私のお気に入り度
★★★★☆(81点)
【あらすじ】 1993年、小さな出版社に勤める妻・翔子(木村多江)と生活力に乏しい夫・カナオ(リリー・フランキー)は、第一子の誕生を控え幸せな日々を送っていた。カナオは日本画家を目指す傍ら法廷画家の職を得る。しかしそんな2人を突如として襲う悲劇。初めての子どもの死という悲劇に見舞われ、翔子は次第に精神の均衡を少しずつ崩しうつに陥っていく。そんな翔子を静かに見守るカナオは、法廷画家という職について法廷に通ううちに、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件や地下鉄サリン事件といったさまざまな事件の公判を傍聴する。時代の変化の中で二人の夫婦は夫婦の絆を深めていく。
ありがちで地味な話ではあるけれど、気持ちがささくれていた時だったので、じわっと感動した。ひょうひょとしたリリー・フランキー。アドリブじゃないの?と思うくらい自然な会話。「頼りないなぁ」と最初は思ったのだけれど、間延びしたようなゆっくり加減が、あの夫婦にはいいのかもしれない。先を、結果を、急がない。優柔不断で自分の半径10センチくらいのことしか目に入らないような夫が、徐々に変わっていく様子は、見ていて嬉しかったな。色んな事件の公判を傍聴し、生身の人間の傷口に触れたことで、彼の中の何かが目覚め動き始めたのだろう。
ベランダで育てたトマトを、2人が一緒に食べるシーンで、「生きものの味がする」と夫がつぶやく。そんな些細なことに喜びを見出し共感できるようになった2人は、山あり谷ありでもこの先きっとうまく行きそうな気がする。あのトマト、おいしそうだったなぁ。2人が広い座敷に寝転んで翔子の描いた天井画を見るシーンは、
『日々と雲行き』のラストにも登場した。横に並んで海などを見つめるのもいいけれど、寝転んで手を繋ぐのも悪くないですね。
製作国:Japan
初公開年:2008年
監督:橋口亮輔
キャスト:木村多江, リリー・フランキー, 倍賞美津子, 木村祐一, 加瀬亮, 田中要次, 寺島進, 八嶋智人, 寺田農, 柄本明 ...