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ゴースト・ワールド (Ghost World)

ネタばれあり!!!
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【あらすじ】 1990年代アメリカの郊外の小さな町。幼馴染で親友のEnid(Thora Birch)とRebecca(Scarlett Johansson)は、高校を卒業したものの進路も決めず、あてもなく町をぶらついては、面白い事を探して過ごしている。
 ある日2人は、レコードオタクのダサい中年男Seymour(Steve Buscemi)に出会う。独自の世界を持つこのオヤジに興味を持ったEnidは、アウトサイダーとして生きる彼の”理解者”として交流を深め、奇妙な友情関係を築いていく。
 一方Rebeccaは、アパートを借りるため、地元のコーヒーショップに就職し、社会と折り合いをつけて自立しようとする。が、同居生活を計画していた2人の間は、次第にギクシャクし始める。Daniel Clowesの同名コミックを映画化。(作品の詳細はこちら


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この映画が好きで、ふっと思い出した頃に観直していますが、4年ぶりにまた鑑賞しました。社会に出て様々な経験をそれなりに積んできて、一区切りついたかなと思うこの時期に観ても、初めてこの作品を観た時以上に、Enidに感情移入しました。そんな自分にビックリする一方で、人生のステージが変わったのに、気持ちが追いつかなくて、足踏みしている自分をEnidに重ねて、友だちを見つけた!ような、ちょっぴり嬉しい気持にもなる。

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こんなEnidだけどね、彼女なりに努力もしているのです。美術の先生を感心させようと頑張ったり、嫌いな人のコネでもバイトを始めてみようとしたり、奨学金で進学しようと考えたり。でも建て前優先で生きるのは、自分を偽っているようで、なにかどこか違う。そんな世界には馴染めない。かと言って、生き辛さを抱えながら社会の片隅で生きる、Seymourのような大人にもなりたくない。じゃあ、私(Enid)の居場所はどこ?どう生きていったらいいの?

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多くの人は長いものに巻かれるように、社会の常識や通念を優先して、本音と建前をうまく使い分けながら、何とかやり過ごしているものです。が、心の小さな軋み(痛みや自己嫌悪)を、何かの拍子にEnidのようにふっと感じる人も、結構いるんじゃないかな。それを受け入れつつスマートに生きていくのが、成熟した大人なんでしょう。でもこれって、相当ハードルが高い。私は未だに、自分との折り合いがつかず、凹んだり開き直ったりの繰り返しデス。

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「これじゃいけない」「何かしなくちゃ」という思いに駆られ、真っ赤な服を着たEnidは小さな鞄1つ持って、前向きの気持ちでバスに乗って町を出ていった。と思いたいのですが、ラストシーンのBGM(←音が出ます)があまりにも哀愁に満ちていて、希望の光が見えない。Enidはどこへ向かって行ったのでしょうか?この映画はどの年代の人が観ても、感じ入る何かがきっとあるはず。あらゆる世代にお勧めです。


# by amore_spacey | 2024-01-26 00:48 | Other film | Comments(0)

おっさんずラブ リターンズ 第1話~第3話

ネタばれあり!!!
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【あらすじ】 コロナ渦の遠距離恋愛を経て、遅ればせながら新婚生活を歩み出す春田創一(田中圭)と牧凌太(林遣都)は、新年を迎えこれから2人で楽しく暮らす日々を夢見ていた。が、課長に昇進した牧は多忙を極め、係長になった春田も歳上の部下・和泉幸(井浦新)の教育係を任され、すれ違いで余裕がなくなった2人は、些細なことで喧嘩ばかり。
 そこで荒井ちず(内田理央)が紹介してくれた、家事代行サービスを利用することにする。が、春田と牧の家に現れたのは、なんと早期退職後、再就職を果たした、家政夫の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)だった。
 彼らの周りの人間関係も変わりゆく。シンママになり仕事と育児の両立に悩むちず、恋愛迷子になってアプリに没頭する武川(眞島秀和)、二世帯住宅で揉める栗林(金子大地)と蝶子(大塚寧々)、4人家族になった舞香(伊藤修子)と鉄平(児嶋一哉)、それから移動式のおむすび専門店を営む、謎の男(三浦翔平)も現れる。(作品の詳細はこちら


