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カテゴリ:- Italian film( 268 )

盗まれたカラヴァッジョ (Una storia senza nome)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (73点)

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【あらすじ】 映画プロデューサーVitelli(Catania)の秘書Valeria(Micaela Ramazzotti)は、人気脚本家Alessandro(Alessandro Gassman)のゴーストライターを務めている。ある日彼女のもとに謎めいた男Rak(Renato Carpentieri)が近づいてきて、1969年から未解決のCaravaggioの名画盗難事件について教えてくれた。興味を引かれた彼女は事件をシナリオに起こし始め、それがAlessanderoの次回作として採用されることになった。しかしそのことが原因で、彼女たちは事件に巻き込まれていく。実際に起きたカラヴァッジョの作品盗難事件をもとに映画化。(作品の詳細はこちら


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二転三転する謎解きの中に人間ドラマを上手く織り込み、コミカルに話が展開していく、イタリアン・テイストに仕上げたサスペンス映画。謎の男Rakの正体や彼の真の目的、彼がValeriaに脚本を書かせようとした目的、プロデューサーに資金融資をする人物がマフィアに繋がっている事実、盗まれたカラヴァッジョの絵画の行方、マフィアと政府の裏取引き、Valeriaの母Amalia(Laura Morante)の過去など、興味深い要素が盛り沢山あり、また後半は劇中劇の形をとっているため、現実と劇(映画撮影のシーン)の境界線が曖昧になり、サスペンスらしい味がさらに増して見応えはあったのに、どこか尻切れトンボの結末にモヤモヤ感がおさまらない。

さてValeriaを演じたMicaelaがとても感じがよく、キュートでハマリ役でした。繊細・内気で不器用で、派手なことや表舞台に出るのは苦手だけど、抜群の文才があるので、密かに心を寄せる人気脚本家Alessandroのゴーストライターとして、ヒット作品を次々と世の中に送り出している。世界の片隅でひっそりと咲くマーガレットのような、はかなくも健気な存在です。独身の彼女は、政治家の影のアドバイザーとして活躍するマンマと2人暮らしですが、頭の良いしっかり者のマンマに押されっぱなし。そこに登場するのが、謎めいた初老の男Rakなのです。

平凡な日々にちょっぴり退屈していた彼女にとって、Rakとの出会いは何か面白そうな展開になりそうな予感がした。それどころか危険なにおいさえする。これは良い脚本が書けそうだと思ったのでしょう。そしてこの脚本が思わぬ事件を引き起こすのですが、初老の男Rakが謎だらけで、あんな厄介なことを持ち込んできたのに、Valeriaは彼を遠ざけたり通報したりしなかった。たぶん彼の情報の信憑性を確信した以上に、父性愛に飢えている彼女にとって、彼は頼りになり心安らぐ存在だったからでしょう。因みに現在パレルモのサン・ロレンツォ礼拝堂の正面祭壇にあるのは、今も行方不明となっているカラヴァッジョの名画の、デジタル版の複製画だそうです。


by amore_spacey | 2019-06-06 01:30 | - Italian film | Comments(0)

Il testimone invisibile

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

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【あらすじ】 「今年の起業家」にも選ばれた若手実業家Adriano Doriaには、美しい妻や可愛い娘のほかに、写真家の美しい愛人Laura(Miriam Leone)がいた。しかしAdrianoは愛人の殺人罪で告発・逮捕され、自宅軟禁下にある。彼は身の潔白を証明するため、法廷で一度も敗北を経験したことがないという、有能な弁護士Virginia(Maria Paiato)に援助を求め、事件前後の詳細を一部始終を話すのだった。(作品の詳細はこちら


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この映画は2つの殺人事件当時に何度も遡りつつ、1つ1つ謎を解き明かしながらフィナーレを迎える。作品の大部分を占める実業家Adrianoと弁護士Virginiaの会話シーンは、見応えがありました。家族や人間関係を描いたイタリア映画には優れたものが多いが、面白いミステリー・サスペンスが少ないので、この作品はなかなかいい線いってるなと思ったのですが、見終わってから2016年のスペイン映画Contratiempoを忠実にリメイクしたものと知って、なーんだとちょっぴりがっかり。

Adrianoは2つの殺人事件の容疑者として逮捕された。殺されたのはTommaso(Fabrizio Bentivoglio)とSoniaの息子、そしてAdrianoの愛人Laura。後者はホテルの部屋で起きた密室殺人事件で、Adrianoが気を失って床に倒れていたことや、これといったアリバイがなく目撃者もいないことから、真っ先に犯人の疑いがかけられた。Adrianoにしてみれば、誰かが仕掛けた罠にハメられ、犯人に仕立て上げられたような状況で、何としても身の潔白を証明しなければならない。自分に不利な材料ばかりの状況の中で、窮地を脱することができるのか?

