2018年 10月 10日 ( 1 )

屋根 (Il Tetto)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

e0059574_020477.jpg
【あらすじ】 第二次世界大戦後のローマ。戦後の混乱期は脱したものの、庶民にとって貧しい暮らしが続いていた。そんな中Luisa(Gabriella Pallotta)とNatale(Giorgio Listuzzi)の若いカップルは、Luisaの父親の反対を押し切って結婚し、Nataleの義兄Cesare(Gastone Renzelli)の家に同居させてもらう。しかし小さな家の大所帯で、仕切りも何もない狭い寝室に、ベッドを押し込んだ環境での新婚生活は、到底無理だった。
 やがて兄と喧嘩をして家を出た2人は、公共の土地に家を建ててしまえば、居住権が成立してそこに住み続けることが出来る、ということを知り、見習い左官のNataleは職場の仲間たちの協力を得て、一夜で何とか家を建てようと奮闘する。1956年カンヌ映画祭で特別賞を受賞。(作品の詳細はこちら


e0059574_021076.jpg
e0059574_0211025.jpg
この映画が制作されたのは1956年。4年後にローマ・オリンピック開催を控えており、中心街には高層団地が次々に建てられ、イタリアが一丸となって文化的な暮らしに向かっていた。が、大半の庶民は戦後の復興やオリンピック景気の恩恵から取り残されたままで、貧しい若い新婚夫婦が暮らせるような、小さなアパートすら見つけることが出来ないのが現状でした。


e0059574_0212843.jpg
e0059574_0213919.jpg
しかし、ここはイタリア。『昨日、今日、明日』の第1話のように、法律を逆手に取ったり、法律の網目をくぐり抜けて、合法にしてしまうのはお手のものです。当時はそういったことに寛容だった時代背景があり、困っている人々に救いの手を差し伸べる、大半は損得を抜きにした、情に厚い庶民たちが大勢いた。同じ1956年作の『鉄道員』にもみられるように、LuisaやNataleのまわりには下町人情がまだ健在だったんですね。


e0059574_0215052.jpg
e0059574_022057.jpg
そして「一晩で家を建て屋根を葺けば、居住権が成立する」という法律を逆手にとり、Nataleたちは本当に一晩で家を建ててしまうから凄い。屋根の一部はまだ覆われていなかったから、完成とは言えない。が、これこそDe Sica監督が得意の人情劇ってもんで、見回りに来た警官たちが見逃してくれ、晴れて二人は一軒家を手に入れることが出来たのです。一軒家といってもおよそ10畳一間で、レンガを積んだだけの掘っ立て小屋に毛が生えたような家だ。しかし出来上がったばかりのこの小さな家を、二人が満足そうに眺めるラストシーンが、とても微笑ましく心温まる。慎ましく暮らす庶民の、ささやかな幸せの形だ。

Luisa役のGabriellaは児童用品店の店員、Nataleを演じたGiorgioはセリエCのサッカー選手(イケメン!)と、二人とも役者としてはズブの素人だった。が、もともと役者の素質があったらしく、De Sica監督の指導もよかったのだろう。心に残る素晴らしい演技を見せてくれた。第一印象が悪かった義兄Cesareも、若い二人のために最後は一肌脱いでくれて、なんか、いい奴だったな。


[PR]
by amore_spacey | 2018-10-10 00:32 | - Italian film | Comments(0)