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カテゴリ:- Italian film( 276 )

郵便配達は二度ベルを鳴らす (Ossessione)

ネタばれあり!
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【あらすじ】 ポー河沿いのトラットリアDoganaの経営者Giuseppe(Juan de Landa)の妻Giovanna(Clara Calamai)は、一回りも年上の夫との生活に辟易し、退屈な毎日を送っていた。
  ある日一台のトラックから放り出されてトラットリアの門をくぐった若い男Gino(Massimo Girotti)に魅せられ、激情が湧くのを感じた。GinoもそんなGiovannaの官能的な眼差しに欲情をかきたてられ、2人が駆け落ちを決行するまでに時間はかからなかった。アメリカのハード・ボイルド作家James M. Cainの同名小説を映画化。(作品の詳細はこちら


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Giovannaが行きずりの関係を結んだGinoと共謀して、邪魔になった夫を殺すことに成功するのですが…まぁ、何という残酷な結末なんでしょうか。Ginoと出会ったばかりにGiovannaの心に変なスイッチが入り、それまで抑えていた鬱々とした思いは、あらぬ方向へと彼女を駆り立てていくのです。

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自分の幸せのためなら手段を選ばない、Giovannaの非情さや異常な執着心がコワい。「私はあなたのためにしたのよ。(いやいや、自分のためにしたんでしょ?」と迫るシーンなど、もはやGinoしか見えない。一旦絡みついたら死んでも離さないぞー!というわんばかりの、追い詰められた女の生々しい姿には、ホラーのような怖さがある。もし私が男で、女にそんなことを言われたら、その場から全力で逃げます。Giovannaの利己的盲目的な愛こそが、原題の言うOssessione=妄執な愛、これが少しずつ運命の歯車を狂わせ、幸せを求めたはずなのに、悲劇を生んでしまう。これって、Visconti監督の処女作だったんですね。

この映画には日本語のタイトルにある郵便配達は出てこない。なのにどうしてこんなタイトルがついたのか、ちょっと調べてみました。James M. Cainの文庫本のあとがきによると、「アメリカでは郵便配達はいつも玄関のベルを二度鳴らすしきたりになっている。つまり来客ではないという便法である。それに郵便配達は長年の知識で、どこの何番地の誰が住んでいるかをちゃんと知っているから、居留守を使うわけにはいかない。二度目のベルは決定的な報を意味する。それと同じようにこの小説では、事件が必ず二度起こる。パパキダス殺しは二度目で成功する。法廷の争いも二度ある。自動車事故も二度、Frankも(この作品ではGino)一度去ってまた帰る。そしていつも二度目の事件が決定打となるのである。」  うーん、良くない決定的なことが起きるってことでしょうか。


by amore_spacey | 2020-02-16 03:05 | - Italian film | Comments(0)

靴みがき (Sciuscia')

私のお気に入り度 ★★★★☆(80点)

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【あらすじ】 第二次大戦直後、ローマの街頭で靴みがきをしている二人の少年Pasquale(Franco Interlenghi)とGiuseppe(Rinaldo Smordoni)は、いつかお金をためて馬の持ち主になることを夢みていた。ある日二人はGiuseppeの兄に頼まれて闇商売の片棒をかつぎ、その報酬と貯金をあわせて念願の馬を手に入れる。しかしその喜びもつかの間、二人は逮捕されて少年刑務所送りになってしまう。(作品の詳細はこちら


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Sciuscia'とは米語のshoe shineをナポリ訛り風に読んだもので、この作品ではローマの高級ブティック街の街頭で、靴みがきをしていた子どもたちのことをさします。Pasqualeを演じたFranco Interlenghiが当時を振り返り、「オーディションには街頭で靴みがきをしていた子どもたちが何百人も集まった。私は6時間も待ったあとDe Sica監督の前に出たんだが、次!と順番を飛ばされ、悔しくてまたオーディション待ちの最後列に並び直したんだよ。その根性が買われたのかどうか知らないが、監督の目にとまり、主演の少年の1人を演ずる幸運に恵まれたんだ。」と懐かしそうに語っている。