事件前後の様子は、Virginiaの質問にAdrianoが答える形で再現される。事件に関わった人物は、Adrianoと愛人Laura、TommasoとSoniaと息子、車で通りかかった男、そしてホテルの従業員たち。この中で一番疑わしいのが、AdrianoとTommasoの2人。どちらにも殺すだけの動機があるからだ。しかしVirginiaにとってAdrianoは、大事なクライアントでもある。頭から犯人と疑ってかかってはいけない。かと言って、彼を全面的に信用していいものか、100パーセント真実を語っているのか?食い違いや矛盾はないか?嘘はないか?徹底的に洗い出すのも、彼女の仕事だ。目撃者がいない限り、クライアントの証言だけが頼みの綱だから、慎重に進めていく必要がある。ここは辣腕弁護士の腕の見せ所だ。Adrianoの証言に納得がいかなければ、Virginiaはあの手この手で矛盾を明らかにし、事件の核心に近づいていく。途切れることのない2人の会話の水面下では、相手を出し抜こうと、目に見えない駆け引きや攻防戦が行われ、時には張り詰めた空気が漂う。最後にサプライズがあるが、勘のいい人は途中であれっ?と気づくかもしれません。

弁護士を演じたMaria Paiatoは今回初めてだが、舞台出身の女優らしく存在感がある。話し方や表情がやや大袈裟で、それこそ舞台劇を観ているような錯覚に陥る瞬間もあるが、何よりも役づくりがうまいので、彼女の魅力にぐいぐい引き込まれる。Lauraを演じたMiriamやAdrianoを演じたScamarcioは、Maria Paiatoの迫力や演技力に押されて、無残でした。台詞は棒読み、顔の表情はワンパターンで、学芸会レベル。BGMも耳障りでした。「これ、サスペンスなんだよ!」「ここ、山場だから。ちゃんと見てね」と言わんばかりに煽り立てる俗悪なBGMのせいで、画面に集中できない。あれ、もう少し何とかならなかったのかしら。燻し銀のようなFabrizio BentivoglioがMaria Paiatoと共に脇を支えてくれたので、何とか作品として成り立ったと言えましょうか。

その後オリジナル作品Contratiempoを観たのですが、本作品は寸分違わずそっくりそのままリメイクされているんですよね。いやもう、オリジナルを買い取って、CGでイタリア人俳優に置き換えただけ、なレベルで驚いた。そこまでしてリメイクする意味が、イマイチ分かりません。


by amore_spacey | 2019-05-08 01:07 | - Italian film | Comments(0)

メイド・イン・イタリー (Made in Italy)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 北イタリアの小さな町にある食肉加工工場で働くRiko(Stefano Accorsi)は、美容師の妻Sara(Kasia Smutniak)と大学生になる息子Pietro(Tobia De Angelis)と、父親から受け継いだ大きな一軒家に暮らしている。不景気やグローバル化の影響で工場を去らざるを得ない同僚が出る中、仕事に不満がありつつも解雇されることなく、家族や画家のCarnevale(Fausto Maria Sciarappa)ら気のおけない友人たちとの関係も良好で、表向きは幸せに見えたが、心の空虚感を埋められないでいた。心機一転を図ろうと友人たちとローマへの旅に出るが、ローマでの出来事が思わぬ事態を招く。シンガー・ソングライターLuciano Ligabueの3作目。(作品の詳細はこちら


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Ligabueの歌(音が出ます!)にのってStefanoが踊る。右へ左へと動く彼の真っ赤なジャケットが、やがて工場のブルーのエプロンに変わり、束の間の夢から現実に引き戻される冒頭のシーンが、とても印象的。ちょっとくたびれたStefanoの時代遅れな振り付けも、イタリア人のある年齢層には懐かしく映るらしい。

