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太陽がいっぱい (Plein Soleil)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (92点)

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【あらすじ】 貧しい家庭に育ったアメリカ人青年Tom Ripley(Alain Delon)は、息子のPhilippe Greenleaf(Maurice Ronet)を連れ戻してきてほしいとPhilippeの父親から依頼され、イタリアへ向かった。
 しかし美しい恋人Marge(Marie Laforêt)のいる富豪の息子Philippeは親の金で遊び回り、アメリカに戻る気などさらさらない。その一方でTomは、邪険な扱いをし無礼な態度をとり続けるPhilippeに怒りを募らせ、やがてそれは殺意に変わる。Patricia Highsmithの小説The Talented Mister Ripleyを映画化。(作品の詳細はこちら


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このブログを始めて間もない頃にレビューを書いたのですが、あまりにも雑なやっつけ仕事だったので、書き直しました。これはAlainと私の出会いの作品で、彼のファンだった母と一緒に、小学生の私が初めて彼を見て、一目惚れしてしまったのです。「何と言うハンサム(当時イケメンという言葉は存在せず)な役者なんだ!」と。ドラマチックなオープニングロール、舞台となったイタリアの町や青い地中海、Margeの名前のついた白い巨大なヨット、Nino Rotaの哀愁を帯びたメロディ、何もかもが田舎の小学生には目新しくて素晴らしかった。イタリアの港町や魚市場(エイの姿は微妙だったが)にも魅了されました。

カメオでちゃっかり出演している監督は、当初あまり演技実績の無いAlainを起用することに、消極的だったらしい。また音楽担当のNinoは、作曲に対する監督の態度に立腹したというエピソードも残っているが、『太陽がいっぱい』は監督の代表作の1つになり、Alainは一躍世界的スターとして注目され、Ninoの音楽も大ヒットした。蓋を開けてみるまでは、分からないものです。


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先日の『危険がいっぱい』同様、コミカルなオープニング・ロールと音楽で始まるこの作品は、大どんでん返しのラストシーンで終わる。富も愛も太陽の輝きさえも手中に収めたTomが、Philippeのヨットの売買契約のために出向いたMargeを待ちながら、デッキチェアに身を沈めて、地中海の太陽の光を全身に浴びている。ああ、至福の瞬間。一方、陸上に引き上げられたヨット。それに続いて船尾のスクリューに絡みついた、1本のロープに引っ張られるようにして海中から現れる、黒くなったボロ帆布の塊を目にしたMarge…。このシーンは何回観ても背筋が凍りつく。


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別の意味でゾクゾクするシーンと言えば、TomがPhilippeの服を着込みPhilippeの髪型にして、鏡に向かって自らの姿に口づけをしながら、Philippeの口調で話すシーン。この病んだTomの一部始終を、無言で後ろから見ているPhilippeに、淫猥なものを感じました。二人が全裸で抱き合うより想像をかき立てられて、遥かにエロティックです。

もう1つ好きなゾクゾク・シーンは、Tomが偽の遺言状を書いている場面。Philippeになりすまして、さあ完全犯罪を実行するぞ!という、全身緊張のまさにその時、Philippeを訪ねて来たタイミングの悪いヤツがいる。そいつはPhilippeの友人Freddy(Billy Kearns)で、初対面のときから嫌な野郎だと思っていたから、思わずTomの右目がピクッと痙攣する。美しいAlainの顔はぞっとするほど強張り、そしてまたピクピクピクッと痙攣が走る。「こいつも消したる!」 Freddyを殺(や)ったあと、台所の隅っこでローストチキンを黙々と食べるTom。若き日のAlainの野卑でギラギラした美しさが炸裂しています。


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ところでFreddyの彼女のMargeなんですが、彼女は恐ろしく仏頂面したツンデレ(ツンツン?)女で、一体どこに魅力があるのか、女の私にはよく分かりませんでした。Philippe好みの、お金持ちのお嬢さま風だから?彼女が着ていたマリンルックなどの衣装は、どれもよく似合って素敵でした。因みに当時Alainが付き合っていたRomy Schneiderが、真っ赤なドレスに黒い手袋をはめ、Freddyの友だちの1人として、ちらっと出てますね。