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社会の底辺に生きる子供たちを描くことで、戦争後の悲惨な状況や、子供たちを利用する大人たちの身勝手さなど、敗戦国イタリアの生々しい現実を映し出している。ネオレアリズモの代表作と呼ばれ、アカデミー特別賞まで受賞した名作ですが、あまりにも悲惨な結末を迎えるため、当時イタリア国内では非常に評判が悪かったそうです。

前妻とDe Sica監督との間に生まれた長女Emi De Sicaは、「暗い戦後の混乱期に市民は、アメリカ映画のようなあっけらかんと明るいハッピーエンドの作品を求めていたのに、父があんな作品を次々と作るものだから、知人からは金を返せって、よく言われたものなのよ」と苦笑。アメリカでは高い評価を得ましたが、それは戦勝国が敗戦国の姿を眺めたから…でしょうか?皮肉なものです。 


by amore_spacey | 2020-02-10 02:26 | - Italian film | Comments(0)

Maltese - Il Romanzo del Commissario TVドラマ 全4話

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【あらすじ】 1970年代後半、ローマの麻薬警察官Dario Maltese(Kim Rossi Stuart)は、幼馴染みで警察官のGianni(Claudio Castrogiovanni)とMariangelaの結婚式に出席するため、20年ぶりに故郷のトラパニへ戻った。しかし明日結婚するという二人が、Malteseの目の前で殺されてしまう。彼は警官だった父親の旧友Aldo Saura(Roberto Nobile)が署長となっているトラパニの警察本部に移り、かつてGianniと同じチームだった警察官らと共に、この事件の捜査を始める。(作品の詳細はこちら) 

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久しぶりにKim Rossi Stuartを観ました。この時48歳。痩せたためか、さらに背が高くなったような、そして彼の放つ独特のオーラに凄みが加わり(役柄がそうさせる部分もありますが)、外見だけでなく内面的な魅力から目が離せません。さてこの連続ドラマは、1970年代のシチリアを舞台に起きたある殺人事件から、水面下でシチリアを牛耳るマフィアと政界(市長)や財界(銀行)との癒着が明らかになり、その元締めが実は国の公安にかかわる警察内部にいた…という話で、マフィア絡みのドラマは似たようなものばかりですが、ここでは殺人事件と並行して、Malteseが個人的に抱える事件にも迫っていきます。

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それは警察官だった父親の、不可解な死因。忘れもしない20年前、自宅の書斎で首に縄をかけて事切れていた父を、少年Malteseは見てしまった。その光景が脳裏から離れず、執拗にフラッシュバックする。自殺で片付けられたが、遺書も見当たらずこれといった動機もなかった。父は自殺したのか?自殺に見せかけた他殺だとしたら、誰が?どうして?父と同じ警察官の道を選んだMalteseの中で、この疑問がずっと巣食っている。

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Malteseはローマで1人暮らし、離婚した妻は娘Noa(Clòe Romagnoli)とアメリカに暮らしているが、愛娘は毎日パパに電話をかけてきてくれる。Noaの声を聞くや否や、顔がほころび、声のトーンも変わる。実生活でもあの満面の笑みを、8歳の息子に見せているんだろうなぁ(羨) そんなMaltese警察官をKimがどう演じるのか、とても楽しみでした。『悪の天使ヴァッランツァスカ』に続いてFrancesco SciannaがKimと共演しているのも、ファンには嬉しいですね。

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捜査に全身全霊を傾けるMalteseは、警察官という職に誇りを持ち、世の不正に対して激高し切れまくる。捜査が進むにつれ、生前の父について知らなかったことが、明るみに出てくる。それらがMalteseをさらに激怒させるのです。ブレない信念や正義感に支えられて、事件の核心に真っ直ぐ突き進んでいく。狙った獲物を逃がさない。真実に辿り着くまでは、相手が誰であろうとひるまない、地獄の果てまで追いかけ、1人になっても戦う覚悟がある。正しいと信じるもののために戦うMalteseからは、噴火寸前のマグマのようなエネルギーが放出されるのです。松岡修造よりはるかに熱い男なのだ。そんな彼を公私ともに支える、写真家のElisa Ripstein(Rike Schmid)との束の間の安らぎが、ドラマのテンションを緩めてくれました。

