世情 (La Tenerezza)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (76点)

ネタばれあり!

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【あらすじ】 心臓発作を起こして入院していた77 歳の元弁護士Lorenzo(Renato Carpentieri)は、退院後ナポリにある自分のアパートに戻る。自宅のある最上階に上っていくと、Michela(Micaela Ramazzotti)が階段に座っていた。向かいに住む彼女は鍵を忘れて出てしまい、アパートに入れないという。これがきっかけでMichelaや彼女の夫Fabio(Elio Germano)や2人の子どもたちと交流を持つようになった。Lorenzoには娘Elena(Giovanna Mezzogiorno)と息子Saverio(Arturo Muselli)がいるが、妻を亡くした頃から疎遠になり、彼は1人このアパートで暮らしている。(作品の詳細はこちら


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タイトルを直訳すると、「優しさ」「ふんわりした柔らかさ」「ほろりとさせる様子」。だからナポリに暮らす人々の、心の交流を描いた心温まる作品だと思った。が、元弁護士Lorenzoと隣人家族の、ぎこちないけれど微笑ましい交流が始まった矢先に、全く予期せぬ悲劇が起きて、「えーーっ?」と同時に気持ちも急降下↓↓↓ 心の準備が全く出来ていなかったから。Elio Germanoの存在が、不穏で陰鬱なのだ。彼が演じる役といったら、いつキレる分からない危うさを孕んだ不安定なキャラが多く、皮肉なことに上手すぎるのが難点で、何とも嫌ァな気持ちになる。でもでも好きな役者ですから、頑張って最後まで観ました。


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Lorenzoは現役で働いていた頃、非常に有能な弁護士ではあったが、あまり大きな声では言えないような、相当汚れた仕事もしてきた。肩書きを利用したあくどい方法で、生命保険などを騙し取る片棒を担いだこともあった。だから今でも評判が全く宜しくない。私生活でもダメ夫、ダメ父親。血の通った人間というぬくもりが感じられません。

彼には愛情が欠落していたのかもしれない。愛情などという面映いものを嫌っていた、もしくは他人に無関心だった、または単に不器用な人だったのかもしれない。とにかく人に囲まれていながら、常に孤独な人だったに違いない。そんな彼の凍りついた心をゆっくりとかしていったのが、Michelaだ。彼自身が戸惑ってしまうほど、抑えきれない衝動に突き動かされ、彼女の父親と偽ってまで病院に通い、彼女の傍らに座って、ひたすら語りかける。天涯孤独の彼女に、Lorenzoは自分を重ねたのだろうか。自分の分身のような彼女に、生きていて欲しいと心の底から願った。たぶん家族にも愛人にも、誰にも抱いたことのない熱い感情を、生まれて初めて全身で味わう。

人間味がないと言えば、Lorenzoの愛人や息子のSaverio、それからFabioのマンマの、余りにもそっけなく人生を割り切っている姿に、ある種の潔さを感じたが、共感はできませんでした。唯一娘のElenaが救いになっている。互いの誤解が解けたあと、心のわだかまりも消えていくに違いない。そうあってほしいと願う。


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これで人を傷つけてきた過去のすべてが帳消しになるわけではないけれども、彼にとっては精一杯の懺悔であり、今まで妻や子どもたちのことを省みなかったことへの、彼なりの罪滅ぼしでもあったのだと思う。このドラマの舞台となったのが、カオスの町ナポリ。人間臭く生活感が溢れる、猥雑としたナポリの路地裏である。スプレーの落書きで埋め尽くされた壁や、薄暗くて細い路地。どこから突っ込んでくるか分からないスクーターやバイクの群れ、信号無視、洗濯物がひらめくスペイン地区、たくさんの教会…。あの町の雰囲気にピッタリの作品だ。


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by amore_spacey | 2018-04-17 01:22 | - Italian film | Comments(0)
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