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エーゲ海の天使 (Mediterraneo)

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【あらすじ】 第二次大戦が勃発した1941年、エーゲ海の小島に8人のイタリア兵が上陸した。彼らの任務は島を敵から守り、報告することであった。元教師のMontini中尉(Claudio Bigagli)・血気盛んなLorusso軍曹(Diego Abatantuono)・美しい娼婦(Vana Barba)に一目惚れする内気な中尉の従卒Farina(Giuseppe Cederna)・海を知らないMunaron兄弟(Memo Dini&Vasco Mirandola)・ロバ命のStrazzabosco(Gigio Alberti)・脱走常習犯Noventa(Claudio Bisio)・無線技師Colasanti(Ugo Conti)、この8人である。
 第1日目の夜、暗闇からの足音で、一斉射撃が始まる。その犠牲になったのはStrazzaboscoが可愛がるロバのSilviaだった。彼は撃った仲間に憤怒し、無線機を岩に投げつけ壊してしまう。これに続いて彼らの戦艦が爆撃に遭い、本国と連絡が断たれてしまった。
 そしてある日、今まで隠れていた島の人々が、8人の前に現れた。彼らは島の住人とともに、平穏な日々を過ごしていくようになる。1991年 アカデミー賞の外国語映画賞を受賞。(作品の詳細


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ギリシャの小島に取り残された、8人のイタリア兵たちを、詩情豊かにユーモラスに描いている。戦時中でありながら戦闘シーンはほとんどなく、島での牧歌的な暮らしや島民と兵士たちの交流が、微笑ましく心温まる。

太陽に煌めく青い海や白い砂浜、真っ赤に染まった夕暮れなど、島の風景がとにかく美しく、大人の洒落たおとぎ話のようでした。

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8人のイタリア兵のそれぞれの個性が実に強烈で、素晴らしいキャスティングです。兵士とは名ばかり。ド素人の寄せ集めだから、愛国心やモラルなんてものはなく、兵士としての役目をちっとも果たせない。いざこざを起こしたり喧嘩して怒鳴りあったり、自分勝手でバラバラで全くまとまりがありません。

なのに、暇すぎる日々を楽しむことにかけては天才的で、ボールを追いかけて子どものように戯れ、時間を忘れてはしゃぎまわる。イタリア人あるある…笑 

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無人島と思いきや、ある日、突然、島民が姿をあらわした。男たちが戦争の捕虜にとられ、島に残った女や子どもや老人たちだった。かつて上陸したドイツ兵への恐怖から、家に隠れていた彼らは、8人を好意的に迎え入れてくれる。

いつしか男たちは、この地上の楽園のような島に心を奪われ、軍服を脱ぎ装備を捨てて、戦争やオレたちを見捨てた祖国なんか、どうでもいい!と、この島の暮らしに溶け込んでいく。ここはパラダイス!

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コロナ禍で外出禁止令が出ていた間、未だ嘗て経験したことのない、先の見えない不安や恐怖に押し潰されそうになりながら、ウィルスが猛威を振う外の世界から、家族が身を寄せあって家に閉じこもる、原始的で平和な日々がちょっぴり懐かしい。

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8人の兵士たちも、薄々気づき始めていた。戦争の恐怖や狂気に巻き込まれず、外部から遮断されたこの島には、人間らしい生き方が奇跡的に残っている。これが人間本来の姿だよな。

エピローグがしみじみとした味わいに溢れていました。イタリアに来て間もない頃、初めてVHSで観た、思い出深い大好きな作品です。映画館の大スクリーンで観たかった。エーゲ海の天使は、盛りすぎ・・・。


# by amore_spacey | 2025-02-08 01:00 | Italian film | Comments(0)

L'ultima settimana di settembre

ネタばれあり!!!
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【あらすじ】 レッチェ(南イタリア)に暮らす小説家Pietro Rinaldi(Diego Abatantuono)は、かつては有名だったが、妻を亡くし孤独で人生に疲れて、自分の誕生日に、自殺しようとしていた。しかし娘のRobertaと義理の息子が、自動車事故で亡くなったと、警察から知らされて、自殺を思いとどまる。彼は高校生の甥Mattia(Biagio Venditti)の世話をしなければならなくなるのだ。
 Mattiaを引き取ってしばらく一緒に過ごすが、孫の面倒をみるには年を取り過ぎているし、孫を育てる自信もその気もないことに、Pietroは気づいた。そこで父方の叔父に親権を渡す段取りをつけて、Mattiaを車でローマまで連れて行くことに決める。Lorenzo Licalziの同名小説をもとに映画化。(作品の詳細


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人生を終わらせたいと思っている80歳の祖父と、突然両親を事故で失い、愛犬のSidだけが残った10代の孫。半ば疎遠になっていたこの2人(と犬)が、レッチェからローマまで車で旅するロードムービー。

