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La Bestia nel Cuore (心の中の獣)

私のお気に入り度 ★★★★☆(85点)

ネタばれあり。

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声優の仕事を持ち、同僚のFrancoと一緒に暮らすSabina。何の問題もない幸せそうな2人に見えるが、Sabinaが妊娠に気づいた頃から、幼少時代の傷跡が蘇る。
家族問題を取り上げた作品が最近イタリアで増えているが、この作品では、子どもが育つ環境、幼い頃はそれが普通だと思っていた環境が、成長と共に、実は醜く歪んだもの、他人には語れないものであったと知り、愕然とする。さらに傷を深めてしまう。その傷が生涯彼らを苦しめ続けるのか?それとも新しい環境の中でこの呪縛から逃れることができるのか?新しい命の誕生によって、一筋の希望が投げかけられ、それぞれの状況が好転しつつある余韻を残して終わっている。

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わぁ~、こんなところにAlessio Boniさまがいらっしゃる~
今回は『La Meglio Gioventu'』の時ほど精神的に追い詰められた役柄でなく、Sabinaを優しく見つめる視線や、彼女の身体を慈しみ愛する仕草がとても柔らかくて、またまたAlessio様に目がピターーッと吸い付いてしまいました。こんな上向き加減の視線も、真っ直ぐ投げかける視線も、何もかも、あああああ~!!!


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あれは悪夢だったのか?実際に起きたことなのか?近親相姦という、他言できない痛手を負う兄妹が成長し、家庭を築き子どもをもうけることになってから、過去の傷跡に再び塩を塗りこむような苦悩に苛(さいな)まれる。私は親になる資格がない、自信もない。兄Danieleと1対1で初めてパンドラの箱をあけるSabina。
やはりあれは現実の出来事だった。しかも兄は兄なりにずっと苦しみ続け、泥沼から這い上がろうとあがいていたのだ。自分より深いところで兄はもがいていた。可哀想な私たち2人。優等生で人生の成功者に見えた兄が、嗚咽しながら心の内を吐露してくれた。その衝撃と「苦しんでいたのは私一人ではなかったのだ」という安堵。この対話がきっかけで、Sabinaは前向きに考えるようになる。
をっ!『La Meglio Gioventu'』のLuigi Lo Cascioですね。 彼は医師や大学教授といった、割と分別くさい役柄がピッタリ。


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Sabinaを取り巻く人々がとても魅力的で、こちらも目がはなせませんョ。
幼馴染で目が不自由なEmiliaはSabinaを女友だち以上に慕い、心の拠り所にしている。それ以外の世間との接触はいっさい断ち、地下室のような一室でダックスフンドと暮らす。その彼女もある日散歩に出たことから、徐々閉ざした心を開き、外の世界に出て行けるように…。

Sabinaの同僚のMariaは、夫が自分の娘ほどの女の子と恋に落ちたことで、結婚生活は破局し世の中の男という男に愛想をつかす。そんな自分の中に、同性を愛する気持ちが芽生えるのを知る。Maria演じるAngela Finocchiaroは、TVドラマでも味のある会話と演技で、素晴らしい脇役を務めてくれる。彼女のような女優さんが増えると嬉しいです。

Sabinaの婚約者のFrancoが出演するTVドラマシリーズの監督Andreaが、これまた一風変わった男。格調高い映画を撮りたいという長年の夢も、経済的な理由から、安っぽいTVドラマの監督に甘んじる自分を自嘲。『Pane e tulipani』でユニークな探偵を演じていた彼。このキャラがとっても好きだわ~。

重いテーマを扱いながら湿っぽくならなかったのは、EmiliaやMariaやAndrea監督のちょっぴりシニカルでウィットに富んだやりとりによるところが大きいでしょう。

製作国:Italy・UK・France・Spain
製作年:2005年
監督:Cristina Comencini
キャスト:Giovanna Mezzogiorno, Alessio Boni, Stefania Rocca, Angela Finocchiaro, Giuseppe Battiston, Luigi Lo Cascio, Francesca Inaudi ...
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by amore_spacey | 2007-05-31 03:34 | - Italian film | Comments(0)

ゆれる

私のお気に入り度 ★★★★☆(95点)

