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空中庭園

私のお気に入り度 ★★★★☆(81点)

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「何事もつつみ隠さずタブーをつくらず、できるだけすべてのことを分かち合う」 母親らしいことを何ひとつしてくれなかったさと子への反発から、いつも笑顔で幸せな家庭であり続けようとする絵里子が決めた京橋家のルールである。だが家族はそれぞれに秘密を持っていた。夫の貴史はふたりの愛人の間を行き来し、娘のマナは不登校を続け、建物に興味を持つ引きこもりがちな息子のコウは、父の愛人と知らずミーナを家庭教師に迎える。幸せごっこを続ける絵里子は、この家族は、これからどうなるのか?

まさか映画を観ながら眩暈を起こすとは思ってもみませんでした。円を描き続けるカメラワークに、不覚にも途中で酔ってしまいました。あれを観ながら何とも嫌ぁな浮遊感を体験しちゃったんです(汗)

これは家族再生の物語というより、絵里子の精神の再構築と回復を描いた作品でしょう。「子どもの頃から自分の誕生や存在を喜ばれなかった」「幸せな家庭を築かなくちゃいけない」「家族に秘密があってはだめだ」という思い込みが、逆に彼女の精神を追い詰め、憎しみと絶望はどんどんエスカレートしていく。彼女は陰ばかり見ていて、光のあたった部分は全く目に入らなかったのだ。



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ぐうぜん実家で一枚の写真を見つけたことによって、彼女の中に過去の記憶や思い込みに対する疑問が沸く。病身の母は母なりに懸命に自分のことを思いやってくれていたのに、気づかなかった。親に守って欲しかったのに守ってもらえず(と思い込んでいた)、自分で自分を守ろうと少女の頃から必死に生きてきた絵里子、ギリギリのところで自分を保っていた彼女の中で、その時何かが弾けた。慟哭と号泣が団地のベランダに響き渡る。封印されていた憎悪や絶望や怒りが雨と一緒に流れるのである。うーむ、あそこは何も血の雨でなくてもよかったのでは?

母のさとこ(=おばあちゃんのさっちゃん)が、家族というものを一番分かっていたのではないかな。 「繰り返せばいい、やり直せばいい。」 自分自身も家族も日常生活もそれでいいのだ。四角四面に考えて追い込むことなんかない。さすがは大楠道代!彼女がビシッとしめてくれました。浮ついて散漫でどっちに向いて進んでいるんだか分からないストーリーが、彼女の登場で徐々に収束しましたからね。ものすごい求心力の持ち主です。

たかだか家族が誕生日を覚えてくれていたくらいで、過去の苦い思いが清算されるほど、絵里子が負った傷は浅くない。あのフィナーレはかなり安易でございます。と、最後に文句を1つ、2つ。

製作国:Japan
初公開年:2005年
監督:豊田利晃
キャスト:小泉今日子, 板尾創路, 鈴木杏, 広田雅裕, 永作博美, 瑛太, ソニン, 大楠道代, 國村隼 ...
by amore_spacey | 2009-02-04 23:03 | - Japanese film | Comments(0)
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