タグ:樹木希林 ( 6 ) タグの人気記事

海よりもまだ深く

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 15年前に1度だけ文学賞を受賞したことのある良多(阿部寛)は、「小説のための取材」と理由を付けて、町田(池松壮亮)とコンビを組んで探偵事務所で働いている。良多は離婚した元妻の響子(真木よう子)への思いを捨てきれず、響子に新しく恋人(小澤征悦)ができたことにぼうぜんとしていた。良多・響子・息子の真悟(吉澤太陽)は、良多の母・淑子(樹木希林)の家に偶然集まったある日、台風の一夜を4人で過ごすことになる。(作品の詳細はこちら


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是枝監督の作品を観ていると、忘れていた懐かしい気持ちに包まれ、胸が苦しくなる。作中の人々も視聴者も、それぞれ抱えている問題や生き方・育った環境は異なるのに、あるシーンに出てくるアイテムや何気ない会話によって、思い出の扉がパタンと開き、日常生活に紛れ忘れていた過去が、芋づる式に次々と蘇ってくる。
 
台風の夜3人が集まった公園の滑り台のシーンに、小学校の放課後、堤防に行って、自分たちの背より高い葦で秘密基地を作ったことを思い出した。台風で停電した夜、外は大荒れの中、部屋にろうそくを灯し、突然ふって湧いた非日常にわくわくしたものだった。カルピスは、子どもの頃の夏の味だな。こうした強烈な思い出だけでなく、同じようなことの繰り返しで、記憶にも残らないような平凡な日々が、是枝監督やベテラン役者たちの手にかかると、深みや広がりや大切さが増して、かけがえのないものに思えてくる。


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阿部ちゃん演じる良多は、ろくでなしのダメ男っぷりが半端なく、あれじゃ、離婚されても仕方がない。図体がデカくて団地サイズに納まり切らず、その姿が息苦しくも滑稽で笑える。そんな息子に突っ込みを入れつつ、煩いことを言わずそっと見守る母。どんなにダメな子でも、母親にとっては可愛い子なのだ。

阿部ちゃんと樹木希林との掛け合いは、素晴らしかった。『歩いても歩いても』に続く母子役というのもあるが、2人の息がぴったり合い、本当の親子以上に自然で馴染んでいた。こんなダメな父を持った息子はとんだ災難だけど、グレたり捻くれたりせず、それどころか父親より精神的にずっと大人で(そうならざるを得なかったんだけどね)、この年にしてすでに悟りの境地に達している。子どもは大人をよく見てるね。


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頑張っていい息子をやろう、いい父親ぶりをみせようとする良多に、元妻や姉(小林聡美)は手厳しい。そりゃそうです、世の中そんなに甘くないし、舐めてもらっちゃ困る。真っ当な生き方をする彼女たちの前では、デカい図体の良多も返す言葉がなく、縮こまってしまう。しかしダメ男で孤立無援かと思えば、探偵事務所に拾ってもらい、後輩の町田が仕事の域をこえて、手助けしてくれる。阿部ちゃんにくっついている池松が、まるで子犬みたい。助けてくれる人がいるというのは、心強いことだ。何はともあれ、現実をちゃんと見つめて、生きて欲しい。


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「幸せっていうのはね、何かを諦めないと手にできないもんなのよ」と良多の母は言うが、そうかな?幸せは手にするものではなく、ある瞬間にふっと感じるものだと思う。何かを諦めなくても、その人のアンテナさえさびついていなければ、じわっと噛み締めることが出来るはず。ところで冒頭に登場する煮物がとてもおいしそうだった。子どもの頃は、茶色の煮物が大嫌いだったのにね。


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by amore_spacey | 2017-05-01 04:02 | - Japanese film | Comments(0)

わが母の記

私のお気に入り度 ★★★★☆(79点)

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【あらすじ】 作家の伊上洪作(役所広司)は年老いた両親(三國連太郎・樹木希林)を訪ね、世田谷の自宅兼事務所と伊豆の実家とを行き来する生活をしていた。姉・妹(キムラ緑子・南果歩)との三人兄弟だったが、幼少の頃一人だけ「土蔵の叔母さん」に預けられて育った洪作は、自分は母から捨てられたという思いが常にあり、大人になってもことある度に、その事で母親と喧嘩していた。しかし父親が死ぬと、母の物忘れがひどくなり、世田谷の家に引き取る頃は、洪作が誰かさえ分からなくなっていた。


