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華やかな魔女たち (Le Streghe)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 5人の監督による5編のオムニバス。いずれのエピソードも、Silvana Manganoが男を翻弄する役で主演している。その中で一番面白かったのが第5話の『またもやいつもの通りの夜(Una sera come le altre)』(監督:Vittorio De Sica) 夫のCarlo(Clint Eastwood)がいつも疲れて会社から戻り、満足な会話もしないまま、眠ってしまうのに腹を立てた妻のGiovanna(Silvana Mangano)が、旦那をブチ殺す妄想にとらわれる。(作品の詳細はこちら


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結婚7年目を迎える夫婦。Giovannaはおっとりした上品な妻ですが、夫がちっとも構ってくれない。そんな夫に表向きは穏やかに接しているものの、心の中の妄想の世界では、感情むき出しで夫を罵ったりビンタを食らわしたり、彼の目の前で不倫して復讐したりして、溜飲を下げている。でもそれっぽちで気持ちは収まらないし、心も満たされない。だから妄想はどんどんエスカレートして、えーっ?そこまでやっちゃう?レベルになっていく。


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何の不満もなさそうな素敵な女性でも、はらわた煮えくり返らせながら妄想の世界でストレスを発散してるなんて、親近感が沸きます。夫が話を聞いてくれないことなんて、部外者から見れば、「何でそんなことで怒ってるの?」なんですが、実際腹が立つもんなんです。そして仮に夫が話を聞いてくれたとしても、その後に変なコメントが返って来たりすると、さらに腹が立つんです。女って生き物は、黙って話を聞いてくれたり、同調してくれる聞き手が欲しいの。あなたの余計な忠告・忠言は、要りまっせーーん。

というような、他人にはどーでもいいような些細なことが、日常生活には数え切れないほどある。大抵のことは忙しさに紛れて忘れてしまうが、その日の気分や体調によっては、どうしても流せないことがある。それは男性も同じことだと思います、ええ。こんな暮らしを毎日続けているわけですが、第5話は「まぁ、いろいろあるけど、人生捨てたもんじゃないよ」と思わせてくれる作品でした。


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因みにLuchino Visconti監督の第1話『疲れきった魔女(La strega bruciata viva)』に、Helmut Bergerが(当時はHelmut Steinbergherの本名で)、山のホテルのウェイターという端役で出ている。どことなくTaylor Kitschに似ているかも。


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by amore_spacey | 2018-10-31 00:38 | - Italian film | Comments(0)

とまどい (Nelly et Monsieur Arnaud)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 失業中の夫Jerôme(Charles Berling)を抱えて働きづめの毎日を送っていた25歳のNelly(Emmanuelle Béart)は、ある日カフェで初老の紳士Arnaud(Michel Serrault)と知り合った。Nellyが経済的な問題を抱えている事を察したArnaudは、会ったばかりの彼女に対して即座に資金提供を申し出ると同時に、彼が執筆中の自伝のタイピストとして働くことを提案する。2人は仕事を進めていく内に、年齢差にもかかわらず互いに惹かれ合うものを感じるようになった。しかし若くて魅力的なArnaudの担当編集者Vincent(Jean-Hugues Anglade)が出現したことにより、2人の関係は微妙に変化していく。(作品の詳細はこちら


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大きな瞳の清楚で可愛らしい容貌に、成熟した女性の色気の加わったEmmanuelle Béartが、とても魅力的でした。表情だけで勝負が出来る。所帯染みて疲れ切った妻を演じても、どこか小粋な雰囲気が漂い、さすがフランス女優だなと思う。だからなおさら今のEmmanuelleがとても残念でならない。お直しする必要ってあった?