同じ警察官でも『モンタルバーノ ~シチリアの人情刑事~』のMontalbanoはエンタメ色が濃く、下町のおっちゃんという風情が庶民に親しまれている。海の見えるテラスでの食事のシーンは、このドラマの魅力の1つで、人気の観光スポットにもなっています。本作品はエンタメだけでなくメッセージ性のあるドラマですが、どちらも好きです。


by amore_spacey | 2020-02-07 01:39 | - Italian film | Comments(0)

La vita come viene

ネタばれあり!
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【あらすじ】 病気の息子(Primo Reggiani)の面倒を見るためにピアニストの夢を諦めたジャズ・ミュージシャンBeppe(Alessandro Haber)、行方不明になった子どもたちが誘拐されたのでは?と苦悩する資産家の妻Paola(Valeria Bruni Tedeschi)、年老いた父親と二人暮らしの若い図書館司書Laura(Lorenza Indovina)、仕事と趣味にしか関心のない歯科医Max(Daniele Liotti)と子どもを望む妻Giorgia(Stefania Rocca)、末期の病に侵された哲学の教授Carl(Tony Musante)とMeri(Stefania Sandrelli)との新たな出会い、突然の解雇に打ちのめされるMarco(Claudio Santamaria)。
  金曜日~日曜日にかけて起きた6つのエピソードに、ささやかな幸せを求める庶民の心の葛藤を描き出す。(作品の詳細はこちら


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ありふれた6つの話が(あり得ない設定にビックリするのもあるが)、並行して進んでいく。それぞれのエピソードに登場する人々は、挫折や苦悩や孤独や絶望を抱え、ぽっかり空いた心の穴を埋められず、傷ついたままうなだれている。彼ら自身は知らないが、それぞれどこかですれ違っていたり、同じレストランで食事をしていたり、互いの視線が偶然絡み合ったりして、人生のほんの一瞬だけ触れ合っている。そこから何かが始まる訳ではなく、ごくありふれた日常のヒトコマとして。


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人生には山あり谷ありで、何かの拍子に歯車が狂ってしまうことなんて、いくらでもある。夢を諦めたり失業したり破産したり、恋人と別れたり離婚したり死別したり、結婚/離婚したくても子どもが欲しくても出来なかったり、家族や兄弟や親戚と絶縁したり、災害や事故に遭ったり病気になったり。そういうことを抱えながら、私たちは生きている。表向きは元気なふりして、何事もなかったような、或いは分かったような顔をして。

大学(高校?)で哲学を教えるアメリカ人の教授Carlは、人生について学生に得々と語っているが、彼はと言えば妻と別れ娘もアメリカに残り、自分1人イタリアでたくさんの専門書の中に閉じこもって暮らしている。ピアニストを諦めたBeppeは、「プロの腕前なのに、なんでこんな三流バンドに巣食ってんだ?」とメンバーに言われ、顔で笑って心は血まみれ。地雷を踏まれて封印していた苦い思いが蘇り、傷口がヒリヒリ痛む。どんな思いでプロの道を諦めたかなんて相手は知らないし、説明したってムダなんだ。

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資産家の夫と結婚し二人の子どもに恵まれ、表向きは幸せな人生のPaolaにとって、夫との心の繋がりを感じられない空虚な日々の中で、見知らぬ誰かから定期的に届く手紙が、彼女の乾いた心を潤してくれる。突然解雇されどん底に突き落とされたMarcoも、妻の抱擁に救われる。Beppeの心の支えは、自分の命より大切な息子。

ぽっかり空いた心の穴を埋めたり、心の傷を癒してくれるのは、言葉とか思い出とか愛情とか共感... いや、それすら鬱陶しくなるほど疲弊していることだってある。今は泣かせて欲しい。何も望まないから、ただ優しく抱擁して欲しい。言葉なんていらない、そこに居てくれるだけでいい。ふっと伝わる人の気配やぬくもりに、私は何度も救われてきた。息子と二人で前に進んでいくBeppeや、失業の絶望から立ち直ろうとするMarcoに、エールを送らずにはいられません。


by amore_spacey | 2020-01-26 00:08 | - Italian film | Comments(0)

フェラモンティ家の遺産/沈黙の官能 (L'eredità Ferramonti)