ネタばれあり。


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ある出来事をきっかけに対照的な兄(香川照之)と弟(オダギリジョー)の間に起こる心理的葛藤が巧みな構成で描かれている。観始めて5分が経過、「なぁんだ、東京で活躍する若手写真家の、ちょっとお洒落で口当たりの良い恋愛物語かぁ」 見るのをやめようかと思っていたら、あれよあれよと言う間に本題に突入。ポテトチップスをつまみながら見ていた私は、姿勢を正して作品に向かいました。

兄弟はガソリンスタンドで働く幼なじみの智恵子と3人で近くの渓谷に足をのばす。ところが、川に架かる細い吊り橋で、智恵子が眼下の渓流へと落下してしまう。そして、橋の上には呆然とする稔の姿が。橋の下にいた猛は惨事に気づき、動揺する稔のもとに駆け寄り落ち着かせる。兄弟の証言から、最初は不幸な転落事故と思われたが、数日後、稔が突然“自分が突き落とした”と自供したことから、事件の真相を巡って裁判へともつれ込む。猛は弁護士である伯父を立て、稔の無実を晴らそうと努めるが…。


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母の葬式にも顔を出さなかった弟の猛が、その一周忌に久々に帰郷し、そこで父と共にガソリンスタンドを経営する兄の稔と再会する。仏壇の前で説教をするお坊様、真摯に耳を傾ける一族、広い座敷、障子から射す光、儀式が終わった後、座敷に一族が集まってお膳を前に座る、家族は酌をしながら親戚に挨拶…という一周忌のシーンは、子どもの頃わがやでも日常的に繰り広げられていた、懐かしい場面の数々だった。「ああ、お経がもっと短かったらいいのに。」 長時間の正座で感覚がなくなった足先をむずむず動かしながら思ったものでした。


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香川照之はうまい。文句なくうまい!TVドラマで犯罪者を演じていた彼を見た時、その刻々と微妙に変化する表情や口調に圧倒された。大声で彼(兄)を呼びとめる弟に気づいたバス停の彼が、固く張り付いたような表情からふわっと力が抜けて、一瞬笑いかける、あのラストシーンの表情を見ていたら、『L.A.コンフィデンシャル』で唐突に銃で撃たれて死ぬケヴィンの生から死への移り変わりが、現実よりリアルだったあの表情を思い出しました。また裁判所での彼(兄)にも、ケヴィンにかぶるものが多々ありドッキリ★ オダジョーを観るための作品だったのだけれど、香川照之の不思議な魅力にぐっと惹かれました~♪^^


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オダジョーも大健闘だったでしょう。『有頂天ホテル』での彼は、かなり神経質で摩訶不思議な仕事人間でありながら、感情の起伏が見られず、オダジョーの素顔がよく分からなかったのですが、この作品ではやり切れなさや哀しみや切ない気持ちを色んな表情で伝えてくれた。

同じ女性を好きになったことで、その女性が事故なのか他殺なのか?不明瞭な状況で死んだことによって、兄弟の本音が一気に吐露される。同じ環境のもとに育ち、本質的な部分では似通っているように(分かり合えるように)見えるが、外には表れない兄弟の確執や、譲りがたく許しがたい本音の部分が、年月を重ねるごとに根強く残り、それが何かの拍子で着火すると決定的な破局を迎えることもありえるのだ。ラストシーンの兄の微笑みは、事件の無実を信じることによって弟がありのままの自分を受け容れてくれたのであろうという、安堵の気持ちの表れであったと思いたい。あれは決して薄笑いなどではないのだと。

製作国:Japan
製作年:2006年
監督:西川美和
キャスト:オダギリジョー, 香川照之, 伊武雅刀, 真木よう子, 蟹江敬三, 新井浩文 ...
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by amore_spacey | 2007-05-24 04:54 | - Japanese film | Comments(10)

The Tudors Season 1 (テューダー朝)

私のお気に入り度 ★★★★☆(86点)

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アメリカのShowtime channelで放映中のThe Tudors、Season 1全10話のうち第5話まで完了。

『マッチ・ポイント』以来久し振りに見るJonathan Rhys Meyers。賢くありながら激しい性格のヘンリー8世を演じる上で、Jonathanの持つ善悪のキャラクターが、うまく活かされている。このシリーズがいつまで続くのか謎であるけれど、先がとても楽しみです。