この作品の主人公RikoとSaraの夫婦は倦怠期を迎え、一人息子のPietroは一向に自立する気がない。職場では次々と解雇されていく同僚を目の当たりにする毎日で、施設に入っている痴呆症の父親とは、もうマトモに話ができないし、友だちはやっかいな問題を持ち込んで来る。真っ当に生きているのに、明けても暮れてもストレスだらけで、先は見えず希望も持てそうにない。現状維持ができれば御の字だ。こんな気持ちを抱えながら、やり過ごしているイタリア人は多い。

そんな彼らは喋ることで気持ちをリセットし、エネルギーを充電するのがうまい。仕事帰りに一杯やったり、馴染みの店に行ったり、週末友だちと会ったり、食事に呼んだり呼ばれたりして、息抜きをし気持ちを切り替える。時には少し踏み込んだプライベートな話もする。そこで答えなんか出なくてもいい、聞いてくれるだけでいいのだ。

行き詰まったRikoたちも様々なことを乗り越えて、もう1度やり直そうと仕切り直す。このままハッピーエンドかと思いきや、ああ、再び躓いてしまう。どうしてこうなる?私たちはもうダメなのか?ここからの立て直しは、前回より険しい道のりだ。ここでさっさと諦める夫婦もいるが、彼らは問題や困難のたびに、ケンカしたりよそ見(浮気)したりしながらも、一方では辛抱強く耐えながら、何とか踏みとどまる。そしてより強い絆を築いていく。2人を取り持つのに一役買ったPietroの企画は、なかなか粋でよかったな。

Laetitia Castaと別れてイタリアに戻ってきてから、Stefano Accorsiは肩の力が抜けて、演ずることを心から楽しんでいるような気がする。公私ともに積み重ねた経験のお陰で、最近は強烈な生活臭のあるおっさんが、ハマり役になってきた。Stefanoは人間が好きなんだ。イタリアが好き、生まれ故郷を本当に愛している。そんな彼がRikoをやったからこそ、この作品には強い説得力があると思う。Lucianoの監督処女作Radiofrecciaから20年、LucianoもStefanoも味のある魅力的な中年になりました。


by amore_spacey | 2019-04-11 00:38 | - Italian film | Comments(2)

Suburra -暗黒街- シーズン2 全8話 (Suburra stagione 2 episode1-8)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (85点)

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【あらすじ】 ローマ近郊の港町オスティアの開発計画をめぐる対立は、犯罪組織や汚職政治家やバチカンを巻き込んで、金と欲望が渦巻く抗争へと発展していく。争いが激化する中、Aureliano(Alessandro Borghi)・Spadino(Giacomo Ferrara)・Lele(Eduardo Valdarnini)は手を組んで、ローマ裏社会の帝王Samurai(Francesco Acquaroli)から、覇権を奪おうと大胆不敵な戦いに挑む。果たしてローマの裏社会を征服するのは誰だ。(作品の詳細はこちら


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シーズン1から状況はさらに悪化して凶悪に満ちあふれ、ハイテンションで疾走していくので、アドレナリンが出っ放し。見終わった後の疲労感と言ったらありません。全8話を一気に観るつもりで意気込んだものの、一度に2話が限界でした。女性だろうが容赦しないし、流血シーンもたくさん出てきますが、シーズン2では悪党たちを支える女性陣の活躍が目覚しく、クスッと笑えるシーンや見所も満載です。

Spadinoの妻Angelica(Carlotta Antonelli)は、世間知らずのチャラい女の子かと見くびっていましたが、いやいや、非常に頼もしい存在になっていきます。姑のAdelaide(Paola Sotgiu)と対等に渡り合っていますからね。子を身ごもったことで、嫁の意識やAnacleti家の一員としての自覚が高まったのでしょうか。彼女も権力の座を狙っているのかもしれない。オスティアの麻薬取引にかかわるGravone家のNadia(Federica Sabatini)、政治家Cinagliaの妻Alice(Rosa Diletta Rossi)、バチカンと関わりのあるSara(Claudia Gerini)、警察官になったLele(Eduardo Valdarnini)の部下Cristiana(Cristina Pelliccia)、どの女性も侮れない。

