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2019年 10月 07日 ( 1 )

愛のエチュード (The Luzhin Defence)

ちょっとだけネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (81点)

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【あらすじ】 1929年、北イタリア・コモ湖畔。世界チェス選手権に出場するためこの地を訪れた天才チェスプレーヤーLuzhin(John Turturro)は、そこで上流階級の家庭に育った美しいロシア人女性Natalia(Emily Watson)と出会う。彼女には両親が結婚を勧める男性がいたが、二人は次第に惹かれあうようになる。様々な障害にもかかわらず、Nataliaの支えもあってLuzhinは決勝へ勝ち進み、Turati(Fabio Sartor)と対決することになった。(作品の詳細はこちら


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5月の汗ばむある日コモ湖畔の小さな村に行って、その魅力にハマってしまいました。帰ってきてから湖畔にあるVilla Erbaを舞台にしたこの映画を観て、ますますコモ湖畔の虜になり、何度か週末をコモ湖で過ごしています。この作品は上流階級のお嬢様の、静かに激しく切ない恋が描かれている。ひょんなことから始まった恋が、ちょっとしたサスペンスの様相を呈しつつ、意外な結末を迎えます。終盤のどんでん返しが、鮮烈でお見事でした。

何よりもEmily Watsonの演技が、素晴らしいったらありません。くしゃっとした笑顔やクルクルよく動く瞳がとてもチャーミングで、正統派美人ではないけれど、内面からにじみ出る彼女の為人(ひととなり)に好感が持てます。その一方で、こうと決めたら、ひた向きに進んでいく意志の強さ。両親(特に母親)にしてみれば、まぁ、何て頑固で世間知らずの娘なんでしょう!と地団駄踏んで呆れてしまうが、彼女は自分の意志や愛を貫く芯の強い女性なのでした。

Emily Watsonと言えば、愛情表現が不器用で無愛想なおかあちゃんや今夜のパンにも事欠く家の母親と言った、所帯じみたおばちゃんの役柄しか知らないので、この作品で見た彼女の初々しさや清楚な美しさに、惚れてしまいました。この頃から既に演技派女優だったんですね。そりゃチェスしか知らないLuzhinだって、笑顔が素敵な彼女に一目惚れしますって。

愛のエチュード (The Luzhin Defence)_e0059574_058549.jpg
幼少期の複雑な家庭環境やサヴァン症候群のLuzhinにとって、チェスは彼の人生の全てで、その他のことはまったくダメ。人間関係を築くことができないし、社会にも順応できない。純粋な心を持った子どものような人なのだ。そんな彼だから、Nataliaは惚れた。この2人って、とても可愛らしいカップルなんです。地位や財産や名誉なんて、クソ食らえ!と声には出さないけれど、Nataliaは虚栄や欺瞞が渦巻く上流階級に、心底うんざりしていました。母親(Kelly Hunter)が押し付けてくる理想も、心にちっとも響いてこない。が、母親が愚痴を繰り返しても、「お母さん...」と悪戯っぽいまなざしを投げかけるだけで、決して喧嘩腰になりません。母親より遥かに大人です。

のちに師匠となるValentinov(Stuart Wilson)との出会いは、手のかかる子どもだったLuzhinに光をもたらした。それなのに天才チェスプレイヤーとして実力をつけた弟子に嫉妬し始めた師匠は、あの手この手で邪魔をするという、人間のクズに成り下がっていた。師匠が邪魔するまでもなく、チェスにとり憑かれたLuzhinは、最後の一手が分かったのと同時に、自分の限界も見えてしまったに違いありません。

NataliaにとってLuzhinは、恋人というより守ってあげたい息子のような存在。なんとかしてLuzhinのことを理解したい、チェスの世界を知りたい、そうすれば彼にもっと近づけるかもと、懸命になる彼女の姿に、心を打たれました。そしてLuzhinとNataliaは、ついに一心同体になる。こんな形の愛もあるんですね。嗚呼、でも、切なすぎます。


by amore_spacey | 2019-10-07 01:03 | - Other film | Comments(0)