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リターンズのスピンオフ『春田と牧の新婚初夜』が何だかなぁだったので、第1話がダメだったらやめるつもりで観たら、秒でドラマの世界に引き込まれた。そんな方向から攻めて来るか!なネタを小出しにしながら、どこに地雷があるのか分からない、ドキドキハラハラの展開に、金曜日が待ち遠しい今日この頃です。

何と言っても、吉田鋼太郎の存在感と破壊力よ。ひとり勝ちー!かっぽう着の武蔵も、乙女でかわいい。どうして武蔵は、こんなに面白いんだろう?際立った個性と濃厚過ぎるキャラに、胸やけして飽きるはずなのに、それどころか武蔵(と牧の絡み)の出番が少ない回は、なにか物足りない。

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武蔵と牧の激しい嫁姑バトルは、ねちっこい武蔵にヒートする牧が面白過ぎて、お腹を抱えて笑いました。シーズン1でもはるたんをめぐって、「じゃあお前、はるたんのいいとこ、10個言えんのかよ?」の武蔵に、ブチ切れた牧が武蔵を指さしながら、「じゃあ、春田さんの悪いトコ、10個言えますか?」と応戦し、果てはつかみ合いの喧嘩にまで。あの時の牧の目はヤバかった(笑)

フライパンや麺棒や靴を手にした今回のバトルは、さらにヒートアップして危ないんだけど、2人のあうんの呼吸や、アップテンポの演技(本気?)、そして食らいついたら離さず、ムキになって突っかかる、牧のド根性に痺れた。アドリブでボツになった別バージョンや、NGを出したシーンも観たいなァ。ロケ現場は爆笑の渦で、撮影がちっとも進まないね、アハハッ。

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武蔵&牧の次に好きなキャラは、クールな武川部長ですが、どうしたんですか?今シーズンは心ここにあらずで、、、平静を装ってはいるけれど、牧のことが好きで諦められない。元カレを心配する牧のまなざしが、母親のように慈愛にみちて優しく、一体どっちが年上なんだか。

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そして今シーズンから登場の和泉。意味不明なコトをぼそっと言ったり、「相変わらず、うるせえ唇だな(←どんな唇?)」と突然キスする。儚げで頼りないのに、弓道の時はキリッ。血まみれ謎だらけで、今後の展開が気になります。春田と牧と武蔵のほかにも、家族になったことで、様々な問題が浮上していますが(丸っこいマロがキュート)、それらの行方も静かに見守っていきます。


# by amore_spacey | 2024-01-21 00:41 | Japanese film | Comments(4)

Sidonie in Japan (Sidonie au Japon)

ネタばれあり!
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【あらすじ】 フランスの著名な作家Sidonie Perceval(Isabelle Huppert)の家は、夫Antoine (August Diehl)を交通事故で亡くして以来、執筆活動をやめてしまった。そんな彼女の初長編小説『影』を再販する、日本の出版社のイベントのため来日したSidonieは、担当編集者の溝口健三(伊原剛志)と知り合う。彼の案内で、神社仏閣の町・京都をはじめ、様々な町を訪れた。
 プロモーション活動を一緒にしていくうちに、Sidonieは似たような背景を負う溝口に、少しずつ魅かれていく。しかし亡き夫への思いから逃れられず、夫の亡霊がどこまでも彼女を追ってくるのだった。(作品の詳細はこちら


 
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日本を舞台にした映画に、フランス女優の大御所ユペりんが出ていると知って、劇場まで足を運びました。ちょっぴり期待して行ったのですが、ああ、この空振り感や肩透かし感。監督の日本への愛や尊敬や幻想のようなもの、それを何とか映像化して伝えたい。この気持ちはよく分かった。長年日本に憧れていたイタリア人友人が、念願叶って日本を旅行し、目を輝かせて熱く語ってくれた姿に重なる。

