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冬の小鳥 (A Brand New Life)

私のお気に入り度 ★★★★☆(82点)

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【あらすじ】 1975年、ソウル近郊。9歳のJinhee(Sae-ron Kim)は訳の分からないまま父親(Kyung-gu Sol)に連れられて、カトリックの児童養護施設に預けられる。父のもとに帰りたいと願う彼女は、院内の人々に反発を繰り返し、脱走も試みる。そんなJinheeを気にかけるのは、年上のSookhee(Do Yeon Park)だった。2人は庭で傷ついた小鳥の世話を始める。Sookheeはアメリカや遠い国への憧れをJinheeに語り、一緒に養女になって外国へ行こうと誘う。かたくなだったJinheeの心も、少しずつ和らいでいくが…。


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たった9歳の少女が背負うにはあまりにも絶望的な状況の中に投げ込まれながら、始終淡々としていて不思議なほど静かである。父が最後に買ってくれたエナメルの靴。奮発したホールケーキ。夜の施設。釜にこびりついたご飯。傷ついた小鳥。花札。布団叩きで鬱屈した気持ちを発散させる住み込みの女。何度も父を思い出す。小鳥を埋葬。自分も埋葬。 …

泣いたり怒ったり喧嘩したりしても、水面に立つ小さなさざなみのようにすぐ消える。それだけに、感情を押し殺した少女Jinheeのヒリヒリとした心があまりにも痛々しい。養護施設にいる子どもたちを1人の人間として尊重し、ふわりと大きな心で包み込んでくれたシスターたちや住み込みの女がいなければ、あの子たちはどうなっていただろう?父親の背中で歌った歌、丈直しをする住み込みの女の横で歌った歌。切ない歌。人生の有り様を見てしまったJinheeの気持ちが集約された歌。この作品は監督自身の体験が下地になっているという。この作品によって監督は、心の整理ができたということだろうか?

Sae-ron Kimの可憐なこと!ザックリ切った髪がよく似合う。たどたどしい口調ながら、あどけない表情で思っていることははっきり言う。言葉は少なくても彼女のつぶらな瞳や「へ」の字に曲がった口元や小さな身体は、彼女が抱えるどろどろとした感情を隠しきれない。あんな目で見つめられたら、どんな事情があろうとも、自分の娘を幼児院に送ることなどできないのに。父親にもそれなりの大人の事情があったに違いない。

英訳された原題より日本語タイトルがいい。「天使の…」とか「愛の…」とか「恋する…」とか、甘ったるいタイトルを付けがちなのに、今回は地味でありながら、ストーリーが等身大に映されたタイトルが胸に突き刺さり、とても切なくなりました。

製作国:South Korea, France
初公開年:2009年
監督:Ounie Lecomte
キャスト:Sae-ron Kim, Do Yeon Park, Ah-sung Ko, Myeong-shin Park, Man-seok Oh, Kyung-gu Sol ...


# by amore_spacey | 2011-07-18 04:37 | - Asian film | Comments(0)

余命

私のお気に入り度 ★★★★☆(78点)

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【あらすじ】 敏腕外科医・百田滴(松雪泰子)は結婚10年目にして妊娠する。過去に乳がんを患い、子供を授かることを期待していなかっただけに、カメラマンの夫・良介(椎名桔平)と至福の時間を味わう。しかし喜びもつかの間、全身性の乳がんが再発する。出産は38歳の滴にとって最後のチャンス。しかし産んだところで自分は育てられない。子供を諦めて治療に専念すべきか、ガンの進行を早めることになっても子供を生むか、病を知り尽くした滴は苦渋の決断を迫られる…。


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私だったらどうしただろう?女性ならきっと誰でも、自分に置き換えて観る作品ではないかな。滴の場合は外科医という職業柄、病を知り尽くしていたが為に苦悩も大きかったはず。この作品が思ったより重すぎず湿っぽくなかったのは、滴があまりにも優等生だから。途中で気持ちのバランスを崩して引きこもったり、あれれ?な言動に出ることはあっても、誰かに全面的に寄りかかったり泣き叫んだりすることはなく、ほぼ1人で解決して淡々と余命を生きていった滴。スゴイ!潔い!ちょっとしたことでもすぐに大騒ぎする私には、真似ができない。そして奄美大島の美しくも荒々しい風景に圧倒された。

「あのおばさん、誰だっけ?」ずっとずっと気になって、エンドロールでそうだったのかぁと膝を打ったのが、かとうかず子。『何となく、クリスタル』の頃を知っているだけに、あの二重アゴには圧倒されました。

製作国:Japan
初公開年:2009年
監督:生野慈朗
原作:谷村志穂
キャスト:松雪泰子, 椎名桔平, 奥貫薫, 市川実和子, かとうかず子, 林遣都, 宮崎美子, 橋爪功 ...