ネタばれあり!
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【あらすじ】 19世紀のローマ。Ferramonti家の家長でパン職人の頑固親父Gregorio(Anthony Quinn)は、長年営んできたパン屋を畳むにあたって、長男Mario(Fabio Testi)・次男Pippo(Gigi Proietti)・娘Teta(Adriana Asti)に雀の涙ほどの資産を分け与えただけだった。しかも馬鹿息子たちに愛想を尽かした彼は、これを機に縁を切ると宣言したため、子どもたちから忌み嫌われ、父親の財産を巡って親子や兄弟の仲が険悪になっていく。
  次男Pippoと結婚した金物屋の娘Irene(Dominique Sanda)は、商才も人脈も社交性もない凡庸な夫を、心から愛することができない。そして自らの美貌と性的な魅力と野心で、義兄Marioや義父を次々と陥落させていった。
  Gaetano Carlo Chelliの同名の小説を映画化。1976年第29回カンヌ国際映画祭で最優秀女優賞(Dominique Sanda)と、イタリア映画ジャーナリスト全国組合で助演女優賞(Adriana Asti)を受賞。(作品の詳細はこちら


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Ferramonti家の次男に嫁いで来たIreneは、美しさを武器に、長男だけでなく年老いた父親とも関係を持ち(わっ、よくやるよ)、言いなりになった父親は、全財産をIreneに残すという遺言書を書く。性に奔放で、自らの野望の為なら手段を択ばない危険な女Ireneを、Dominique Sandaが演じており、彼女の退廃的な美貌、物憂げな目線、抜けるように白い肌、美しい肢体、気品のあるドレスに身を包んだ妖艶な姿…をじっくり堪能できます。

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彼女の脱ぎっぷりの良さは、当時の監督たちに定評がありました。事実Dominiqueのヌードは芸術品のように美しく、多くの映画で披露しているので、彼女の若い頃の出演作には、もれなくヌードがついてくる。本作品はDominiqueを鑑賞する映画なので、演技力を期待してはいけませんね。全身から毒をしたたらせたり、ぎらぎらドロドロとした生々しさがありません。表情に乏しい硬質な美貌で、ヌードも彫刻のように冷ややか。現実離れした美しさには圧倒されるし、悪女が似合いますが、鬼気迫るものがなく、生活臭や人のぬくもりが感じられないんです。美術館のガラスケースに飾られた、陶器のような人だから。

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監督・役者・撮影のどれをとっても一流で素晴らしく、当時のローマの風景やEnnio Morriconeの音楽によって、芸術的で格調高い雰囲気を味わうことは出来るのですが、何か物足りませんね。


by amore_spacey | 2020-01-20 02:56 | - Italian film | Comments(2)

エマの瞳 (Il colore nascosto delle cose)

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【あらすじ】 ローマの広告代理店に勤めるTeo(Adriano Giannini)は、典型的なプレイボーイで、恋人や愛人や家族とは適度な距離を置いて、仕事漬けの毎日を送っている。ある日、白杖を頼りに暗闇の中を進むワークショップに参加した彼は、アテンドスタッフとして働いていた盲目の女性Emma(Valeria Golino)の声に魅せられる。
  思春期に視力を失った彼女は、フランス人の夫と離婚したのち、理学療法士として自立して生きている女性だった。Teoは急速に彼女に惹かれ、二人は関係を深めていくが、その一方で彼は恋人Greta(Anna Ferzetti)と向き合えないでいた。(作品の詳細はこちら


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理学療法士として生計を立てている盲目の女性と、心の底にわだかまりを抱えながら広告代理店に勤める男性の、中年男女の恋の物語。Emmaは盲目というハンディを乗り越え、手に職をつけて前向きに生きている。一方、女性関係にだらしないTeoは、絵に描いたような広告代理店社員の派手な暮らしぶりだが、表面的なカッコよさで自分を武装しているところがあり、間もなくEmmaはそれを見破る。

彼は幼い頃に負った傷が癒されないまま、家族へのネガティブな感情と未だに折り合いがつかず、寂しさや孤独に引き込まれないように、いつも人と繋がっていないと落ち着かない。チャラくて不誠実でロクデナシのTeoは、大人になっても自分から逃げている、最後の覚悟が出来ない男なのだ。

