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メルシィ!人生 (Le placard)

ネタばれ少しあり!
 
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【あらすじ】 クソ真面目で冴えない中年オヤジPignon(Daniel Auteuil)は、2年前に離婚して妻子と別居している。そんな彼に追い討ちをかけるように、20年勤めた会社からリストラされることを聞かされた。思い余って身投げをしようとしたところを、隣に引っ越してきた老人(Michel Aumont)に引き止められる。事情を聞いた老人は、自らをゲイだと偽のカミングアウトをすることでリストラを回避する方法を、彼に提案した。
  翌日、会社宛に男と情熱的に抱き合うPignonの写真が送られてくる。これを見た経営陣は、ゲイ差別との糾弾を怖れて、彼の解雇を撤回した。Pignonの思惑は見事に成功したが、周囲の見る目はすっかり変わってしまう。(作品の詳細はこちら


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シリアスな役どころの多いDaniel Auteuilが、何と!フレンチ・コメディに出ていた。あんなに心から笑っている彼を、たぶん初めて見ました。ある意味、衝撃でした。でも一番ウケたのはやはりGérard Depardieuで、画面に出てくるだけで笑える。前半と後半の演じ分けは、実に上手かった。大袈裟でワザとらしいのに、彼らしいお茶目な仕草が、なんとも可愛らしい。

あるいは裏切りという名の犬』で、ライバル関係にあったハードボイルドな彼らが、本作品では恋人同士のような雰囲気満載で、仲良く手をつないじゃったりプレゼントしたりして、もう別人28号。息の合った彼らの素晴らしい演技に、たっぷり笑わせて頂きました。が、実はキャストが一番楽しんでいたんじゃないかな。

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ゲイというレッテルを貼られた途端、当人は以前と変わらないのに、彼を見る周囲の目や評価が変わっていく。というのはよくある話だが、この作品ではPignon自身も変わりはじめ、退屈だった彼の暮らしに変化があらわれる。ただゲイ騒動を巡ってドタバタするだけでなく、一歩進めてそこから立ち直っていく彼の成長物語になっている。レッテル一つに振り回される人間への批判を、笑いやユーモアに託した監督のセンスも光っております。

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あちこちで飛び出すジョークやシュールな笑いも、品のあるブラック・ユーモアで不快にならない。瀟洒な仕上がりなのです。役者たちのキャラもうまい具合に溶け合って、独特の雰囲気が自然に出来上がっている。あれはもうフランス人ならではのエスプリで、生まれながらのものだから、私らが逆立ちしたって、絶対に身につかない感覚ですね。女性部長(Michèle Laroque)の過激なアプローチに笑い、チラッと出てくる子猫が、まぁ可愛らしくて癒されました。トマト&バジリコの大盛りスパゲッティも、やたらおいしそうに見えて、脳裏から離れません。

で、作品の邦題。フランス映画だから、とりあえず『メルシィ!… 』を付けときゃ体裁は整う、というやっつけ仕事の見本。


by amore_spacey | 2020-05-10 02:03 | - Other film | Comments(0)
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