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カテゴリ:- Italian film( 266 )

メイド・イン・イタリー (Made in Italy)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 北イタリアの小さな町にある食肉加工工場で働くRiko(Stefano Accorsi)は、美容師の妻Sara(Kasia Smutniak)と大学生になる息子Pietro(Tobia De Angelis)と、父親から受け継いだ大きな一軒家に暮らしている。不景気やグローバル化の影響で工場を去らざるを得ない同僚が出る中、仕事に不満がありつつも解雇されることなく、家族や画家のCarnevale(Fausto Maria Sciarappa)ら気のおけない友人たちとの関係も良好で、表向きは幸せに見えたが、心の空虚感を埋められないでいた。心機一転を図ろうと友人たちとローマへの旅に出るが、ローマでの出来事が思わぬ事態を招く。シンガー・ソングライターLuciano Ligabueの3作目。(作品の詳細はこちら


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Ligabueの歌(音が出ます!)にのってStefanoが踊る。右へ左へと動く彼の真っ赤なジャケットが、やがて工場のブルーのエプロンに変わり、束の間の夢から現実に引き戻される冒頭のシーンが、とても印象的。ちょっとくたびれたStefanoの時代遅れな振り付けも、イタリア人のある年齢層には懐かしく映るらしい。

この作品の主人公RikoとSaraの夫婦は倦怠期を迎え、一人息子のPietroは一向に自立する気がない。職場では次々と解雇されていく同僚を目の当たりにする毎日で、施設に入っている痴呆症の父親とは、もうマトモに話ができないし、友だちはやっかいな問題を持ち込んで来る。真っ当に生きているのに、明けても暮れてもストレスだらけで、先は見えず希望も持てそうにない。現状維持ができれば御の字だ。こんな気持ちを抱えながら、やり過ごしているイタリア人は多い。

私のまわりのイタリア人は、人と話すことで気持ちをリセットし、エネルギーを充電するのがうまい。仕事帰りに一杯やったり、馴染みの店に行ったり、週末友だちと会ったり、食事に呼んだり呼ばれたりして、息抜きをし気持ちを切り替える。時には少し踏み込んだプライベートな話もする。そこで答えなんか出なくてもいい、聞いてくれるだけでいいのだ。

行き詰まったRikoたちも様々なことを乗り越えて、もう1度やり直そうと仕切り直す。このままハッピーエンドかと思いきや、ああ、再び躓いてしまう。どうしてこうなる?私たちはもうダメなのか?ここからの立て直しは、前回より険しい道のりだ。ここでさっさと諦める夫婦もいるが、彼らは問題や困難のたびに、ケンカしたりよそ見(浮気)したりしながらも、一方では辛抱強く耐えながら、何とか踏みとどまる。そしてより強い絆を築いていく。2人を取り持つのに一役買ったPietroの企画は、なかなか粋でよかったな。

Laetitia Castaと別れてイタリアに戻ってきてから、Stefano Accorsiは肩の力が抜けて、演ずることを心から楽しんでいるような気がする。公私ともに積み重ねた経験のお陰で、最近は強烈な生活臭のあるおっさんが、ハマり役になってきた。Stefanoは人間が好きなんだ。イタリアが好き、生まれ故郷を本当に愛している。そんな彼がRikoをやったからこそ、この作品には強い説得力があると思う。Lucianoの監督処女作Radiofrecciaから20年、LucianoもStefanoも味のある魅力的な中年になりました。


by amore_spacey | 2019-04-11 00:38 | - Italian film | Comments(2)

Suburra -暗黒街- シーズン2 全8話 (Suburra stagione 2 episode1-8)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (85点)

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【あらすじ】 ローマ近郊の港町オスティアの開発計画をめぐる対立は、犯罪組織や汚職政治家やバチカンを巻き込んで、金と欲望が渦巻く抗争へと発展していく。争いが激化する中、Aureliano(Alessandro Borghi)・Spadino(Giacomo Ferrara)・Lele(Eduardo Valdarnini)は手を組んで、ローマ裏社会の帝王Samurai(Francesco Acquaroli)から、覇権を奪おうと大胆不敵な戦いに挑む。果たしてローマの裏社会を征服するのは誰だ。(作品の詳細はこちら


