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おみおくりの作法 (Still Life)

ネタばれあり!?

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 ロンドンに暮らすJohn May(Eddie Marsan)は、孤独死した人を弔う民生委員として働いてきたが、人員整理で解雇を言い渡され、自宅の真向かいに住むBilly Stokesの弔いが最後の案件となった。これまでも誠実に故人と向き合い、弔いをしてきたJohnだったが、最後の仕事にはいつも以上に熱心になり、故人を知る人を訪ね、葬儀に招く旅を経るうち、彼の心の中に変化が生じていく。(作品の詳細はこちら


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不意打ちのラストに、胸がまだドキドキしている。人生って不条理だ!

ズングリして風采の上がらない公務員Johnは、愚直なまでに律儀で誠実な男。着古した背広にグレーのベスト、使い込んだ鞄、七三分けの髪、喜怒哀楽の感情がほとんどなく、毎日同じ食事、毎日同じ仕事を淡々とこなす。これがJohnの暮らしだ。退屈極まりない。それなのにEddie Marsan演じるJohn Mayには、「この人のことを、もう少し知りたい」と思わせるような何かがあり、知らず知らずのうちに作品に引き込まれてしまった。


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「故人のプライベートに、立ち入り過ぎなんじゃないか?」などとも思ったが、誰にも看取られることなくこの世を去っていった人たちにも、生きてきた道のりがあった。Johnはそこに思いを馳せる。そして自分なりに納得したやり方で、故人を見送りたいという小さなこだわり。それを何十年も繰り返してきたのだ。始終淡々としている彼が、1度だけ語気をわずかに強めて、「私はこの仕事を愛しているのだ」と言い切った。昇進や出世とは縁のない仕事。窓際族的な閑職であっても、そこにJohnらしい彩を添える。彼は与えられた場所で、、自分らしい花を咲かせた。


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静かなドラマの中にクスッと笑えるシーンが、タイミングよく織り込まれている。Rachel Portmanのサントラ(音が出ます)と映像のコラボも素晴らしい。湿っぽくなり過ぎず、かといってドライにもなり過ぎず、気持ちが落ち着く。最近あちこちでJoanne Froggattを見かける。『ダウントン・アビー』の効果だろう。小柄な彼女の、きりっとした口元が好きだ。  


by amore_spacey | 2015-03-19 01:54 | - Other film | Comments(2)
Commented by petapeta_adeliae at 2015-03-20 12:34
>静かなドラマの中にクスッと笑えるシーンが、タイミングよ
>く織り込まれている
サントラの画像で、椅子の脚に挟まれた本もだけど、
窓辺にトロフィーのような上に類人猿?が並んで
いるところがツボに入ってしまいました。(^_^;)

イギリスでは死に関する職業は公務員なのかしら?
ロッド・シチュワートは墓穴を掘る公務員だったと
読んだことがあります。
Commented by amore_spacey at 2015-03-30 03:17
☆ ソーニャさんへ。
大きな山場は1つあるのですが、それ以外は静かに淡々と進んでいくのです。でも英国らしいシニカルなジョークがあちこちにあって、ここは笑うトコじゃないぞ!な空気なのに、クスッと笑っちゃうんですよね。
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