男たちはどんどん悲惨な道を辿ってますが、中でもLele(Eduardo Valdarnini)は、最悪の事態に直面しました。しかしあれは自業自得ですねェ。政治家Cinaglia(Filippo Nigro)は、票集めとはいえ、あそこまでやってしまうなんて、人として終わっている。妻Aliceまで巻き込み、間接的ではあるが犯罪にも手をそめて、じわじわ蟻地獄にはまり込んで行く。もう誰も後戻り出来ませんよ。

全ての元凶は、ローマを牛耳るSamurai(Francesco Acquaroli)でしょうか。権力を掌握するためなら何だってやる。自分の立場が危うくなるたびに、あの手この手で素早く保身にまわる。そのため彼を取り巻く人間関係や、敵対者と同盟者が忙しく入れ替わるので、こちらも目が離せません。彼の餌食になったCinagliaは、とても悲惨な最期を遂げそうな気がします。が、ひょっとすると妻のAliceが奮闘して、地獄から生還できるかも。さて選挙の結果は如何に?今シーズンでかつての勢力は過去のものとなり、新しい世代が台頭する兆しが見えてきました。大好きなAurelianoやSpadinoには、最後まで頑張ってほしい。シーズン3も楽しみです。


by amore_spacey | 2019-03-09 03:00 | - Italian film | Comments(0)

華やかな魔女たち (Le Streghe)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 5人の監督による5編のオムニバス。いずれのエピソードも、Silvana Manganoが男を翻弄する役で主演している。その中で一番面白かったのが第5話の『またもやいつもの通りの夜(Una sera come le altre)』(監督:Vittorio De Sica) 夫のCarlo(Clint Eastwood)がいつも疲れて会社から戻り、満足な会話もしないまま、眠ってしまうのに腹を立てた妻のGiovanna(Silvana Mangano)が、旦那をブチ殺す妄想にとらわれる。(作品の詳細はこちら


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結婚7年目を迎える夫婦。Giovannaはおっとりした上品な妻ですが、夫がちっとも構ってくれない。そんな夫に表向きは穏やかに接しているものの、心の中の妄想の世界では、感情むき出しで夫を罵ったりビンタを食らわしたり、彼の目の前で不倫して復讐したりして、溜飲を下げている。でもそれっぽちで気持ちは収まらないし、心も満たされない。だから妄想はどんどんエスカレートして、えーっ?そこまでやっちゃう?レベルになっていく。


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何の不満もなさそうな素敵な女性でも、はらわた煮えくり返らせながら妄想の世界でストレスを発散してるなんて、親近感が沸きます。夫が話を聞いてくれないことなんて、部外者から見れば、「何でそんなことで怒ってるの?」なんですが、実際腹が立つもんなんです。そして仮に夫が話を聞いてくれたとしても、その後に変なコメントが返って来たりすると、さらに腹が立つんです。女って生き物は、黙って話を聞いてくれたり、同調してくれる聞き手が欲しいの。あなたの余計な忠告・忠言は、要りまっせーーん。

というような、他人にはどーでもいいような些細なことが、日常生活には数え切れないほどある。大抵のことは忙しさに紛れて忘れてしまうが、その日の気分や体調によっては、どうしても流せないことがある。それは男性も同じことだと思います、ええ。こんな暮らしを毎日続けているわけですが、第5話は「まぁ、いろいろあるけど、人生捨てたもんじゃないよ」と思わせてくれる作品でした。


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因みにLuchino Visconti監督の第1話『疲れきった魔女(La strega bruciata viva)』に、Helmut Bergerが(当時はHelmut Steinbergherの本名で)、山のホテルのウェイターという端役で出ている。どことなくTaylor Kitschに似ているかも。


by amore_spacey | 2018-10-31 00:38 | - Italian film | Comments(0)