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さてこの作品は、初老の男性と25歳の既婚女性の、友情以上恋愛未満の物語とでも言いましょうか。しっとりと落ち着いた雰囲気の中で、心にさざなみを誘う話が展開し、秋の夜長に相応しい作品でした。

2人は自叙伝を口述する人と清書する人という枠から決してはみ出ず、男女の一線も越えず、適度な距離を保ちながら淡々と仕事を進めていく。色恋沙汰の派手な修羅場は全く出てこない。そこに触れないからこそ余計に、彼らの胸の奥に疼く淡い思いが透けて見えてくる。Arnaudに比べVincentのアプローチは、積極的で直情的。若さってそういうことね。彼のねっとりした艶かしい視線が、納豆の糸のように絡みつく。Nellyの夫のダメっぷりや間抜けっぷりが、滑稽ですらある。


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年齢もタイプも全く違う3人の男に囲まれたNellyは、ArnaudやVincentと愛し愛された関係を築いたものの、結局どちらからも離れて行くが、そこに未練はなく、すべてがクールに処理されていく。Arnaudの資金提供の申し出の場面でも、「えーっ、初対面のあなたが、どうして私に?」 下心など全くないと言われても、 「いやぁ、それはちょっと違うんじゃ?」「超ラッキー!だけど、これって裏があるわよね、絶対に」とかなんとか、押し問答の1つや2つがあってもおかしくないし、普通はそういう展開になるはずだが、あの時Nellyは案外すんなりとOKした。夫との協議離婚もあっさり承諾、Vincentとも後腐れなく別れている。それは彼女がブレていないから?女の意地がそうさせたの?

それとも恋愛で燃え尽きたあとの男女というものに、心から絶望しているのか、「恋とか愛とか結婚とか人生って、結局こんなものよね」と諦観しているのか。はたまた自分が傷つきたくなくて、クールな女を装っているだけなのか。Arnaudが妻と旅立ったあと、彼のアパートに1人残されたNellyが、パソコンに向かって自叙伝の最終章を清書する。このラストシーンが焼きついている。


 
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by amore_spacey | 2018-10-28 00:26 | - Other film | Comments(4)

地下室のメロディー (Mélodie en sous-sol)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 5年の刑期を終え出所した老ギャングのCharles(Jean Gabin)。彼はまだ親のスネをかじっているムショ仲間の青年Francis(Alain Delon)とFrancisの義兄で自動車修理工のLouis(Maurice Biraud)と組んで、再びカジノの現金を強奪する計画を立てる。標的は南仏カンヌのリゾート・ホテルのカジノにある10億フラン。周到に立てた計画通り事は運び、大金強奪は成功したかに見えたが…。(作品の詳細はこちら


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ノワールの大御所Jean Gabin(コアラに似てる)と美貌に恵まれた若いAlain Delonの共演。本当の父親と息子のような愛情と尊敬に満ちた2人の間には、女の入る余地など全くない男同士の連帯感に満ち溢れて、もうね、羨ましいのなんのって。Alainの右肩の隅っこでいいから乗せてもらいたい。いえいえ、邪魔にならないように耳の中で体育座りさせて頂くだけで本望です。この作品がこんなブラック・コメディだったなんて、全く記憶になかったから、初めて観るような新鮮な感覚でした。ただBGMが大袈裟で煩すぎた。


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真面目なサラリーマンをやらせればピカイチの中井貴一、定職に就かずブラブラしている困った30過ぎをやらせると下卑た魅力が光るAlain(この2人が共演したら面白いかも)。中井貴一のように地道に真面目に働けば、そこそこの暮らしができるのに、凝りもせずコアラおじさんとイケメン青年の2人は、また一発当ててやろうと良からぬ事を企む。頭がお花畑の大バカ野郎たちなのか、現実味のない夢見るお坊ちゃまたちなのか。とにかくコツコツとか地道にとかいう言葉とは縁遠い、親子ほども歳の違う2人がタッグを組んで、とんでもないことをやってくれます。


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後半に入ると、「この計画、ホントに大丈夫なのか?」と何度も不安になったり、緊迫感に満ちた場面が出てくる。でもコアラおじさんが何とかしてくれる、彼がいるから大丈夫という、根拠のない確信があったので、あのラストシーンには、心からぶったまげました。苦肉の策でプールに沈めた鞄の蓋が水圧で開いてしまい、10億フラン分のお札が1枚また1枚と浮かび上がって、広いプールの表面に拡がっていく。あちゃーっ!華麗に散ってゆく10億フラン。ヴィジュアル的にとても美しく、印象的なシーンだ。ここまで派手にやってくれると、大失策にもかかわらず、天晴(あっぱ)れ!と拍手したくなる。

