2018年 03月 17日 ( 1 )

聖なる鹿殺し (The killing of a sacred deer)

ネタばれあり!!!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (72点)

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【あらすじ】 心臓外科医のSteven(Colin Farrell)は、有能で美しい眼科医の妻Anna(Nicole Kidman)と二人の子供たちKim(Raffey Cassidy)・Bob(Sunny Suljic)と、郊外の豪邸に住んでいる。しかし16歳の少年Martin(Barry Keoghan)を家に招いたことをきっかけに、子供たちが突然歩けなくなり、目から赤い血を流すなど、異変が起こり始めた。家族を救うためStevenは、究極の選択を強いられることになる。Euripidesによるギリシャ悲劇『Iphigenia in Aulis』(神の聖なる鹿を殺してしまった父の罪を償うため娘が犠牲になる話)を基にしている。第70回(2017年)カンヌ国際映画祭で、脚本賞と70周年記念名誉賞(Nicole Kidman)を受賞。(作品の詳細はこちら


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真っ暗闇の中に突然、ドクドク脈打つ心臓。まるで一匹の生き物のように、開胸された中で激しく鼓動する。すぐにそれは手術のシーンと分かるが、「エッ、何これ?」 誰もがぎょっと身構える、衝撃的なオープニング。不吉で嫌ぁ~な気持ちになる。ヤバいことが起こりそうな不安を常に孕んでいて、気が抜けない。目に見えない危険が、そっと忍び寄ってくる。心理的な恐怖をじわじわ与え続け、ざらざらした感情を引き起こす。これがラストまで容赦なく続くから、観終わったあとの吐き気や激しい疲労感といったらなかった。心身ともに磨り減った、そんな疲れ方でした。


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性に繋がる会話や描写(Nicole Kidman、ナイス・バディ!)が端々に出てきて、艶かしくドロドロした生臭さも感じる。誰もが羨むような、非の打ちどころのない幸せな家庭。のはずなのに、みんながどこか他人行儀で、愛情やぬくもりが感じられない。性的に何だかズレている夫婦。子どもたちも、不自然で子どもらしくない。夫(=少年Martinの父)亡きあと、息子(=Martin)を求めるようになったり、夫を手術したStevenに淡い恋心を抱き、再会した彼の美しい指を舐めるMartinの母親。地下室に監禁したMartinの前に跪いて、足にキスするStevenの妻。みんな、一体どうしたんだ?登場人物の誰もが、変で気味が悪い。


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薄汚れた妖しいエロスや儀式めいた描写が、中盤あたりから加わり、気味の悪さは更にエスカレートして、皆(Bobだけがマトモだったかも)が狂っていく。「父を殺した代償」というMartinの呪いが、心臓外科医の家庭をじりじりと追い詰め、崩壊に導いていくのだ。呪いのような超自然的な力が、今やこの一家を支配し、誰にも止められない。登場人物もストーリーも音楽(『ハンニバル』を彷彿させるが、煽り立て方が鬱陶しい)も気持ちが悪い。この作品には情けや赦しや希望が微塵もなく、人生投げ出したくなる。

Martinを演じたBarry Keoghanくん、1度見たら忘れない顔だ。コイツ、何か良からぬことを企んでいる、そう思わせるに十分な容貌でした。冬彦さんのようにキモくて不気味。25歳、恐ろしい子。

太い垂れ眉毛で困った顔がキュートなColinが、今回は窮地に追い込まれて、本当に困ってしまった。少年の不吉な暗示にかかって、エリート外科医がじわじわと狂っていく過程が、凄まじく生々しいほどリアルで、狂気に満ちたあんな汚れ役をよく引き受けたもんです、Colin。でも素晴らしかった。駄々っ子Colinなんて、もう誰にも言わせないから。


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by amore_spacey | 2018-03-17 01:23 | - Other film | Comments(2)