屋根 (Il Tetto)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 第二次世界大戦後のローマ。戦後の混乱期は脱したものの、庶民にとって貧しい暮らしが続いていた。そんな中Luisa(Gabriella Pallotta)とNatale(Giorgio Listuzzi)の若いカップルは、Luisaの父親の反対を押し切って結婚し、Nataleの義兄Cesare(Gastone Renzelli)の家に同居させてもらう。しかし小さな家の大所帯で、仕切りも何もない狭い寝室に、ベッドを押し込んだ環境での新婚生活は、到底無理だった。
 やがて兄と喧嘩をして家を出た2人は、公共の土地に家を建ててしまえば、居住権が成立してそこに住み続けることが出来る、ということを知り、見習い左官のNataleは職場の仲間たちの協力を得て、一夜で何とか家を建てようと奮闘する。1956年カンヌ映画祭で特別賞を受賞。(作品の詳細はこちら


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この映画が制作されたのは1956年。4年後にローマ・オリンピック開催を控えており、中心街には高層団地が次々に建てられ、イタリアが一丸となって文化的な暮らしに向かっていた。が、大半の庶民は戦後の復興やオリンピック景気の恩恵から取り残されたままで、貧しい若い新婚夫婦が暮らせるような、小さなアパートすら見つけることが出来ないのが現状でした。


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しかし、ここはイタリア。『昨日、今日、明日』の第1話のように、法律を逆手に取ったり、法律の網目をくぐり抜けて、合法にしてしまうのはお手のものです。当時はそういったことに寛容だった時代背景があり、困っている人々に救いの手を差し伸べる、大半は損得を抜きにした、情に厚い庶民たちが大勢いた。同じ1956年作の『鉄道員』にもみられるように、LuisaやNataleのまわりには下町人情がまだ健在だったんですね。


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そして「一晩で家を建て屋根を葺けば、居住権が成立する」という法律を逆手にとり、Nataleたちは本当に一晩で家を建ててしまうから凄い。屋根の一部はまだ覆われていなかったから、完成とは言えない。が、これこそDe Sica監督が得意の人情劇ってもんで、見回りに来た警官たちが見逃してくれ、晴れて二人は一軒家を手に入れることが出来たのです。一軒家といってもおよそ10畳一間で、レンガを積んだだけの掘っ立て小屋に毛が生えたような家だ。しかし出来上がったばかりのこの小さな家を、二人が満足そうに眺めるラストシーンが、とても微笑ましく心温まる。慎ましく暮らす庶民の、ささやかな幸せの形だ。

Luisa役のGabriellaは児童用品店の店員、Nataleを演じたGiorgioはセリエCのサッカー選手(イケメン!)と、二人とも役者としてはズブの素人だった。が、もともと役者の素質があったらしく、De Sica監督の指導もよかったのだろう。心に残る素晴らしい演技を見せてくれた。第一印象が悪かった義兄Cesareも、若い二人のために最後は一肌脱いでくれて、なんか、いい奴だったな。


by amore_spacey | 2018-10-10 00:32 | - Italian film | Comments(0)

鉄道員 (Il ferroviere)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (74点)

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【あらすじ】 50歳のイタリアの鉄道機関士Andrea Marcocci(Pietro Germi)は、末っ子のSandro(Edoardo Nevola)から英雄のように慕われているが、長女Giulia(Sylva Koscina)と長男のMarcello(Renato Speziali)からは、その厳格さや律儀で一徹な態度から敬遠されていた。しかしそんな彼らもやさしく献身的なマンマSara(Luisa Della Noce)のおかげで、毎日平穏に暮らしていた。そんなある日、娘の流産や息子の不良化に気になっていたAndreaが列車を運転していた所、彼の前に一人の若者が身を投げた。急いでブレーキをかけたが、間に合わずにその青年を轢いてしまう。(作品の詳細はこちら


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Andreaは絵に描いたような、昭和の頑固オヤジだ。融通がきかなくて厳格な男だが、家族を養っていくため、仕事一筋で真面目に頑張っている。そんな親心も露知らず、長女や長男は勝手なことばかりやって、おまけに自分(父)を煙たがっている。父親を慕い誇りに思うのは、末っ子のSandroだけ。Andreaの孤独や心の痛みを癒してくれるのは、仕事が終わったあと、行きつけの居酒屋で仲間と飲む酒だ。一杯入ると、がぜん機嫌が良くなり、ギターを爪弾きながら、仲間たちと歌う。父親を演じたPietro Germiが、メッチャカッコイイです。