プールサイドで一部始終を見ていたコアラおじさんは、憮然として臍(ほぞ)を噛むばかり。ああぁ、ったくFrancisは、何やってんだ。これがビートたけしの任侠映画だったら、その場でAlainの頭をぶち抜いただろう。コアラおじさんだって、はらわた煮えくり返っているんだけど、ほとぼりが冷めたらまた2人つるんで何かやらかすに違いない。Jean Gabinの老練の演技と存在感と、非のうちどころのない美貌に恵まれたAlain DelonのJeanへの敬意の念。親の愛に飢えていたAlainにとって、Jeanは育ての父親のような存在だったのではないかしら。


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by amore_spacey | 2018-10-26 00:28 | Alain Delon | Comments(4)

戦場のアリア (Joyeux Noël)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

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【あらすじ】 第1次世界大戦下、フランス北部の最前線デルソーで、敵対するフランス・スコットランド連合軍とドイツ軍兵士たちは、クリスマスを迎えることになった。そんな中、ソプラノ歌手Anna Sörensen(Diane Kruger)と彼女の夫でドイツ軍兵士のテノール歌手Nikolaus Sprink(Benno Fürmann)は、塹壕で聖歌を披露するのだが…。実話に基づき映画化。(作品の詳細はこちら


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ひっそりと続けているDaniel Brühlの1人祭り。日本語タイトルは分かりやすいが、オリジナル・タイトルからはまさかこんなストーリーが展開するなどとは、思ってもみなかった。第1次世界大戦下の塹壕戦のさなかに起きた、「クリスマス休戦」の事実をもとに作られた作品で、まさしくクリスマスの奇跡である。派手なアクションなどはない代わりに、戦地に生きる各軍の指揮官たちや兵士たち、そして彼らの思いを、丁寧にすくいとって描き出している。

残念だったのは、最後にAnnaとNikolausのとった行動で、あれは夫が戦場に残り、妻は一人で帰る展開のほうが良かったな。まぁ、本を正せばこのクリスマス・コンサートも、Annaが前線にいる夫に会いたい一心から思いついた企画で、戦場の兵士たちを慰問しようという純粋な気持ち(もあったとは思うが)からではなかったし、女一人が戦地に赴くという無謀な企画が実現したのも、皇太子がAnnaの熱烈なファンだったからで、彼女にとっては幸運の連鎖が生み出した結果なのだ。やり方がズルいよね、あの皇太子なら絶対にOK出してくれるって確信していたに決まってるから。


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さてドイツ軍に届いた何本ものクリスマス・ツリーに、スコットランド軍が奏でるバグパイプの美しい音色、そしてドイツの歌手が歌うアリア。Nikolausの美しいテノールにつられて、つい口ずさんで歌っていた両軍の兵士たちは、不思議なもので次々に塹壕の外に出ていった。音楽は人の心に潤いをもたらし、ささくれた気持ちを癒してくれると信じて疑わない私にとって、このシーンは感動的でとても嬉しかった。猫のエピソードにも目頭が熱くなりました。各軍の現地指揮官たちは互いに酒を酌み交わし、兵士たちもフランスのシャンパンで敵味方なく乾杯して、イヴの夜を迎える。

ところがこのクリスマス・イヴの奇跡は美談として終わったのかと思いきや、感動的な夜のあとには、過酷な現実が待ち受けていた。戦地から遠く離れた安全圏内で無謀な指示を出す国や軍の上層部、軍隊教育を受け現地に配置された指揮官たち(中間管理職の苦悩をDaniel Brühlが好演していた)、そして兵士として戦場に駆り出され敵兵を殺す、肉屋のおやじ・菓子屋や八百屋や呉服屋の主人・農夫・木こり・漁師…などの一般市民。戦争がどれほど愚かで悲惨な行為なのか、戦場に出なくては分からない。とか言ってるうちに、今年もあと2ヶ月余りでクリスマスです(驚愕)


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by amore_spacey | 2018-10-23 00:52 | - Other film | Comments(0)

リスボン特急 (Un flic)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (72点)

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【あらすじ】 表向きはパリのナイトクラブの経営者だが、実はギャングという裏の顔を持つSimon(Richard Crenna)は、仲間の3人と銀行を襲撃し大金を強奪した。一方、パリ警視庁のEdouard Coleman刑事(Alain Delon)は、ある組織が税関とグルになって、麻薬をリスボン行きの特急で運び出すという情報をキャッチする。Simonら3人はヘリコプター作戦で、その麻薬を横取りした。捜査するうちに主犯がSimonであるとにらんだ。仲間を次々と検挙した刑事は、ついにSimonと対決する。だが2人はかつて、堅い友情で結ばれた戦友同士だった。(作品の詳細はこちら