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シーズン1から状況はさらに悪化して凶悪に満ちあふれ、ハイテンションで疾走していくので、アドレナリンが出っ放し。見終わった後の疲労感と言ったらありません。全8話を一気に観るつもりで意気込んだものの、一度に2話が限界でした。女性だろうが容赦しないし、流血シーンもたくさん出てきますが、シーズン2では悪党たちを支える女性陣の活躍が目覚しく、クスッと笑えるシーンや見所も満載です。

Spadinoの妻Angelica(Carlotta Antonelli)は、世間知らずのチャラい女の子かと見くびっていましたが、いやいや、非常に頼もしい存在になっていきます。姑のAdelaide(Paola Sotgiu)と対等に渡り合っていますからね。子を身ごもったことで、嫁の意識やAnacleti家の一員としての自覚が高まったのでしょうか。彼女も権力の座を狙っているのかもしれない。オスティアの麻薬取引にかかわるGravone家のNadia(Federica Sabatini)、政治家Cinagliaの妻Alice(Rosa Diletta Rossi)、バチカンと関わりのあるSara(Claudia Gerini)、警察官になったLele(Eduardo Valdarnini)の部下Cristiana(Cristina Pelliccia)、どの女性も侮れない。

男たちはどんどん悲惨な道を辿ってますが、中でもLele(Eduardo Valdarnini)は、最悪の事態に直面しました。しかしあれは自業自得ですねェ。政治家Cinaglia(Filippo Nigro)は、票集めとはいえ、あそこまでやってしまうなんて、人として終わっている。妻Aliceまで巻き込み、間接的ではあるが犯罪にも手をそめて、じわじわ蟻地獄にはまり込んで行く。もう誰も後戻り出来ませんよ。

全ての元凶は、ローマを牛耳るSamurai(Francesco Acquaroli)でしょうか。権力を掌握するためなら何だってやる。自分の立場が危うくなるたびに、あの手この手で素早く保身にまわる。そのため彼を取り巻く人間関係や、敵対者と同盟者が忙しく入れ替わるので、こちらも目が離せません。彼の餌食になったCinagliaは、とても悲惨な最期を遂げそうな気がします。が、ひょっとすると妻のAliceが奮闘して、地獄から生還できるかも。さて選挙の結果は如何に?今シーズンでかつての勢力は過去のものとなり、新しい世代が台頭する兆しが見えてきました。大好きなAurelianoやSpadinoには、最後まで頑張ってほしい。シーズン3も楽しみです。


by amore_spacey | 2019-03-09 03:00 | - Italian film | Comments(0)

華やかな魔女たち (Le Streghe)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 5人の監督による5編のオムニバス。いずれのエピソードも、Silvana Manganoが男を翻弄する役で主演している。その中で一番面白かったのが第5話の『またもやいつもの通りの夜(Una sera come le altre)』(監督:Vittorio De Sica) 夫のCarlo(Clint Eastwood)がいつも疲れて会社から戻り、満足な会話もしないまま、眠ってしまうのに腹を立てた妻のGiovanna(Silvana Mangano)が、旦那をブチ殺す妄想にとらわれる。(作品の詳細はこちら


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結婚7年目を迎える夫婦。Giovannaはおっとりした上品な妻ですが、夫がちっとも構ってくれない。そんな夫に表向きは穏やかに接しているものの、心の中の妄想の世界では、感情むき出しで夫を罵ったりビンタを食らわしたり、彼の目の前で不倫して復讐したりして、溜飲を下げている。でもそれっぽちで気持ちは収まらないし、心も満たされない。だから妄想はどんどんエスカレートして、えーっ?そこまでやっちゃう?レベルになっていく。


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何の不満もなさそうな素敵な女性でも、はらわた煮えくり返らせながら妄想の世界でストレスを発散してるなんて、親近感が沸きます。夫が話を聞いてくれないことなんて、部外者から見れば、「何でそんなことで怒ってるの?」なんですが、実際腹が立つもんなんです。そして仮に夫が話を聞いてくれたとしても、その後に変なコメントが返って来たりすると、さらに腹が立つんです。女って生き物は、黙って話を聞いてくれたり、同調してくれる聞き手が欲しいの。あなたの余計な忠告・忠言は、要りまっせーーん。

