カテゴリ:- Other film( 359 )

特捜部Q キジ殺し (Fasandræberne / The Absent One)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

ネタバレあり!

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【あらすじ】 前回の事件の解決により、特捜部Qは窓際部署から未解決事件特捜部に昇格した。ある日Carl(Nikolaj Lie Kaas)のデスクに、20年前に捜査終了したはずの、全寮制高校で起きた双子惨殺事件のファイルが置かれていた。何者かの意図を感じた助手のAssad(Fares Fares)たちは再捜査に乗り出すと、事件当時に重要情報を知っていた少女Kimmie(Sarah-Sofie Boussnina)が失踪していたことが判明する。一同はすぐにKimmie(Danica Curcic)の行方を追い始めるが、Kimmieを探し続けている人物は他にもいた。Jussi Adler-Olsenのミステリー小説『特捜部Q』を映画化。(作品の詳細はこちら


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地味な特捜部Qに、出来る秘書Rose(Johanne Louise Schmidt)と猫が加わって、いくぶん賑やかになってきました。でも猫の名前がキャットって、、、どんだけ無関心やねん。仕事以外はダメダメなCarl、女性を前にすると頭が真っ白になるのか?さらっと気軽に誘えなくて、歯痒いったらありません。


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今回は20年前の事件。これに全く無関係な人なら(まぁ大部分の場合がそうです)、「えーっ、そんなコトあったっけ?」「双子の惨殺事件?言われて見れば、あったかも」くらいの曖昧な記憶しかないけれど、当事者や被害者にとっては、一生忘れられない事件だ。表向きは解決されたことになっているが、まだ終わっていないどころか、この先また死者が出るかもしれない。犯人の共犯者であり犠牲者でもあるKimmieが、命を懸けて復讐しようと、犯人を追い続けているからだ。


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品行方正なお金持ちのおぼっちゃんたちは、蚊も殺せないほど繊細な心の持ち主かと思いきや、残虐で凄まじく暴力的なやつらだったね。級友を虐めるシーンはおぞまし過ぎて、目を背けてしまった。そんな奴らだから、大人になっても富裕階層にのさばり、権力と金で暴力沙汰を揉み消して、のうのうと暮らしている。ったく、吐き気がする話だ。

結局こいつらはうまく立ち回って逃げ切るんだろうと諦めていただけに、CarlやAssadたちが仕留めたときには、幾らか胸のつかえが取れた。しかしこのエピソードも、後味が悪いったらない。いや、後味がいい殺人事件なんて、この世に1つもないのは、分かっちゃいるんだけど。この事件の犯人たちの、更生しそうにない残虐性に、深い闇や絶望を感じます。


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Carlはギクシャクしている義理の息子との関係を何とかしたくて、彼を夕食に誘っておきながら、犯人探しに躍起になるあまり、すっかり約束を忘れてしまう。「やっちまったー」って彼じゃなくても、豆腐の角に頭をぶつけたくなる。仕事バカのCarlらしいエピソードだ。

因みに「キジ殺し」とは、特権階級による娯楽としての狩猟を意味し、娯楽目的で鳥を撃ち殺して、征服欲を満たす狩猟心理と、身勝手な傷害・殺人事件を起こす犯罪心理を重ねているという。イタリアにも狩猟解禁の時期になると、国内だけでなく国外まで出かけて行って、狩猟を楽しむ階層がいる。… 何だか … なぁ。


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by amore_spacey | 2017-11-10 01:11 | - Other film | Comments(0)

特捜部Q 檻の中の女 (Kvinden i buret / The Keeper of Lost Causes)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (83点)

ネタバレあり!

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【あらすじ】 捜査ミスにより部下を殉職させ、自身も重傷を負った経験を持つ殺人課の刑事Carl(Nikolaj Lie Kaas)は、特捜部Qへ転属されることになったが、そこは未解決事件の残務整理を主な業務とする閑職部署だった。仕事をしていく中で、Carlは5年前に起きた女性議員の失踪事件に興味を持つ。議員のMerete(Sonja Richter)が、船から投身自殺したとして処理されていたのだ。イラクから研修に来ている助手Assad(Fares Fares)の力を借りながら、Carlは再調査に挑むのだが…。Jussi Adler-Olsenのミステリー小説『特捜部Q』を映画化。(作品の詳細はこちら