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Valeria Golinoは円熟した演技で、まさにEmmaそのものでした。気取らず飾らず気さくで可愛らしく、自立して凛と生きている。誰もが持つ人間の感情をごく自然に見せ、盲目をハンディと考えず、必要以上に特別視しない。Emmaからフランス語を習う少女Nadia(Laura Adriani)は、盲目の自分に憤り母親にも反抗的な、思春期真っ只中の女子高生ですが、愛情と説得力のあるEmmaの言葉にそっと背中を押されて、最初の一歩を踏み出していきます。

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家族との関係を頑なに拒んでいたTeoも、Emmaと知り合ってから、心のシコリが徐々に和らいでいき、新たな一歩を踏み出しました。彼を演じたAdriano Giannini(Giancarlo Gianniniの次男)、女たらしのクズっぷりと自分の世界に引き篭もった時の演じ分けが上手く、憂いに満ちた表情のセクシーなこと!濃厚なキスのあとベッドインの流れで、半ば強引にあの場を丸くおさめたのは、、、映画の世界ですから、大目に見ましょう(苦笑)

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ルームメイトで弱視の親友Patti(Arianna Scommegna)が、良い味を出していました。ストレートな物言いだけど、気心の知れた愛情に満ちているんです。EmmaとTeoとPattiの三人のシーンは、とても楽しそうで微笑ましかったなぁ。こうしてみんな、持ちつ持たれつで生きているんですよね。あのラストも良かった。ダイアログ・イン・ザ・ダークは、ぜひ参加してみたいワークショップです。


by amore_spacey | 2020-01-13 01:33 | - Italian film | Comments(0)

憶えてる? (Ricordi?)

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【あらすじ】 彼(Luca Marinelli)と彼女(Linda Caridi)の長年にわたる恋愛の軌跡を描く。二人は幼年時代のエピソードを語ることで、まずお互いを知ろうとする。そして彼らが恋におちたとき、またそれぞれ別の人に恋をしたとき、幸せだった日々、気持が満たされなかった日々、その時の瞬間の感情を色に託して映し出していく。
  暗い思い出の多い物憂げな彼と、ポジティブで天真爛漫な彼女。年月とともに彼は少しポジティブになり、反対に彼女は考え深くなる。彼は永遠の愛を信じるが、彼女は終わってしまった愛にノスタルジーを感じる。時の移ろいや互いの心の距離によって、思い出や記憶は姿形を変えていくものだ。(作品の詳細はこちら


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彼と彼女が過ごした歳月、出会う前の二人の記憶から恋愛の紆余曲折を、それぞれの視点と記憶の断片をコラージュしながら描く。決して分かりやすい作品ではありませんが、あまり難しく考えずこの流れにふわっと乗っかり、静かで幻想的な映像を観ていたら、思春期の頃に抱いた様々な感情が蘇ってきて、懐かしく愛おしく、切ない気持ちでいっぱいになりました。

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派手ではない静かな恋愛物語で、時系列がバラバラなところは、『エターナルサンシャイン』を彷彿させますが、この作品は名もない二人の記憶や意識の流れにスポットをあて、映像として浮かび上がらせた、より観念的な世界が舞台になっているように思う。スクリーンに映し出された映像だって、実は本当かどうか分からない。本人の思い違いかもしれないし、記憶のズレがあったり、あとから都合よく上書きして美化した可能性さえある。当事者しか知らない記憶だから、極めて主観的で曖昧で危ういもの。誰かと話をしていて、「あれっ?」と思うことがあるのは、同じ思い出を共有しているつもりでも、実は違ったりしているということなのだ。どこか頼りなくて不安定な記憶の断片が、ふっとした拍子に、大きな顔をして出てきて、私たちを楽しませたり苦しませたり癒したりするのです。