というような、他人にはどーでもいいような些細なことが、日常生活には数え切れないほどある。大抵のことは忙しさに紛れて忘れてしまうが、その日の気分や体調によっては、どうしても流せないことがある。それは男性も同じことだと思います、ええ。こんな暮らしを毎日続けているわけですが、第5話は「まぁ、いろいろあるけど、人生捨てたもんじゃないよ」と思わせてくれる作品でした。


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因みにLuchino Visconti監督の第1話『疲れきった魔女(La strega bruciata viva)』に、Helmut Bergerが(当時はHelmut Steinbergherの本名で)、山のホテルのウェイターという端役で出ている。どことなくTaylor Kitschに似ているかも。


by amore_spacey | 2018-10-31 00:38 | - Italian film | Comments(0)

屋根 (Il Tetto)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 第二次世界大戦後のローマ。戦後の混乱期は脱したものの、庶民にとって貧しい暮らしが続いていた。そんな中Luisa(Gabriella Pallotta)とNatale(Giorgio Listuzzi)の若いカップルは、Luisaの父親の反対を押し切って結婚し、Nataleの義兄Cesare(Gastone Renzelli)の家に同居させてもらう。しかし小さな家の大所帯で、仕切りも何もない狭い寝室に、ベッドを押し込んだ環境での新婚生活は、到底無理だった。
 やがて兄と喧嘩をして家を出た2人は、公共の土地に家を建ててしまえば、居住権が成立してそこに住み続けることが出来る、ということを知り、見習い左官のNataleは職場の仲間たちの協力を得て、一夜で何とか家を建てようと奮闘する。1956年カンヌ映画祭で特別賞を受賞。(作品の詳細はこちら


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この映画が制作されたのは1956年。4年後にローマ・オリンピック開催を控えており、中心街には高層団地が次々に建てられ、イタリアが一丸となって文化的な暮らしに向かっていた。が、大半の庶民は戦後の復興やオリンピック景気の恩恵から取り残されたままで、貧しい若い新婚夫婦が暮らせるような、小さなアパートすら見つけることが出来ないのが現状でした。


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しかし、ここはイタリア。『昨日、今日、明日』の第1話のように、法律を逆手に取ったり、法律の網目をくぐり抜けて、合法にしてしまうのはお手のものです。当時はそういったことに寛容だった時代背景があり、困っている人々に救いの手を差し伸べる、大半は損得を抜きにした、情に厚い庶民たちが大勢いた。同じ1956年作の『鉄道員』にもみられるように、LuisaやNataleのまわりには下町人情がまだ健在だったんですね。


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そして「一晩で家を建て屋根を葺けば、居住権が成立する」という法律を逆手にとり、Nataleたちは本当に一晩で家を建ててしまうから凄い。屋根の一部はまだ覆われていなかったから、完成とは言えない。が、これこそDe Sica監督が得意の人情劇ってもんで、見回りに来た警官たちが見逃してくれ、晴れて二人は一軒家を手に入れることが出来たのです。一軒家といってもおよそ10畳一間で、レンガを積んだだけの掘っ立て小屋に毛が生えたような家だ。しかし出来上がったばかりのこの小さな家を、二人が満足そうに眺めるラストシーンが、とても微笑ましく心温まる。慎ましく暮らす庶民の、ささやかな幸せの形だ。

Luisa役のGabriellaは児童用品店の店員、Nataleを演じたGiorgioはセリエCのサッカー選手(イケメン!)と、二人とも役者としてはズブの素人だった。が、もともと役者の素質があったらしく、De Sica監督の指導もよかったのだろう。心に残る素晴らしい演技を見せてくれた。第一印象が悪かった義兄Cesareも、若い二人のために最後は一肌脱いでくれて、なんか、いい奴だったな。


by amore_spacey | 2018-10-10 00:32 | - Italian film | Comments(0)

鉄道員 (Il ferroviere)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (74点)

