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盗まれたカラヴァッジョ (Una storia senza nome)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (73点)

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【あらすじ】 映画プロデューサーVitelli(Catania)の秘書Valeria(Micaela Ramazzotti)は、人気脚本家Alessandro(Alessandro Gassman)のゴーストライターを務めている。ある日彼女のもとに謎めいた男Rak(Renato Carpentieri)が近づいてきて、1969年から未解決のCaravaggioの名画盗難事件について教えてくれた。興味を引かれた彼女は事件をシナリオに起こし始め、それがAlessanderoの次回作として採用されることになった。しかしそのことが原因で、彼女たちは事件に巻き込まれていく。実際に起きたカラヴァッジョの作品盗難事件をもとに映画化。(作品の詳細はこちら


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二転三転する謎解きの中に人間ドラマを上手く織り込み、コミカルに話が展開していく、イタリアン・テイストに仕上げたサスペンス映画。謎の男Rakの正体や彼の真の目的、彼がValeriaに脚本を書かせようとした目的、プロデューサーに資金融資をする人物がマフィアに繋がっている事実、盗まれたカラヴァッジョの絵画の行方、マフィアと政府の裏取引き、Valeriaの母Amalia(Laura Morante)の過去など、興味深い要素が盛り沢山あり、また後半は劇中劇の形をとっているため、現実と劇(映画撮影のシーン)の境界線が曖昧になり、サスペンスらしい味がさらに増して見応えはあったのに、どこか尻切れトンボの結末にモヤモヤ感がおさまらない。

さてValeriaを演じたMicaelaがとても感じがよく、キュートでハマリ役でした。繊細・内気で不器用で、派手なことや表舞台に出るのは苦手だけど、抜群の文才があるので、密かに心を寄せる人気脚本家Alessandroのゴーストライターとして、ヒット作品を次々と世の中に送り出している。世界の片隅でひっそりと咲くマーガレットのような、はかなくも健気な存在です。独身の彼女は、政治家の影のアドバイザーとして活躍するマンマと2人暮らしですが、頭の良いしっかり者のマンマに押されっぱなし。そこに登場するのが、謎めいた初老の男Rakなのです。

平凡な日々にちょっぴり退屈していた彼女にとって、Rakとの出会いは何か面白そうな展開になりそうな予感がした。それどころか危険なにおいさえする。これは良い脚本が書けそうだと思ったのでしょう。そしてこの脚本が思わぬ事件を引き起こすのですが、初老の男Rakが謎だらけで、あんな厄介なことを持ち込んできたのに、Valeriaは彼を遠ざけたり通報したりしなかった。たぶん彼の情報の信憑性を確信した以上に、父性愛に飢えている彼女にとって、彼は頼りになり心安らぐ存在だったからでしょう。因みに現在パレルモのサン・ロレンツォ礼拝堂の正面祭壇にあるのは、今も行方不明となっているカラヴァッジョの名画の、デジタル版の複製画だそうです。


by amore_spacey | 2019-06-06 01:30 | - Italian film | Comments(0)
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