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母子を演じた役所広司&樹木希林の文句のつけようのない演技や、昭和の雰囲気にたっぷり浸ることができたのはよかった。でも何か、こう、薄い透明なベールがかかったような違和感がつきまとった。一般市民の生活レベルを超えた伊上一族のハイソサエティぶりが、庶民の私には遠い別世界の出来事で、どうしても感情移入ができなかったノダ。しょうがないよね、こればっかりは。

でも以下の2つのシーンには、はっと胸を突かれた。自分の息子のことさえ分からなくなってきた八重。そんな八重は、洪作が小学生の頃に初めて書いた詩を暗誦し、この詩を書きつけた紙きれをずっと大事に持っていた。一方彼女は伊豆の御用邸近くの海に行きたくて、家から勝手にさ迷い出る。その知らせを聞いた洪作は、豪華客船の洋行を取りやめ、海岸で母を待った。小さくなった母を背負いながら、ずっと心のしこりになっていた「母から捨てられた」という黒い気持ちが静かに消えていく。背負われた母は、やっと息子が自分のもとに帰ってきてくれたと安心する。子を想う母の心や、母を想う子の心に、ジーン。辛く重い現実も、宮崎あおいちゃんのおかげで、明るくなごやかになります。

製作国:Japan
初公開年:2012年
監督:原田眞人
キャスト:役所広司, 樹木希林, 宮崎あおい, 三國連太郎, 南果歩, キムラ緑子, ミムラ, 菊池亜希子, 三浦貴大 ...


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by amore_spacey | 2012-09-15 00:17 | - Japanese film | Comments(2)

サイドカーに犬

私のお気に入り度 ★★★☆☆(76点)

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【あらすじ】 不動産会社に勤める薫(ミムラ)は、ある朝ふいに1週間の有給休暇をとった。馴染みの釣堀で釣り糸をたらしながら、ふと、父(古田新太)が会社を辞め、母(鈴木砂羽)が家を出て行った数日間のことを思い出した。そんなときヨーコさん(竹内結子)という女性が、家に来るようになった。たばこをスパスパ吸い、自転車を乗り回し、夕食には、「エサ」と言って麦チョコを食べさせる、破天荒な人だった。しかし子供と対等に向き合って話をしてくれるヨーコさんを、薫(松本花奈)は徐々に好きになっていく…。


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ふっとしたひょうしに浮かんだ子どもの頃の情景を、水彩画のような淡いタッチで描いた作品だった。生真面目な小学生の薫と、大雑把だけどさばさばしたヨーコさんの関係が面白い。初めて飲むコーラ、麦チョコまとめ買い、歯が抜ける、自転車に乗る練習、ヨーコさんとの楽しい海の夏休み…。ヨーコさんは薫のことを対等に見ている。変に子ども扱いしない。そこが薫にとっては、物凄く魅力的で嬉しいのだ。大人の都合で家の中が妙なことになり、心が捻じれてしまった薫が、少しずつヨーコさんに心を開いていく。そんな彼女を演じた薫役の松本花奈ちゃんが、とてもいい表情を見せてくれた。上目遣いでヨーコさんを見上げる顔はキュート(^^) 伊勢谷友介、ほんの一瞬だったな。苦笑

製作国:Japan
初公開年:2007年
監督:根岸吉太郎
キャスト:竹内結子, ミムラ, 松本花奈, 古田新太, 鈴木砂羽, 椎名桔平, トミーズ雅, 寺田農, 伊勢谷友介, 樹木希林 ...