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【あらすじ】 50歳のイタリアの鉄道機関士Andrea Marcocci(Pietro Germi)は、末っ子のSandro(Edoardo Nevola)から英雄のように慕われているが、長女Giulia(Sylva Koscina)と長男のMarcello(Renato Speziali)からは、その厳格さや律儀で一徹な態度から敬遠されていた。しかしそんな彼らもやさしく献身的なマンマSara(Luisa Della Noce)のおかげで、毎日平穏に暮らしていた。そんなある日、娘の流産や息子の不良化に気になっていたAndreaが列車を運転していた所、彼の前に一人の若者が身を投げた。急いでブレーキをかけたが、間に合わずにその青年を轢いてしまう。(作品の詳細はこちら


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Andreaは絵に描いたような、昭和の頑固オヤジだ。融通がきかなくて厳格な男だが、家族を養っていくため、仕事一筋で真面目に頑張っている。そんな親心も露知らず、長女や長男は勝手なことばかりやって、おまけに自分(父)を煙たがっている。父親を慕い誇りに思うのは、末っ子のSandroだけ。Andreaの孤独や心の痛みを癒してくれるのは、仕事が終わったあと、行きつけの居酒屋で仲間と飲む酒だ。一杯入ると、がぜん機嫌が良くなり、ギターを爪弾きながら、仲間たちと歌う。父親を演じたPietro Germiが、メッチャカッコイイです。

パパが大好きなSandro。学校の成績はパッとしないけれど、愛嬌があって憎めず、家族だけでなくパパの同僚からも可愛がられている。大人の事情を鋭い勘で察知してしまい、「ここだけの話だよ」と口止めされたのに、やっぱり黙っていられないのと、姉(ねえ)ちゃんや大好きなパパのことが心配で、喋ってしまう。家の中の空気が、何かおかしいのを感じ取り、子どもだけど彼なりに色々考えて悩んでいるのだ。


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Sandroのマンマは、頑固な夫を支え、家族の問題に一喜一憂しながら、家族の要(かなめ)となって、家の中のことをテキパキこなす。次から次へと家族が問題を起こしても、アタフタ慌てずどっしり構え、大らかな母性愛で包み込んでくれる。Sandro少年や健気なマンマやがいなかったら、この家族はどうなっていたんだろう。


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Andreaの同僚で親友のGigi(Saro Urzì)や他の同僚たち、それから行きつけの居酒屋の主人たちも、人懐こくて明るく、人情味のある人たちばかり。だからAndreaが窮地に陥っても、1人だけスト破りしたAndreaを一度は村八分にするものの、まるで何もなかったかのように振る舞い、また以前のように付き合ってくれる。この人間同士のゆるやかな繋がりが、本当に心の支えになります。仲間が企画したクリスマス・イヴの素朴なサプライズにも、胸が熱くなりました。様々な蟠(わだかま)りが解け、最高のイヴを過ごした夫婦。2人だけになった静かな家で、Andreaはギターを爪弾きながら逝ってしまい、別室のSaraはそれに気づかないまま、幸せに満ちた表情で夫に語りかけるシーンは、涙を誘う。


by amore_spacey | 2018-05-18 00:34 | - Italian film | Comments(0)

環状線の猫のように (Come un gatto in tangenziale)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

ちょっとだけネタバレ!

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【あらすじ】 ローマ旧市街に瀟洒な住まいを構え、シンクタンクで働くインテリのGiovanni(Antonio Albanese)と、多様な人種が混在する郊外で調理スタッフとして働き、日々の生活に追われるMonica(Paola Cortellesi)。生活環境が全く異なり、知り合うことはなかったはずの2人だが、彼らの子どもたちが好意を寄せ合い、付き合い始めたことから、やむを得ず交流することになる。(作品の詳細はこちら


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富裕層のエリートと言ったら、Pierfrancesco FavinoやFabrizio Gifuniをキャスティングしたいが、パッと見は冴えないAntonio Albanese、でも彼が動き出すや否や、その演技力にぐいぐい引き込まれ、最初の違和感を簡単に吹っ飛ばしてくれる。今回彼と共演するのは、Monicaに扮するサバサバ系女優Paola Cortellesi。身体中タトゥーだらけで、野球のバットをぶん回して、Giovanniの高級車のフロントガラスを叩き割る、という衝撃的な登場に、Giovanniでなくとも恐怖とショックのあまり言葉が出てこない。階級の違いによる「お育ち」の違いは、疑う余地なし!なのであります。