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Alanが寡黙で渋い。彼だけでなく、誰も彼もが殆ど喋らず、目配せのみ。オープニングから15分近くセリフがないので、音声故障かと一瞬不安になった。海岸の道路、灰色の空の下に荒れ狂う海、まるで爆撃のような波の音。銀行を襲う一団。彼ら4人が乗る車に打ちつける雨。事件が起きる前の情景がとても印象的で、映画にぐいぐい引き込まれる。ブルーを基調としたドライでクールな映像が、ノワールの世界を引き立てる。


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犯罪者をやらせると魅力炸裂のAlanが、今回は警察署長を演じている。悩殺レベルの格好良さだ。かつての戦友Simonも、Alanに負けず劣らず渋くてダンディなのだ。この2人の間に登場するのが、美しいCatherineである。Simonの妻、そしてSimonと旧友の警察署長と不倫関係にある。綱渡り的な危ういポジションなのに、Cahterineの美しさだけが前面に出てしまい、何となく場違いな感じすらする。看護師に成りすました時の彼女は、まさにとってつけたようで笑えました。結局彼女が全てを破滅させてしまうのだが、重要なキーパーソンにもかかわらず、踏み込みがもう1つ足りないというか、この時期の彼女は、女優としてはまだまだ…という気がしないでもない。


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Simonら4人の強盗グループが列車とヘリコプターに分乗し、ヘリコプターからワイヤーロープを使って、疾走中のリスボン行きの特急列車に忍びこみ、麻薬を盗み出すシーンは、1つ1つが驚くほど詳細に描かれ、臨場感溢れていた。が、ミニチュア模型の列車とヘリコプターが、撮影に使われているのは一目瞭然で、これは興醒めでした。

しかし全体に流れる暗いムードはまさに仏ノワールの世界で、理屈を捏ね繰り回しながらではなく、雰囲気や感覚で観る映画でしょう。結末もノワールらしい物悲しさが漂い、割り切れない苦い思いが残る。


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by amore_spacey | 2018-10-18 00:52 | Alain Delon | Comments(0)

イケメン帝国!イタリア

先日立ち寄った独逸イケメン帝国! に触発されて、イタリアヴァージョンをやってみました。有望な30代のイタリア人役者7名です。北欧・南西アジア・中南米ヴァージョンも面白そうだなぁ。

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Alessandro Borghi…1986生まれの32歳。イタリア映画で活躍、昨年はヴェネチア国際映画祭でパドリーノを務めた。シャープでクールで気さくなイケメン。私の一押し。


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Luca Marinelli…1984生まれの34歳。『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』のセンセーショナルな役で、人気を不動のものにした。目じからが半端ない。彼も私の一押し。


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Michele Riondino…1979年生まれの39歳。イタリア映画に出演。眉毛と目がチャームポイント。


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Alessio Vassallo…1983年生まれの35歳。イタリア映画やTVドラマで活躍。涼しげな目元がチャームポイント。


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Davide Iacopini…1984生まれの34歳。舞台デビューした後、TVドラマで活躍。童顔が母性本能を刺激する。


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Domenico Diele…1985年生まれの33歳。舞台デビューした後、イタリア映画やTVドラマで活躍。謎めいた視線に悩殺。


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Matteo Martari…1984生まれの34歳。イタリア映画やTVドラマで活躍。一度見たら忘れない顔立ち。


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by amore_spacey | 2018-10-15 00:02 | My talk | Comments(2)

パリの灯は遠く (Mr. Klein)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 1942年、ナチス占領下のパリ。美術商のRobert Klein(Alain Delon)は、国外脱出するユダヤ人たちから美術品を安く買い叩いて儲けた金で、戦時中にも関わらず優雅な暮らしを送っていた。しかしある日、自分と同姓同名の男が存在する事を知り、れっきとしたフランス人であるはずの彼の生活が、思わぬ方向に進み始める。もう一人のMr. Kleinは、ユダヤ人だったのだ。(作品の詳細はこちら


