道 (La strada)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 純真で誠実だが少々頭の弱い娘Gelsomina(Giulietta Masina)は、貧しい家族の食い扶持を繋ぐため、旅芸人のZampanò(Anthony Quinn)に売られた。彼の助手となって旅に出るが、Zampanòは粗暴でよく暴力を振るい、挙句の果てには彼女を力尽くで妻にしてしまう。Gelsominaのやさしさも、彼には通じない。彼女は新しい生活にささやかな幸福さえ感じていたが、Zampanòの態度に嫌気が差して、街へ逃げていった。そこで出会った陽気な綱渡り芸人(Richard Basehart)が奏でる、ヴァイオリンの哀しいメロディに引きつけられ、彼と親しく口をきくようになる。1954年ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を、1956年アカデミー最優秀外国映画賞を受賞。(作品の詳細はこちら


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中学生の頃、この作品を初めて観た。まるで子どものようなGelsominaが、愛らしくいじらしくも、「なんだってあんなクズ男に、いつまでもくっついているんだろ」 物のように邪険に扱われても、Zampanòの傍を離れなかったのが、ただもう不思議で仕方がなかった。私の中では、野獣のようなZampanòが、100パーセント悪の権化だったから、夜の浜辺に這いつくばって慟哭するラストシーンは、動物が狂ったように泣きわめいている、恐ろしい光景だった。


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ところがどうだ、今回2回目の鑑賞で、ラストシーンにガツーンとやられた。Zampanòに、愛おしさを抱いた。彼の気持ちが、今なら痛いほど分かる。生まれながらにして不器用で寂しがり屋なのに、喧嘩っ早くて強がりばかり言う。弱音が吐けない、本音も言えない。典型的な昭和生まれの男だ。無骨で子どものような彼が、綱渡り芸人と仲良くするGelsominaに嫉妬したり、雨の日の納屋で彼女と過ごす時間がまんざらでもなかったり、修道院でお代わりを断る彼女に、「もっと食べなよ」と言ってくれたり、最後にはスパゲッティを茹でてくれたり…。それが彼なりの愛情表現だ。Zampanòは彼女に惚れていた。忘れようとしても忘れられなかった。ぞっこんだったんだよ。

「同じ土地に何年もいると、情が移ってしまう」という修道女の台詞は、人間関係にも当てはまる。一緒に暮らしているうちに、小さな絆が芽生え情が湧いてくる。Zampanòのようなタイプの男は、母性本能も刺激する。傍目には不思議なカップルかもしれないが、彼らは互いに無くてはならない存在だった。あんな幕切れだったが、2人は十分に幸せな時間を過ごしていたと思う。夫婦のことは、他人にはホントに良く分からないもんですから。人生も人の心も、一筋縄ではいかない。愛おしく切なくて、哀しくやるせないです。


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Gelsominaのテーマとも呼べるあのメロディー。どこにでもありそうな、シンプルなメロディーが、登場するたびに少しずつ輪郭を帯び始め、何とも言えない感傷的な気持ちを呼び覚ます。そしてこのメロディーは、洗濯物を干す若い女が口ずさむ歌となって、決定打を放つ。この辺りから涙腺がゆるみはじめ、鼻の奥がツーンと痛くなる。住所も携帯番号もLINEも知らないが、あのメロディーこそGelsominaのIDそのものだった。メロディーの美しさ、そしてこのメロディーの使い方の上手さよ!


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by amore_spacey | 2018-03-19 01:08 | - Italian film | Comments(4)
Commented by petapeta_adeliae at 2018-03-19 14:55
去年だったか見ました。
あのいやぁな男はアンソニー・クィーンだったんですね。
年を取ってからしか知らず、アラビアのロレンスと
ナバロンの要塞しか浮かびませんでした。

ニーノ・ロータの曲が盛り上げてくれましたよね。
ニーノ・ロータか亡くなって彼の作品ばかり演奏した
番組で若い頃の写真ヶ映しだされて絶句!
映画の主人公もいけるほどのイイ男でした。
Commented by gabbyna at 2018-03-19 23:42
この映画、昔見た時に本当に悲しいって思いました。アンソニー・クイン、嫌いな役者さんでいましたね。
ちなみに同僚さんのミドルネームがこのGelsominaです。
観たいけど、ちょっと観たくないかなぁ。
Commented by amore_spacey at 2018-03-23 00:43
☆ ソーニャさんへ。
かつて好きだったケヴィン・コスナーと共演した時も、アンソニー・クインは卑劣な役を演じていて、あの時は心底嫌いになりました。ゴツくて大きな顔が、香川照之氏を彷彿させるのですが、1度見たら忘れない容貌です。ニーノ・ロータは本当に素晴らしい音楽を作り出しますね。えー、若い頃はそんなにイイ男だったのですか~。
Commented by amore_spacey at 2018-03-23 00:47
☆ gabbynaさんへ。
子どもの頃見たときは、Gelsominaばかり目で追っていたので、彼女が可哀相でたまらず、そんな彼女を物のように扱うクインが憎くて嫌いでした。が、彼ってホントに不器用な男で、世渡りが超下手ですよね。そんなところに親近感を抱いてしまいました。でもやはり、乱暴はいけません。
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