# by amore_spacey | 2011-07-16 00:22 | - Japanese film | Comments(0)

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~

私のお気に入り度 ★★★☆☆(70点)

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【あらすじ】 戦後の東京。才能がありながら放蕩三昧を続ける小説家・大谷穣治(浅野忠信)と、そんな彼を健気に支えて暮らす妻の佐知(松たか子)。貧しさを忍びつつ幼い息子を育てていたが、これまでに夫が踏み倒した酒代を肩代わりするため、椿屋という飲み屋で働き始める。佐知は水を得た魚のように生き生きと店の中を飛び回り、若く美しい彼女を目当てに通う客で椿屋は繁盛する。そんな妻の姿を目にした大谷は、いつか自分は寝取られ男になるだろうと呟くのだった。


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浅野忠信=皇太子、の図が私の頭の中にあるので、逆立ちしても太宰に見えない。浅野忠信はこじんまりとまとまりすぎて、放蕩三昧を続ける作家の雰囲気がまったく感じられなかった。作品を通して使われる中途半端な昭和的?言葉遣いも気になる。あっさりしすぎて感動も突っ込みもない。強いて言えば、久々に嫌味な男を演じた堤真一がよかったな。浅野忠信と松たか子が2人横に並んでさくらんぼを食べながら、種を吹き飛ばすラストシーン、あれも微笑ましい。さくらんぼの季節が来るたびに思い出しそうです。

製作国:Japan
初公開年:2009年
監督:根岸吉太郎
フードスタイリスト:飯島奈美
キャスト:松たか子, 浅野忠信, 室井滋, 伊武雅刀, 新井浩文, 広末涼子, 妻夫木聡, 堤真一 ...


# by amore_spacey | 2011-07-15 00:38 | - Japanese film | Comments(0)

Come fly with me season1 episode1~7

私のお気に入り度 ★★★☆☆(60点)

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【あらすじ】 ロンドン近郊にあるヒースロー&スタンステッド空港を舞台に、架空の格安航空会社FlyLoで働くスタッフやキャビン・クルー、空港内にあるバーガーショップの青年やカフェキオスクのおばちゃん、パパラッチや各国からやってくる旅客の姿を、空港の裏事情を織り交ぜながらコミカル&シニカルに描いたBBC制作のTVドラマ。シリーズに登場する計50人以上のキャラの大部分は、過去の大人気TVドラマ「Little Britain」に出演したMatt LucasとDavid Walliamsの2人が演じ分けている。


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うなずけるシーンがてんこ盛り。空港の裏事情なども、「やっぱりそういうことってあるんだぁ」と納得。低価格空港会社の参入によってチケットの価格競争が激化するのに比例してトラブルやクレームが増え、反比例してサービスは劣化の一途を辿る。そういった現状をコミカル&シニカルに描いている。が、化粧やズラや仕草が大袈裟すぎるわりには、話のオチがパターン化してすぐに読めてしまうため、乾いた笑いしか出てこない。それどころか、不快な気持ちに包まれるシーンすらあった。巨体乗客に対する物言いとか、日本人や中国人などアジア人への視線とか、エコノミー客を見る上から目線とか…。期待したわりによくなかったTVドラマシリーズでした。

製作国:U.K. (BBC)
初公開年:2010~2011年(12月25日~2月8日)
監督:Paul King
キャスト:Matt Lucas, David Walliams, Sally Rogers, Ted Robbins, Alex MacQueen, Annemarie Gaillard ...


# by amore_spacey | 2011-07-13 00:35 | - TV series | Comments(0)

理由

私のお気に入り度 ★★★☆☆(78点)

【あらすじ】 東京都荒川区で起きた、一家4人殺害事件。容疑者の石田直澄(勝野洋)が簡易宿泊所の片倉ハウスに宿泊していると通報があり、江東区の交番巡査・石田(村田雄浩)は現場へ走った。事件が起きたのは3ヶ月前。高層マンションの20階、2025室から男が転落した。部屋には世帯主の小糸信治(山田辰夫)、妻の静子(風吹ジュン)と、身元不明の老婆の死体があり、警察は殺人事件として捜査を始める。しかし殺された4人は、小糸家とすっかり入れ替わった別人だった。では殺された4人は、一体誰なのか?そして犯人は?


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原作が面白かったので、映画化されたと聞いてこちらも楽しみにしていた。が、原作を再現するのに精一杯で、余裕がないというのか息が詰まるというのか…正直言ってつまらなかった。107人もの膨大な証言者を、時間制限のある映画の中でどう処理するのか、ここは監督の腕の見せ所だなと期待したが、ワザもひねりもなかった。出演者がカメラ目線で語りかけてくるのも、何だか気になった。

平々凡々でつまらなかった反面、久し振りに古手川祐子・風吹ジュン・柳沢慎吾・大和田伸也・松田美由紀・赤座美代子・渡辺裕之・左時枝・勝野洋輔・永六輔・裕木奈江を観て、「ずっと頑張ってるんだなぁ」としみじみ。根岸季衣には、相変わらず暗い空気…(汗) ちょうどこの作品に出演した頃から、認知症の症状が表れ始めたという南田洋子の姿にじーん。

一家4人殺害事件は、4人の人生がそこで終わっただけでなく、何らかの形で彼らにかかわった107人に影響を及ぼした。「人は1人で生きていないんだ」という当たり前のことを、改めて実感しました。

製作国:Japan
初公開年:2004年
監督:大林宣彦
原作:宮部みゆき
キャスト:柄本明, 渡辺えり, 菅井きん, 風吹ジュン, 赤座美代子, 古手川祐子, 加瀬亮, 大和田伸也, 久本雅美, 岸部一徳, 峰岸徹, 南田洋子, 勝野洋, 宮崎あおい, 小林聡美, 石橋蓮司, 小林稔侍 ...


# by amore_spacey | 2011-07-11 00:28 | - Japanese film | Comments(0)