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特捜部Q 檻の中の女 (Kvinden i buret / The Keeper of Lost Causes)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (83点)

ネタバレあり!

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【あらすじ】 捜査ミスにより部下を殉職させ、自身も重傷を負った経験を持つ殺人課の刑事Carl(Nikolaj Lie Kaas)は、特捜部Qへ転属されることになったが、そこは未解決事件の残務整理を主な業務とする閑職部署だった。仕事をしていく中で、Carlは5年前に起きた女性議員の失踪事件に興味を持つ。議員のMerete(Sonja Richter)が、船から投身自殺したとして処理されていたのだ。イラクから研修に来ている助手Assad(Fares Fares)の力を借りながら、Carlは再調査に挑むのだが…。Jussi Adler-Olsenのミステリー小説『特捜部Q』を映画化。(作品の詳細はこちら


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Mads Mikkelsenと何度も共演していて、気になっていたNikolaj Lie Kaasが、何と!主役じゃないですか。嬉しくなって観てみたら、期待を裏切らない面白さで、見事にハマッてしまいました。派手なカーチェイスや銃撃戦なんてものは、1度も登場しない。むさくるしいおっさん刑事2人が、寒くて陰鬱な北欧の地で、未解決事件の捜査にあたる。残酷なシーンや血まみれシーンもほとんど登場しない。それどころか異様に美しいシーンが時々出てきたりして、面食らう。それが却って不気味で、猟奇的な雰囲気を煽るのだ。今回は粘着気質な人間特有の執拗さに、背筋が凍りつきました。

ぶっきらぼうで無愛想なCarlと、毛むくじゃらで人懐こい助手のAssad。という安定のキャラ設定だが、Carl役や相棒のAssad役がハマり過ぎで、これ以上のキャスティングはあり得ないかも。画面にこの2人が出てくるだけで、何かありそうで(何もなくても)面白い。


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さて不条理な運命に憤る犯人の復讐は、どす黒くて凄まじく執拗なのに、交通事故の現場がとても静かで美しい。白い雪が舞う中に立つ、真っ赤なワンピースを着た天使?いや、あれは少女Mereteだ。そんな彼女を、横転した車の中から、当時少年だった犯人の目が追う。音もなくスローモーションで動いていくシーン。事故のショックで、一瞬、魂が身体から遊離するために起きる現象なのか?目の前の状況が、あまりにも現実離れしていて、キツネに抓まれたかのようだ。


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自分がこんな悲惨な人生を送っているのに、全てを奪った元凶のMereteは、女性議員として成功している。はらわたが煮えくり返るような憎悪。そしてあの時、一瞬でも彼女に魅了されてしまった自分へのおぞましさや自己嫌悪。そこに粘着気質が加わって、復讐の鬼と化すのだ。それにしても酷い拷問だ。あんなひどい目に遭わされるくらいなら、さっさと殺して下さい。


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犯人に辿り着くまでの展開も興味深いが、ちぐはぐな2人の刑事の捜査活動や、ちらっと垣間見えるCarlの私生活が、地味な作品に小さな起伏をもたらしてくれる。この2人が徐々に距離を縮めていき、面白コンビになっていく過程もたまらない。刑事という肩書きを取り払った、1人の人間としてのCarlの生き様を見ていくうちに、じわじわ親近感がわいてくる。Assadの淹れた不味いコーヒーも、後半で認めたCarl。あの微妙な表情が可愛い過ぎる、このシリーズの原作を、読んでみたくなりました。


by amore_spacey | 2017-10-31 01:51 | - Other film | Comments(0)
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