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作品の映像は幻想的で本当に美しく、これを大スクリーンで観たかったな。ミニロフトのある家・クレーターのような形の温泉・光溢れる緑の松林など、素晴らしいロケーションに監督のセンスが光る。風や空気や湿度を感じさせるチラチラと舞う雪や木の葉っぱ、靄のかかった温泉や風をはらんだ布、風に揺らめく彼女の長い髪やワンピース。ある時は寒色系や暖色系に、そしてまたある時はモノクロにと、二人の記憶や感情に合わせて、画面の色調も刻々と移り変わっていく。さらに時系列はバラバラ、フラッシュバックも多用されて、前半私は何が何だか分からず。「えっ?」な状態に何度も陥りました。

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並行して流れる二つの意識が、交錯したり離れたりしながら、それに重なる記憶の断片。それらはまさに、2声・3声と幾重にも重なるドビュッシーやバッハの音楽そのもので、まるで彼らの音楽を映像化したような作品です。使われたドビュッシーやバッハの曲の中には、むかし梃子摺(てこず)ったものがあり、「あ、あそこ、何回やっても覚えられなかった」「メロディーと中間音の弾き分けが、難しかった」などなど、作品とは全く別のところに気持ちが飛んだりしました。Luca Marinelliは、こういった抽象的・観念的な作品が好きなのかな。デビュー当時に比べると、出演作品の傾向や彼自身の雰囲気が随分変わってきた気がする。目じからはパワーアップしています。


by amore_spacey | 2019-12-30 05:08 | - Italian film | Comments(0)

アドゥアと仲間たち (Adua e le compagne)

ネタばれあり!!!
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【あらすじ】 1958年、新しい法律により売春宿が違法となり、娼婦として働けなくなったAdua(Simone Signoret)とLolita(Sandra Milo)とMarilina(Emmanuelle Riva)とMilly(Gina Rovere)の同僚4人は、ローマ郊外の荒地で見つけた大きな空家を修理して、トラットリアを開くことにする。娼婦の職歴が妨げとなって、様々な申請が拒否されるが、Aduaの以前の顧客の1人であるErcoli(Claudio Gora)が、トラットリアの建物を購入してくれ、おまけに彼の名前で許可まで下りて、4人は彼に1ヶ月100万リラの賃借料を支払うことになった。
  様々な困難を乗り越えて開店に漕ぎつけ、トラットリアは軌道に乗り始めて、予想外に成功する。しかしそれでも娼館時代ほど稼ぐことが出来ず、トラットリアの賃貸料を支払うことが出来なくなり、4人はトラットリアから追い出される。(作品の詳細はこちら) 


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新しい法律により失業した娼婦たち。年長のAduaが企画したトラットリア開業に賛同した若い娼婦3人が、手持ちの資金・労力をつぎ込んで、新たな人生を始めようとする。トラットリア開業までの道のりを軸に、4人の女性それぞれのプライベートなエピソードを絡ませながら、エンディングに向かっていく。Piero Piccioniのお洒落なサウンド(←音が出ます)は、ジャズ・ファン必聴だが(因みに歌手のDomenico Modugnoがカメオ出演し歌を披露している)、この作品に流れる雰囲気(「おもしろうて やがて悲しき 鵜舟哉」 に通じる情緒ではないかと…)には微妙にそぐわない気がする。

初めてSimone Signoretの作品を観ました。晩年の彼女を写真で知るのみで、私の中では単にフランス女優の大御所のイメージでしたが、女盛りのSimone(当時39歳)の芯の強さや、悲しみが似合う成熟した美しさに魅惑されました。もっと若い頃の写真をみると、双子かと思うほどRomy Schneiderにそっくりで、驚きました。キリッとしたシャープな顔立ちが、私好みです。この作品では若い娼婦たちの姐さん的な存在で、失業したあとも彼女が陣頭に立って、人生を切り開いていくのです。

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さて共同経営でトラットリアを始めたものの、若い3人娘にはそれぞれに事情があり、すんなりと軌道に乗った訳ではない。Lolita(Sandra Miloってこんなに綺麗だったの?)は若い男たちと遊び回り、シングルマザーのMarilinaは幼い男の子を手元に置いて育てねばならず、Millyはトラットリアに来た客と懇意になり結婚の約束までする。

