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休暇

私のお気に入り度 ★★★☆☆(78点)

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【あらすじ】 刑務官の平井(小林薫)は、職場で当たり障りのない付き合いを続け、40歳を越えた今も独身だった。ある日姉の紹介でシングルマザーの美香(大塚寧々)と見合いをする。仲人に乗せられ会ったその場で、二人の結婚は決まったような雰囲気になる。平井はこの結婚にささやかな希望を持っていた。処刑の際、下に落ちて来た体を支える役をやれば、1週間の休暇が取れる。美香を新婚旅行に連れて行きたい平井は、「支え役」を自ら志願するのだった。


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受刑者の足下の床が抜けて、体が落下し、絞首になる瞬間、その床下位置で受刑者が暴れないように支え押さえる「支え役」。人の死に手を貸すような役割。支え役は、受刑者の断末魔の苦しみを、死の瞬間を、その生々しい感触を、一生忘れない。この衝撃的なシーンに、死刑制度や命の重みや死について、私たちは一歩立ち止まって考える。また執行に携わった刑務官たち、特に死の上に立つことでささやかな幸せが得られる平井という男について、任務とはいえ割り切れないものを抱える人々の気持ちに寄り添う。そして何とも苦い思いに苛まれるのだ。


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登場するどの人も多くを語らない。受刑者・金田(西島秀俊)が一体どんな罪を犯したのか?見合い相手の美香の前夫や前の結婚生活がどうだったのか?全く触れない。刑執行までの刑務所での日々と、見合いから新婚旅行までのプライベートな日々、この2つの時間軸が交互に綴られていく。淡々と進んでいく。こんなにも静かなのに、静かだからこそ、ぐっと胸に迫ってくる。心の奥底に眠っているものが揺さぶられる。何ともやるせない複雑な気持ちになる。その上にある平井のささやかな幸せ。

製作国:Japan
初公開年:2007年
監督:門井肇
キャスト:小林薫, 西島秀俊, 大塚寧々, 大杉漣, 柏原収史, 菅田俊 ...


# by amore_spacey | 2011-09-22 00:26 | - Japanese film | Comments(4)

風の痛み (Brucio nel vento)

私のお気に入り度 ★★★☆☆(72点)

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【あらすじ】 東欧のとある国の小さな村に生まれ育ったTobias(Ivan Franek)は、15歳の時スイスに亡命した。昼は時計工場で働き、夜は作家を夢見てフランス語での執筆に励んでいる。しかし名前を変え過去を封印したはずのTobiasは、母と関係を持っていた小学校の教師で、実の父親であると知った男を殺したことが脳裏から離れない。
スイスに来てからは毎朝5時に起きて工場に行き、同じ部品を作る単調な生活を送っていた。ある日Tobiasは、工場の食堂で見覚えのある女性を見かける。自分が殺した教師の娘Line(Barbora Lukesová)だった。彼は異母兄妹でもあるLineに、自分の素性を隠して近づく。彼女には夫と小さな娘がいたが、いつしか2人は愛し合うようになる。


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フランス語圏のスイスの暗い空、小さな山間の寂しげな集落。曲がりくねった道、雪に閉ざされた坂道。鬱々として悲劇的な色合いを帯びる。TobiasやLineにとってこの国はいつまでたっても外国人でしかなく、移民、特に亡命した者にとっては、孤独感が終始つきまとい、鬱屈した感情を溜め込んでしまう。留学や結婚や仕事という、前向きな目的があってこの国に来た訳ではない。だから何年経っても居心地が悪く、苦しくて仕方がない。機会があれば、どこか別の土地へ行きたい、と心の片隅で思っているのだ。

鉛のように重苦しく陰鬱で狂的なTobiasの瞳が突き刺さる。全身から放たれる「オレに近づくな」というオーラ。どこまでもLineを追う、Tobiasの不気味で偏執的な愛。どれもこれも痛々しいばかり。3つの殺人を犯しても、それに関しては不問のまま、淡々とストーリーが展開していく。この現実を直視しない捉え方ってどうなんだろう?逃避行の末、明るい陽射しの海辺に辿り着いたけれど、彼らにとってここが永遠の安らぎの土地になるとは、到底思えない。それにしてもTobiasを演じたIvan Franekの、深い孤独を湛えた強い眼差し。あんな瞳でじっと見つめられたら、ドキドキする。心に残る役者だ。

製作国:Italy, Switzerland
初公開年:2002年
監督:Silvio Soldini
原作:Agota Kristof
キャスト:Ivan Franek, Barbora Lukesová, Ctirad Götz, Caroline Baehr, Cécile Pallas ...


# by amore_spacey | 2011-09-19 00:10 | - Italian film | Comments(2)

アガタと嵐 (Agata e la tempesta)

私のお気に入り度 ★★★☆☆(72点)

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【あらすじ】 ジェノヴァで書店を経営する40代の女性Agata(Licia Maglietta)が、常連客の若い男性Nico(Claudio Santamaria)に愛を告白され、初めは拒否するのだが、徐々に心が傾いていく。ところがAgataの弟Gustavo(Emilio Solfrizzi)の隠された過去が明らかになり、平穏だった姉弟それぞれの日常生活が一変する。『ベニスで恋して』のキャスト&スタッフが再結集したコメディー。


