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シチリアーノ 裏切りの美学 (Il traditore)

ネタばれあり!!
 
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【あらすじ】 1980年代初頭、シチリア島では地元マフィアCosa Nostraの全面戦争が激化していた。Palermo派の大物Tommaso Buscetta(Pierfrancesco Favino)は、抗争の仲裁に失敗しブラジルに逃走するが、祖国に残された家族や仲間は、Corleone派の報復によって次々と抹殺されていった。ブラジルで逮捕されイタリアに引き渡されたBuscettaは、マフィア撲滅を目指すGiovanni Falcone判事(Fausto Russo Alesi)から捜査への協力を求められる。
 麻薬取引と殺人に明け暮れ堕落したCosa Nostraに失望していたBuscettaは、固い信頼関係で結ばれた判事に、組織の罪を洗いざらい告白した。しかしそれはCosa Nostraの血の掟に背く行為だった。歴史的事件をもとに描いた実録作品。(作品の詳細はこちら


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シチリア島のマフィアや当時の歴史について知らないと、なかなか分かり難いところはあるものの、Cosa Nostra(シチリアの犯罪組織)幹部による内部告発は興味深い話で、ぐいぐい引き込まれました。ところが、、、シチリア方言につまずいてしまった。とても見応えのある作品なのに、冒頭の宴(うたげ)のシーンから、シチリア方言や裏組織の内輪言葉が怒涛のようにまくし立てられて、何を言ってるんだか全く聞き取れない。標準語に近いイタリア語以外は理解不能で、ホントに字幕が欲しかった。日本語版の字幕は、方言と標準語の違いをどう表現したのでしょうか。余計なことですが、裏切り、そこに美学はあるんか?(大地真央の声で)

Buscettaの半生を淡々と描いていますが、Marco Bellocchio監督の特別な思い入れは隠しようもなく、Buscetta役にベテラン役者Pierfrancesco Favinoを起用したのも、彼の卓越な演技力は言うまでもなく、彼から滲み出る男の色気や強烈な存在感が、監督の思い描くBuscettaそのものだったからでしょう。Favinoの演技は素晴らしく、幻覚や悪夢に悩まされる晩年のBuscettaの内面表出の上手さには、唸りました。悪事の限りをやり尽くしてきた卑劣な男なのに、Favinoが演じるBuscettaを観ていると、彼を擁護したくなってしまうから不思議なものです。

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Falcone判事に出会ってからのBuscettaは、血生臭い殺戮に係わった人間とは思えない素振りを見せる時もあり、2人の間に生まれたある種の信頼関係がBuscettaを(表向きだけにしても)改悛させ、判事との出会いや何度も行われた事情聴取は、彼の生涯の中でも人間的な交流を深めた貴重な時間だったと思います。

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法廷のシーンは、色々な意味で、まぁ、凄かった。起訴されたのが400人余り、有罪338人。逮捕された組員たちは、鉄格子で区切られた檻の中から、毒づいたり野次を飛ばして騒ぎ立てる。彼らの弁護人もこれまた桁外れの人数で、大型の体育館のような広い法廷は、収拾がつかずカオス状態。この大騒ぎの中で繰り広げられる証人と被告人の直接対決は、まるで舞台劇のような独特の空気に包まれ、ベテラン役者たちの競演が見逃せません。


by amore_spacey | 2021-01-16 00:59 | Italian film | Comments(0)
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