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Mads Mikkelsenと何度も共演していて、気になっていたNikolaj Lie Kaasが、何と!主役じゃないですか。嬉しくなって観てみたら、期待を裏切らない面白さで、見事にハマッてしまいました。派手なカーチェイスや銃撃戦なんてものは、1度も登場しない。むさくるしいおっさん刑事2人が、寒くて陰鬱な北欧の地で、未解決事件の捜査にあたる。残酷なシーンや血まみれシーンもほとんど登場しない。それどころか異様に美しいシーンが時々出てきたりして、面食らう。それが却って不気味で、猟奇的な雰囲気を煽るのだ。今回は粘着気質な人間特有の執拗さに、背筋が凍りつきました。

ぶっきらぼうで無愛想なCarlと、毛むくじゃらで人懐こい助手のAssad。という安定のキャラ設定だが、Carl役や相棒のAssad役がハマり過ぎで、これ以上のキャスティングはあり得ないかも。画面にこの2人が出てくるだけで、何かありそうで(何もなくても)面白い。


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さて不条理な運命に憤る犯人の復讐は、どす黒くて凄まじく執拗なのに、交通事故の現場がとても静かで美しい。白い雪が舞う中に立つ、真っ赤なワンピースを着た天使?いや、あれは少女Mereteだ。そんな彼女を、横転した車の中から、当時少年だった犯人の目が追う。音もなくスローモーションで動いていくシーン。事故のショックで、一瞬、魂が身体から遊離するために起きる現象なのか?目の前の状況が、あまりにも現実離れしていて、キツネに抓まれたかのようだ。


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自分がこんな悲惨な人生を送っているのに、全てを奪った元凶のMereteは、女性議員として成功している。はらわたが煮えくり返るような憎悪。そしてあの時、一瞬でも彼女に魅了されてしまった自分へのおぞましさや自己嫌悪。そこに粘着気質が加わって、復讐の鬼と化すのだ。それにしても酷い拷問だ。あんなひどい目に遭わされるくらいなら、さっさと殺して下さい。


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犯人に辿り着くまでの展開も興味深いが、ちぐはぐな2人の刑事の捜査活動や、ちらっと垣間見えるCarlの私生活が、地味な作品に小さな起伏をもたらしてくれる。この2人が徐々に距離を縮めていき、面白コンビになっていく過程もたまらない。刑事という肩書きを取り払った、1人の人間としてのCarlの生き様を見ていくうちに、じわじわ親近感がわいてくる。Assadの淹れた不味いコーヒーも、後半で認めたCarl。あの微妙な表情が可愛い過ぎる、このシリーズの原作を、読んでみたくなりました。


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by amore_spacey | 2017-10-31 01:51 | - Other film | Comments(0)

終わりの感覚 (The sense of an ending)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

ネタバレあり?

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【あらすじ】 妻Margaret(Harriet Walter)と離婚したが、それなりに穏やかな引退生活を送る60代のTony(Jim Broadbent)のもとに、弁護士から手紙が届き、日記と500ポンドをTonyに遺したという女性の存在を知らされる。それは学生時代に恋人だったVeronica(Charlotte Rampling)の母親Sarah(Emily Mortimer)で、託された日記は、学生時代に自殺をしたAdrian(Joe Alwyn)のものだった。Tonyは記憶を懸命に探りつつ、かつての恋人を探しあてるが…。Julian Barnes原作の小説を映画化。(作品の詳細はこちら


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1通の手紙がTonyに届く。それを読んだ瞬間から、彼の穏やかな生活に遥か昔の学生時代の記憶が入り込んできて、何とも不思議な時間を過ごすことになる。すっかり忘れたはずの、しかし頭の片隅にこびりついていたあの事件。まさかこんな形で、過去を振り返ることになろうとは。本人が一番びっくりしたに違いない。

Tonyは何とかしてAdrianの日記を取り戻そうとするが、Veronicaがあれほどまで意固地になって拒否したり、当てつけのような冷たい態度をとったのは、納得がいかなかったが、観終わってから腑に落ちた。手紙を送った側は自分のやったことを憶えていないが、受け取った側は何年経っても憶えているものだから。