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格差のある家族ならではのお決まりのエピソードが、あとからあとから出てくる。が、退屈しない。これがもしRomeoとJulietの時代だったら、大切な娘に変な虫がつかないよう、娘を高い塔に幽閉したり、修道院に送り込んだり、はたまた下賎な男の子一家に濡れ衣を着せて、彼を島流しにするかもしれない。21世紀のローマではさすがにそんなことはないけれど、「あそこの家とは格が違うから…」という理由で、徐々に疎遠にされたり、破談になったりすることはまぁあります。

が、この作品の良いところは、格差社会を前向きにとらえていること。高所得者層代表のGiovanniは、統計上の数値だけでは見えてこない低所得層の暮らしぶりを、身を持って実感し、また階層で人を判断していた自分の尊大さに気が付く。一方低所得者層代表のMonicaも、ただぼやいているだけでなく、現状改善に乗り出し、郊外にピッツェリアを開く。


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格差社会が生み出す摩擦や軋轢など、深刻に捉えると重苦しくなるが、この作品は全てをひっくるめて、笑い飛ばして楽しもうというスタンスで描かれている。なので主役の2人もそれに応えて、軽くなりすぎないよう絶妙の匙加減をしながら、からりとした笑いに変えて素敵なコメディに仕上がっている。ところでMonicaの異母姉妹(双子?)として登場する、2人のポーランド人女性が、最強無敵です。脇役なのに、存在感ありすぎ(爆) 因みにタイトルの「環状線の猫のように」は、交通量の多い環状線で猫は生きられない(短命)ことから、あまり長続きしないことを意味する。インテリのGiovanniとタトゥー女Monicaの関係は、細く長く続くのか?環状線の猫のようにすぐ終わってしまうのかしら?


by amore_spacey | 2018-05-03 01:12 | - Italian film | Comments(0)

イタリアの父 (Il padre d'Italia)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

ネタばれ少しあり!

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【あらすじ】 トリノで暮らすPaolo(Luca Marinelli)は、建築家になりたかったが夢叶わず、トリノの家具店で働いている。8年付き合ったMario(Mario Sgueglia)に振られ、傷心を抱えて、ある夜ゲイクラブにふらりと入った。そこで知り合った身重のMia(Isabella Ragonese)が体調を崩し、Paoloの目の前で失神してしまった。ロックバンドのバックシンガーで奔放に生きるMiaは妊娠6ヶ月だが、その子の父親が誰なのかはっきりしない。Paoloは父親捜しに巻き込まれるが、無軌道な旅を通じて自分自身を見つめ直していく。(作品の詳細はこちら


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Luca Marinelliの、たぶん1回だけ1人祭り。『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』『Non essere cattivo』で、切れっ切れのダーク・ヒーローを演じて、強烈な印象を残したLucaが、『来る日も来る日も』では善良で物静かなGuidoを、この作品では母親の愛や家族愛に飢えた孤独を抱えるPaoloを演じている。いやいや、もう演技の振り幅が驚異的に大きく、同一人物とは思えません。しかもダークや善良の演技に微妙な濃淡があり、彼の豹変振りが毎回嬉しいサプライズです。

サプライズと言えば、お人よしのPaoloに付け入って、彼を翻弄させるMiaという女が、見かけも性格もしっちゃかめっちゃかで、自由奔放とかルールに縛られないとか…そんな小綺麗な言葉にはおさまらず、見るからにすれっからしで、真っ当な暮らしをしていないのは明らか。Miaを演じるIsabellaが濃い化粧をすると、松金よね子に見えて仕方がない。というのはさておき、でもPaoloは、そんな彼女となぜか関わろうとする。Miaを見た時から、俺たち孤独を抱えて生きているよな、と感じ取ったのでしょう。


