甘い人生 (Dalkomhan insaeng) 

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 ホテルの総マネージャーを務めるSun-woo(Byung-hun Lee)は頭脳明晰な男で、裏社会の人間に一目置かれる存在でもある。しかしボスのKang氏(Yeong-cheol Kim)から彼の愛人Hee-soo(Min-a Shin)の監視を頼まれたことから、Sun-wooは破滅への道を歩き出すことになる。(作品の詳細はこちら


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10年ほど前に観たことをすっかり忘れて、「わぁ、若い頃のビョン吉のノワール映画だー」と有頂天に。銃撃戦が始まったラストシーンになって、ようやく前に観ていたことに気づいた、間抜けな私。いや、いいんですよ、若くてシャープでキレッキレのビョン吉は、何回みても飽きない。そんな彼がチョコレート・ケーキを食べる冒頭のシーンで、私の心は既に鷲づかみにされてしまいました。


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クールでドライなフランス・ノワールに比べると、韓国ノワールは雨と泥水と縛りと弾丸炸裂と血しぶきにまみれている。破壊力も半端なく、ラストの銃撃戦は、花火大会のフィナーレのように、派手にドンパチ撃ちまくって、映画セットが崩壊していましたからね。あれは絶対に撮り直しムリだから、何十台ものカメラで撮影したのでしょう。

Alain Delonは裏社会に生きるにはハンサムすぎて、どうしたって目立ってしまう。もっさりしたおっさんのほうが現実味はあるが、それではヴィジュアル的に寂しすぎます。もちろんビョン吉もイケメンだけど、アジア系は顔立ちが地味で大人しいから、変装すれば一般市民に紛れることができる。どちらにも共通するのは、恨みつらみや復讐の鬼と化した彼らから、片時も目が離せないことですね。

クールなビョン吉が、裏社会の壮絶な制裁を受けて、使い古したボロ雑巾に(泣)。撮影では手加減するんでしょうが、土砂降りの中のロケは監督も役者もカメラマンも大変だろうな。そして裏社会の現実は、もっとシビアで残酷なのかも。ボスの命令に100%従わないと、あーいうことになっちゃうんだ、コワッ。


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ちょっと不思議に思ったのは、頭脳明晰な一人の男が、初めて知る愛によって転落していくという筋書きなのに、あの描写ではSun-wooがHee-sooを愛していたとは到底思えず(気になっていたとは思うが)、最後まで「?」を引きずったまま観ていた。ま、細かいことはスルーでいい。銃撃戦で野獣化したビョン吉に萌えました。オフの時にはラストシーンのように、ジムで身体を鍛えているのね。ちらっと映ったコンビニは、ファミリーマートですか?


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# by amore_spacey | 2018-11-04 00:51 | - Asian film | Comments(0)

戦場のピアニスト (The Pianist)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (86点)

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【あらすじ】 1940年、ドイツ占領下のポーランド。ユダヤ人のラジオ局ピアニストWladyslaw Szpilman(Adrien Brody)は家族と共にゲットーへ移住した。やがてユダヤ人の収容所移送が始まったが、家族の中で彼だけが収容所行きを免れる。空爆を受けたワルシャワの廃墟の中、食うや食わずの潜伏生活を送るある日、彼はドイツ人将校Wilm Hosenfeld(Thomas Kretschmann)に見つかってしまった。Wladyslaw Szpilmanの自叙伝『ある都市の死』(Śmierć miasta)を映画化。2002年のカンヌ映画祭でPalme d'Or、2003年のアカデミー賞の監督賞・主演男優賞・脚本賞を受賞。(作品の詳細はこちら


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先日の夜、ふっとまた『真夜中のピアニスト』を観ていたところ、ピアノの音色から本作品のことを思い出し、再鑑賞しました。Szpilmanを演じたAdrien Brodyの父Elliotはポーランド系ユダヤ人、母Sylviaはハンガリー&チェコ系ユダヤ人で、父はホロコーストで家族を失い、母は1956年のハンガリー動乱の時にアメリカに亡命していたことを、鑑賞後に調べて知りました。