パパが大好きなSandro。学校の成績はパッとしないけれど、愛嬌があって憎めず、家族だけでなくパパの同僚からも可愛がられている。大人の事情を鋭い勘で察知してしまい、「ここだけの話だよ」と口止めされたのに、やっぱり黙っていられないのと、姉(ねえ)ちゃんや大好きなパパのことが心配で、喋ってしまう。家の中の空気が、何かおかしいのを感じ取り、子どもだけど彼なりに色々考えて悩んでいるのだ。


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Sandroのマンマは、頑固な夫を支え、家族の問題に一喜一憂しながら、家族の要(かなめ)となって、家の中のことをテキパキこなす。次から次へと家族が問題を起こしても、アタフタ慌てずどっしり構え、大らかな母性愛で包み込んでくれる。Sandro少年や健気なマンマやがいなかったら、この家族はどうなっていたんだろう。


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Andreaの同僚で親友のGigi(Saro Urzì)や他の同僚たち、それから行きつけの居酒屋の主人たちも、人懐こくて明るく、人情味のある人たちばかり。だからAndreaが窮地に陥っても、1人だけスト破りしたAndreaを一度は村八分にするものの、まるで何もなかったかのように振る舞い、また以前のように付き合ってくれる。この人間同士のゆるやかな繋がりが、本当に心の支えになります。仲間が企画したクリスマス・イヴの素朴なサプライズにも、胸が熱くなりました。様々な蟠(わだかま)りが解け、最高のイヴを過ごした夫婦。2人だけになった静かな家で、Andreaはギターを爪弾きながら逝ってしまい、別室のSaraはそれに気づかないまま、幸せに満ちた表情で夫に語りかけるシーンは、涙を誘う。


by amore_spacey | 2018-05-18 00:34 | - Italian film | Comments(0)

環状線の猫のように (Come un gatto in tangenziale)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

ちょっとだけネタバレ!

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【あらすじ】 ローマ旧市街に瀟洒な住まいを構え、シンクタンクで働くインテリのGiovanni(Antonio Albanese)と、多様な人種が混在する郊外で調理スタッフとして働き、日々の生活に追われるMonica(Paola Cortellesi)。生活環境が全く異なり、知り合うことはなかったはずの2人だが、彼らの子どもたちが好意を寄せ合い、付き合い始めたことから、やむを得ず交流することになる。(作品の詳細はこちら


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富裕層のエリートと言ったら、Pierfrancesco FavinoやFabrizio Gifuniをキャスティングしたいが、パッと見は冴えないAntonio Albanese、でも彼が動き出すや否や、その演技力にぐいぐい引き込まれ、最初の違和感を簡単に吹っ飛ばしてくれる。今回彼と共演するのは、Monicaに扮するサバサバ系女優Paola Cortellesi。身体中タトゥーだらけで、野球のバットをぶん回して、Giovanniの高級車のフロントガラスを叩き割る、という衝撃的な登場に、Giovanniでなくとも恐怖とショックのあまり言葉が出てこない。階級の違いによる「お育ち」の違いは、疑う余地なし!なのであります。


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格差のある家族ならではのお決まりのエピソードが、あとからあとから出てくる。が、退屈しない。これがもしRomeoとJulietの時代だったら、大切な娘に変な虫がつかないよう、娘を高い塔に幽閉したり、修道院に送り込んだり、はたまた下賎な男の子一家に濡れ衣を着せて、彼を島流しにするかもしれない。21世紀のローマではさすがにそんなことはないけれど、「あそこの家とは格が違うから…」という理由で、徐々に疎遠にされたり、破談になったりすることはまぁあります。

が、この作品の良いところは、格差社会を前向きにとらえていること。高所得者層代表のGiovanniは、統計上の数値だけでは見えてこない低所得層の暮らしぶりを、身を持って実感し、また階層で人を判断していた自分の尊大さに気が付く。一方低所得者層代表のMonicaも、ただぼやいているだけでなく、現状改善に乗り出し、郊外にピッツェリアを開く。