ワイルドで翳のある美しいJonathanが主演、しかもぬうど姿やうふふシーンが盛りだくさんです。お見逃しなくね!アメリカでは15~25歳の視聴率が断然上昇中らしい。確かにうふふ(*^^*)なシーンが毎回必ずあるね。本物のヘンリー8世は腰回りが140cmの樽体型だったというのに、Jonathanの鍛えられたあのしなやかな肢体は…うふふっ(^^)



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イングランド王ヘンリー7世の次男ヘンリー8世(1491-1547)は、急死した兄アーサーの妻キャサリンと非公式の結婚式を挙げ、テューダー朝のイングランド王(在位:1509-1547)、アイルランド王(在位(自称):1541-1547)となる。

彼はイングランド王室史上最高のインテリであるとされ、ラテン語、スペイン語、フランス語を理解し、舞踏、馬上槍試合などスポーツにおいても優れた才能を発揮した。音楽にも造詣が深く、ヘンリー8世作曲とされる楽譜(合唱曲“Pastime with Good Company”など)が現存しているなど、文化史にもその名を残している。妃やトマス・モアをはじめとする側近を次々と離別・処刑し、カトリック修道院の財産を没収するなど苛烈な人物であったが、イングランド王室の権威確立に寄与した。(wikipediaより)



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昨日の第5話では、王妃キャサリン(写真左)が邪魔になってきたヘンリー8世は、彼女との結婚は非公式であるから正式にはなかったことになる。だからこの夫婦関係は存在しないことになる、という理屈を持ち出して、離別に成功するが、その仲裁役に抜擢されたヨーク大司教トマス・ウルジー(写真右)の苦しい立場と言ったらない。街で見初めたアン(写真中央)を正式な愛人に迎える準備のため、正妻キャサリンを追放しようと企むヘンリー8世の心の内を知るからだ。しかし王の幼少期の監督係も務めていたヨーク大司教は、王の決心が堅固であることも分かっている。
正妻追放に成功した直後、唯一の男子跡取りが病死する。王の跡継ぎは今のところキャサリンとの間にもうけた王女1人だけ。テューダー朝はどうなるのか?

製作国:USA
製作年:2007年
番組制作:Michael Hirst
キャスト:Jonathan Rhys Meyers, Maria Doyle Kennedy, Natalie Dormer, Henry Cavill, Gabrielle Anwar, Sam Neill ...
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by amore_spacey | 2007-05-07 23:06 | - TV series | Comments(4)

Marrakech Express (マラケシュ・エクスプレス)

私のお気に入り度 ★★★★☆(80点)

ネタばれ少々あり。

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大麻1kg所持の罪でモロッコはマラケシュの刑務所にぶち込まれた旧友を救うため、モロッコ目指して旅に出る4人の中年男たちの珍道中を、普通ならありえないようなシチュエーションや辛口のユーモアを交えて描く。こんなのありえな~い!」 一刀両断に作品をたたきのめすことは簡単。でも世の中には「私の常識があなたの非常識、あなたの常識が私の非常識」なことが多い。しかもイタリアですからね(^^) 頭も心もふんわり丸く柔らかくしてご覧下さい。


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学生時代サッカーをやっていた5人の仲間も、10年経てばそれぞれの生活に追われて、滅多に会うこともない。雨の降るある日、突然Marco(Fabrizio Bentivoglio)のもとに美しい女性Teresa(Cristina Marsillach)が訪れ、Rudy(Massimo Venturiello)が大麻所持で逮捕され、マラケシュの刑務所に入れられてしまったことを告げる。Rudyは彼女の恋人でありMarcoたち4人の大切な旧友でもあるのだ。
刑務所を出るにはお金がいる。さあ、どうする?私だったら昔の友情はセピア色の写真の中に閉じ込め、自分の生活を優先する。(でもそうすると、ここで映画は終わってしまう) ところがこの4人ときたら、何だかんだとぼやきながらも、何となくモロッコ行きを決め、必要なお金も集め、赤いジープでTeresaと共にマラケシュへいざ出発!!