Adrienにとってホロコーストは、自分の人生の一部のようなもの。「撮影中は本当に疲労困憊(こんぱい)した体験だった。その後の1年間は極度の鬱状態にあった」とコメントしているが、それは想像を絶する辛さがあったと思う。運が良かったと言うしかない、とても運に恵まれていた。しかしそれが却って、恨めしい。あれほど生きることに必死だったのに、自分だけ生き残った罪悪感や申し訳なさに苛(さいな)まれ、ホロコーストの悪夢にうなされ続ける。可哀相にあの頃のAdreinは、21世紀に生きながらホロコースト真っ只中の日々を送っていたのだ。


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事実を受け入れることしかできない一市民を、Adrienは抑えた演技で見事に体現したと思う。一家離散のあと必死に生きのびようとする姿や、代役なしで臨んだピアノ演奏シーンは圧巻だったし、ドイツ人将校たちの吐き気のするような暴虐ぶりや、廃墟となったワルシャワの町などは、映画のセットとは思えないほど臨場感に溢れていた。

また1個のキャラメルを売り歩く子どもを見た父が、「こんな状況の中で金を稼いで何になる」と言いながらも、キャラメルを買い求め、6人の家族のために等分するシーンや、ドイツ将校と出会う前に見つけたピクルスの缶詰を、片時も手放さないSzpilman。目前に迫っている悲劇をおぼろげながら知りつつも、何とかして生き延びたい彼らの生への貪欲さが、これらのシーンに凝縮されて、居たたまれなくなった。生きる、これは人間の本能だ。


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冒頭のノクターン第20番、終盤のバラード1番、そしてエンドロールを飾る華麗なる大ポロネーズ。ショパンは、ポーランドに生きるすべての人々に愛される音楽家なのだなと、あらためて思った。ドイツ将校の前での演奏は、今まで黙って背負い込んでいたものを全て表に出すかのような、音に委ねた彼の独白だったに違いない。終戦後、再びラジオ局でノクターン第20番を弾く時の、彼の表情が忘れられない。解放の喜びも束の間、無念の思いに感極まる。それをそっと押し殺して弾き続ける彼に、胸が押しつぶされそうになりました。


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# by amore_spacey | 2018-11-02 01:21 | - Other film | Comments(2)

キッチン・ストーリー (Salmer fra kjøkkenet - Kitchen stories)

ネタバレあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 1950年代初頭、スウェーデンの家庭調査協会は台所での独身男性の動線調査のため、調査員たちをノルウェーの片田舎に送り込む。一人暮らしの初老の男Isak Bjørvik(Joachim Calmeyer)のもとにも、6週間を期限として調査員のFolke Nilsson(Tomas Norström)がやって来た。しかし応募したことを悔やんでいたIsakは、頑としてドアを開けようとしない。(作品の詳細はこちら


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日本語タイトルから頭に浮かんだのは、アメリカやフランスやイタリアのグルメ系の話。ところが、これはノルウェーの作品である。この時点ですでに、なんだか面白そうな予感がした。そしていきなりオープニングで台所行動学なるものが展開し、仰々しい器具をつけた人が実験を行っている様子に、好奇心がそそられる。50年も前に独身男の台所の行動に着目していたとは!北欧、恐るべし。

背の高い木の椅子を積んだ何十台ものキャンピングカーが、広野の1本道を大名行列よろしく村に向かう光景は圧巻であり、国境できっちり車線変更(1967年9月2日までスウェーデンは左側通行、ノルウェイは右側通行)するのも、道路交通法で当然のことなんだけど、律儀さが滲み出ていてしみじみ。50年代の北欧の車や家屋なども、歴史を感じさせて興味深い。


