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A Moon for the Misbegotten 1

【Kevin Spacey】

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圧倒された!
Kevinの演技に!他の役者さんたちの演技に、息づかいに、そして舞台の熱気に。

事前にペーパーバックを読んだけれど、あらすじをざっとつかむのが精一杯。とてもじゃないけれどアイルランド訛りのスラングの意味まで調べる時間がなかった。メインキャスト3人の、スラング入りの小気味のよいやりとりや、かなり品の悪い下ネタや、土地売買の駆け引き、そしてJosieとJimが心の内を吐露するハイライトシーン …、私の中ではいずれも未消化のまま終わってしまいました。



A Moon for the Misbegotten 1_e0059574_2233507.jpg開演後、半時間ほどしてKevin登場。
「あれっ?」と思ったのは、私が思い描いていたJim Tyroneより、遥かに上質で古風なエレガンスが漂っていたから。
Jimの人物設定が、「顔立ちがよく金に糸目をつけない彼に群がる女たちとの遊びがお盛んでありながら、博識で洗練された男」だから、はまり役ではあるのだけれど、もっと陰鬱で痩せこけて暗い目をした男を想像していた。


いや、しかし、いったんKevinが口を開き手足が動き始めると、そこに彼独自の世界が展開され、私が想像したJimなど吹き飛んだ。彼がステージにいる2時間、酔っ払って呂律の回らない40過ぎの男が、ある時は子どもになったり融通のきかない老いぼれ爺さんになったり、またある時には前途洋々たる若者になったり自暴自棄の酔いどれおやぢになったり…、無意識に移り変わる(揺れ動く)心の内を、見事に演じ分ける。



A Moon for the Misbegotten 1_e0059574_22345049.jpg艶やかな声がいい。
劇場内を真っ直ぐ突っ切る豊かな声量が、耳に心地よい。
他の俳優さんたちが唾を飛ばし合う中、Kevinは違った。『マイ・フェア・レディー』に出てくる、下町の花売り娘イライザが発音矯正のため、ろうそくの炎がゆれないようになるまで何度も練習するシーンを思い出す。口の中の発音構造(というのか?)が鍛錬されているから、唾が飛んだりしないのだろう。などということに気をとられるのも、実は私の脳が細かい会話に理解が及ばないため…。第3幕のハイライト・シーンに至っては、酒に酔って自分がどこにいるのか分からないJimのウダウダした語りが、鬱陶しくさえ感じてしまう。何度もあくびをかみ殺す隣席のご婦人を見て、何だかほっとする。ひとえにワタクシの勉強不足であります、悪しからず。


~ 劇場の日常にあこがれるよ。それを心から愛しているんだ。そして、自分の能力を試されるような芝居をやりたいと思う。実のところ、毎夜ここへ来て、舞台にあがり、すばらしい俳優仲間たちと仕事をするのが、たまらなく好きなんだ。~
ある雑誌のインタビューにケヴィンはこう答えている。彼は本当に舞台が好きなんだ。俳優仲間と劇場と観客が一体になる、あの独特の熱気の渦の中に身を投じることで、生きている実感と喜びを味わうKevin。やり直しのきかない舞台だからこそ、高揚する・魂が揺さぶられる。麻薬のようなもの。手足や身体の動きに、あらゆる視線に、彼の役者魂を感じた、「ああ、これをKevinはやりたかったのだなぁ」と思わせる舞台だった。

カーテン・コールの最後には、いつもケヴィが「観に来てくれてありがとう」感謝の気持ちを込めて、両手を高らかにあげて観衆に向けて拍手をする。その時の充足感と疲労感に包まれた何とも言えないKevinの表情が、いつまでも私の脳裏に残っている。

写真(C)はこちらから、写真(H)はこちらから拝借。

  《続く》
 
by amore_spacey | 2006-10-18 22:37 | Theatre | Comments(7)
Commented by けろにあ at 2006-10-19 08:01 x
あもーれさん、こんにちは。
続きを拝読しに参りました。
ケヴィンの演技、こんなだったのかな、あんなだったのかなと想像しながら拝読したのですが、たぶん、映画の演技から想像する以上の?あるいは別の次元の?演技を見せるのでしょうねぇ、ステージの上では。
あ~ん、一度でいいから見てみたい~~~!
英語は(正確には「も」ですが)全然ダメダメなんですけど、それでもいいから。
でも、一度見たら一度ですまなくなるんでしょうねぇ(笑)
なんだかすごーくケヴィンが見たくなってきたので、とりあえず今から『交渉人』でも見てこの気持ちをおさめますわ。
ステキなレポ、ありがとうございました。
さらなる続きを楽しみにお待ちしてますね~。
Commented by kakko at 2006-10-20 09:35 x
あもーれさん、こんにちは!
文章うまいなあ、ってまず感動。
私もあもーれさんと同じように感動極まった一人。
そして、最後のカーテン コールで、Kevinが両手を挙げて、観客に対し
て感謝の拍手をした時の、、、、その顔、、、、、に彼の謙虚さと真摯さ
があふれでてて、私の惚れ込み度が、ミラクルMAXに達しました。
英語がネイティブならもっともっと理解できたんだろうなあと思いなが
ら、そうでなくても大感動でした!!
Kevinって、セレブとか、スターとか、そういうんじゃなくて、”本物”の俳
優なんだ!って思ったわ。そう、これは”本物”。
あれだけのステージ、あのテンションで、毎回こなすって、すごいパワー
が必要。Kevin、魂入れ込んでるなあと感じ入ってしまいました。
相手役の女優さんも美形ではないけど、すごくうまいし、ううん、可愛
いって思えるくらい心が入ってた。
それにしても、それほどの舞台を、Kevinったら、余裕ぶっこき状態で、さりげなくって、、、、、さすが!!!
そういうところも、大好き。
って、まだまだかなり、まいってます。
あもーれさん、素敵なブログ、ありがとうございまーす!
また、待ってます。
Commented by kakko at 2006-10-20 09:53 x
あもーれさん、ごめんなさい。
上記のコメント、変な改行になってしまった!
お許しを!
Commented by amore_spacey at 2006-10-22 20:39
♡ けろにあさんへ。
お久し振りです(^^)
舞台はよいですね。私もやってみたくなりました。
長い台詞が暗記できるか? 苦笑

去年ケヴィの『リチャード2世』を観て、もう病みつきです。
けろにあさんもぜひぜひ。
Commented by amore_spacey at 2006-10-22 20:42
♡ kakkoさんへ。
早く書かなくちゃあの時のホットな思いが
どんどん消えていってしまう~!と焦りつつ
なかなか文にならないジレンマとの戦いであります。
どんなに頑張ってもあの思いが伝わらな~い!!!

あのパワーで12月23日までまっしぐら…ですものね。
水・土曜日は2舞台ですものね。
その体力キープも大したもの!! 役者魂に尽きます。
Commented by マヤ at 2006-10-24 18:25 x
おくればせながら、拝読しました。

艶やかな声

そうそう、彼の演技はいつでも身体に余計な力がはいってませんよね。
そこが役者仲間から尊敬されるところだと思います。
演技してるようにみえちゃあ、ヒヨッコですよ。

で、

デマチは?(・。・;
Commented by amore_spacey at 2006-10-27 01:06
♡ マヤさんへ。
うふふっ、よーく通る声ですね。
ヘヴィースモーカーなのに
ノドやられないのかしら?と思ったりしながら
聞き惚れておりました(*^^*)

いよいよ出待ち…ですぜ(^^)v 
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