やや冗長で退屈ですが、ときどき風が水面に波紋を作るような、静かな展開の中にちょっとした笑いや辛口ユーモアがあり、孤独と絶望に満ちたPietroや、突然親を失った悲しみで途方にくれたMattiaが、少しずつ変わっていく様子を、丁寧に描いています。

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Pietroは独創的で教養もあり、機知に富んでいるが、辛辣で不機嫌で愛想が悪い。仕事一筋で、家族との生活に全く関心を示してこなかった。自業自得とはいえ、近所に住んでいる娘夫婦や甥とは、ほぼ疎遠の状態。だからMattiaはおじいちゃんとは呼ばないで、Pietroと名前で呼ぶ。他人行儀で居心地悪いですよね。

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ギクシャクしたまま、2人を乗せたシトロエンは、プーリアを出発する。道中、ヒッチハイカーを車に乗せ、Pietroの大ファンだというWanda(Marit Nissen)に出会い、身内であるCesare夫婦宅に立ち寄ることになる。

予期しないこれらの出来事を通して、2人は互いに関心を持ち始め、親しくなっていき、2人の間の溝を縮めていく。まぁ、よくある話です。それだけでなく、女性との出会いによって、それぞれの心の変化や成長もありました。Mattiaのあの体験は特にね。

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車窓から見えるプーリアの景色が、それはもう素晴らしいので、これだけでも観る価値あり。それからPietroの愛車シトロエンDS(映画の中でAlain Delonがよく乗っていたわね)、ポンコツ車で時々手を煩わせますが、これがプーリアの大自然に映えて、とても絵になるんです。


# by amore_spacey | 2025-02-06 01:30 | Italian film | Comments(0)

時効警察・ドラマ 復活スペシャル(2019年)

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【あらすじ】 アメリカFBIに赴任していた霧山修一朗(オダギリジョー)が、総武署へ戻って来た。そして時効廃止の1日前に起きた、ガソリンスタンドの火災事件に興味を持ち、交通課の三日月しずか(麻生久美子)たちと、彼の’趣味’となっている捜査を始める。
 それは24年前、さびれた田舎町のガソリンスタンドが全焼した事件である。焼け跡から一人の遺体が発見されたものの、損傷が激しく身元の特定に難航。握りしめられていた学ランのボタンから、行方不明になっている、バイトの高校生・沢村浩司と考えられた。放火の他に自殺の可能性も含めて捜査されるが、解決には至らず時効が成立している。(作品の詳細はこちら


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一応ミステリー系の刑事ドラマなのですが、、ゆる~いコメディや寒いギャグ満載で、この時効警察シリーズ、大好きです。オダギリジョーと麻生久美子のコンビが最高。互いに良い雰囲気を引き出し、2人の穏やかなイジり&イジられや阿吽の呼吸に、ほどよく癒されるんです。

上司や同僚を演じる、岩松了・ふせえり・江口のりこ・吉岡里帆・豊原功補・緋田康人・光石研…の、超ナンセンスで意味不明なギャグも、「それで、いいんだよぉ」と許せてしまう。脱力系コメディですもんね。

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復活スペシャル版は、オダギリジョー扮する霧山が、アメリカFBIに赴任していた設定なんですが、全くアメリカナイズされてなくて、キャラもあのまんま。髪の毛だけ、ボリュームアップしてた。71歳の美魔王の藤原(武田真治)が40歳に見えるという設定も、時効警察ならでは…です。

脇役レギュラーメンバーは、回が進むにつれてキャラが徐々に崩壊しており、ここ、ホントに警察署?仕事やってんの?ですが、娯楽ドラマだからいいの。

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そんなことより、姐さん、大ニュースです。何と、ジルベール(磯村勇斗)が出ているじゃありませんか!リアルタイムで観ていた時には、ぜんぜん気づかなかった。

先日何となく観ていたら、あれっ? あれれっ? えーーっ、も・し・か・し・て、ジルベール?って声が出た。だって白衣を着た真面目そうな鑑識官で、ジルベールのキャラと違うんだもん。ふせえりの息子で、鑑識課の若きエース・又来康知(またらいやすとも)って、いいねぇ、このノリ…笑

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そして終盤に登場する【誰にも言いませんよカード】が、まぁバカバカしくてナンセンスなのに、何故か心惹かれるんです。『時効警察はじめました』シリーズでは、エピソードに見合った色々なカードが登場して、面白かった。

ところでナレーションが由紀さおりになってますが、あのオープニングの台詞を喋ってる方?ヘリウムガスか何かで、声変えてる?歌手・女優・ナレーターと、実に多才な方ですね。


# by amore_spacey | 2025-02-04 01:10 | Japanese film | Comments(4)

あの胸にもう一度 (The Girl on a Motorcycle)

