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2人の主人を一度に持つと (Servo per due)

私の抱腹絶倒度 ★★★★☆(96点)

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【あらすじ】 1930年代のリミニ。現代版Arlecchino(道化師)のPippo(Pierfrancesco Favino)は、たった今失業したところ。お金もなく食べる物もないので、ひどく落ち込んでいた。食べることだけが生き甲斐の彼は、あちこし職探しに回った末、同時に2つの職を見つけた。

 それは、Rocco(Fabrizia Sacchi)とLodovico(Pietro Ragusa)という2人の主(あるじ)に仕える仕事だった。かけ持ちすれば給料が2倍になるとPippoはほくそえんだが・・・。18世紀イタリアを代表するヴェネチアの喜劇作家Carlo Goldoniの作品Il servitore di due padroniの舞台を、20世紀のリミニに移し、現代風にアレンジした喜劇。


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あ~、笑った、笑った。大笑いした。笑いすぎて涙は出るし、お腹が痛い。舞台と客席が一体になって、笑いを共有する、これがものすごく居心地よく、とても楽しかった。主役の道化師Pippoを演じたPierfrancesco Favinoが、予想を遥かにこえて素晴らしかったのだ。舞台に登場したその瞬間、場内の空気がピーンと引き締まった。前から3列目の席で、手の届くところに彼がいます。声がいいし、歌もうまい。動きが軽やかでしなやか。おバカ丸出しなのに下品にならない。のびのびとパワフルに、この喜劇を引っ張っていってくれた。休憩を入れて3時間近い舞台で、最後まで観客の心をつかんで離さない。あっぱれ!見事な芸当だ。


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さらに彼は、『Happy Family』の作家Ezioのように、自由自在に劇から出たり入ったりできる。役柄からもすっと出たり入ったりできちゃう。ついさっきまで道化師を演じていたのに、気がつくと彼はPierfrancescoとして観客に話しかけ、観客は一個人としてのPierfrancescoに答えているのだ。双方のノリがこれまた良く、その場は更に盛り上がる。このやりとりから、笑えるネタを瞬時に拾い出して、アドリブ芝居を続ける彼。

この芝居が秀逸なのだ。ごくありふれた台詞で、場内のテンションをどんどん上げていく。こうして舞台と観客の間にあった見えない境界線を、彼はいとも簡単に取り払ってしまった。それだけでなく客席に下りてきて、ランダムに選んだ客(これは最後にオチがあるんだけど…)と世間話を始め、その客を舞台に上げて劇に参加させる。観客を笑わせた彼自身も笑いをこらえきれず、舞台には戻ったものの、笑いが止まらず、いったん台詞を中断。そんな姿に観客はまた笑う。


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言う間でもないが、芸達者な脇役や幕間に登場したバンド(カルテット)がいたから、うまくいったのだと思う。役者1人1人がそれぞれの持ち味を、与えられた役柄で遺憾なく発揮していた。この揺るぎない土台のおかげで、Pierfrancescoは水を得た魚のように、自由にのびのびと演じることができたのだ。


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この作品の笑いも、『ミランダ』のように、バカバカしさのオンパレード。主役がおバカで冴えない人間だったり、みんなが派手に転んだりつまづいたり、物をひっくり返したり、ちょっぴりお下品なことを言ったりやったり。人の無様な姿は、まったく滑稽でおかしい。よくできたコメディドラマや舞台は、そうと分かっていても、そのシーンで笑ってしまう。笑いのツボのようなものが、隠されているんでしょうかねェ。



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純粋なおかしさに加えてこの劇では、リミニ人やナポリ人やカラブリア人の人柄をネタにしたり、『炎のランナー』の有名なシーンをパクったり、時代背景に合わせて、ファシズム時代に流行った歌をカルテットに歌わせたり。舞台の上で消火器を噴射させるという、意表を突いたシーンもある。一見ワザもひねりもない喜劇だけれど、あれは隅々まで計算された演出&演技だったに違いない。それを感じさせない自然な笑い。あれほど私たちを笑わせてくれたスタッフの力量には、ただただ驚くばかりだ。楽しいひとときをありがとう。

劇場:Teatro Duse (Bologna)
上演日:2014年1月19日
監督:Pierfrancesco Favino, Paolo Sassanelli
原作:"Il servitore di due padroni" di Carlo Goldoni
脚本:Pierfrancesco Favino, Paolo Sassanelli, Marit Nissen, Simonetta Solder
キャスト:Pierfrancesco Favino, Bruno Armando, Gianluca Bazzoli, Haydée Borelli, Claudio Castrogiovanni, Pierluigi Cicchetti, Ugo Dighero, Stefano Pesce, Pietro Ragusa, Marina Remi, Diego Ribon, Chiara Tomarelli, Valentina Valsania


by amore_spacey | 2014-01-31 01:08 | Theatre | Comments(0)
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