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PaoloはMiaのお腹の子のパパを捜す旅に、半ば騙された形で付き合わされるが、彼にしてみれば今までこんな非日常的な冒険などたぶん経験がなく、内心ワクワクしていたに違いない。このまま会社を辞めて、彼女と一緒に逃亡してもいいかな、なんて実はかなり本気で思っていたかも。

2人の珍道中で、Paoloはおそらく誰にも話したことのない、寂しかった幼少期のことをポツリポツリと語っていく。大人になった今でも、自分を孤児院施設に置いて出て行った母親の背中が、何度もフラッシュバックする。無口で孤独な少年だった。家族愛を知らずして大人になったPaolo。さて2人はトリノからローマ・ナポリまで一気に南下したはいいが、結局お腹の子のパパは見つからなかった。それでも旅は続き、2人はカラブリアにあるMiaの故郷の町へ行くのだ。


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そこでMiaのマンマや身内が、歓迎してくれた。いやぁ、カラブリア方言や訛りが強くて、彼らの会話がかなり聞きづらかった。字幕が欲しい。家族愛を知らないPaoloにとって、温かく迎え入れてくれたこの家は、とても居心地が良く、このままここに居ても構わないくらいだ。が、大人になってもMiaがあんなだから、マンマとの長年の確執が再び表面化し、Miaはまたもや家を飛び出してしまった。結局Paoloはトリノに1人で戻るが、数ヶ月後サプライズの電話が入る。そして彼は大きな決断を下す。今までわだかまっていた気持ちを、これで吹っ切ろう。彼のこれからの人生に、小さな希望の光が灯ったようで、ラストシーンを見ながら、心の底から応援したい気持ちで一杯になりました。


by amore_spacey | 2018-04-26 03:19 | - Italian film | Comments(0)

来る日も来る日も (Tutti i santi giorni)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 ローマ。ホテルのフロントで夜勤担当の博識で物静かなGuido(Luca Marinelli )と、昼間はレンタカー店で働きながら、夜は売れない歌手として地道な活動を続ける勝気で奔放なAntonia(Thony)。対照的な性格だが相性抜群のふたりは、Guidoの夜勤明けに毎日のように愛を交わしていた。ところが子どもを望むようになったことをきっかけに、ふたりの心は次第にすれ違うようになっていく。Simone Lenziの小説La generazioneを映画化。(作品の詳細はこちら


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夜勤が終わって帰宅すると、Guidoは淹れたてのエスプレッソとビスケットを持って、愛するAntoniaが眠る枕元に座り、本日の聖人にまつわるエピソードを語りながら、彼女を優しく起こす。このシーンがふたりの間で、毎朝繰り返される。わぁ、ロマンチック。毎日いいことがありそうな予感がします。タイトルのTutti i santi giorniは、「毎日まーいにち」「うんざりする(バカ正直な)くらい毎日」のように、「毎日」の強調語として使われる。

AntoniaとGuidoは、ささやかな出来事に幸せを見出しながら平凡に暮らす、どこにでもいる若いカップル。でも彼女が子どもを望み、不妊体質の判明から不妊治療が始まると同時に、何かが少しずつ壊れていく。ありがちなストーリーだが、主人公を演じた2人が素晴らしく、人の琴線に触れる作品となっている。特にAntoniaを演じたThonyがナイス。もともとは歌手だが、今回役者に初挑戦したとは思えないような、こなれた演技に目も心も奪われた。

何度目かの不妊治療に失敗したあと、「私ったら何やってるの?子どもばかりに拘らなくたって、まわりをみれば幸せはいろんな形であるじゃないの」と一旦は頭を切り替える。でも心の底に閉じ込めた本音を偽ることができず、再び気持ちは揺れ動く。そんな心の動きが手に取るように、胸が痛くなるくらい分かるんですよ。彼女の語りかけるような歌(歌詞もいい)が、いつまでも耳に残る。彼らが人知れず抱える心の痛みや静かな哀しみ、それを受け止めきれない不甲斐なさ、相手に対する深い慈しみやひたむきな思いなど、言葉にならない感情が2人の間を行き来しながらも、傷ついた心をそっと癒してくれる優しさが、そこにはあった。


