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そして、デブノーの森へ (Sotto falso nome)

ネタばれ少しあり!
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【あらすじ】 Danielのペンネームで書いたデビュー作がベストセラーとなり、その後も本名を隠して作家活動を続ける人気作家Serge Novak(Daniel Auteuil)は、義理の息子の結婚式に出席するため、カプリ島へ向かった。そのフェリーの中で、Mila(Anna Mouglalis)という美しい女性に出会い、誘われるまま一夜を共にする。
  ところが結婚式に花嫁として現れたのは、何とMilaだった。その後もMilaは執拗にDanielを誘惑し、2人は許されぬ情事にのめりこんでゆく。しかし関係が深まれば深まるほど、Milaの存在は謎に包まれ、逆にSerge Novakとしての存在が、さらけ出されることになっていった。(作品の詳細はこちら


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ヨーロッパの優雅な上流階級を舞台に、ミステリアスで官能的なサスペンスが描かれる。前半だけ観ると、息子の嫁に手を出し愛欲に溺れた『ダメージ』を彷彿させるが、単なる中年の色恋モノに終わらず、DanielやMilaの過去が明らかになるにつれ、事実の下に秘められた人間の業について考えさせられる。覆面作家が墓まで持って行きたかった秘密、それを暴こうとする甘い罠。二人の行方は?最初から最後まで適度な緊迫感があり、二転三転して先の見えない物語にドキドキします。湿り気を帯びたデブノーの森やウッドハウス、官能的なベッドシーンの美しい映像、そこに流れる心地よい音楽が、ミステリアスな雰囲気を盛り上げてくれる。

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Danielはそれが罠だと分かっても引き返さない、引き返せない。そうと分かっていても、Milaと一緒に落ちてゆく。彼が最後にとったあの行動は、友人や家族やMilaへの償いだったのか?それとも究極の愛の形?Milaの存在とは無関係に、最初から決行するつもりだったのか。一連の謎が解けて真実が明らかになっても、Danielの本意は誰にも分からず、一件落着どころか、残ったのは静かな悲しみだけだ。

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Milaは思惑通りに事が運び、目的を果たしたつもりが、実はそうではなかった。愛憎混じった複雑な思いに困惑し、表情を曇らせるのだ。男を愛してしまった女の哀しさ故に。Milaを演じたAnna Mouglalisの、官能的でゴージャスな存在感、その裸体の際立った美しさには、圧倒されっぱなしでした。彼女の醸し出すミステリアスな雰囲気や官能美に、さり気ないファッションは、それだけでも観る価値があるくらい、魅力的で素晴らしい。復讐と愛の間で揺れ動くMilaの女の情念や、何ともし難い恋の終焉があまりにも切なくて、胸に込み上げてくるものがありました。


 
# by amore_spacey | 2020-02-18 00:16 | - Other film | Comments(0)

郵便配達は二度ベルを鳴らす (Ossessione)

ネタばれあり!
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【あらすじ】 ポー河沿いのトラットリアDoganaの経営者Giuseppe(Juan de Landa)の妻Giovanna(Clara Calamai)は、一回りも年上の夫との生活に辟易し、退屈な毎日を送っていた。
  ある日一台のトラックから放り出されてトラットリアの門をくぐった若い男Gino(Massimo Girotti)に魅せられ、激情が湧くのを感じた。GinoもそんなGiovannaの官能的な眼差しに欲情をかきたてられ、2人が駆け落ちを決行するまでに時間はかからなかった。アメリカのハード・ボイルド作家James M. Cainの同名小説を映画化。(作品の詳細はこちら


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Giovannaが行きずりの関係を結んだGinoと共謀して、邪魔になった夫を殺すことに成功するのですが…まぁ、何という残酷な結末なんでしょうか。Ginoと出会ったばかりにGiovannaの心に変なスイッチが入り、それまで抑えていた鬱々とした思いは、あらぬ方向へと彼女を駆り立てていくのです。

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自分の幸せのためなら手段を選ばない、Giovannaの非情さや異常な執着心がコワい。「私はあなたのためにしたのよ。(いやいや、自分のためにしたんでしょ?」と迫るシーンなど、もはやGinoしか見えない。一旦絡みついたら死んでも離さないぞー!というわんばかりの、追い詰められた女の生々しい姿には、ホラーのような怖さがある。もし私が男で、女にそんなことを言われたら、その場から全力で逃げます。Giovannaの利己的盲目的な愛こそが、原題の言うOssessione=妄執な愛、これが少しずつ運命の歯車を狂わせ、幸せを求めたはずなのに、悲劇を生んでしまう。これって、Visconti監督の処女作だったんですね。

