどの小鳥たちが入ったカゴがいくつもぶら下がり、たとえマンマが1人で居ても退屈しない特別仕様だ。公私混同しないRobertのイタリア側の辣腕秘書が、たった1度だけ酔っ払ってRobertに絡むシーンや、Jack Lemmonのピアノ演奏は、秀逸!

全員が揃ったラストの食事は、『無邪気な妖精たち』を思い出す。トマトソースをたっぷり絡めたパスタが、余りにも美味しそうだったので、その日の夕食はトマトスパゲッティだった。あの紐の先を辿っていくと、Antonioの手に繋がっている。このシーンでは、誰もが奇跡を願うでしょう。ナポリに行ったら、生クリームがのった特大サイズのババを、ぜひとも食べてみたい。


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by amore_spacey | 2017-07-29 00:03 | - Italian film | Comments(0)

あゝ結婚 (Matrimonio all’italiana) 

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 第二次大戦中のナポリ。娼婦Filumena(Sophia Loren)とパスティッチェリア(菓子屋)の後継ぎDomenico(Marcello Mastroianni)は、空襲の日に娼館で出逢った。終戦後2人は再会し、恋仲となって別宅も持った。Filumenaは身請けしてもらい幸福の絶頂…と思いきや、Domenicoは浮気の虫が止まず、彼女に仕事を任せてほったらかし。Filumenaは一計を案じ、危篤状態を装って無理矢理Domenicoに結婚を迫った。(作品の詳細はこちら


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Marcello Mastroianni1人祭り、進行中。『イタリア式離婚狂想曲』に負けず劣らず、Marcelloのクズっぷりが炸裂するコメディだ。のらりくらり言い逃れながら、いつまでもFilumenaを日陰の女にしておき、それをいいことに、高齢の母の介護をさせたり、メイドの部屋で寝かせたり、店の仕事をやらせたりして、自分はパスティッチェリアのレジ係の若い女とよろしくやるって、とんでもないヤツだ。何とかして報復してやりたくなります。


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大輪のひまわりが咲いたようなSophiaの満面の笑顔や、健康的&魅力的なダイナマイト級のナイスバディは、見るものを元気にしてくれる。天真爛漫で、惚れっぽい性質(たち)。読み書きができなくて、自分の名前を署名するのにも、時間がかかってしまう。が、勝気で威勢がよく、理不尽な目に遭えば、徹底的に闘う。口喧嘩だって絶対に負けやしない。そんな彼女も3人の子どもたちの前では、母性愛に満ちた母の顔に戻る。子どもの病気にアタフタしたり、幸せに涙ぐんだりする情の深さ。どの仕草もどの表情も可憐で繊細で、女心が随所ににじみ出て、ほろりとさせられた。彼女がすけすけのエロティックな衣装を着ても、嫌らしさがない。彼女の存在が眩しいほどゴージャスだから。

彼女とMarcelloとDe Sica監督、この3人がいるロケ現場は、きっといい雰囲気だっただろうなぁ。それぞれの持ち味が最大限に引き出される、最強のトリオだ。MarcelloとSophiaのカップルは、イタリア映画の黄金時代を築き、その中を華麗に走り抜けていった。2人は様々な作品で悲喜劇を演じてきたが、その時々で感情の匙加減が絶妙な具合に加減され、微妙な色合いの違いを楽しませてくれる。この作品はSophiaの手のひらで転がされているように見えるMarcelloだが、そんな彼にぞっこんだったのは、実は負けん気の強いSophiaだったかもしれない。彼のことが好きで好きでたまらなかったのに、自分からは言えなかった。だから、ラストシーンにほっとした。「ああ、本当によかった」


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こてこてのナポリ方言(サレルノ方言?)も、この作品をより人間味溢れるものにしている。パスティッチェリアのお菓子の山や、子どもたちが口のまわりや鼻の頭や服を粉砂糖だらけにして、お菓子を食べるシーン。メイドのおばちゃんやAlfredoなど、庶民的な雰囲気満載の脇役たちも、映画を引き立ててくれた。身振り手振りが大袈裟な、人情味に溢れたお節介おばちゃん、いますものね。


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by amore_spacey | 2017-07-28 01:18 | - Italian film | Comments(0)