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変身 (La metamorfosi)

私のお気に入り度 ★★★☆☆(70点)

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【あらすじ】 父(Dario Cantarelli)の借金の返済と妹Grete(Claudia Scaravonati)が音楽院に通う学費を稼ぐため、Gregor (Luca Micheletti)は布地の販売員として懸命に働いていた。しかしある朝目覚めると、彼は巨大なムカデのような虫になっていた。両親は気味の悪い姿になった息子を、部屋に閉じ込めて鍵をかけるが、妹だけは彼の存在を許容していた。収入源を失った一家は両親と妹が働き始め、また家計の足しにするため3人の紳士たちを下宿させた。そんなある日、妹が弾くピアノの音色を聞いて、懐かしさのあまり虫になった兄が部屋から出る。父は彼の姿を見るや否や、激怒して暴力を振るった。驚いたGregorは這いながら自分の部屋に戻り、家族のことを思いながら死んでいく。


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原作(1912年)には不気味さや堂々巡りする粘着性の苦悩や家族の凋落といった雰囲気が、そこら中に溢れていたはずなんだけど、舞台には艶かしさが始終漂い、これってソフトポルノ?(◎∇◎)


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絡みつくような娘のエロティックな動き、父娘や兄妹の隠微な関係、妹が片方の乳房を出して兄に飲ませる、父親がすっぽんぽんになる、兄妹が一緒にピアノを弾くときの危うい空気、全裸になった妹のシャワー&両親の交接・・・(● _ ●;) 客席の9割がティーンエージャーだったから、ざわめきも半端なかった。そうそう、小劇場なのに音響効果がうるさくて、みんな耳をふさいでいました。


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高校生の頃、初めてこの作品を読んだときには、若者が何の理由もなく不気味な虫に変身してしまう、この冒頭があまりにも衝撃的で、Kafka=虫とインプット。未熟だった、私。『縮みゆく人間』のScottも、外見がどんどん変わっていくという点が、似ているかもしれません。


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もう一度ざっと読み直して舞台を観ると、Kafkaは虫のような状態になった人間の心理を描きたかったのかなと思う。変身が引き金となって引き篭もるGregor。外見は不気味な虫だけど、頭は人間の機能を果たしている。なのに言葉を話せないから、家族と意思の疎通ができず、出口の見えない苦悩が生じる。

またKafkaは無力や怠惰を人間の本質と捉えつつ、それを頭ごなしに否定しない。もっとしっかりせんかい!と叱咤激励することもない。時代背景や切り口は違うものの、荀子の『性悪説』(紀元前3世紀ごろ)や坂口安吾の『堕落論』(1946年)に通じるものがある。人間は弱い存在なんだから、仕方がないよ。それにしても今回の舞台は思いがけずポルノチックで、刺激的でした。

劇場:Teatro delle Passioni (Modena)
上演日:2014年3月21日
監督:Luca Micheletti
原作:Franz Kafka
キャスト:Dario Cantarelli, Laura Curino, Luca Micheletti, Claudia Scaravonati


by amore_spacey | 2014-03-25 02:24 | Theatre | Comments(0)
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