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日本語のタイトルから、秋のパリを舞台にした悲恋物話を想像していた。が、冒頭から衝撃的なシーンが待ち受けていまして、ショック。全裸になった女性が、診察室で無造作に唇をめくられ、鼻に定規を突っ込まれて角度を図られている。身体の特徴からユダヤ人判定をする屈辱的な「身体検査」で、これぞ恐怖のファシズムだ。後半には大勢のユダヤ人たちやKleinが収容された、アウシュビッツの中継施設として改築が進められている競輪場の、非人間的・非日常的な光景。そして群集の波に呑み込まれるようにアウシュビッツ行きの収容列車へと押しやられ、気がついたらKleinは乗ってはいけない列車に乗っていたラストシーン。暗闇にパッと浮かび上がる彼の顔。ザワザワした嫌な感情が、ラストシーンで最高潮に達する。何とも後味の悪い作品だ。


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誤って配達された「ユダヤ通信」を、その場で処分すればよかったのに、Kleinはこの通信に拘った。そしてもう1人のMr.Kleinを捜し始めてしまう。初めは軽い好奇心と、身の潔白を証明するためだったに違いない。彼は確かに自分の近くにいるのに、なぜかいつもすれ違いに終わる。諦めてそこでよせばよかったのに、Mr.Klein捜しが頭にこびりついて離れない。抗いがたい力に引き摺られて、いつしか狂気じみた執着に変わって行く。追ってはいけないものを追いかけると、痛い目に遭うって分かっているのに。


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重苦しい空気に包まれ、ざわざわした気持ちを抱えながらも、この作品には謎解き感覚で楽しめる部分がある。自分と同姓同名の男を捜すという探偵ミステリー仕立てなので、この男は何者でどこで何をやっているのか?Kleinでなくても気になる。しかし肝心のMr. Kleinは、とうとう最後まで姿を見せない。それが却って強烈な存在感を放つのだ。ラストに向かってKleinがMr.Kleinに徐々に重なり合っていく。最後に2人がピタリと一致した時は、既に時遅し。スリリングで見事なラストシーンだった。だから、やめとけって言ったんだよ。


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by amore_spacey | 2018-10-14 00:06 | Alain Delon | Comments(2)

屋根 (Il Tetto)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 第二次世界大戦後のローマ。戦後の混乱期は脱したものの、庶民にとって貧しい暮らしが続いていた。そんな中Luisa(Gabriella Pallotta)とNatale(Giorgio Listuzzi)の若いカップルは、Luisaの父親の反対を押し切って結婚し、Nataleの義兄Cesare(Gastone Renzelli)の家に同居させてもらう。しかし小さな家の大所帯で、仕切りも何もない狭い寝室に、ベッドを押し込んだ環境での新婚生活は、到底無理だった。
 やがて兄と喧嘩をして家を出た2人は、公共の土地に家を建ててしまえば、居住権が成立してそこに住み続けることが出来る、ということを知り、見習い左官のNataleは職場の仲間たちの協力を得て、一夜で何とか家を建てようと奮闘する。1956年カンヌ映画祭で特別賞を受賞。(作品の詳細はこちら


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この映画が制作されたのは1956年。4年後にローマ・オリンピック開催を控えており、中心街には高層団地が次々に建てられ、イタリアが一丸となって文化的な暮らしに向かっていた。が、大半の庶民は戦後の復興やオリンピック景気の恩恵から取り残されたままで、貧しい若い新婚夫婦が暮らせるような、小さなアパートすら見つけることが出来ないのが現状でした。


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しかし、ここはイタリア。『昨日、今日、明日』の第1話のように、法律を逆手に取ったり、法律の網目をくぐり抜けて、合法にしてしまうのはお手のものです。当時はそういったことに寛容だった時代背景があり、困っている人々に救いの手を差し伸べる、大半は損得を抜きにした、情に厚い庶民たちが大勢いた。同じ1956年作の『鉄道員』にもみられるように、LuisaやNataleのまわりには下町人情がまだ健在だったんですね。


