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家族ゲーム

ネタばれあり!

お気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 中学3年の沼田茂之(宮川一朗太)は高校受験を控え、父の孝助(伊丹十三)、母の千賀子(由紀さおり)、兄の慎一(辻田順一)たちまで家中がピリピリ。出来のいい兄と違って、茂之は成績も悪く、何人もの家庭教師がすぐに辞めていた。そこで家庭教師としてやって来たのが三流大学の7年生で、いつも植物図鑑を持ち歩く吉本勝(松田優作)という奇妙な男だった。


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公開当時この作品を観に行きましたが、あの時には松田優作の変貌振りや、家族全員が長い食卓に横一列に並んで座るという、今まで見たこともない食事のシーンに衝撃を受けました。ハードボイルドでアクションを得意とするジーパン刑事が、淡々としてポーカーフェイスを崩さず、暴力的な部分を秘めた得体の知れない男を、不気味なほど静かに演じていたのもビックリ。彼と次男の掛け合いは辛口漫才で、次男も負けちゃいない、なかなかやるじゃないか。食卓には4人がぎゅうぎゅう詰めになって、横一列に並んで座るから、互いの肘があたっていかにも窮屈そう。ラスト近くに登場する食事の場面は、ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』を彷彿させるが、松田扮する吉本の悪戯がどんどんエスカレートし、最後に長い食卓を引っくり返すという過激ぶり。でも本人は全く意に介さず、冷静・ポーカーフェイスで、「一体このひと、何なの?」

松田優作はもとより、他の登場人物も個性的でした。風呂場で紙パックの豆乳を飲み、半熟の目玉焼きの黄身を音を立てながら吸って食べるのが好きな父、長いこと夫婦でいるのにその小さなこだわりに全く気づかない天然な母、出来が良くてクールで夜は天体望遠鏡をのぞく兄の慎一。それから沼田家と同じマンションに住むちょっと変わった奥さん(戸川純)や、吉本と絡み合い彼に足を舐めさせるカノジョ(阿木燿子)。普通の人たちなんだけど、一歩踏み込むと変な癖や習慣がありますね。

ストーリーには直接関係ありませんが、慎一の同級生の女の子の部屋に行くために、両親の居る和室の前を通って、エレベーターに乗らなくちゃいけない。この家(マンション?)の構造はどうなってるの?気になるといえば、次男の勉強部屋で吉本の座る位置があまりにも次男に近すぎるし、音楽が流れるシーンで視聴者に音が全く聞こえない。吉本と次男の父や次男の両親が、2人きりでゆっくり話すために、車のある階下までわざわざ下りて行かなくちゃならない。この家族の(どの家族にも1つや2つはありそうな)特異性や居心地の悪さや不自然な状況を、人を食った調子で描いているのが面白い。彼らには当たり前のことが、客観的に見ると何かが変なのだ。

当時の日本は高度成長期が過ぎてバブル時代に向かい、一億総中流社会という均質で豊かな社会になったにも拘わらず、どこか不安で心のゆとりがなかった。核家族化・親子のコミュニケーション不足・受験戦争という言葉や、高学歴・有名大学に行って有名企業に就職したら人生安泰という神話が生まれたのも、この頃だったような気がします。この神話は本当に幸せをもたらしてくれたのか。次男や沼田家や家庭教師は、その後どうなったのでしょうか。


by amore_spacey | 2019-05-02 01:29 | - Japanese film | Comments(2)
Commented by petapeta_adeliae at 2019-05-04 03:53
この映画、37年も経つんですね。
家族が一列に座っての食事シーンは斬新でした。
何よりもツボに入ったのが、天真爛漫な母の由紀さおり。
由紀さおりの演技はクスッとさせてくれました。
Commented by amore_spacey at 2019-05-08 01:18
☆ ソーニャさんへ。
37年という数字を見ると、唸ってしまいます。そんなに昔の作品なのかぁって。由紀さおり、よかったですね。どの登場人物にも癖があるだけに、彼女はただ1人ゆるキャラ系で、とても和みました。
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