人気ブログランキング | 話題のタグを見る

罪の声

少しネタばれあり!
罪の声_e0059574_20515608.jpg
【あらすじ】 35年前に日本中を震撼させ、未解決のまま時効を迎えた、劇場型事件「ギンガ・萬堂事件」。大日新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、文化部記者ながら、昭和の未解決事件を特集する特別企画班に入れられ、戸惑いつつもこの「ギン萬事件」の取材を重ねていく。
 一方、京都で紳士服のテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、父の遺品の中に古いカセットテープを発見し、自分の声が「ギン萬事件」で使われた、脅迫テープの声と同じことに気づいて、大きく動揺する。やがて運命に導かれるように2人は出会い、ある大きな決断へと向かう。塩田武士の同名小説を映画化。(作品の詳細


罪の声_e0059574_20520146.jpg
ずっしり手応えのある作品で、観終わったあと余韻に浸りながら、登場人物に思いを巡らせました。様々な感情が入り乱れ、熱いものが胸にじわじわ迫ってくる。辛くてやり切れないのに、それが不思議にも不快感ばかりではない。苦しみや絶望だけでなく、温かさや希望があるからでしょう。

犯人を捜すドキュメンタリードラマかと思い、漫然と観ていた。が、自分の声を使われて、この事件に巻き込まれた、子どもの人生に焦点を置きながら、新聞記者の未解決事件の真相追求も並行させ、2つの視点から事件に迫っていく。

また犯罪を企てた者と、犯罪に巻き込まれた者の双方が、新聞記者を仲介して、徐々に距離を縮めていく。この構成が起伏に富んだ、見応えのある作品にしており、持続する一定の緊張感の中で、まばたきするのも惜しいほど、次の展開が待ち遠しい。

罪の声_e0059574_20523026.jpg
父の遺品の中のカセットテープ。これを聞いたことで、パンドラの箱を開けてしまった。のですが、災いだけではなかったと思うのです。新聞記者の阿久津にとってこの事件は、曽根に問われた「事件を追うことの意義」を見つけるものでもあり、他の人々にとっても、単に当時を蒸し返されただけではなく、家族や人生の不条理で割り切れないものを、許して受け入れようと葛藤する、希望への一歩があったのではないかと。

罪の声_e0059574_20521126.jpg
昭和最大の未解決事件のグリコ・森永事件が題材で、キツネ目の男の似顔絵を今でも覚えていますが、その経緯や詳細を、実はほとんど知りません。経済的な動きが背後にあった(リスクの高い現金受け取りではなく、被害企業の風評により株価下落を創出し、空売りしていた株を安値で買い戻す犯人の手口)というドラマ設定には、目からうろこでした。あり得ない話ではない。

未解決大事件を題材に、こんなストーリーを思いついた、塩田氏の着眼点に唸ります。脚本・演出・監督・キャスト・音楽…のどれをとっても素晴らしく、小栗旬や星野源が、噛みしめるように味わい深い演技で物語を彩っています。

罪の声_e0059574_20520541.jpg
罪の声_e0059574_20522582.jpg
それにしても関係者の生い立ちが、あまりにも衝撃的でやるせない。宇野祥平の役への意気込み(役作りで10kg以上減量)や、表情・佇まいに、鳥肌が立った。歳を重ねた宇崎竜童、渋くてめっちゃカッコいい。登場人物が多いのに、さほど混乱せず話についていけたのは、人物描写が的確で印象的だったから。これは繰り返し観たい作品です。


by amore_spacey | 2025-10-06 01:04 | Japanese film | Comments(2)
Commented by stefanlily at 2025-10-06 17:31
宇崎さんは阿修羅のごとく、良かったですね。
梶さんとは曽根崎心中で主演共演ですかね、見たいけど。
阿木曜子さんは百恵ちゃんの恋愛事情を知っていたのかな、と凄い!って思ったのが「絶体絶命」の歌詞…東スポ情報らしいけど、友和さんにはもう1人女性がいたとかなんとかって。決意させる為に引退したとか、と(笑)
小栗は漫画原作の絵ヅラに似てるんです、立ち読み程度だけど。「信長狂騒曲」、と獣医を演じたやつ。
ライターの青木るえかが「今まで会った獣医に似てる、怖くてうっすら優しい。演技の巧拙はともかく」と。「猫の品格」という著作のライターさんです。
確かに、獣医経営の猫カフェはお客に厳しく猫ファーストですからね。
Commented by amore_spacey at 2025-10-09 23:54
☆ stefanlilyさんへ
宇崎竜童と言ったらダウンタウンブギウギバンドで、強烈な印象がありました。作曲もできて俳優で映画監督で、もう才能が有り余っている方ですね。もう歌わないのかな。バンドはきっと解散してるんですよね。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

<< ギャングスター (Gangst... 名誉と栄光のためでなく (Lo... >>