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北欧作品の何が面白いって、無表情で頑固で偏屈で口数少ない男たちの存在だ。何を考えているのか分からない。大袈裟な身振り手振りや豊かな表情で声高に話すイタリア人の中で暮らしていると、北欧の人々が不機嫌な銅像に見える。本作品は調査員のFolkeと被験者のIsakそしてIsakの知人Grant(Bjørn Floberg)の3人が織りなす物語で、他には調査員を監視するイケズなMalmberg(Reine Brynolfsson)や煙草をくわえたまま診察するふざけた医師やIsakの病気の愛馬が出てくるが、どの人も判で押したように無表情なのです。実は面倒見が良かったり、人情厚い人だったり、義理堅い人だったりするのだけど、きっかけがなくては相手を知ることが出来ない。

ここでは調査員と被験者は絶対に口をきいてはいけない、というルールがあるため、コミュニケーションの手立てがない。でも人間は社会的な生き物、狭い空間で暮らす2人が、相手に無関心ではいられないものなのだ。案の定FolkeとIsakは、ちょっとしたことをきっかけに、交流を深めていく。まるで恋に不慣れな若い男女のように、おずおずと距離を縮めていく様子が微笑ましく、それを快く思わないIsakの知人Grantが、拗ねた子どもみたいでいじりたくなる。


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いい歳した3人の男たちと彼らを取り巻く日常生活、そしてそれにまつわるちょっとしたエピソードの数々。話が進むにつれて、気持がどんどん優しくなり顔が緩んでくる。全てを捨ててIsakのところに戻って来たFolke、そんなFolkeを待っていたのは冷たくなったIsakと彼の愛馬、そしてIsakを看取ったGrant。何もかも終わってしまったかに見えたけれど、雪がとけ春になった村のIsakの家にFolkeが移り住み、相も変わらずGrantがお茶を飲みにやって来る。合図はIsakの時と同じ。引き継いだ家と友情の中には喜びや悲しみの歴史があり、この先も細く長く紡いでいくであろう、そんな余韻を残していた。この余韻をゆっくり味わいたい。


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# by amore_spacey | 2018-11-01 01:40 | - Other film | Comments(2)

華やかな魔女たち (Le Streghe)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 5人の監督による5編のオムニバス。いずれのエピソードも、Silvana Manganoが男を翻弄する役で主演している。その中で一番面白かったのが第5話の『またもやいつもの通りの夜(Una sera come le altre)』(監督:Vittorio De Sica) 夫のCarlo(Clint Eastwood)がいつも疲れて会社から戻り、満足な会話もしないまま、眠ってしまうのに腹を立てた妻のGiovanna(Silvana Mangano)が、旦那をブチ殺す妄想にとらわれる。(作品の詳細はこちら


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結婚7年目を迎える夫婦。Giovannaはおっとりした上品な妻ですが、夫がちっとも構ってくれない。そんな夫に表向きは穏やかに接しているものの、心の中の妄想の世界では、感情むき出しで夫を罵ったりビンタを食らわしたり、彼の目の前で不倫して復讐したりして、溜飲を下げている。でもそれっぽちで気持ちは収まらないし、心も満たされない。だから妄想はどんどんエスカレートして、えーっ?そこまでやっちゃう?レベルになっていく。


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何の不満もなさそうな素敵な女性でも、はらわた煮えくり返らせながら妄想の世界でストレスを発散してるなんて、親近感が沸きます。夫が話を聞いてくれないことなんて、部外者から見れば、「何でそんなことで怒ってるの?」なんですが、実際腹が立つもんなんです。そして仮に夫が話を聞いてくれたとしても、その後に変なコメントが返って来たりすると、さらに腹が立つんです。女って生き物は、黙って話を聞いてくれたり、同調してくれる聞き手が欲しいの。あなたの余計な忠告・忠言は、要りまっせーーん。