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ところで、作品の後半に登場するRiccordi警部を演じたErno Crisa が、めっちゃ渋くてかっこいいんです。仲村トオルにちょっぴり似た、切れ長の涼しげな目に悩殺されました。ロケ地はイスキア島・プロチダ島・ナポリ・ローマ。BGMをバックにAlainが彷徨う魚市場が、ナポリで撮影されたと知り、昨年ナポリを旅して、猥雑ながら魅力満載の町を堪能しました。次はイスキア島とプロチダ島に行こう。


by amore_spacey | 2018-10-06 02:08 | Alain Delon | Comments(12)
Commented by petapeta_adeliae at 2018-10-08 00:45
ラストシーンはゾッとしましたね。
今でいうプロジェクターでフィリップのサインを写して練習する
シーンがとても印象的でした。

>当初あまり演技実績の無いAlainを起用することに消
極的だったらしい。

なんで?
スボンサーに強要されて、プライドが傷ついて投げやりに
なってて、それを見たニーノ・ロータが、プロ意識のない
監督にご立腹したとか?
Commented by petapeta_adeliae at 2018-10-08 20:29
先週、NHK「アラン・ドロン ラストメッセージ」を
録画していて今日見ました。
懐かしいこと、初めて知ったことがたくさんあり、
誕生日にそのことを書いてみようかと思いました。
例えば、レナウンのダーバンのCM出演に誰が橋渡しを
したのは誰で、どう口説いたかなどです。
1歳にしてすでにアラン・ドロンでした。
Commented by 松たけ子 at 2018-10-08 23:22 x
amoreさん、こんばんは!
イケメン俳優とか二枚目俳優は吐いて捨てるほどいますが、美男俳優はそう多くない。中でもアラン・ドロンは、絶滅種の美男ですよね~。ただ美しいだけでなく、悪と毒の香りがする美男。毒にも薬にもならんポリティカルコレクトネス俳優とは、まさに真逆な魅力と存在感です。私は絶世の美男よりもイモいチョイブサ男が好きなので、アラン・ドロンよりもマット・デーモンに抱かれたいです(笑)。そーいやマットもトム・リプリーを演じてましたね!往年のアラン・ドロンファンは失笑したことでしょうか。
「太陽がいっぱい」は、そこはかとなく同性愛の匂いが漂っていたところが良かったです。アラン・ドロンの未見出演作の中では、「ショック療法」と「真夜中のミラージュ」が観たいです。
Commented by amore_spacey at 2018-10-10 00:41
☆ ソーニャさんへ。
ボロボロになった布から出ている片手が、見るからに偽物なんですが、それでもラストシーンにはゾッとしますね。「映画が出来たから、これに合う曲を作ってくれ」と、監督から超上から目線で言われたのが、2人の間のボタンの掛け違いの始まりだったようですね。
Commented by amore_spacey at 2018-10-10 00:42
☆ ソーニャさんへ。
それ、すごく観たーーーいです!BSで放映された番組ですよね。色んなエピソードがあるんでしょうねェ。
Commented by amore_spacey at 2018-10-10 00:50
☆ 松たけ子さんへ。
イケメンの定義が今はすごく緩いから、中には「そうかなぁ?」と首を捻るような役者もいますが、アラン・ドロンは正統派の美男俳優で、好き嫌いは別にして、文句のつけようがありませんね。「もし役者になっていなかったら、女のヒモ的な人生だったかもしれないね」なんて、彼が言うから許せる台詞です。因みに『ショック療法』では、全裸になったアランの全力疾走シーンが登場しますよ。