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構図や色彩を含め、映像が素晴らしい。これを観た日本ファンの外国人なら、すぐにでも日本に行きたくなるでしょう。深く幽玄な空間や、精神的な世界が支配する国として、日本をみているんだなぁと。それがどこか面映ゆくもあり、「確かにそんな部分も、あるにはあるんだけど…」と、微妙な違和感を抱いてしまう。4年ほど日本に帰っていない私の目には、日本の見慣れた風景も新鮮に映ったのですが、

冷めた目をしたもう一人の私も居て。ユペりんのお辞儀が、米つきバッタみたい。夫の亡霊は滑稽で違和感あり。タクシーや電車から見える風景も、合成なのか?どこか不自然。これが『ブレット・トレイン』のように振り切ったエンタメならともかく、こちらは心に傷を負った人々の内面に迫っていく話なのに(肝心の2人の心情が、伝わって来なかったな)、枝葉部分とは言え、あんまりな手抜き仕事で、「そうやっちゃうかぁ」と呆れるより、笑いが込み上げてきます。

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原爆や阪神淡路大震災や東日本大震災と夫の交通事故を、同列で語るって、どうなの?安易で短絡的な描写は、心外・遺憾で不快ですらあります。日本に美しい幻想を抱き過ぎ、日本への思い入れが強すぎて、匙加減が狂ったのかしら?

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夫と暮らした家から出て、遠く離れた国を歩き異文化に接しながら、夫と過ごした時間や夫を失ってからの日々に向き合ってみる。それがSidonieには必要だった。夫以外の男性を好きになり愛することに、罪悪感を抱いてしまうのは、まだその時期が来ていないから。焦ったり急いだり亡き夫への思いを断つ必要はなく、自分のテンポに合わせて行けばいいのです。間もなく71歳にいなるユペりんと、10歳年下の伊原剛志が、なかなかお似合いのカップルでした。


# by amore_spacey | 2024-01-17 00:42 | Other film | Comments(4)

フローラとマックス (Flora and Son)

ネタばれあり!!!
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【あらすじ】 ダブリンで暮らすシングルマザーのFlora(Eve Hewson)は、17歳の時に息子Max(Orén Kinlan)を産んだが、音楽家志望の夫Ian(Jack Reynor)と別れ、女手ひとつで息子を育てている。しかし彼女は、クラブで踊り狂っては、行きずりの男と寝るという、自堕落な日々を送っていた。そんな母を軽蔑し嫌気がさしたMaxは、反抗して非行を繰り返す。
 ある日Floraは、ゴミ捨て場で見つけたギターを拾って修理に出し、Maxにプレゼントした。自分のせいで問題を起こす息子だけど、ギターに夢中になれば、非行を阻止できるかもと考えた。が、ヒップホップが好きなMaxは、全く興味を示さない。そこで自分がギターを弾こうと思い立ったFloraは、ネットで見つけたLA在住のギター講師Jeff(Joseph Gordon-Levitt)の、オンラインレッスンを受けることにした。(作品の詳細はこちら


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お勧めに出てきたので観ました。音楽が好きだから、この映画は超ストライクでハマった。音楽が準主役のような作品に、ほぼ外れがないのも嬉しい。何の予備知識もなかったのが、幸いしたのかもしれません。シングルマザーと反抗期の息子が、親子の垣根を越えて、1ミリの遠慮も手加減なしで、ボロクソに言い合う。顔を合わせば火花を散らせる母息子ですが、偶然拾ったギターが2人の関係を修復し、心地の良い居場所を見つけていく。きっと大丈夫、そんな気持ちにさせてくれるのです。

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私にとって音楽は大きな癒しで、人生のその時々の場面が音に刻み込まれ、その音やメロディーを聴くと、その時の匂いや温度まで、鮮やかに蘇ってくることがある。この作品でも音楽が、それぞれの心を動かし、互いに歩み寄りをみせ、壊れかけたFloraとMaxの母息子、それから夫のIanとの関係を修復し、最後に大きな感動をもたらしたてくれました。作品の中で流れるギターの弾き語りが、穏やかで心に沁み入る。

