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離愁 (Le train)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 1940年、ドイツ軍はノルウェーやデンマークに侵入し、五月にはフランスにも侵入してきた。ナチスの手から逃れるため、ユダヤ人たちは他国へ逃亡を図る。ラジオの修理屋を営むJulien(Jean-Louis Trintignant)も、幼い娘と妊娠中の妻Monique(Nike Arrighi)を疎開列車の客車に乗せ、自分は貨物車輌に乗り込んだ。やがて名も知れぬ駅で、ドイツ生まれのユダヤ人Anna(Romy Schneider)が乗って来る。自由に身動きできない貨車の中で、互いに寄り添うようにしながら過ごすうちに、JulienとAnnaの間に束の間の愛情が芽生えていく。(作品の詳細はこちら


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この映画はラスト5分のためにある、と言うのは乱暴すぎるでしょうか。そこに向かってストーリーが、ある時は激しく、またある時は淡々と静かに流れていくのです。途中で挿入される当時の貴重な映像と映画のシーンが、全く違和感なく繋がっているので、戦争がもたらす悲惨な状況が現実味を持って迫ってくる。窓もない暗い貨物列車に乗り合わせた人々は、何日もの間ギュウギュウ詰めの中で、身を小さくして座っている。時間が経つにつれ顔見知りになった彼らは、互いに語り合ったり譲ったりしながら、次第に心を寄せ合うようになり、ある種の連帯感が生まれる。停車駅で列車に乗り込もうとする人々に手を差し伸べたり、食べ物を確保するために皆ワラワラと下車したり、川べりでピクニックを楽しんだり。そんな中でJulienとAnnaは、うっすらとしたうしろめたさを抱きつつ、惹かれあうようになっていきます。

疎開列車は静かな田園風景の中を走る日もあれば、突然空から爆撃を受けたり、戦火を逃れる人々の長い行列が線路沿いに出来ていたりする。戦争の悲劇は戦場だけでなく、町や村に残った一般市民にも容赦なく襲い掛かってくるのだ。人間は生と死の狭間におかれたとき、本能的に安らぎを求めようとするのか。単なる良き話し相手だったJulienとAnnaの間に、やがて愛情が芽生えていくのも、ごく自然の成り行きでしょう。この愛の行方は誰にも分かりません。

数年後、2人は全く思いもかけない状況で再会する。男と女の行き詰るような再会の場面。Annaの表情、高まる2人の感情。内に秘めた思いを押し留めようとするが、狂おしい激情を隠し通すことはもうできない。そしてJulienが選んだ道は…。胸をえぐり取られるようなシーンでした。決して許されない恋。戦争がなければ、ナチスの暴挙がなければ、同じ列車に乗ってなければ、たぶん出会うことはなかった。翳のあるRomy SchneiderとJean-Louis Trintignantが、素晴らしい演技を見せてくれました。


by amore_spacey | 2019-04-26 00:59 | - Other film | Comments(4)
Commented by 松たけ子 at 2019-04-28 20:19 x
amoreさん、こんばんは!
これも観たいけど観られないままなロミーの出演作!ご覧になれて、本当に裏山Cです!
これも非道なナチスの時代に翻弄される悲しい話みたいですね。でも大人の男女の恋愛映画としてもすぐれてるみたいですね。こういう大人の映画が最近はもう廃れてしまってるのが、残念で物足りないです。邦画やドラマのCM演技、学芸会演技に辟易してるので、ロミーとJJTの円熟の演技はさぞや芳醇なワインのように心に沁みることでしょうね。
引き続き、日本ではもう観られないようなロミーの出演作のレビュウ、期待しちゃっていいかな?いいとも~!(←自己中リクエスト、どうぞ無視しちゃってください💦)
Commented by bondgirl333 at 2019-04-28 22:18
こんばんは^_^
心がいたくなりそうな映画ですね。
ロミー、余りに哀しく、切なくなる程、素敵な女性ですね。
連休中、観ます^_^
Commented by amore_spacey at 2019-05-02 01:50
☆ 松たけ子さんへ。
この作品は派手な見せ場や感動渦巻く山場はないのですが、戦時中の暮らしを垣間見つつ、2人の淡い恋路の行方にスポットを当てています。ロミーもトランティニャンも、幸せオーラが少ない役どころが多いのと、本人たちが放つオーラにもどこか翳があり、まだ列車に乗りもしない序盤から、早くも切ない気持ちになっていた私でした。ラストシーンは余りにも哀しくて、しばらくその気持ちを引き摺ってしまいました。DVDが出ているといいですね。
Commented by amore_spacey at 2019-05-02 01:53
☆ bondgirl333さんへ。
ぎゅうぎゅう詰めの列車のシーンから、既に気持がどよーんとしていましたが、2人が再会するラストシーンは、意外な展開だっただけに、切なくて胸が苦しくなりました。
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