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そして「一晩で家を建て屋根を葺けば、居住権が成立する」という法律を逆手にとり、Nataleたちは本当に一晩で家を建ててしまうから凄い。屋根の一部はまだ覆われていなかったから、完成とは言えない。が、これこそDe Sica監督が得意の人情劇ってもんで、見回りに来た警官たちが見逃してくれ、晴れて二人は一軒家を手に入れることが出来たのです。一軒家といってもおよそ10畳一間で、レンガを積んだだけの掘っ立て小屋に毛が生えたような家だ。しかし出来上がったばかりのこの小さな家を、二人が満足そうに眺めるラストシーンが、とても微笑ましく心温まる。慎ましく暮らす庶民の、ささやかな幸せの形だ。

Luisa役のGabriellaは児童用品店の店員、Nataleを演じたGiorgioはセリエCのサッカー選手(イケメン!)と、二人とも役者としてはズブの素人だった。が、もともと役者の素質があったらしく、De Sica監督の指導もよかったのだろう。心に残る素晴らしい演技を見せてくれた。第一印象が悪かった義兄Cesareも、若い二人のために最後は一肌脱いでくれて、なんか、いい奴だったな。


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by amore_spacey | 2018-10-10 00:32 | - Italian film | Comments(0)

太陽がいっぱい (Plein Soleil)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (92点)

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【あらすじ】 貧しい家庭に育ったアメリカ人青年Tom Ripley(Alain Delon)は、息子のPhilippe Greenleaf(Maurice Ronet)を連れ戻してきてほしいとPhilippeの父親から依頼され、イタリアへ向かった。しかし美しい恋人Marge(Marie Laforêt)のいる富豪の息子Philippeは親の金で遊び回り、アメリカに戻る気などさらさらない。その一方でTomは、邪険な扱いをし無礼な態度をとり続けるPhilippeに怒りを募らせ、やがてそれは殺意に変わる。Patricia Highsmithの小説The Talented Mister Ripleyを映画化。(作品の詳細はこちら


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このブログを始めて間もない頃にレビューを書いたのですが、読み返してみるとあまりにも雑だったので、書き直しました。これはAlainと私の出会いの作品で、彼のファンだった母と一緒に、小学生の私が初めて彼を見て、一目惚れしてしまった。「何と言うハンサム(当時はイケメンという言葉はなかった)な役者なんだ!」と。ドラマチックなオープニングロール、舞台となったイタリアの町や青い地中海、Margeの名前のついた白い巨大なヨット、Nino Rotaの哀愁を帯びたメロディ、何もかもが田舎の小学生には目新しくて素晴らしかった。イタリアの港町やメルカート(エイの姿は微妙だったけど)にも魅了されました。

カメオでちゃっかり出演している監督は、当初あまり演技実績の無いAlainを起用することに消極的だったらしい。また音楽担当のNinoは、作曲に対する監督の態度に立腹したというエピソードも残っているが、『太陽がいっぱい』は監督の代表作の1つになり、Alainは一躍世界的スターとして注目され、Ninoの音楽も大ヒットした。蓋を開けてみるまでは、分からないものです。


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先日の『危険がいっぱい』同様、コミカルなオープニング・ロールと音楽で始まるこの作品は、大どんでん返しのラストシーンで終わる。富も愛も太陽の輝きさえも手中に収めたTomが、Philippeのヨットの売買契約のために出向いたMargeを待ちながら、デッキチェアに身を沈めて、地中海の太陽の光を全身に浴びている。ああ、至福の瞬間。一方、陸上に引き上げられたヨット。それに続いて船尾のスクリューに絡みついた、1本のロープに引っ張られるようにして海中から現れる、黒くなったボロ帆布の塊を目にしたMarge…。このシーンは何回観ても背筋が凍りつく。


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別の意味でゾクゾクするシーンと言えば(Philippeの筆跡を真似て、サインの練習をするシーンなど沢山ある)、TomがPhilippeの服を着込みPhilippeの髪型にして、鏡に向かって自らの姿に口づけをしながら、Philippeの口調で話すシーン。そんなイタいTomよりも、一部始終を無言で後ろから見ているPhilippeに、淫猥なものを感じる。二人が全裸で抱き合うより想像をかき立てられて、遥かにエロティックだ。