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元カノVeronicaと秀才Adrianが付き合っていると知り、Tonyは鬱憤をぶちまけた手紙を2人に送った。そのことを彼はきれいに忘れているが、巡り巡ってこの手紙がTonyに衝撃の真実をもたらす。因果応報。Veronicaに気づかれないように後をつけたことで、Tonyは想像もしていなかった真相に突き当たる。

障害のある青年。過去の記憶を照らし合わせていくと、この青年はVeronicaとAdrianの子ではないか?Tonyも視聴者もそう思う。それがごく自然な流れだと思うのだが、この真相に迫る展開は二転三転して、とてもスリリングだ。しかしこの真相には、うーん、ちょっと飛躍のし過ぎ?とも思ったが、まぁいいでしょう。


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若かりし頃のTonyを演じたBilly Howleが、いかにも正当な英国青年という風貌でハマリ役ですね。過去と現在のTonyを見ながら思うのは、彼が離婚に至ったのも、愛する人々に無関心な部分があるから?友人Adrianや元カノVeronicaへの仕打ちは酷いものだし、元妻や娘に対しても似たようなことがいくつもあったからに違いない。

それは冒頭に登場する、郵便配達の兄ちゃんとのやりとりからも分かる。しかしあんなにつっけんどんだったTonyが、フィナーレでは兄ちゃんにカフェをご馳走しちゃうんだから。一連の事件から、Tonyは自分という人間や人生の見え方が変わり、ほんの少し人間味が出てきたという訳だ。


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by amore_spacey | 2017-10-22 02:17 | - Other film | Comments(0)

23年の沈黙 (Das letzte Schweigen/The Silence)

ネタバレあり。
 
私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 13歳の少女Ginaが失踪し、麦畑で自転車が発見された。23年前の同じ日・同じ場所で、自転車に乗った11歳の少女Piaが暴行され殺された。この事件は未解決のままだったが、元警官Krischan(Burghart Klaußner)は、同一犯の仕業と確信して捜査に乗り出す。一方、23年前にPiaが殺害されるのを傍観していたTimo(Wotan Wilke Möhring)は、町を逃れ名前を変えすべてを封印して幸せな家庭を築いていたが、今回の事件で忌まわしい過去に引き戻される。そして町に戻ったTimoは、Piaの母親Elena(Katrin Saß)の元を訪ねた。(作品の詳細はこちら


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ったく、なんとまぁ、後味の悪い終り方なんだろう。最近この手の作品を観ていなかったので、免疫力が低下。どっと疲れた。犯人は絶対にPeer(Ulrich Thomsen)と思ったが、時間が経って考えてみると、そうとは言い切れない部分がある。というより、この作品は犯人探しが目的ではなく、23年前と現在の事件の関係者や遺族、警察や犯人(と思われる)が抱える、それぞれの孤独や後悔、喪失感や悲しみや罪悪感を描いたものなんだろうと思う。娘Piaを失った母親Elenaの心情や、どんどん追い詰められていくTimoの内面が、痛いほど分かる。2人とも、素晴らしい役者だが、23年前のTimoが老け過ぎで、学生というには無理があった。そこだけ残念でした。


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地味で陰鬱で物悲しいのに、何度も映し出される麦畑がなんと美しく、町が整然としていて、事件とは無関係の顔で存在している。その無関心で突き放したような映像が、人々の重苦しい内面を際立たせる。美しい映像と残虐な事件と迷宮入り的なフィナーレと言えば、『殺人の追憶』がまさにそうだった。もやもやが残る。やるせない思いが募ってくる。奥の深い秀作だが後味がとても悪く、気持ちが落ち込んでいる時には、あまりお薦めできない。


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by amore_spacey | 2017-10-16 01:08 | - Other film | Comments(0)

ダンケルク (Dunkirk) 

私のお気に入り度 ★★★★☆ (85点)

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【あらすじ】 1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、Tommy(Fionn Whitehead)やアレックス(ハリー・スタイルズ)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方イギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長Mr. Dawson(Mark Rylance)は息子らと一緒に、ダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのFarrier(Tom Hardy)が、数において不利ながらも出撃する。(作品の詳細はこちら


