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Parenti serpenti

私のお気に入り度 ★★★★☆(82点)

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【あらすじ】 クリスマスイブ。イタリア中部アブルッツォ州の小さな町には、雪がしんしんと降っている。今年も年老いた両親とクリスマス休暇を過ごそうと、2人の娘Lina(Marina Confalone)とMilena(Monica Scattini)、そして2人の息子Alessandro(Eugenio Masciari)とAlfredo(Alessandro Haber)たちは、独身のAlfredoを除いてそれぞれ伴侶と子どもたちを連れてやって来た。年老いた母Trieste(Pia Velsi)は矍鑠(かくしゃく)として元気だが、元カラビニエレで厳格だった父Saverio(Paolo Panelli)は、いつもぼんやりとしてどこか虚ろな様子。
 イヴからクリスマス当日まで、母の手料理を囲みながら、親族たちは色んなゴシップに花を咲かせた。その最中にTriesteが、「あたしらは老人ホームには行かないよ。その代わり、あんたたち4人のうちであたしたちの面倒を見てしてくれる家族がいたら、自分たちの年金の半分と持ち家をあげる。」と爆弾宣言をしたから大変。財産は欲しいが老親の面倒を見るのは嫌。それぞれに思惑のある4人の子どもたちは、話し合いの末、丸くおさまる「ある計画」を思いついた。


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作品のタイトルには、イタリアの諺 Parenti, serpenti(親族、蛇) がそのまま使われている。韻を踏む2つの単語を並べただけだが、「血の繋がった家族や親族でも、信用しすぎると痛い目に遭う」という意味で、なかなか含蓄がある。この諺をそのまま映画化したような、大小の事件が展開していく。この先どうなる?この状況をどう解決する?ドキドキ&ハラハラしながら、ラストに向かっていく。

そして思いがけない辛辣・痛烈なラストに、誰もが仰天してしまう。「ええっーー、うそでしょ?」 いや、正確に言うと、見ている人は薄々そのオチに気づくが、「まさか、そんなことはしないよね?」というギリギリの善の気持ちが、見事に裏切られるのだ。一家を巻き込む大事件が、家族の繫がりを大切にするクリスマス休暇に起きる、というのも実に皮肉な話だ。


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イタリアは家族や身内を大切にする国として知られている。これは何もイタリアに限ったことではなく、多少の差こそあれ、どの国も同じだと思う。うまく行っているうちはいいが、介護や遺産相続という、利害が如実にかかわる問題が起きると、夫婦や親子や兄弟の関係に、微妙な或いは劇的な変化が生じてしまう。この作品はそんな状況に立たされた家族や身内の心の奥にひそんでいる黒い感情を、ストレートに映像化した傑作である。まったく、手加減なし!監督、あっぱれです。「これって、道徳的にどうなの?」「立派な犯罪でしょ?」なレベルですから。

でもこれはあくまでもコメディ映画なので、そういう突っ込みはこの際なし。日常生活には色々あるから、ほんのひととき大笑いして嫌なことを忘れる。そういう意味では、鬱屈した気持ちを吐き出すことのできる(カタルシス効果が期待できる)作品です。ナレーションを担当したのは、娘Linaの息子Mauroを演じたRiccardo Scontriniくん。子どもに語らせることによって、ブラック・コメディの強烈なショックや後味の悪さを幾らかでも和らげる効果を、監督は期待したらしい。この狙いも大正解でした。

製作国:Italy
公開年:1992年
監督:Mario Monicelli
キャスト:Tommaso Bianco, Marina Confalone, Alessandro Haber, Cinzia Leone, Eugenio Masciari, Paolo Panelli, Pia Velsi, Monica Scattini, Riccardo Scontrini ...


by amore_spacey | 2012-10-17 00:12 | - Italian film | Comments(0)
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