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エンドロールになった瞬間、「へっ?」「それで???」 何もかも中途半端なまま放り出して、終わらせていませんか?消化不良気味のこの気持ちを、どこに持って行けばいいの?この割り切れないもやもや感は、実生活そのものなんだけれど、せめて映画の中ぐらい夢を見させて欲しいと思う時もあるよね。Agataも弟Gustavoも、あれでいいわけ?Gustavoの妻Ines(Marina Massironi)とは、その後どうなったの?Agataと年下の男Nicoの関係は?私の大好きなGiuseppe Battistonが、今回も何かやらかすのかな?なんて期待していたのに、彼の持ち味が今ひとつ活かされず精彩に欠けていたし。『ベニスで…』がとてもよかっただけに、期待しすぎたその落差は大きかった。あまりにも退屈な作品にがっかり。同じ監督の作品とは思えませんでした。

Agataの書店で働くちょっぴりエキセントリックなMaria Libera(Giselda Volodi)や、『ベニスで…』の時にも怪しげなエステティシャンだった、Gustavoの妻Inesを演じたMarina Massironiの、微妙にキレた感じや、Gustavoの建築事務所に、長年秘書として仕えていた品の良い夫人の、定年退職届けを告げる時の折り目正しい口調…など、女性の脇役陣は一癖も二癖もありそうで、面白かった。

製作国:Italy
初公開年:2004年
監督:Silvio Soldini
キャスト:Licia Maglietta, Giuseppe Battiston, Emilio Solfrizzi, Marina Massironi, Claudio Santamaria, Giselda Volodi ...


# by amore_spacey | 2011-09-16 02:44 | - Italian film | Comments(0)

スイートリトルライズ

私のお気に入り度 ★★★☆☆(60点)

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【あらすじ】 人気テディベア作家の瑠璃子(中谷美紀)は、夫の聡(大森南朋)と結婚して3年目。周囲からは理想的な夫婦に見られるが、最近は体の関係がなくなり、聡は自室でTVゲームをする時間が多くなっていた。そんな時瑠璃子はベアの個展で春夫(小林十市)という青年と出会い、情熱的な春夫のアプローチによって2人は恋に落ちていく。一方聡は大学のサークルのOB会で、自分に好意を寄せる後輩・しほ(池脇千鶴)と再会する。そして彼女と情事を重ねるようになった。


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空気のような透明感のある江國作品。吟味して選んだお洒落なインテリア。刺激はないけれど、ナチュラルで穏やかな時間と空間。それが瑠璃子&聡の暮す家。だけど私には苦痛で退屈な家。自分の部屋にこもって、1人でTVゲームをする夫の聡って何なんだ?喜怒哀楽が全くない、枯れ木のような男。楽しいの?美味しいの?辛いの?怒ってるの?うちのハムスターでさえ、もっと感情のメリハリがあるのに。そんな男、早くやめちゃいなよ。結婚生活3年、夫婦喧嘩は全くなし?そりゃ変ではないけれど、仲がよいことにもならない。まだまだ若いはずの瑠璃子も、老けちゃってるし。です・ます調の他人行儀な会話には、もはや付いていけませんでした。

この夫婦には現実感やセクシュアリティというのが殆ど感じられなかった。人間の形をしたロボット。情事においても男女関係がもつ情熱や生々しさ、狂気や嫉妬がなく、いつもどこかで理性が働いている。折り目正しい。優等生。退屈。そんな中で衝撃を受けたのが、テディベアの目を縫い付けるシーン、あれは怖かった。

製作国:Japan
初公開年:2010年
監督:矢崎仁司
原作:江國香織
キャスト:中谷美紀, 大森南朋, 池脇千鶴 小林十市, 大島優子, 黒川芽以 ...


# by amore_spacey | 2011-09-14 01:20 | - Japanese film | Comments(0)

公共の敵 (Public Enemy)

私のお気に入り度 ★★★★☆(84点)

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【あらすじ】 元ボクシング選手の刑事Kang Cheol-jung(Kyung-gu Sol)は、いつも問題ばかり起すアウトロー刑事。ある大雨の夜、張り込み中に住宅街で黒いレインコートを着た男とぶつかり、そこで喧嘩した彼は相手のナイフで目元を切られた。それから一週間後、同じ地区で刃物によって滅多刺しにされた老夫婦の腐乱死体が発見されたが、手掛かりはなし。Cheol-jungは、雨の夜の男が犯人だと直感するが、身元が判明したその男Jo Kyu-hwan(Sung-jae Lee)は殺された老夫婦の一人息子で、社会的にも一目置かれるエリート証券マンだった。


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韓国映画ならではの血生臭いシーンが幾つもあるけれど、とても分かり易くて面白かった。容疑を吐かせるためなら、殴る・蹴るは日常茶飯事な暴力刑事といい、部下の頭を平気で殴る上司といい、「それでいいのか?」的な突っ込みどころも満載。ひたすら凶悪犯を追うだけでなく、クスッと笑えるシーンがタイミングよく入っているので、あっと言う間の2時間だった。喜怒哀楽や正義 vs 悪徳のメリハリがあったからでしょう。Cheol-jung刑事が赤井英和に、エリート証券マンのKyu-hwanが桑田真澄に、似てませんか(^◇^?)


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脇役のキャラ設定がこれまた絶妙で素晴らしい。まったくしょうがないヤツだなぁと思いつつも、Cheol-jung刑事に理解のある懐の深い上司、刑事のご機嫌とりのような果物屋のあんちゃんや、刑事の世話になっている顔見知りのチンピラ連中や、刑事を密かに追う変な秘密探偵たちが、刑事の存在をユニークなものにしてくれた。

製作国:South Korea
初公開年:2002年
監督:Woo-Suk Kang
キャスト:Kyung-gu Sol, Sung-jae Lee, Shin-il Kang, Jeong-hak Kim, Yong-gu Do ...


# by amore_spacey | 2011-09-12 01:22 | - Asian film | Comments(2)