この映画には日本語のタイトルにある郵便配達は出てこない。なのにどうしてこんなタイトルがついたのか、ちょっと調べてみました。James M. Cainの文庫本のあとがきによると、「アメリカでは郵便配達はいつも玄関のベルを二度鳴らすしきたりになっている。つまり来客ではないという便法である。それに郵便配達は長年の知識で、どこの何番地の誰が住んでいるかをちゃんと知っているから、居留守を使うわけにはいかない。二度目のベルは決定的な報を意味する。それと同じようにこの小説では、事件が必ず二度起こる。パパキダス殺しは二度目で成功する。法廷の争いも二度ある。自動車事故も二度、Frankも(この作品ではGino)一度去ってまた帰る。そしていつも二度目の事件が決定打となるのである。」  うーん、良くない決定的なことが起きるってことでしょうか。


# by amore_spacey | 2020-02-16 03:05 | - Italian film | Comments(0)

ずっとあなたを愛してる (Il y a longtemps que je t'aime)

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【あらすじ】 幼いわが子を殺害した理由を語ることなく、15年の刑期を終えたJuliette(Kristin Scott Thomas)は、身元引受人となった歳の離れた妹Léa(Elsa Zylberstein)の家に身を寄せる。しかし長い空白期間を経て再会した姉妹はぎこちなく、彼女はLéaの夫や娘たちとも距離を置いた。孤独の中に閉じこもるJulietteだったが、献身的な妹や無邪気な姪と過ごすうちに、自分の居場所を見いだしていくのだった。(作品の詳細はこちら


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ショートカットの女性が息を切らせて走る、もどかしげに階段を駆け上がる。一方誰もいない駅の待合室で、1人の女が固い表情のまま煙草を吸っている。この待合室に辿り着いた冒頭の女性は、女の横に立って、「Juliette!」 その呼び声にもう1人が、ゆっくりと振り向く。オープニングに登場する、JulietteとLéaの15年ぶりの再会のシーン。Kristin Scott Thomasの存在感と言ったら!心の微妙な揺れを1つ1つ丁寧に掬い取るような、静謐で繊細な演技にうちのめされました。

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久しぶりの再会に妹は嬉しくてしょうがないのだが、魂が抜けたようなJulietteは虚ろで何も語らず、機械的に息をして黙々と日常生活をこなすだけ。現実味の薄い宙に浮いたような日々。しかし突然現れた姉の存在に、人々は好奇の目や興味を降り注ぎ、きわどい質問を投げかけてくる。Léaの上の娘(養女)もその1人。Julietteを警戒するLéaの夫も、心から打ち解けようとはしない。予想はしていたgs、やはり世間の目は冷たいものだ。そんな中で彼女は、幼い息子の命をこの手で奪った罪の重さに1人で耐え、誰にも苦しみを訴えず救いも求めず、心を閉ざしてしまっていた。

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けれども家族や周囲と否応なく関わっていくうちに、凍りついた心が少しずつ解きほぐされていくのです。Léaの娘や夫や同僚、彼女の保護観察担当の刑事(カフェのシーンは印象的で好きです)、Léaのもの言わぬ義父、施設にいる母など、愛すべき人々たちとの交流を通して、Julietteは一人一人の生き方や考え方や温かさに触れ、本来の姿を少しずつ取り戻していく。薄いベールを一枚一枚、用心深く剥がしていくように。渡る世間は鬼ばかりではないんです。

中でも献身的に支え絶対的な信頼を寄せていた妹は、Julietteにとってかけがえのない存在で、ありのままを受け入れ、何があっても味方でいてくれる。自分を分かってくれる、認めてくれる、自分の居場所がある。それらが彼女を絶望の淵から救い出し、心の扉をそっと開き、人は人と寄り添い合うことで生きていける、という希望をもたらしてくれるのでした。


# by amore_spacey | 2020-02-14 00:20 | - Other film | Comments(0)

限りある神への道 (Le vie del Signore sono finite)

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【あらすじ】 ファシズムの嵐が吹荒れる1920年代の南イタリア。理髪師Camillo(Massimo Troisi)は、美しいフランス人女性Vittoria(Jo Champa)との失恋のショックから、足が動かなくなり車椅子の生活をしている。彼はルルドへの巡礼列車の旅でOrlando(Massimo Bonetti)と知り合うが、この青年も足が不自由で、車椅子を余儀なくされていた。内気で心優しい彼のことを気に掛けて、Camilloは自宅に招いたり、髪の薄い青年のために、理髪師の兄Leone(Marco Messeri)に育毛剤を頼んだり、何かと世話を焼くのだった。
  あるとき独り者のOrlandoに彼女を…と考えたCamilloは、偶然を装ってVittoriaの友人Anita(Carola Stagnaro)と引きあわせるが、OrlandoはVittoriaの美しさに惹かれ、Camilloは現政府を野次ったギャグで、ムッソリーニを支持するAnitaの激怒を買ってしまう。(作品の詳細はこちら