当のAduaも忙しいトラットリアの仕事の合間に、胡散臭い車のセールスマンPiero Salvagni(Marcello Mastroianni)と知り合い、彼に思いを寄せたばかりに振り回される。今回のMarcello Mastroianniも、最低のチャラ男で、母性本能を刺激する甘え方が天才的に上手い。最初はAduaを手玉に取っていたかに見えたが、彼の浮気は直ぐにバレてしまう。「アタシのようなばあさんを相手にするなんて…」と自嘲気味になりつつも、Aduaだって心の拠り所が欲しかった。そういう時に限って、悪い男に引っ掛かるものです。

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何もかもが順風満帆に見えたのに、運命の女神に見放されて歯車が狂い始め、更にはAduaの暴挙で、トラットリアは閉店に追い込まれ、4人は失業した。Aduaは再び街頭に立って働く。雨が降りしきる夕暮れ、傘もささずに客引きするが、若い娼婦に奪われる。ずぶ濡れになったAduaは、人間としての最低の尊厳を精一杯に保ちつつも、彼女の背中が全てを語る。彼女はどこに向かって歩いて行くのでしょう。余韻のある素晴らしい作品でした。


by amore_spacey | 2019-12-11 01:05 | - Italian film | Comments(0)

ジェラシー (Dramma della gelosia - tutti i particolari in cronaca)

ネタばれあり!
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【あらすじ】 ローマのある夜、レンガ職人Oreste(Marcello Mastroianni)はビラの屑の中で眠りこけているうちに、美しい娘を腕に抱いていた。彼女は花売り娘のAdelaide(Monica Vitti)で、以前からOresteに秘かな想いを寄せていた。それまでのOresteの人生は無味乾燥なもので、年上女房Antonia(Josefina Serratosa)との間には、愛のかけらもない。Adelaideの出現は、天にも昇る出来事だった。
  しかし間もなく妻に浮気がばれて、AdelaideとAntoniaは壮絶な掴み合いの喧嘩になり、Adelaideは病院に運ばれる。ところが退院祝いに二人で行ったピッツェリアで、ピッツァ職人の一人Nello(Giancarlo Giannini)が、Adelaideに一目惚れしてしまう。1970年のカンヌ映画祭で、Marcello Mastroianniが主演男優賞を受賞。(作品の詳細はこちら) 


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この映画は容疑者Oresteが警察官に連れられて、殺人の現場検証に立会うシーンから始まり、回想形式で殺人に至ったいきさつを語りながら、男女の三角関係を描いている。手っ取り早く言うと、おバカな妄想女に振り回された、これまたおバカな二人の男の悲喜劇という所でしょうか。典型的な艶笑劇ですが、思いがけないラストシーンに、心を持っていかれた。ユーモアや笑いに隠された、人間の儚さや哀しさが身に沁みるのです。

女一人男二人の三角関係にも色々あって、『夕なぎ』や『冒険者たち』では、最終的に男の友情を、本作品は愛する女性のために身を引く姿が描かれている。ラストシーンでは、思わず画面の中に飛び込んでいって、Oresteを抱き締めたくなりました(涙)

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とにかくOresteを演じたMarcelloが、心憎いばかりに素晴らしかった。若い頃は女をコケにしたチャラい男を演じることが多く、それがまたハマり役で説得力もあった。今回のみすぼらしい身なりのレンガ職人という労働者の彼も、板についた自然な演技で、そればかりか人生詰んだと思っていたのに、Adelaideの登場で、何?このバラ色の展開は?という子どもレベルのはしゃぎっぷりから、ピッツァ職人へのジェラシー(果てはAdelaide本人への愛憎、公衆の面前でなりふりかまわず彼女を罵倒し、往復ビンタを食らわせる)まで、目まぐるしく移り変わって行く男の気持ちを、Oresteとして生きるMarcelloがリアリティある演技で体現してくれました。

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大好きなイタリア女優の一人Monica Vittiは、クールで乾いた(サバサバ系とは違う、別の惑星で生きているような、ちょっと現実離れした)雰囲気が魅力的で、彼女から目が離せないのです。本人の意図とは無関係に、なぜか恋愛絡みで男から殴られる役が多いのですが、それでも一度好きになった男を易々と諦めない。男にしてみれば、最高に都合のよい可愛い女です。