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いや、参った。まるで戦場にいるかのような臨場感があり、緊張感に包まれてずっと心臓バクバク。エンドロールとともに場内が明るくなって、やっと現実に引き戻された感じだった。あの迫力やドキドキを、うまく言葉で表現することができない。埠頭で船を待つ間、爆撃されたら逃げ場がない。やっと見つけた漁船に乗り込んだら、ボコボコに穴をあけられて、水がどんどん入ってくる。Tom Hardyが操縦する英国戦闘機は、1時間分の燃料しかない。


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陸上と空中で手に汗を握るシーンが展開しているのに、救助作戦に参加したMr. Dawsonの民間船といったら、これでダンケルクに辿り着けるの?な体裁の船で、心許(もと)ないったらありゃしない。でもね、船長のMr. Dawsonが気骨のある人なんですよ。彼だけじゃない。何百隻もの民間船を出した、漁師や遊覧船の船長たちの善意の勇気が、凄いじゃないか。

時を刻むような不穏なメロディー。同じリズムを繰り返しながら、徐々に音が大きくなる。息が詰まるような緊迫した空気を醸し出す、Hans Zimmerの音楽(←音が出ます!)。はぁぁぁ、サントラを聴いているだけで、神経やられそう。秒刻みのこのリズムって、拷問だわ。切羽詰った感が半端なくて、泣いちゃう。


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地上の兵士Alexを演じたHarry Stylesが、なかなかいい。若い頃のKevin Baconに似ているが、性格はもっとずっと素直な青年のような気がする。主役のTommyを演じたFionn Whiteheadが大根地味だったから、Harryのような表情のある兵士がいてくれてホッとしました。One Directionと役者を掛け持ちして、これからも時々映画やドラマに出て欲しいな。


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by amore_spacey | 2017-09-22 01:12 | - Other film | Comments(2)

ルージュの手紙 (Sage femme)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 セーヌ川流れるパリ郊外に暮らす助産婦Claire (Catherine Frot)の元に、30年間姿を消していた血のつながらない義理の母Béatrice (Catherine Deneuve)から電話があり、「会いたい!」と言われる。Claireはずっと、大事な父を捨てた彼女のことを許せなかった。父はその後、自殺をしてしまったのだ。真面目すぎるClaireと自由奔放に人生を謳歌しているBéatrice 。性格が全く違う二人だが、互いを受け入れ、Béatriceの古い秘密が明らかになることによって、失われた年月が埋まっていく。いつしかClaireはBéatriceの生き方に影響され、人生の扉を少しずつ開きはじめる。(作品の詳細はこちら


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機内上映第5弾。実直で生真面目なClaireにFrot、人生を謳歌する自由奔放な義母Béatrice にDeneuveを配するなんて、これは適材適所の見本です。ストーリーや人間関係は全く違うが、『歓びのトスカーナ』で描かれた人のぬくもりに通じるものがあった。心を通わせることができる相手が、そばにいる。そして傷ついた心を癒してくれる。それが親子であろうと友人であろうと血の繋がらない母娘であろうと、支えがあるというのは、心強いパワーになるってもんです。


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年齢を重ねたからこそできる会話がある。辛口のユーモアも、笑い流すことができる。一生許せないほど憎んでいたはずなのに、その感情がいつの間にか消滅する。そして母娘の関係をこえた、人間同士の絆が芽生えていくのだ。フランスを代表する女優の競演は、大袈裟にならず落ち着いていて期待通りでした。が、Claire付き合い始めたPaul Baron(Olivier Gourmet)の存在が中途半端で、ちょっぴりもやもやが残りました。


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by amore_spacey | 2017-09-20 23:27 | - Other film | Comments(0)

昼顔 (Belle de jour)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 Séverine(Catherine Deneuve)と若い外科医Pierre(Jean Sorel)は、仲の良い幸せそのものの若夫婦だ。しかし幼い頃、野卑な鉛管工に抱きすくめられたことのあるSeveineは、それがトラウマとなって不感症になり、Pierreとベッドを共にできない。が、その一方でしばしば、淫らな妄想に駆られる。
 ある時彼女は友人のRenee(Macha Méril)から、良家の夫人たちが、夫には内証で売春をしているという話を聞き、大きな衝撃を受ける。しかし意を決してその高級娼館を訪れたSéverineは、女主人Anais(Geneviève Page)から「昼顔」という源氏名をもらった。こうして貞淑な妻だった彼女は、昼間だけ娼婦として欲望に身をまかせるようになる。第28回ヴェネツィア国際映画祭で、金獅子賞を受賞。(作品の詳細はこちら