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遠慮気味ではにかんだような、飄々としてつかみどころのないMassimo Troisi。そんな彼の演技はどの作品においても、ロケの休憩時間に喋っている様子をそのままカメラにおさめたように自然で、撮影のカチンコが鳴る前も後も、大きく変わらず普段着のまま。どこからが役柄でどこからがMassimoなのか、その境目が分からない。役柄にスーッと入ったり出たりできるなんて、生まれながらの役者です。ただ、、、彼の話し方には独特の癖があって、非常に聞き取りにくい。しかも台詞が長いから、たまったものではありません。字幕、プリーズ!

さてこの作品はファシズム時代を背景に、二人の男の友情や一人の女性と彼ら二人を巡る関係を、淡々と描いています。主人公Camilloのとりとめのない話が延々と続くのですが、至るところに笑いやユーモアがちりばめられて、平凡なエピソードが生き生きしてくるのです。この映画の面白味は、Camilloの人柄によるところが大きい。どこかとぼけた感じの、子どものように純粋で無邪気な彼に、誰もが無関心ではいられない、人を惹き付ける不思議な魅力を持っている。そんなCamilloを程好い距離で見守るのが兄だ。



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純朴で天然すぎるCamilloは、ちょこちょこヘマを仕出かす。彼の見え透いた魂胆に気づいても、子ども騙しの可愛いもので、許せてしまう。かと思えば、彼はその場の空気を巧みに読んで、相手を傷つけないように、しかし相手に悟られないように気遣ったりする優しさや思いやりもある。親友のOrlandoが元カノVittoriaに好意を寄せていることを知って、激しい動揺を隠せず焦りまくるCamilloのリアクションには、大笑いでした。

ラストはやや強引かなとも思いますが、CamilloとOrlandoの男の友情はその後も続き、紆余曲折を経てCamilloも幸せを手にする、彼にはそういった人徳のようなものがあるのでしょう。この役を通してMassimo Troisiの人柄が、しみじみと伝わってきました。


# by amore_spacey | 2020-02-12 02:26 | Comments(0)

靴みがき (Sciuscia')

私のお気に入り度 ★★★★☆(80点)

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【あらすじ】 第二次大戦直後、ローマの街頭で靴みがきをしている二人の少年Pasquale(Franco Interlenghi)とGiuseppe(Rinaldo Smordoni)は、いつかお金をためて馬の持ち主になることを夢みていた。ある日二人はGiuseppeの兄に頼まれて闇商売の片棒をかつぎ、その報酬と貯金をあわせて念願の馬を手に入れる。しかしその喜びもつかの間、二人は逮捕されて少年刑務所送りになってしまう。(作品の詳細はこちら


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Sciuscia'とは米語のshoe shineをナポリ訛り風に読んだもので、この作品ではローマの高級ブティック街の街頭で、靴みがきをしていた子どもたちのことをさします。Pasqualeを演じたFranco Interlenghiが当時を振り返り、「オーディションには街頭で靴みがきをしていた子どもたちが何百人も集まった。私は6時間も待ったあとDe Sica監督の前に出たんだが、次!と順番を飛ばされ、悔しくてまたオーディション待ちの最後列に並び直したんだよ。その根性が買われたのかどうか知らないが、監督の目にとまり、主演の少年の1人を演ずる幸運に恵まれたんだ。」と懐かしそうに語っている。

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社会の底辺に生きる子供たちを描くことで、戦争後の悲惨な状況や、子供たちを利用する大人たちの身勝手さなど、敗戦国イタリアの生々しい現実を映し出している。ネオレアリズモの代表作と呼ばれ、アカデミー特別賞まで受賞した名作ですが、あまりにも悲惨な結末を迎えるため、当時イタリア国内では非常に評判が悪かったそうです。

前妻とDe Sica監督との間に生まれた長女Emi De Sicaは、「暗い戦後の混乱期に市民は、アメリカ映画のようなあっけらかんと明るいハッピーエンドの作品を求めていたのに、父があんな作品を次々と作るものだから、知人からは金を返せって、よく言われたものなのよ」と苦笑。アメリカでは高い評価を得ましたが、それは戦勝国が敗戦国の姿を眺めたから…でしょうか?皮肉なものです。 


# by amore_spacey | 2020-02-10 02:26 | - Italian film | Comments(0)