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今の暮らしや自分の生き方に不安を感じているのは、FloraやMaxだけじゃない。そんな思いを吐き出したり伝えたりしながら、互いにきちんと向き合う。道のりはデコボコであっていい、汚い言葉の投げ合いもいい(人前では勘弁ですが)。繕ったりしないで、本音をぶつけ合うことができる関係なら、たぶんその先も上手くいくような気がします。

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素朴なダブリンの町の風景に、時々映るギター講師のJeffが、まるでFloraに寄り添うような演出が素晴らしく、離れているのに2人がこんなにも近くて、それだけでドキドキしました。別れた夫も参加したラストのライブは圧巻。このライブのために、彼らは一緒に曲を作り完成させたんだ。人生につまづき、傷ついた人たちが、愚痴や不満をそのまま歌詞に乗せて、ガンガン歌いまくって吹っ飛ばそうぜ!やんちゃで粗削りだからこそ、がっつり熱いエネルギーが、ストレートに伝わってくる作品でした。


# by amore_spacey | 2024-01-14 01:07 | Other film | Comments(0)

コタローは1人暮らし アニメ 全10話

ネタばれあり!!!
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【あらすじ】 おんぼろの「アパートの清水」で、一人暮らしを始めたさとうコタロー少年は、腰におもちゃの刀を携え、殿様のような言葉づかいをする、ちょっと変わった子どもだ。しかし4歳ながらやけに生活力があり、むしろアパートのちょっと駄目な隣人の大人たちよりも。余程しっかりしている。
 隣の部屋に暮らす売れない漫画家の狩野進は、コタローの大人びた言動に戸惑いつつも、何かと世話を焼くようになる。同じアパートに住む秋友美月や田丸勇も、コタローが可愛いくて仕方がない。そうするうちに、コタローの一人暮らしの事情や過去が、少しずつ明らかになっていく。津村マミの同名漫画をアニメ化。(作品の詳細はこちら


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ほのぼのとした癒し系のアニメかと思いきや、、、取り上げている題材が、あまりにも辛すぎた。けれど観るのをやめられなかったのは、切なくて悲しいだけのストーリーではなかったから。アパートの住人たちに恵まれたコタローが、彼らに見守られ支えられ、時にはコタローが訳ありの大人たちを支える姿に、心がじんわり温まる。コタローを気に掛ける大人たちの気持ちが、嬉しかった。コタローがちっとも子どもらしくなくて、その事情を知って泣いた。

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コタローとアパートの住人たちの、ほのぼのした日常生活や、コタローと狩野の漫才のようなやり取りをニコニコして観ていたが、「もしや、このアニメって…」と気付いてからというもの、妙に大人びたコタローの、健気で落ち着いた振る舞いが、逆に切な過ぎてねぇ、もう毎回グサグサ胸に突き刺さるのよ。クスっと笑えるシーンと、胸が締め付けられるエピソードの緩急が絶妙で、感情の波は上下左右に揺り動かされる。

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現実の世の中は理不尽で、あまりにも救いがない。何かが起きるたびに批判したり叩いて炎上させるだけだと、問題は解決するどころか、論点がズレたりイライラのはけ口になるだけ。過剰な怒りはあきません。そこにクスっと笑えるネタで小さな風穴を開け、負の感情を解きほぐして一歩踏み出そう。こんな小さな努力を積み重ねたら、真っ暗な闇の中にも希望が生まれるかもしれない。少しでも正しい方向に進んでいけたらいいなという、作者の願いが込められている。

コタローと彼に関わる大人たちを通して、深刻な社会問題になっている育児放棄を、淡々と、しかし、ずっしり手応えのあるエンタメに仕上げています。説教臭くなりすぎず、大声で訴えたりしない。時々ハッとするセリフに癒され、現実をひしひしと思い知らされる。心を揺り動かされる作品で、アニメを侮るなかれ!でした。


# by amore_spacey | 2024-01-10 01:51 | Japanese film | Comments(2)