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シャンシャンシャンシャンと鈴を鳴らした馬車が、夫婦を乗せて森の小径を走ってくる。執拗なこの音がサンタクロースを乗せたソリのようで、冒頭から大爆笑してしまった。そして真っ赤なコートを着たDeneuveがアップになる。ポーセリンのような肌に美しいブロンドの髪。清楚で気品に満ちた振る舞い。このとき23歳。彼女の美しさの前では、全てが色褪せる。何不自由なく大切に育てられ、殆どの男性にとっては高嶺の花のような存在。フランスのGrace Kellyだ。


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しかしだからこそ、手の届かない女を、卑猥な言葉で蔑(さげす)んでみたい。縄で縛り上げムチを打ち付けて、悶(もだ)え苦しむ姿を見てみたい。というサディスティックな感情も芽生えてくる。貞淑な妻Séverineの淫らな妄想ということになっているが、実は若くて美しいDeneuveを、傷つけ痛めつけてみたいという監督の欲望が抑え切れず、映像化したんじゃないか?と勘繰ってしまう。女性も想像力に富んでいるから、色々と妄想するが、これは男性の目線で描かれた作品に違いない。とにかく、監督業って美味しすぎるわ、うふふっ。


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客としてくるのが、風変わりな男ばかり。美しく清楚なDeneuveだからこそ、変な男たちに弄(もてあそ)ばれるエピソードは、より官能的で男たちの妄想を膨らませるのにうってつけなのだ。現実と妄想の世界を行き来しているかのようにみえるが、実は最初から最後まで監督(=世の中の大部分の男性)の妄想だったのかもね。しかしDeneuveは、こんな役をよく引き受けたものです。脚本を何度か読むうちに、彼女の中に潜んでいたMな部分が刺激されて、演じてみたくなったのかしら?何だこりゃ?なシーンがてんこ盛りで、面白おかしく楽しめました。また当時流行ったサンローランの服を纏い、色々なヘアスタイルのDeneuveを堪能できたのも、目の保養になりました。


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by amore_spacey | 2017-09-18 01:29 | - Other film | Comments(2)

ドリーム (Hidden Figures)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (77点)

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【あらすじ】 1960年代の初め、ソ連との宇宙開発競争で遅れを取っていたアメリカは、国家の威信をかけて有人宇宙飛行計画に乗り出す。NASAのKatherine G. Johnson(Taraji P. Henson)、Dorothy Vaughan(Octavia Spencer)、Mary Jackson(Janelle Monáe)は、差別や偏見と闘いながら、宇宙飛行士John Glenn(Glen Powell)の地球周回軌道飛行を成功させるため奔走する。人種差別が横行していた1960年代初頭のアメリカで、初の有人宇宙飛行計画を陰で支えたNASAの黒人女性スタッフの知られざる功績を描く伝記ドラマ。(作品の詳細はこちら


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機内上映第4弾。久しぶりに見るKevin Costnerを楽しみにしていたんだけど、数字の天才Katherineや冷静沈着なDorothy Vaughan、そしてちょっぴりお転婆なMary、個性的な3人にすっかり魅せられ、作品にぐいぐい引き込まれた。差別や偏見に、どう立ち向かっていくのか?そこが見所だ。


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あまりにも理不尽な状況に、Katherineがたった一度だけ我を忘れて怒りを剥き出しにするシーンがある。が、瞬時にして取り戻す自制心や理性や冷静さには、数学の天才とか栄光あるNASAの職員とかいう肩書きなんぞ吹っ飛ばす、猛烈に強い説得力があった。Katherineは、まさに神対応をみせてくれた。正当であること、その表現の仕方がスマートでエレガントなのだ。人々が狼狽するのも無理はない。


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それにしても、どこをどうすると、『Hidden Figures』が『ドリーム』(邦題)になっちゃうんだろう?興行成績を優先する、耳に心地よい言葉に置き換えただけでは、この映画の真意は伝わりませんでしょ?


