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人間の値打ち (Il capitale umano)

私のお気に入り度 ★★★★☆(85点)

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【あらすじ】 クリスマス・イヴの夜。北イタリアの街Brianzolaの県道で、自転車に乗った男がジープにひき逃げされた。目撃者の証言によりこの事件に、機関投資家Giovanni(Fabrizio Gifuni)とCarla(Valeria Bruni Tedeschi) の裕福なBernaschi夫妻の1人息子Massimiliano(Guglielmo Pinelli)と、破産間際にある不動産業者Dino(Fabrizio Bentivoglio)と精神科医Roberta(Valeria Golino)の中産階級のOssola夫妻の1人娘Serena(Matilde Gioli)が絡んでいることが分かった。そしてひき逃げ犯を捜査するうちに、意外な真実が明るみに出る。


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観終わったあと、言い表せない重苦しい感情に包まれた作品だった。ストーリーは淡々と進んでいく。私情を挟まない。声高な主義主張やスローガンも見当たらない。そういう厳然たる現実がある、明確なのはそれだけ。この乾いた展開が却って、どうにもならない現実をより際立たせ、「そうなんだ」と認め諦めざるを得ない。それでも割り切れない嫌な感情が、残響音のようにいつまでもくすぶり続ける。

21世紀の新興ブルジョワ階級にのし上がった有能な金融トレーダーGiovanniや、何とか窮地を脱しようともがく破産寸前のDinoは、かつてないこの不況を乗り切るためなら、なりふり構わず何だってやる。モラルや良識なんて、とうの昔に忘れてしまった。そうしなければ、自分も家族も路頭に迷ってしまう。食うか?食われるか?現実は厳しい。そんな彼らを、どうして責めることができようか?極秘に裏取引きをしたDinoやGiovanniの妻Carlaにしても、別のやりかたで真実を明らかにすることができたのに、と言うは易し。私が彼らの立場だったら、同じ手段を選んだと思う。


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そんな薄汚れた大人の中で、ひっそりと、しかし毅然と健気に生きているのが、Dinoの1人娘Serenaだ。何者にも汚されない純粋な思い。厳しい不況の中で、大人たちが見失ってしまったモラルや正義のようなもの、それを彼女はまだ手放していない。真実を見ようとする、彼女のぶれない堅固な意思が、この作品の大きな救いである。


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タイトルのIl capitale umano=人的資本は、人間が持つ能力(知識や技能)を資本として捉える。この作品の場合、県道でひき逃げされた男の人間的価値で、年齢・性別・社会的地位(職業)・資格・年収・所有財産・家族の有無など、全てを指す。彼の人的資本は約3000万円と弾き出された。

製作国:Italy, France
初公開年:2014年
監督:Paolo Virzì
原作:Stephen Amidon 'Human Capital'
キャスト:Fabrizio Bentivoglio, Valeria Golino, Valeria Bruni Tedeschi, Fabrizio Gifuni, Luigi Lo Cascio, Matilde Gioli, Guglielmo Pinelli, Giovanni Anzaldo ...


by amore_spacey | 2014-03-14 02:28 | - Italian film | Comments(0)
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