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by amore_spacey | 2011-10-29 00:58 | - Japanese film | Comments(0)

悪人

私のお気に入り度 ★★★★☆(82点)

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【あらすじ】 長崎の外れの小さな漁村に暮す清水祐一(妻夫木聡)は、出会い系サイトを通じてメール交換していた佐賀の馬込光代(深津)と会う。逢瀬を重ねる2人だったが、祐一は世間を騒がせている博多の女性殺人事件の犯人だった。


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法によって裁かれる者だけが悪人なのか?法にこそ触れないものの、相手の気持ちを踏みにじったり人生を狂わせるような言動を意識的&無意識にやってしまう、私たちの誰もがそうなり得る。軽薄で世の中を舐め切った金持ち大学生の増尾圭吾(岡田将生)や彼の取り巻き連中、出会い系サイトで知り合った男と売春まがいの行為をする石橋佳乃(満島ひかり)、そんな佳乃を殺した祐一、そして祐一を捨てた実の母(余貴美子)、人を愛する喜びを失いたくない一心で犯人と知りつつも祐一と逃避行を続ける光代、土足で人の生活や心の中に踏み込んでくるジャーナリストたち、病気がちな祖父(井川比佐志)の面倒を若い祐一に見させてる祖母(樹木希林)、その彼女の大切なへそくりに目をつけておかしな商品を法外な値段で売りつける商売の片棒担ぐ医師(小日向文世)など、けしからん人間ばかり。けれど「お前ら、みんな悪人だ!」と、非難し責めることは簡単。他人には言えない事情が人にはあるのだから。相手を悪人にして自分を守ろうとするのが、人間の本能なんだから。怒ったように励ますバスの運転手や、光代がふっと祐一のことを思い出すラストシーンにじーーん。

それにしても困ったな。冒頭に登場した餃子とラーメンのシーンが、頭から離れないんですうぅぅ。大好物が続けて出てきちゃうんだもん。それから妻夫木くんのくちびる。タラコのようにぷくっと膨らんだ下唇が可愛い~♪ と娘がきゃあきゃあ(*^^*) ぼそぼそとした声で話される九州の方言が、じわじわっと胸に沁みました。

製作国:Japan
初公開年:2010年
監督:李相日
原作:吉田修一
キャスト:妻夫木聡, 深津絵里, 岡田将生, 満島ひかり, 宮崎美子, 小日向文世, 余貴美子, 井川比佐志, 樹木希林, 柄本明 ...


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by amore_spacey | 2011-04-08 00:57 | - Japanese film | Comments(2)

歩いても歩いても

私のお気に入り度 ★★★★☆(92点)

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ある夏の終わり。失業中の良多(阿部寛)は妻(夏川結衣)と息子を連れて兄の命日に実家を訪れた。開業医だった父(原田芳雄)と昔から反りの合わない良多は現在失業中ということもあり、気が重い帰郷である。姉・ちなみ(YOU)の家族と共に楽しく語らいながら、母(樹木希林)は料理の準備に余念がない。その一方で相変わらず家長として医師としての威厳にこだわる父。台所、食卓、墓参り、海への散歩。どこにでもある日常の風景。息子を亡くした傷の深さ、兄へのコンプレックス、受け入れ難い親の老いなど、何気ない会話からそれぞれの複雑な感情があぶり出されていく。誰もが自分自身と重ね合わせずにはいられない作品であろう。


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真っ暗なスクリーンに、ゴシゴシ音だけがきこえてくる。人参と大根を調理する手のアップに続いて、母娘らしき2人の会話が始まる。冒頭のこのシーンに目が釘付けになった。昔ながらの台所に並んで、母は包丁で人参を娘は皮剥き器で大根を剥いている。小気味のよい手さばきでミョウガを薄く切っていく。茹でた枝豆に塩を振り、ざるを上下させながら塩を満遍なく全体に行き渡らせる。鞘から出した大量の枝豆とミョウガを寿司飯に入れてさっくり混ぜ合わせれば、枝豆とみょうがの混ぜ寿司が出来上がる。母の十八番料理は、大粒のとうもろこしを使ったコーンの掻き揚げ。「早くおあがり。揚げ立てがおいしいんだからね。」 そして冷やしたスイカやお持たせのシュークリームや店屋物の鰻重。食卓の風景は何度見てもいい。

大事件が起こるわけではない。激しいアクションや感極まる幸せや悲しみなどもない。海の見える坂の町のごく平凡な住宅街に暮す、平凡な人々のある夏の一日を淡々と描く。是枝監督は役者の一瞬の心の動きをも取り逃がさないかのように、役者の動きをかなり長いスタンスで撮影している。使い込まれた昭和の家の中の何気ないショットや、役者たちのセリフや表情や仕草が心の奥深くにじわっと沁みて、懐かしく面映くぎこちない感情が目覚め、家族や人のことをとてもいとおしく思えるのである。