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格差社会が生み出す摩擦や軋轢など、深刻に捉えると重苦しくなるが、この作品は全てをひっくるめて、笑い飛ばして楽しもうというスタンスで描かれている。なので主役の2人もそれに応えて、軽くなりすぎないよう絶妙の匙加減をしながら、からりとした笑いに変えて素敵なコメディに仕上がっている。ところでMonicaの異母姉妹(双子?)として登場する、2人のポーランド人女性が、最強無敵です。脇役なのに、存在感ありすぎ(爆) 因みにタイトルの「環状線の猫のように」は、交通量の多い環状線で猫は生きられない(短命)ことから、あまり長続きしないことを意味する。インテリのGiovanniとタトゥー女Monicaの関係は、細く長く続くのか?環状線の猫のようにすぐ終わってしまうのかしら?


by amore_spacey | 2018-05-03 01:12 | - Italian film | Comments(0)

イタリアの父 (Il padre d'Italia)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

ネタばれ少しあり!

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【あらすじ】 トリノで暮らすPaolo(Luca Marinelli)は、建築家になりたかったが夢叶わず、トリノの家具店で働いている。8年付き合ったMario(Mario Sgueglia)に振られ、傷心を抱えて、ある夜ゲイクラブにふらりと入った。そこで知り合った身重のMia(Isabella Ragonese)が体調を崩し、Paoloの目の前で失神してしまった。ロックバンドのバックシンガーで奔放に生きるMiaは妊娠6ヶ月だが、その子の父親が誰なのかはっきりしない。Paoloは父親捜しに巻き込まれるが、無軌道な旅を通じて自分自身を見つめ直していく。(作品の詳細はこちら


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Luca Marinelliの、たぶん1回だけ1人祭り。『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』『Non essere cattivo』で、切れっ切れのダーク・ヒーローを演じて、強烈な印象を残したLucaが、『来る日も来る日も』では善良で物静かなGuidoを、この作品では母親の愛や家族愛に飢えた孤独を抱えるPaoloを演じている。いやいや、もう演技の振り幅が驚異的に大きく、同一人物とは思えません。しかもダークや善良の演技に微妙な濃淡があり、彼の豹変振りが毎回嬉しいサプライズです。

サプライズと言えば、お人よしのPaoloに付け入って、彼を翻弄させるMiaという女が、見かけも性格もしっちゃかめっちゃかで、自由奔放とかルールに縛られないとか…そんな小綺麗な言葉にはおさまらず、見るからにすれっからしで、真っ当な暮らしをしていないのは明らか。Miaを演じるIsabellaが濃い化粧をすると、松金よね子に見えて仕方がない。というのはさておき、でもPaoloは、そんな彼女となぜか関わろうとする。Miaを見た時から、俺たち孤独を抱えて生きているよな、と感じ取ったのでしょう。


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PaoloはMiaのお腹の子のパパを捜す旅に、半ば騙された形で付き合わされるが、彼にしてみれば今までこんな非日常的な冒険などたぶん経験がなく、内心ワクワクしていたに違いない。このまま会社を辞めて、彼女と一緒に逃亡してもいいかな、なんて実はかなり本気で思っていたかも。

2人の珍道中で、Paoloはおそらく誰にも話したことのない、寂しかった幼少期のことをポツリポツリと語っていく。大人になった今でも、自分を孤児院施設に置いて出て行った母親の背中が、何度もフラッシュバックする。無口で孤独な少年だった。家族愛を知らずして大人になったPaolo。さて2人はトリノからローマ・ナポリまで一気に南下したはいいが、結局お腹の子のパパは見つからなかった。それでも旅は続き、2人はカラブリアにあるMiaの故郷の町へ行くのだ。


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そこでMiaのマンマや身内が、歓迎してくれた。いやぁ、カラブリア方言や訛りが強くて、彼らの会話がかなり聞きづらかった。字幕が欲しい。家族愛を知らないPaoloにとって、温かく迎え入れてくれたこの家は、とても居心地が良く、このままここに居ても構わないくらいだ。が、大人になってもMiaがあんなだから、マンマとの長年の確執が再び表面化し、Miaはまたもや家を飛び出してしまった。結局Paoloはトリノに1人で戻るが、数ヶ月後サプライズの電話が入る。そして彼は大きな決断を下す。今までわだかまっていた気持ちを、これで吹っ切ろう。彼のこれからの人生に、小さな希望の光が灯ったようで、ラストシーンを見ながら、心の底から応援したい気持ちで一杯になりました。


by amore_spacey | 2018-04-26 03:19 | - Italian film | Comments(0)