というような、他人にはどーでもいいような些細なことが、日常生活には数え切れないほどある。大抵のことは忙しさに紛れて忘れてしまうが、その日の気分や体調によっては、どうしても流せないことがある。それは男性も同じことだと思います、ええ。こんな暮らしを毎日続けているわけですが、第5話は「まぁ、いろいろあるけど、人生捨てたもんじゃないよ」と思わせてくれる作品でした。


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因みにLuchino Visconti監督の第1話『疲れきった魔女(La strega bruciata viva)』に、Helmut Bergerが(当時はHelmut Steinbergherの本名で)、山のホテルのウェイターという端役で出ている。どことなくTaylor Kitschに似ているかも。


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# by amore_spacey | 2018-10-31 00:38 | - Italian film | Comments(0)

とまどい (Nelly et Monsieur Arnaud)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 失業中の夫Jerôme(Charles Berling)を抱えて働きづめの毎日を送っていた25歳のNelly(Emmanuelle Béart)は、ある日カフェで初老の紳士Arnaud(Michel Serrault)と知り合った。Nellyが経済的な問題を抱えている事を察したArnaudは、会ったばかりの彼女に対して即座に資金提供を申し出ると同時に、彼が執筆中の自伝のタイピストとして働くことを提案する。2人は仕事を進めていく内に、年齢差にもかかわらず互いに惹かれ合うものを感じるようになった。しかし若くて魅力的なArnaudの担当編集者Vincent(Jean-Hugues Anglade)が出現したことにより、2人の関係は微妙に変化していく。(作品の詳細はこちら


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大きな瞳の清楚で可愛らしい容貌に、成熟した女性の色気の加わったEmmanuelle Béartが、とても魅力的でした。表情だけで勝負が出来る。所帯染みて疲れ切った妻を演じても、どこか小粋な雰囲気が漂い、さすがフランス女優だなと思う。だからなおさら今のEmmanuelleがとても残念でならない。お直しする必要ってあった?


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さてこの作品は、初老の男性と25歳の既婚女性の、友情以上恋愛未満の物語とでも言いましょうか。しっとりと落ち着いた雰囲気の中で、心にさざなみを誘う話が展開し、秋の夜長に相応しい作品でした。

2人は自叙伝を口述する人と清書する人という枠から決してはみ出ず、男女の一線も越えず、適度な距離を保ちながら淡々と仕事を進めていく。色恋沙汰の派手な修羅場は全く出てこない。そこに触れないからこそ余計に、彼らの胸の奥に疼く淡い思いが透けて見えてくる。Arnaudに比べVincentのアプローチは、積極的で直情的。若さってそういうことね。彼のねっとりした艶かしい視線が、納豆の糸のように絡みつく。Nellyの夫のダメっぷりや間抜けっぷりが、滑稽ですらある。


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年齢もタイプも全く違う3人の男に囲まれたNellyは、ArnaudやVincentと愛し愛された関係を築いたものの、結局どちらからも離れて行くが、そこに未練はなく、すべてがクールに処理されていく。Arnaudの資金提供の申し出の場面でも、「えーっ、初対面のあなたが、どうして私に?」 下心など全くないと言われても、 「いやぁ、それはちょっと違うんじゃ?」「超ラッキー!だけど、これって裏があるわよね、絶対に」とかなんとか、押し問答の1つや2つがあってもおかしくないし、普通はそういう展開になるはずだが、あの時Nellyは案外すんなりとOKした。夫との協議離婚もあっさり承諾、Vincentとも後腐れなく別れている。それは彼女がブレていないから?女の意地がそうさせたの?

それとも恋愛で燃え尽きたあとの男女というものに、心から絶望しているのか、「恋とか愛とか結婚とか人生って、結局こんなものよね」と諦観しているのか。はたまた自分が傷つきたくなくて、クールな女を装っているだけなのか。Arnaudが妻と旅立ったあと、彼のアパートに1人残されたNellyが、パソコンに向かって自叙伝の最終章を清書する。このラストシーンが焼きついている。


 
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# by amore_spacey | 2018-10-28 00:26 | - Other film | Comments(4)