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縮みゆく人間 (The incredible shrinking man)

私のお気に入り度 ★★★★☆(80点)

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【あらすじ】 Scott Carey(Grant Williams)の体は、一年半前から突然縮み始めた。放射能汚染と殺虫剤の相互作用で、毎日1/7インチ(3.6mm)ずつ身長が縮んでゆく奇病に冒されたのだ。現代医学もなす術がなかった。そのうちに妻(Randy Stuart)や飼い猫よりも小さく、ついには昆虫並みの大きさになってしまった。そしてゼロになる時が6日後に迫った今、彼は恐怖と孤独と絶望の淵をさまようのだった。サスペンスの巨匠Richard Mathesonの作品を映画化。


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「どんどん引き込まれていった。色々考えさせられ、尚且つ面白かった」という某ブロ友さんの記事を読んで、さっそく伊語版の原作を入手したが、映画化されたことを知って、先に映画を観ることにしました。

これは古きよき時代のモノクロ映画で、パワーで押し切るような今どきのハリウッド映画とは一線を画する。CGを駆使した完成度の高い昨今のSF映画やアクション映画は、ヴィジュアル的にはインパクトがあって素晴らしいが、瞬間的なものが多く心に残らない。いくぶん子どもだましで素朴な本作品は、それが却って新鮮で、目にも心にも優しくフィットしつつ、心の片隅を小さく揺るがせますね。


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身体が大きくなったり小さくなったりする話といえば、『一寸法師』『不思議の国のアリス』『ガリバー旅行記』のような、童話や冒険モノ、そして視覚的な面白さを盛り込んだ楽しい物語を思い浮かべ、「身体のサイズが自由自在に変わったら、面白いだろうなぁ」と思ったりする。しかしSFサスペンスの王様Richard Mathesonが書いた『縮みゆく人間』の世界は、それほど甘くはありません。

小さくなっていく男の、それでも生きようと必死に闘う姿が、ときおり滑稽にすらみえる。が、肉体的にも精神的にも追い詰められた末、豆粒大の彼が辿りつくのは、悟りの境地や覚悟だ。縮んでいくことを恐れず人間の尊厳を失わず、自分の人生に誇りを持ちながら、ありのままの状態に甘んずる。これ、言うは易し。なかなかできることではない。Scottは自分より大きな猫やクモと戦ったり、食糧調達に涙ぐましい努力をしたり、大洪水から身を守ったりと、生への執着が凄まじい。


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この機会にRichard Mathesonの短編をいくつか読んでみた。人間の本能や心の奥底に隠されている、本人も気づかない本音が、常にテーマになっている。闇のようなこの感情に不意打ちをくらい、思いもかけない場でこの感情と向き合い、戦わねばならないところに、ホラーとは違った目に見えない怖さがある。ブラックな結末は、阿刀田高のショートショートを彷彿させる。ではこれから、原作を読んでみます。

製作国:U.S.A.
初公開年:1957年
監督:Jack Arnold
原作:Richard Matheson
キャスト:Grant Williams, Randy Stuart, April Kent, Paul Langton, Raymond Bailey, William Schallert, Frank J. Scannell , Helene Marshall ...


by amore_spacey | 2014-03-03 05:14 | Other film | Comments(4)
Commented by turezure-italia at 2014-03-03 06:51
こんばんは!これは面白そうです!手に入ったら私も見てみたいです。クモと戦うのも大変そうですね~。猫にも食べられちゃいそう。

ちなみに、ガリバー旅行記は大人になってから読むと面白いんですよ!岩波文庫から出ています。人間への憎悪に満ちていましたよ。ガリバーが小さい時は、ペットみたいな感じで愛玩物となり、よく貴婦人の胸元に入れられていたらしいのですが、とにかく人間の皮膚の汚なさったらない、毛穴が汚い、なんて言って、最終的には人間が信じられなくなっていました。そうか、毛穴も小人ガリバーにとっては、巨大な落とし穴に見えるだろうしな、なんて思いましたよ。
Commented by amore_spacey at 2014-03-04 05:44
☆ turezureさんへ。
CGを見慣れた目には子供騙しのゆるゆる過ぎる映像ですが、なかなかいいもんですね。台詞はほとんどないので、吹き替えや字幕は楽勝!な~んて、関係ないですね(笑) あれだけ小さくなると、マッチ棒や糸や待ち針を持ち上げるのに、両手を使わないとダメなんですねー。

そういえば『ガリバー旅行記』って、小学生用の世界少年少女シリーズで読んだことはありますが、文庫本を手に取ったことはないです。大人になってから読むと、新しい発見があって面白いでしょうね。
Commented by atelier_alba at 2014-03-25 22:32
こちらにも来てしまいました。(^^)
モノクロの写真がなかなか良いですね。本を読んでいる時は、想像力をフル回転して自分なりに映像を浮かべていましたが、映像があるとしたら答え合わせみたいに比べてみたくなります。
なんとか手に入れたいな。^^
Commented by amore_spacey at 2014-03-27 05:20
☆ albaさんへ。
いらっしゃいませ~♪&初コメありがとうございます。私は映像から入ったので、そのイメージで原作を読んでいます。いちいち辞書を引かないので、8割程度の理解なんですが、2割のところがもやもやしてすっきりしません。これは絶対に日本語版も手に入れなくちゃと思いました。「答え合わせみたいな」そうそう、albaさんにはそんな楽しみがありますね。
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