『太陽がいっぱい』のあのイメージや雰囲気をそのままにしておきたくて、マット主演の映画は観ていませんが、こちらは原作を忠実に再現しているそうですね。
Commented by ケフコタカハシ at 2018-10-24 21:12 x
こんにちは。
私もこの作品先日のNHKの物を観ました。
これで3回目だと思います。
一回めは昔昔のそのむか〜しの洋画劇場で、二回めはマット・デイモンの「リプリー」と見比べをしました。
「リプリー」ではマット・デイモンの変身っぷりが見事だったような記憶があります。
最初フィリップとトムはたいして似ていないのに、だんだんトムの顔が変わっていくのが恐ろしいほど。
マット・デイモンてこんなに美形だったんだ〜、とビックリしました。
機会があれば是非「リプリー」もご覧になってください。
Commented by amore_spacey at 2018-10-26 00:44
☆ ケフコタカハシさんへ。
マットも大好きなんですよね。だからきっといつか『リプリー』も観てみます。原作をほぼ忠実に再現しているそうですから、『太陽がいっぱい』とはラストも違うし、マットの変身っぷりも楽しみです。
Commented by kotoritatinosu at 2020-03-11 14:34
こんにちは!!
初めてお邪魔いたします。

先日「太陽がいっぱい」をBSで放送していたんですが、やっぱり観てしまいました。
何度も観ているはずなのですがやはり、ドロンのあの顔を見たくて観てしまうという…笑
途中からだけど録画までしてしてしまい、毎夜ドロンの瞳に悶絶。
目の表情だけでも追えてしまう…女殺しドロン。

(今回の鑑賞で、感じたことですがモーリス・ロネがこれまで感じたことないほどセクシーに思いました。
私が歳を取ったせいでしょうか??笑
それにしても「死刑台のエレベーター」の2年後でロネがこんなにおじさんになってるのにも驚きましたけど。)

ルネ・クレマン監督がこの作品に出ているのですか??
どのあたりでしょう???
それから、「アラン・ドロン ラストメッセージ」問う番組
知りませんでした!!!
見たいなー・・。またやるかなー・・・
Commented by amore_spacey at 2020-03-13 01:32
☆ フキンさんへ。
いらっしゃいませ&初コメありがとうございます。
ええ、よく分かります、ドロンの「あの顔」を見たくて…の気持ちが。まだ駆け出しの頃で、モーリス・ロネの演技力や色気や余裕には及びませんが、繰り返し観たい作品ですね。何度もアップになる彼のブルーグレーの瞳に、うっかりしていると吸い込まれそうになります。

アラン・ドロンのファンなので、彼ばかり目で追っていますが、仰るようにモーリス・ロネが放つフェロモンは、官能的で濃いですよね。彼のまなざしも、とっても危険です。この二人は3作品で共演していますが、3つともモーリスが死んでしまうのは、偶然とは言え不思議な巡り合わせだと思います。

ルネ・クレマン監督はバールのカメリエレのような端役で、ちらっと出ているそうなんですが、未だに見つかりません(T’T) 「監督を探せ!」に、ぜひフキンさんも協力して下さい。
Commented by stefanlily at 2024-02-03 01:39
こんばんは、
「リプリー」は英語初心者向けの短縮版原書を読みました。
Mデイーモン版、アランドロン版どちらも好きです。
淀川長治様の2大指摘で後年、亡くなられてから驚愕したことが。
「太陽がいっぱい」の同性愛を匂わせる演出、演技。
「リプリー」のマット・デイーモンがより顕著なので衝撃でした。
もう一つはキム・ベイシンガーを「昔の銀幕スターの美女の顔」と。「LAコンフィデンシャル」でのベロニカ・レイクばりのヘアーメイクで納得!
淀川様は正しかったです。
Commented by amore_spacey at 2024-02-08 01:48
☆ stefanlilyさんへ
去年からリプリーを英語版で読んでいるのですが、ちっとも進まなくてまだ第1章の初めのほうで、リプリーがまだアメリカにいるところで止まってます(涙) 同性愛を匂わせるあの演出は、うっかりしていると気づかない、あのさりげなさがいいいですね。淀川長治さん、とても懐かしいです。
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