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不妊の原因は自分にあって、常にAntoniaは「相手に申し訳ない」「全部私が悪い」という罪の意識に囚われる。だから、「僕たちの子どもなんかいなくたって、幸せに変わりはないよ」と諭すGuidoの言葉も、気休めにしか聞こえない。そんな必要も理由も全くないのに、全てを1人で背負い込もうとして、さらに自分を追い込む。で、Antoniaの場合は自棄(やけ)になって元カレJimmy(Giovanni La Parola)と寝たり、いきなり姿を消してJimmyと同棲したりして、頭の中はぐちゃぐちゃ。このJimmyってヤツが、良い意味のKYで、クスッと笑わせ、緊張を解いてくれました。


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こんなAntoniaにGuidoは激怒するどころか、彼女のナイーブで繊細な感情を傷つけまいと気遣い、決して土足で踏み込まない。彼女の話をきちんと聞き、辛い思いを正面から受け止め、共感しようとする。もうね、Antoniaのことが好きでたまらないんです。だから大学教授になることもできたのに、彼女のために断念した。折り目正しく理性的に生きている彼にとって、自由に生きるAntoniaは異質だけど憧れの存在であり、傷つきやすい彼女にとって、善良で温厚で真面目なGuidoは、心の支えになる人。彼らは互いに無くてはならない、かけがえのない存在だ。終盤に明かされるふたりが出会った夜のエピソード、これがとてもロマンチックで、優しい余韻を残してくれました。


by amore_spacey | 2018-04-21 01:12 | - Italian film | Comments(0)

世情 (La Tenerezza)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (76点)

ネタばれあり!

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【あらすじ】 心臓発作を起こして入院していた77 歳の元弁護士Lorenzo(Renato Carpentieri)は、退院後ナポリにある自分のアパートに戻る。自宅のある最上階に上っていくと、Michela(Micaela Ramazzotti)が階段に座っていた。向かいに住む彼女は鍵を忘れて出てしまい、アパートに入れないという。これがきっかけでMichelaや彼女の夫Fabio(Elio Germano)や2人の子どもたちと交流を持つようになった。Lorenzoには娘Elena(Giovanna Mezzogiorno)と息子Saverio(Arturo Muselli)がいるが、妻を亡くした頃から疎遠になり、彼は1人このアパートで暮らしている。(作品の詳細はこちら


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タイトルを直訳すると、「優しさ」「ふんわりした柔らかさ」「ほろりとさせる様子」。だからナポリに暮らす人々の、心の交流を描いた心温まる作品だと思った。が、元弁護士Lorenzoと隣人家族の、ぎこちないけれど微笑ましい交流が始まった矢先に、全く予期せぬ悲劇が起きて、「えーーっ?」と同時に気持ちも急降下↓↓↓ 心の準備が全く出来ていなかったから。Elio Germanoの存在が、不穏で陰鬱なのだ。彼が演じる役といったら、いつキレる分からない危うさを孕んだ不安定なキャラが多く、皮肉なことに上手すぎるのが難点で、何とも嫌ァな気持ちになる。でもでも好きな役者ですから、頑張って最後まで観ました。


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Lorenzoは現役で働いていた頃、非常に有能な弁護士ではあったが、あまり大きな声では言えないような、相当汚れた仕事もしてきた。肩書きを利用したあくどい方法で、生命保険などを騙し取る片棒を担いだこともあった。だから今でも評判が全く宜しくない。私生活でもダメ夫、ダメ父親。血の通った人間というぬくもりが感じられません。

彼には愛情が欠落していたのかもしれない。愛情などという面映いものを嫌っていた、もしくは他人に無関心だった、または単に不器用な人だったのかもしれない。とにかく人に囲まれていながら、常に孤独な人だったに違いない。そんな彼の凍りついた心をゆっくりとかしていったのが、Michelaだ。彼自身が戸惑ってしまうほど、抑えきれない衝動に突き動かされ、彼女の父親と偽ってまで病院に通い、彼女の傍らに座って、ひたすら語りかける。天涯孤独の彼女に、Lorenzoは自分を重ねたのだろうか。自分の分身のような彼女に、生きていて欲しいと心の底から願った。たぶん家族にも愛人にも、誰にも抱いたことのない熱い感情を、生まれて初めて全身で味わう。