もう1つ好きなゾクゾク・シーンは、Tomが偽の遺言状を書いている場面。Philippeになりすまして、さあ完全犯罪を実行!という、全身緊張のまさにその時、Philippeを訪ねて来たヤツがいる。そいつはPhilippeの友人Freddy(Billy Kearns)で、初対面のときから嫌な野郎だと思っていたから、思わずTomの右目がピクッと痙攣する。美しいAlainの顔はぞっとするほど強張り、そしてまたピクピクピクッと痙攣が走る。「こいつも消したる!」 Freddyを殺(や)ったあと、台所の隅っこでローストチキンを黙々と食べるTom。若き日のAlainの野卑でギラギラした美しさが炸裂しています。


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で、Margeなんですが、彼女って仏頂面したツンデレ(ツンツン?)女で、どこに魅力があるのか分かりません。Philippe好みの、お金持ちのお嬢さまだからかしら?マリンルックなど彼女が着ていた衣装は、どれもよく似合って素敵でした。当時Alainが付き合っていたRomy Schneiderが、真っ赤なドレスに黒い手袋をはめ、Freddyの友だちの1人として、ちらっと出て来る。


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作品の後半に出てくるRiccordi警部を演じたErno Crisa が、めっちゃ渋くてかっこいい。仲村トオルにちょっぴり似た、切れ長の涼しげな目に悩殺されました。ロケ地はイスキア島・プロチダ島・ナポリ・ローマ。BGMをバックにAlainが彷徨う魚市場が、ナポリで撮影されたと知り、昨年ナポリを旅して、猥雑ながら魅力満載の町を堪能しました。次はイスキア島とプロチダ島に行こう。


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by amore_spacey | 2018-10-06 02:08 | Alain Delon | Comments(8)

危険がいっぱい (Les félins)

ネタバレあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 いかさまカード師のMarc(Alain Delon)は、ギャングのボスの女房に手を出したばかりに、手下から命を狙われる身となるが、からくも逃げのびて救世軍施設に身を寄せた。慈善事業でそこを訪れたアメリカ未亡人Barbara(Lola Albright)といとこのMelinda(Jane Fonda)の目にとまり、Marcはお抱えの運転手として雇われ、Barbaraの屋敷に住むことになる。
  ところがこの屋敷には、秘密の部屋にBarbaraの愛人Vincent(André Oumansky)がいた。彼女がMarcを雇ったのも、実は殺人犯のVincentと逃亡するためのパスポートが目的だったのだ。(作品の詳細はこちら


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Alain とRené Clément 監督のコンビによる、小気味良いテンポで展開する、サスペンス色たっぷりの娯楽作品。登場人物のみんながどこか胡散臭く、しかし誰が主導権を握っているのか?どういう結末になるのか?予想がつかず、そして衝撃のラストを迎え、ええーっ、そういうオチなの?ビックリ仰天すると同時に、背中がすーっと寒くなるのです。コミカルに始まった作品がこんなにシュールなラストを迎えるなんて。


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小娘だと見くびっていたMelindaが、実はとんでもない伏兵だったのだ。可憐で純粋な彼女の(そんなフリをしていただけか)、Marcへの一途な思い、あれは命を懸けた女の執念ですね。当時27歳のJane Fondaが、本当に可憐で素敵でした。対照的に40歳のLola Albrightは、成熟した女性の魅力を惜しみなく見せてくれた。さて29歳のAlainは、どっちを選ぶ?いや、元々はまとまった金だけ貰って、トンズラするつもりだったベテランの詐欺師が、逆に小娘に嵌められてしまったという、ったく情けねェだけでは済まない、コワいお話でした。



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上空からHotel de Parisの入り口をとらえた、冒頭のシーンが印象的だ。若くて綺麗な女性2人(両手に花)を乗せたオープンカーで、Alainがホテルに颯爽と乗りつけ、いかにもチャラ男といった風情で、テニスラケットを縦に回しながら(Alainは持っているものを回しながら歩く癖があるのか?ワインボトルとか、よく回している)ホテルのロビーを歩いて行く。世界は自分中心に回っている、と信じて疑わない男の顔だ。

音楽や小物や衣装などもスタイリッシュで、使い方がうまい。特に猫や仔猫。それからBarbaraの屋敷のリムジン、この屋根が透明で、とってもお洒落。でも夏の直射日光が、意外に辛いのです(体験者は語る)
 

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by amore_spacey | 2018-10-02 00:22 | Alain Delon | Comments(0)