三角関係になっても、Monicaの乾いたキャラや、二人の男たちの憎めないキャラが幸いして、それほど陰湿な印象を与えない。もしAdelaideを官能の女神Monica Bellucciが演じたら?ヒステリックなGiovanna Mezzogiornoが演じたら?冷静に見えていつもテンパッているMargherita Buyが演じたら?随分違った色合いの作品になったに違いない。

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ローマが舞台なのに名所旧跡は全く登場せず、ゴミの山や季節はずれの閑散とした海辺でのデートや、レンガがむき出しになったOresteの小汚い家や閉店後の散らかったメルカートがよく出てくる。かと思えば、町の大通りを行き交う車は、どれも小型で可愛らしくおしゃれなんです。Armando Trovajoliの音楽(←音が出ます)が70年代らしいメロディで、懐かしさのあまり胸がきゅんとなりました。


by amore_spacey | 2019-11-26 00:39 | - Italian film | Comments(0)

Gli ultimi saranno ultimi

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【あらすじ】 南イタリアの田舎町ラングイッラーラに暮らすLuciana(Paola Cortellesi)は、車の修理士Stefano(Alessandro Gassmann)と結婚し、友人や地元の人々に慕われ、工場の従業員仲間にも恵まれて、慎ましくも幸せな日々を送っていた。しかし現実味のない夢のような事業を思いつく夫は、本気で働く気がなく常に失業状態で、妻の給料だけでは暮らしに余裕がない。しかも二人の長年の夢だった赤ちゃんが授かった喜びも束の間、Lucianaは工場から解雇される。
  一方、職務上の不祥事により、北イタリアからこの町に左遷された警官のAntonio Zanzotto(Fabrizio Bentivoglio)は、転勤早々、上司や同僚から小さな嫌がらせを受け、ここで知り合いになったManuela(Irma Carolina Di Monte)との関係も、地元の人々や同僚の悪意ある噂のせいで、こじれてしまう。(作品の詳細はこちら) 


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衝撃のシーンで始まるこの作品は、Lucianaと警官Antonioの2つの物語が同時進行していき、最後の最後に起きるある事件で二人が交差する。何もこんな形で出会わなくても良かったのに、運命の神様は意地悪なもんです。長引く不況の中で、老いも若きも自分の生活に追われて、他人のことなど構っていられないが、そんな中でささやかな幸せを見つけ、軽い冗談をたたいて不安を笑い飛ばし、束の間の安らぎに満たされる。と同時にこの平穏がいつ壊れるとも知れない不安に、誰もが付きまとわれている。不況がベースになっている『幸せの椅子』と異なり、この作品は人々が厳しい現実に打ちのめされ、自暴自棄になって人としての尊厳を失って行く。けれど最後に一筋の光が射し込むはずなのです。

お節介面倒見のいいイタリア人は、他人が困っていると、本気で助けようと親身になるが、この映画ではLucianaが解雇されたあと、元同僚たちは、「何とかなるよ」「オレが上司に掛け合ってやるからさ」という気休めで、その場の気まずい空気を何とかやり過ごそうとする。切羽詰まると、誰でも自分が一番大事なんです。絶望に打ちひしがれたLucianaは、我慢の限界を越えて、ある行動に出る。

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北イタリアからやってきた警官のAntonioは、近所の噂話が三度の飯より好きで、他人をいつもチェックする、小さな田舎町にありがちな息苦しい雰囲気の中で、自分一人が異星人のような居心地の悪さを抱えている。それでも何とか職場や町に溶け込もうと、小さな嫌がらせや噂に耐え、淡々と毎日を過ごしている。しかしそれにも、限界があります。

主役の三人を演じたPaola CortellesiやAlessandro GassmannやFabrizio Bentivoglioは、軽快なコメディタッチの役どころが多く、先日観た『Croce e delizia』は、AlessandroとFabrizioが素敵なゲイカップルを演じたばかりなので、彼らの演技の振り幅の広さに感心するばかりです。ある一線を越え常軌を逸脱した時のFabrizioは、何を仕出かすか分からない狂気を孕んでいて、絶対に近づいてはいけません。彼の母親(Ariella Reggio)が、キュートで可愛らしかった。


by amore_spacey | 2019-11-25 02:08 | - Italian film | Comments(0)