The Place

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

ネタばれあり!

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【あらすじ】 バール『The Place』の一番奥の席、いつも同じこの席に、毎日どの時間に行っても、1人の男(Valerio Mastandrea)が座っている。テーブルにはぎっしり書き込まれた、黒い革の分厚い手帳が1つ。そこで食事をしたり珈琲で一服したりする彼のもとには、何人ものクライアントが入れ替わり立ち代わりやって来る。男は彼らの願いを聞き、それを叶える条件として、それぞれに特異な任務を与える。はたして彼らは、任務を遂行できるのだろうか?男が任務を与える理由とは?アメリカのテレビドラマ「The Booth at the End」にインスパイアされ映画化。(作品の詳細はこちら


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The Placeの赤いネオン。間もなくそれがバールだと分かる。カメラはバールの中へ、そして一番奥の一角に向かう。映画が終わるまで、カメラはそこに固定されたまま。だから舞台劇に近い。そこで1人の男が誰かと、向き合って話をしている。2人がどんな関係にあるのか分からない。次のシーンでは、男が別の女性と話している。というより、女性が顔を歪めながら、何かを必死に訴えるのをひとしきり聞いている。そして男はおもむろに分厚い手帳を手にとってパラパラ頁をめくり、何かを書きつけたあと、諭すようなしかし確固とした口調で女性に言葉をかける。


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そんなシーンが幾つも続くと、この男の存在が気になり始める。セラピスト?精神科医?胡散臭い宗教の勧誘?スピリチュアル系?人間の好奇心を刺激する、謎めいた男に扮するValerio Mastandreaが、絶妙で上手い。演じるというより、役者ではない素顔の彼がふらっとバールに来て、そこに座っているような自然さ。物憂げで気だるい所作や、苦渋に打ちひしがれた張りのない表情も、シナリオに沿って演じているのではなく、その日の様々な出来事が彼をそうさせているようだ。彼は善良なのか、邪悪なのか?そんなことをつらつら考えているうちに、気がついたら、バールの片隅に作り上げられた男の小さな世界に、引きずり込まれていた、という素晴らしい展開。さすがPaolo Genovese監督だ。


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瀕死の子どもを救いたい父親に、「人を殺しなさい」。神の声が聞こえなくなった修道女に、「妊娠しなさい」。アルツハイマーの夫を救いたい高齢の妻に、「バールに爆弾を仕掛けなさい」。視力を取り戻したい目の見えない青年に、「女性を強姦しなさい」。美しい容姿になりたい若い女性に、「強盗をしなさい」 …。男がそれぞれのクライアントに与える任務は、どれもこれも犯罪ばかり。しかも一見無関係に見える彼らが、どこかで繋がっているから、任務を遂行することで願いが叶う人もいれば、それによって悲劇を被る人も出てくる。表裏一体の任務。男は幸せの使いなのか?不幸の使いなのか?

しかしクライアントたちは、その関連性を知らない。絶望の淵に立つ人々が、自分のエゴのために、いけないと知りつつ犯罪に手を染めるのか、いやそれは幾らなんでも人間としてダメだと思いとどまるのか?エゴと願いを天秤にかける。究極の選択を迫られた時、人間性が深く試され、その人の本性が明らかになる。

クライアントたちはバールの男のところに何度も戻ってきては、任務を完遂させるための進行状況や、気持ちの変化を語っていく。カメラはバール内部しか映し出さないから、私たち視聴者は彼らの話や表情を手がかりに、背景にあるドラマや、映像として登場しない彼らの暮らしぶりや人間関係や心情など、様々なことを想像しつつ、作品の展開をそっと見守る。


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ところで男はこのバールにいて、人の話ばかり聞いているが、彼自身は自分の人生に満足しているのか?はけ口はあるのか?という疑問がふっと湧いて来る。大丈夫、このバールで働くAngela(Sabrina Ferilli)が、とびっきりの笑顔とある方法で、この男を癒してくれるんです。それは映画を観てのお楽しみ。


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by amore_spacey | 2018-04-11 01:11 | - Italian film | Comments(0)
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