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by amore_spacey | 2017-09-17 02:42 | - Other film | Comments(2)

タクシー・ドライバー (Taxi Driver)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (82点)

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【あらすじ】 ベトナム帰りの元海兵隊員Travis Bickle(Robert De Niro)は夜のニューヨークをタクシーで流しながら、腐敗しきった世の中に苛立ちを感じていた。大統領候補の選挙事務所に勤めるBetsy(Cybill Shepherd)と親しくなるが、彼女をポルノ映画館に誘ったことで絶交されてしまう。Travisの不眠症はますますひどくなり、心は荒んでいく一方であった。そんな中、彼のタクシーに突如13歳の少女Iris(Jodie Foster)が逃げ込んできた。ヒモらしい男Sport(Harvey Keitel)が彼女を連れ戻す。やがて闇ルートから銃を手に入れ 、自己鍛錬を始めたTravisに、ひとつの計画が沸き上がった。第29回カンヌ国際映画祭で、Palme d'Orを受賞。(作品の詳細はこちら


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機内上映第2弾。ベトナム戦争によるトラウマから、重度の不眠症に陥り、社会に順応出来ずに、孤独や絶望に苦しんでいるTravisに、カチッとスイッチが入った。彼の中に芽生えた独りよがりで狂気に満ちた正義感は、もはや誰にも止めることができない。


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自分の正義を貫き浄化作戦を完了したあと、Travisは何事もなかったかのように再びタクシーのハンドルを握る。そのシーンは冒頭に繋がり、負のスパイラルの中で回り続ける。出口が見えない、やりきれなさ。ひとときだけ英雄扱いされてチヤホヤされようが、彼の暮らしは変わらない。虚しさが残るだけ。


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実はこの作品を初めて観た。そして暴力への厭世感や矛盾に満ちた現実への、やり切れなさや絶望。殺伐とした街や人間の心情を、ここまでクールに淡々と演じたDe NiroやMartin Scorsese監督の優れた演出に、大きく揺さぶられた。暴走するTravisを批判しながらも、ある部分で共感している自分にハッとした。13歳のJodei Fosterの妖艶な美しさが印象的。


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by amore_spacey | 2017-09-14 00:15 | - Other film | Comments(2)

サルバドールの朝 (Salvador)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (81点)

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【あらすじ】 1970年代初頭、フランコ政権末期のスペインで、自由解放運動のグループに所属する25歳のSalvador(Daniel Brühl)は、不慮の発砲により若い警部を死なせてしまう。彼は正当な裁判を受けられないまま死刑を宣告され、彼の家族や仲間、担当の弁護士Arau(Tristán Ulloa)や彼の同僚たちは何とか処刑を防ごうと手を尽くすが…。(作品の詳細はこちら


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近代~現代スペインにあんな過酷な歴史があったなんて、この映画で初めて知りました。30年以上も軍事独裁政権が牛耳っていた?軍隊や秘密警察が、ついこの間まで普通に市民生活を脅かしていた?うわぁ、想像がつきません。

激動する歴史に翻弄される役を演じると、Daniel Brühlはじわじわと、しかし圧倒的な説得力で迫ってきます。チャラい役は似合わない。と言っても、主人公のSalvadorは革命の闘士になって、この国を変えてやる!ほどの意気込みはなく、当時の若者の間ではカッコイイことだった政治を熱く語ることで、少しだけ目立ち、人から一目を置かれたかった。


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Jesús刑務官(Leonardo Sbaraglia)が言うように、独裁打倒!を掲げつつも、お坊ちゃんの遊びでしかなかったのかもしれない。だからJesúsはSalvadorに、嫌悪感を抱いたのだ。そのJesúsは、父に宛てて書いたSalvadorの手紙の中に、肉親への愛や慈しみを感じ、共感を寄せ次第に友情を抱いていく。Salvadorの処刑を目の当たりにして、自分こそ権力の犬であったことを恥じ、「Francoは人殺しだ!」と思わず叫ぶ。


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絶望的な状況を熟知しつつも、Arau弁護士は最後まで信念を曲げず突き進み、Salvadorの隣で支え続ける。Salvadorと家族(特に姉妹とのやりとり)の愛情や友人たちとの友情…など、人間の良心に心を動かされ、この国にも救いや希望があるのを見ました。Daniel Brühlの1人祭りはとりあえず、これで終わります。


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by amore_spacey | 2017-09-13 00:05 | - Other film | Comments(0)