来る日も来る日も (Tutti i santi giorni)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 ローマ。ホテルのフロントで夜勤担当の博識で物静かなGuido(Luca Marinelli )と、昼間はレンタカー店で働きながら、夜は売れない歌手として地道な活動を続ける勝気で奔放なAntonia(Thony)。対照的な性格だが相性抜群のふたりは、Guidoの夜勤明けに毎日のように愛を交わしていた。ところが子どもを望むようになったことをきっかけに、ふたりの心は次第にすれ違うようになっていく。Simone Lenziの小説La generazioneを映画化。(作品の詳細はこちら


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夜勤が終わって帰宅すると、Guidoは淹れたてのエスプレッソとビスケットを持って、愛するAntoniaが眠る枕元に座り、本日の聖人にまつわるエピソードを語りながら、彼女を優しく起こす。このシーンがふたりの間で、毎朝繰り返される。わぁ、ロマンチック。毎日いいことがありそうな予感がします。タイトルのTutti i santi giorniは、「毎日まーいにち」「うんざりする(バカ正直な)くらい毎日」のように、「毎日」の強調語として使われる。

AntoniaとGuidoは、ささやかな出来事に幸せを見出しながら平凡に暮らす、どこにでもいる若いカップル。でも彼女が子どもを望み、不妊体質の判明から不妊治療が始まると同時に、何かが少しずつ壊れていく。ありがちなストーリーだが、主人公を演じた2人が素晴らしく、人の琴線に触れる作品となっている。特にAntoniaを演じたThonyがナイス。もともとは歌手だが、今回役者に初挑戦したとは思えないような、こなれた演技に目も心も奪われた。

何度目かの不妊治療に失敗したあと、「私ったら何やってるの?子どもばかりに拘らなくたって、まわりをみれば幸せはいろんな形であるじゃないの」と一旦は頭を切り替える。でも心の底に閉じ込めた本音を偽ることができず、再び気持ちは揺れ動く。そんな心の動きが手に取るように、胸が痛くなるくらい分かるんですよ。彼女の語りかけるような歌(歌詞もいい)が、いつまでも耳に残る。彼らが人知れず抱える心の痛みや静かな哀しみ、それを受け止めきれない不甲斐なさ、相手に対する深い慈しみやひたむきな思いなど、言葉にならない感情が2人の間を行き来しながらも、傷ついた心をそっと癒してくれる優しさが、そこにはあった。


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不妊の原因は自分にあって、常にAntoniaは「相手に申し訳ない」「全部私が悪い」という罪の意識に囚われる。だから、「僕たちの子どもなんかいなくたって、幸せに変わりはないよ」と諭すGuidoの言葉も、気休めにしか聞こえない。そんな必要も理由も全くないのに、全てを1人で背負い込もうとして、さらに自分を追い込む。で、Antoniaの場合は自棄(やけ)になって元カレJimmy(Giovanni La Parola)と寝たり、いきなり姿を消してJimmyと同棲したりして、頭の中はぐちゃぐちゃ。このJimmyってヤツが、良い意味のKYで、クスッと笑わせ、緊張を解いてくれました。


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こんなAntoniaにGuidoは激怒するどころか、彼女のナイーブで繊細な感情を傷つけまいと気遣い、決して土足で踏み込まない。彼女の話をきちんと聞き、辛い思いを正面から受け止め、共感しようとする。もうね、Antoniaのことが好きでたまらないんです。だから大学教授になることもできたのに、彼女のために断念した。折り目正しく理性的に生きている彼にとって、自由に生きるAntoniaは異質だけど憧れの存在であり、傷つきやすい彼女にとって、善良で温厚で真面目なGuidoは、心の支えになる人。彼らは互いに無くてはならない、かけがえのない存在だ。終盤に明かされるふたりが出会った夜のエピソード、これがとてもロマンチックで、優しい余韻を残してくれました。


by amore_spacey | 2018-04-21 01:12 | - Italian film | Comments(0)