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反りが合わないから父と2人だけになると、良多はいっそう間が悪く居心地が悪い。いったい何を話してよいのやら。気を揉んだ挙句の果てに出て来た言葉にうろたえ、さらに気まずくなって自己嫌悪する。同じような光景が私の子どもの頃にもあった。原田芳雄が演ずる父は、わが父そのもの。亭主関白で家長としての威厳に拘る父の存在は疎ましかった。可愛がってくれているのが分かるから、尚更その狭間にいた私は鬱陶しかったのだ。彼が上機嫌な時には楽しいが、一旦雲行きが怪しくなると、彼の一喝で盛り上がったその場の雰囲気が一気にしぼんでしまう。嵐が来る前にそれぞれの部屋に逃げ込む。

そんな気持ちを今でも引きずっているから、父と電話で話すのは苦手で苦痛だ。こちらから電話をかける時には、「母が出ますように」と真剣に心の中で祈ってしまう私は、まだまだ大人になりきれない。しかし父の声を聞くと母が電話口に出た時より妙にほっとするのだから、人の気持ちは一筋縄ではいかない厄介なものだ。良多がつぶやく「いつもちょっとだけ間に合わない」、それは自分の人生や年老いた両親への親孝行や子育てにおいてもいえること。きっちり帳尻のあう人生は少なく、概ね人々はそうした小さな後悔を背負いながら生きているのだと思う。



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樹木希林が巧い、巧すぎます!家に迷い込んだ蝶を追うシーンは鳥肌モノでした。『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』での母親役を超える巧さでありました。ルックスだけで?勝負していた若い頃に比べると、阿部寛は独特のオーラをまとい確実に味のある&存在感のある役者になってきて、すごくいいのだわぁ(^^) いしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」は、リアルタイムで覚えてますョ。

製作国:Japan
初公開年:2007年
監督:是枝裕和
キャスト:阿部寛, 夏川結衣, YOU, 高橋和也, 田中祥平, 加藤治子, 寺島進, 樹木希林, 原田芳雄 ...
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by amore_spacey | 2009-02-08 18:25 | - Japanese film | Comments(2)

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

私のお気に入り度 ★★★★☆(82点)

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1960年代、オトンに愛想を尽かしたオカンは幼いボクを連れて、小倉から筑豊の実家に戻ると、妹の小料理屋を手伝いながら女手一つでボクを育てた。1970年代、15歳となったボクは大分の美術高校に入学、オカンを小さな町に残し下宿生活を始めた。1980年代、ボクは美大生となり憧れの東京にやって来るが、仕送りしてくれるオカンに申し訳ないと思いながらも学校へもろくに行かず自堕落な日々を送ってしまう。留年の末どうにか卒業したものの、その後も相変わらずフラフラした生活を送るボクだったが…。

ボクがオカンの手を握りオカンを気遣いつつ、横断歩道をゆっくりと歩くこの映像が焼き付いている。



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内田也哉子が樹木希林にとても似ていて、「まぁまぁ、どこでこんなそっくりさんを見つけて来たんだろう?」と思ったら、実の娘だったのかー(滝汗) 2人とも好感の持てる仕草や表情やゆったりとしたテンポが似てますね。



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誰にでもあるような日常的なエピソードの数々。母との思い出や幼い頃からの出来事は異なっていても、その中に溢れるオカンの温かくて優しい眼差しに大差はないだろう。オカンの何気ない動作のひとつひとつを作り上げた樹木希林の演技力(素顔?)には脱帽である。時折オトンに対して見せる恥じらいは、生身の女性のキュートな部分が垣間見えていとおしかった。



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女好きで酒好き、自由奔放のオトンを演じた小林薫は、弱くてもろくて、それを見栄で一生懸命隠している男の弱さを体現する。そんなオトンが未完成のままボクにくれた木の電車は生涯の宝物なのだ。


製作国:Japan
初公開年:2007年
監督:松岡錠司
フードスタイリスト:飯島奈美
キャスト:オダギリジョー, 樹木希林, 内田也哉子, 松たか子, 小林薫, 渡辺美佐子, 仲村トオル, 小泉今日子, 松田美由紀, 寺島進, 柄本明, 宮﨑あおい ...
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by amore_spacey | 2008-05-08 02:45 | - Japanese film | Comments(4)