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【あらすじ】 結婚したばかりのRebecca(Marianne Faithfull)は、平穏で退屈な暮らしを嫌い、夫 Raymond(Roger Mutton)をベッドに残して、恋人Daniel(Alain Delon)に逢うため、国境を越えてハイデルベルクへとバイクを疾走させる。彼女はDanielと密会を重ねては、情事にふけっている。
 Daniel は Rebecca の父が営む書店によく来る大学教授で、結婚前にスキー旅行先でたまたま再会し、彼に強引に求められて以来、こっそり逢う仲になった。André Pieyre de Mandiargues の小説 La Motocyclette をもとに映画化。(作品の詳細


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Marianne Faithfull の追悼。1960年代の英国ポップ歌手 Marianne Faithfull(←音が出ます)と、人気絶頂のAlain Delonが共演した、伝説的なカルト映画。名作とは言い難いけれど、スルーできない魅力がありますね。キャスティングが素晴らしかった!ハイテンションな疾走感とめくるめくサイケな映像、これに尽きるのではないかと。

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ロリータのような清純で可憐な顔立ちに、ブロンドのロングヘア。童顔からは想像できない、形の良い胸に女性らしい曲線の柔らかな肉体。

夜明け前、起きぬけのRebeccaが、陶器のような素肌に黒革つなぎのライダースーツを身に着け、ハーレーに跨って、遠路はるばる恋人のDanielに逢いに行く。って、どんだけ現実離れして官能的でエロティックなんよ。

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全裸のRebeccaとハーレーの間には、黒革スーツが1枚。キュートで小悪魔のような彼女が、大型バイク(恋人Daniel)を自在に操る。麗しの彼に会いに行く胸の高鳴りや、嬉しさいっぱいの表情は、純粋なティーンの初恋のようです。

2人は互いのフェロモンに惹かれあい、性の欲望のまま、動物的な本能に駆り立てられて、むせかえるような不倫の甘美なエクスタシーの中で、男と女は一つになって燃える。Alainの言い知れぬ色気に痺れ、大胆な演技に頭クラクラです。いやでも、仏文学や芸術の教授ならともかく、Alainが哲学の教授って…。

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これじゃ、優しくて親切な夫のRaymondが、あまりにも可哀想。あんな女と結婚して、お気の毒です。凡庸な彼は自分にはない、自由奔放な彼女に惹かれたのよね。Raymondだけじゃない、Rebeccaのような女がいたら、スケベ心をそそられる。一度くらいはああなってみたいって、妄想するんじゃないかな。

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そんなこんなで、これはMarianneを味わうための映画、彼女のPVでございます。ライダースーツ姿の陰に隠れているけれど、彼女のファッションはどれもお洒落で、よく似合っていました。性に奔放でお洒落で可愛らしくて、ちょっとおバカな女の子の妄想物語、それだけで充分。

『あの胸にもういちど』の邦題、素晴らしいです。『La Motocyclette』(仏)や『The Girl On A Motorcycle』(英)はそっけないし、『Nuda sotto la pelle』(イタリアらしい)は生々しくて、身も蓋もありませんよ。


# by amore_spacey | 2025-02-01 19:21 | ┗ Alain Delon | Comments(6)

しゃぶしゃぶスピリット (Shabu-Shabu spirit)

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【あらすじ】 娘・幸子(森田彩華)の彼・慶太(渡辺大)が、結婚の挨拶にやってきた。娘の旦那にふさわしい男かどうか、父・正藏(平田満)の密かな値踏みが始まる。
 同じ鍋を突ついて互いの距離を縮めさせようと、母(竹内晶子)はしゃぶしゃぶを用意した。正藏の目が光る中、慶太はしゃぶしゃぶに手を伸ばす。


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平田満の一人祭り。10分(←音が出ます)の短編だが、『孤独のグルメ』の井之頭五郎なんてもんじゃない、父ちゃんの心の声がこれでもかと炸裂する。地味な平田満がアニメキャラで、いちいちウンチク垂れる。ふだんは無口なキャラの平田が、1年分くらいの台詞を喋り倒している。

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いや、結婚の挨拶の食卓に、しゃぶしゃぶってどうなの?なんて無粋な突っ込みはナシ。テンコ盛りのナンセンスの中にある、ちょっぴり懐かしいような緩めの下らなさが、じわじわ来るんです。エンドロールも、最後まで観て下さい。

ビールの注ぎ方はともかく、乾杯のグラスの位置やしゃぶしゃぶの作法は、知らなかった。平田さんのウンチクのおかげです。

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夫が両親に挨拶に来た時は、確か出前のお寿司を食べながら、結婚とは全く関係ない話をしていた気がする。それにしても、おいしそうな霜降り牛肉ですこと。イタリアでは赤身ばかりだからねー。


# by amore_spacey | 2025-02-01 00:12 | Japanese film | Comments(4)