人間味がないと言えば、Lorenzoの愛人や息子のSaverio、それからFabioのマンマの、余りにもそっけなく人生を割り切っている姿に、ある種の潔さを感じたが、共感はできませんでした。唯一娘のElenaが救いになっている。互いの誤解が解けたあと、心のわだかまりも消えていくに違いない。そうあってほしいと願う。


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これで人を傷つけてきた過去のすべてが帳消しになるわけではないけれども、彼にとっては精一杯の懺悔であり、今まで妻や子どもたちのことを省みなかったことへの、彼なりの罪滅ぼしでもあったのだと思う。このドラマの舞台となったのが、カオスの町ナポリ。人間臭く生活感が溢れる、猥雑としたナポリの路地裏である。スプレーの落書きで埋め尽くされた壁や、薄暗くて細い路地。どこから突っ込んでくるか分からないスクーターやバイクの群れ、信号無視、洗濯物がひらめくスペイン地区、たくさんの教会…。あの町の雰囲気にピッタリの作品だ。


by amore_spacey | 2018-04-17 01:22 | - Italian film | Comments(0)

終着駅 (Stazione Termini)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

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【あらすじ】 アメリカ人の若い人妻Mary(Jennifer Jones)は、妹を訪ねてローマにやって来た。数日間町の見物をしたが、そこで英語教師のGiovanni(Montgomery Clift)と知り合い、激しい恋に落ちる。しかし夫や娘のことを思い、アメリカに帰国することに決めたMaryは、引き裂かれるような思いでテルミニ駅に来た。そこへGiovanniが駆けつけるが、慌しく哀切に満ちた別れは、刻一刻と迫ってくるのだった。(作品の詳細はこちら


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子どもの頃、たしか親と一緒に観たような気がする。テルミニ駅で繰り広げられる悲恋物語に、両親は深く感動していたけれど、陰気で辛気臭いMontgomeryに私はうんざりしてしまった。これを観るのは2度目だが、どうしても彼が苦手。だから彼のやることなすこと全てが、癇に障る。Mary から紹介された甥っ子Paulを、彼はにこりともせず無愛想な顔で見る。甥っ子のほうがよほど大人で紳士だ。入線してくる電車の前を横切る暴挙や、女性の頬を引っ叩くのは、全くありえない行為。短期で粘着気質な男だ。重箱の隅っこ的だけど、動き始めた列車から飛び降りて転んだ彼を心配して、助け起こしてくれた男性に、お礼すら言わないなんて、つくづく残念すぎる。こんな男に恋するなんて、異国の旅という非日常の魔力は捉えどころがない。


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と、初っ端から言いたい放題ですが、若妻を演じたJenniferはとても魅力的で、あちこち揺れ動く女心を切なく見せてくれました。でもこの2人の恋に落ちる経緯が描かれていないので、ほとんど感情移入ができず(不倫相手がMontgomeryだから尚更)、「うーん、私だったら頬を殴られた時点で、ゲーム終了ですが…」と気持ちが冷める。アメリカに帰国するのに、手ぶらでテルミニ駅に来ちゃっているMaryも、何だかよく分かりません。


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感情移入できない2人の悲恋物語より、テルミニ駅を行き交う人々やそこで働く人々のほうが、何倍も楽しく活気に溢れて面白かった。いつも公衆電話の前にいる、オレンジを持った胡散臭いおやじ(Paolo Stoppa)、兵士たち、恰幅のいい聖職者たち、家族連れ、気分が悪くなった妊婦やその夫、切符売り場や電報局の職員、荷物のカートを押す職員、駅の公安委員や警官や警察署長。何かあるとわらわら集まってくる人々。バールや食堂のカメリエレ、構内アナウンス、ガヤガヤした雰囲気。警察に向かう2人を、野次馬根性丸出しでジロジロ見る人々。当時の大きなお札や、今と少しも変わらないテルミニ駅の外観。旅は日常生活を忘れさせてくれる。旅の出発・終着となる駅や空港は、人の心をそぞろにさせる。また旅に出たくなってきました。


by amore_spacey | 2018-04-14 02:16 | - Italian film | Comments(0)