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西イタリア~南フランス~南スペインと車で辿り、ジブラルタル海峡をフェリーで渡ってモロッコに到着する。マラケシュについてみると何やらどこか胡散臭いものを感じる。もっと用心して慎重に事を進めればよいものを、かき集めた保釈金とそれぞれのパスポートをホテルの金庫に預け、トルコ風呂を楽しもうぜ~♪のノリで男衆4人は出かけていく。
さっぱりした気分でホテルに戻ると、金庫は空っぽ!赤いジープもTeresaも忽然と消える。さあ、どうする?何かの目的で罠にはめられたんだ!もういい加減に子どもじみたことはやめようぜ。イタリアに戻ろうぜ。になりそうなものだが、彼らは「俺たちって一体何やってんだ?」自嘲しつつも、気持ちは真相究明に向かっている。RudyとTeresa2人の居所を突き止めるべく、砂漠横断を決行する。


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しかしあのジープはもうないんだよ。さあ、どうする?へこたれない4人。と言うか、ここまで来て自暴自棄か?猛暑で現実直視ができないのか?見つかったのは、4台のおんぼろ自転車。こんなもので砂漠を越えようという暴挙に出る。充分な水分や食糧も持たず、着の身着のままで出発する無謀な4人。「だから俺は来るのは嫌だって言ったんだ!」 何度も仲間割れを繰り返しながら4人がたどり着いたところには…。

う~ん、理詰めで真面目に見たら突っ込みどころ満載の作品(笑) 理屈ぬきにして男の友情や仲間という大人のファンタジーを楽しんでしまおう、そう言えばあんな時代も自分にはあったなぁ、懐かしい思いに浸りたい方には、後味すっきりしなくて割り切れないながらも、オレンジ色の余韻がほんのり心に残る、そんな作品です。それにしてもイタリア人ってサッカーが好きだね~(^^) 「そんな状況でサッカーはないだろ?」という場面で、埃にまみれてサッカーに没頭してるもんね。それともGabriele監督の個人的趣味?

製作国:Italy
製作年:1989年
監督:Gabriele Salvatores
キャスト:Diego Abatantuono, Fabrizio Bentivoglio, Cristina Marsillach, Giuseppe Cederna, Gigio Alberti, Massimo Venturiello...
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by amore_spacey | 2007-05-03 00:07 | - Italian film | Comments(4)

Turne'

私のお気に入り度 ★★★★☆(83点)

ネタばれあり?!

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イタリア地方公演に出る劇団に所属する2人の俳優は、無二の親友。そしてラジオ番組で仕事をする1人の女性。彼らの三角関係や恋愛や友情を、70年代のロックンロールに乗せてコミカルにシニカルに描く。


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フランクで気のおけない友人Darioの紹介で、無二の親友Federicoはある劇団の団員に採用される。チェーホフの作品を演目に、イタリアの地方公演に出る小さな劇団。巡業中DarioとFedericoは毎日寝食を共にする。しかしDarioには辛い使命が任されているのだ。ただでさえ鬱々として神経質なFedericoに、「キミと彼女(=Vittoria)の間はもう終わったんだ」と告げなくてはならない。どんな状況でどのように切り出すのか?そのあとも男の友情は続くのか?


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Vittoriaが直接Federicoに、「あなたとはもう終わったの。」とはっきり言ったなら、この作品はもっと違った展開になったかもしれない。が、内向的で精神的に不安定・安定剤を常用しているFedericoに、こんな衝撃的なことを面と向かって言えるはずがないではないか。だから彼の無二の親友Darioなら、Federicoの気持ちを傷つけず踏みにじらず、しかも2人の男の友情は壊れないような方向に、うまく話をつけてくれる。彼女はそう考えた。うーん、ちょいとずるいよね。しかし世の中はそれほど甘くない。しかもDarioはVittoriaと恋に落ちて、2人は付き合い始めているのだから、Darioの歯切れが悪くなるのも当然なのだ。

結局ひょんなことから真相が発覚してしまい、もともと精神的に不安定だったFedericoが奈落の底にどんどん落ちていってしまう。八方ふさがりで解決の手立てのない悲劇的な状況にもかかわらず、コミカルに展開しているのは、Diego Abatantuonoの陽性で最後には貧乏くじを引きかねないようなキャラクターと神経質で危ない性格でありながら子どものように純粋な心を持つFabrizio Bentivoglioのお陰だろう。

Laura Moranteはこの頃の作品より40代を過ぎた辺りの最近の作品のほうが、艶のある円熟した美しさが滲み出てきていますね。

製作国:Italy
製作年:1990年
監督:Gabriele Salvatores
キャスト:Luigi Montini, Diego Abatantuono, Fabrizio Bentivoglio, Laura Morante, Claudio Bisio ...
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by amore_spacey | 2007-05-02 04:09 | - Italian film | Comments(0)