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2019年 10月 03日 ( 1 )

マイ・ブックショップ (My Book Shop)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 1959年、イギリス東部のある海岸の町。戦争で夫を亡くしたFlorence(Emily Mortimer)は、書店が1軒もなかった田舎町で、夫との夢だった書店を開業しようとする。 しかし女性の開業がまだ一般的ではなかった保守的な地方の町で、彼女の行動は住民たちに冷淡に迎えられる。
  ある日彼女は、40年以上も邸宅に引きこもり、ただ本を読むだけの毎日を過ごしている老紳士Edmund Brundish (Bill Nighy)と出会った。Florenceは読書の情熱を共有するその老紳士に支えられ、ようやく書店を軌道に乗せるが、彼女をよく思わない地元の有力者Violet Gamart夫人Patricia Clarkson)が、あらゆる手段を使って妨害を始めた。(作品の詳細はこちら


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本を読んだり映画を観たりするのが楽しいのは、日常から離れることができたり、それがいつもと同じような風景でも、別の視点から眺めて客観的になれるからだ。とりわけ本は想像力を掻き立て、その世界にハマると先が知りたくて、時間を忘れて貪るように読み進めていく。Florenceも暇さえあれば、本を読んでいました。本が心の拠り所。彼女は亡き夫の意思を継いで、ひとりで古い家を買い取り、自分の好きな本だけを並べた、ちょっと拘りのある素敵な本屋を開く。それにしても荒々しい海や険しい岩、そして吹荒れる風。彼女はなぜこの地を選んだのだろう。

この映画は、田舎町の保守的で閉鎖的な空気や息苦しい人間関係、欺瞞や虚飾に満ちた上流社会の人々に、ささやかな反発や抵抗を試みた女性を描いている。ただでさえ新しいことや変わったことは、人々に不安を与え受け入れ拒否され易いのに、現状維持を良しとする社会にとって、それは脅威でしかない。またViolet夫人や取り巻き連中、それから町の人々にとって、ひとりで毅然と生きているFlorenceは、脅威であると同時に嫉妬や羨望の的であったに違いありません。

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このどす黒く重苦しい空気の中に、やがて一筋の光が差し込む。Brundish氏だ。彼の行動力には、熱いものが込み上げて来る。Bill Nighyが魅力的で、良い意味で期待を裏切られました。『ラブ・アクチュアリー』の落ちぶれロックシンガーのイメージが、伝説になるほど強烈だったので、「Bill Nighy=コメディ」と認識していたのですが、とんでもありません。コメディからサスペンスやドラマチックなものまで、守備範囲の広い性格俳優ですね。FlorenceとBrundish氏の間に生まれた交流や信頼関係、本を通して芽生えた密やかな愛情に、官能的なものをそこはかとなく感じました。交わす言葉が少ないほど、肌の露出が少ないほど、より甘美でエロティックでございます。

実は『マッチ・ポイント』の頃から苦手だったEmily Mortimerの、素朴で愚直で誠実な人間性や楚々としてクールな佇まい、一途で根気があり折れることのない意志の強さ、ずる賢く立ち回ることの出来ない不器用さに、思わず駆け寄って応援したくなるほど感情移入し、歳を重ねたEmilyの凜とした魅力に惹かれました。派手さはありませんが、心に何かを残す人です。

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そしてFlorenceの助手として書店で働く少女Christine(Honor Kneafsey)の、利発でキュートなこと。仏頂面してちょっぴりオシャマで、いっぱしの口を利いて大人を驚かせる。ラストのあのシーンには、Emilyだけでなく視聴者もビックリ。実生活では犯罪、映画や漫画なら「あり」。ハッピーエンドとは言い難いが、溜飲を下げました。「よくやった!」と彼女を抱き締めてあげたい。この辺りが原作とは異なると聞いて、原作も読んでみたくなりました。


by amore_spacey | 2019-10-03 01:16 | - Other film | Comments(4)